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本編

3話 街の地下には・・・ その4

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「あれ、皆さんいらしたの?」

厨房に入るとジャネットがふらりと入って来た、

「お帰り、ジャネット、畑出来た、畑」

ミナはジャネットに走り寄ってぴょんぴょんとその足にじゃれつく、

「ジャネット、お帰りなさいもうそんな時間かぁ、皆さん戻られました?」

「うーん、ケイスはまだかなぁ、恐らく研究室に捕まってるんじゃないの?他は戻ってると思うよ」

ミナを抱き上げてクルクルとその場で回転しながらジャネットは答える、レインが危ないぞと一言告げると、簡単な謝罪の言葉で回転を止めた、

「お湯沸かしますのでエレインさん達呼んでお茶にしましょうか」

ソフィアは魔法コンロに薬缶をかけつつ提案し、ジャネットは明るく了解すると、

「よし、ミナっち、レイン、お嬢様呼びに行くぞ、競争だ」

ジャネットはミナとレインを焚き付けて厨房を駆け出る、

「あっ、酷いジャネット」

「む、待つのじゃ、ジャネット」

それぞれに嬌声を上げてジャネットを追うミナとレイン、

「こら、危ない」

ソフィアの怒声も三人には届かずその姿はあっと言う間に2階へ消えた。




「もう出来ましたの?早すぎません?」

エレインは優雅に茶を傾けながら素直な疑問を口にする、

「うんとね、レインがやったの、すごいんだよ、ごぉーってなって、ぐにょにょってなってふわふわなの」

ミナが身振り手振りで説明するも、

「うん、わからん」

ジャネットの感想が寮生三人の共通見解であった、

「それでね、ふわふわで真っ黒になって、ソフィとレインで小さな山と谷を作ったの」

御機嫌なミナの調子は続き、

「あとは植え付け?だけ、ね、ソフィ」

「うん、そうねぇ、ミナとレインが頑張ってくれたからねぇ、良い畑になったわね」

ソフィアは柔らかい笑顔でミナの頭を撫でる、

「薔薇とジギラリス?も買って来たよ、でも、時期は悪いかもって」

「ジギタリスですよミナさん、でもありがとうございます、そうですね、時期は確かに、植え付けの時期では無いですね」

オリビアが紅茶カップに視線を落して静かにそう言うと、

「薔薇とジギタリスじゃろ、花が咲くのは来年じゃろうな」

珍しくレインが会話に入ってきた、

「しかし、あの土ならばどうなるかのぅ」

そう言って不敵に笑う、

「レイン・・・、それどういう事」

ソフィアが厳しい目でレインを睨む、

「・・・何事もやってみなければわらかんよ、そういう事じゃ」

適当に誤魔化そうとするレインに、

「やり過ぎたのならそう言いなさいね、レイン」

ソフィアは尚厳しい目で警告する、はいはいとレインはそっぽを向いた。

「でも、裏庭で作業していたのにまるで気付きませんでしたわ」

エレインは話題を変える、

「そう言えばそうだよね、ミナが静かに作業する訳無いしぃ」

ジャネットはミナの顔を覗き込む、むぅと睨み返すミナ、

「結界を張ったんだったわ、忘れてた」

ソフィアはしまったとばかりに呟いた、

「結界ですか?かなり範囲広いのではなくて?」

エレインはソフィアを見詰める、

「そうね、まぁ、動体では無いからそれほど難しくないですよ」

ソフィアはシレっとそう答え、

「内庭で何かする時は張っておきましょうか、少々うるさくしても御近所に迷惑が掛かりませんしね」

と笑顔を見せる、

「いえ、そうでは無く内庭全体に結界ですか?結界の内容によりますが、かなりの広範囲ではなくて?」

えぇそうですねぇとソフィアは茶を啜る、

「・・・ユーリ先生との関係性からもそうですが、ソフィアさん、貴女も普通ではないのではないですか?」

エレインはいよいよ眉間に皺を寄せてソフィアを睨む、ジャネットとオリビアもその言葉の意味に気付きソフィアを見詰めた、

「普通ってなんでしょうね、ねぇ、ミナ?」

ソフィアはにこやかに視線を外しミナに話題を振る、不穏な空気に周囲の人の顔をキョロキョロと見上げていたミナはソフィアに視線を合わせ少し考えると、

「わかんない」

と短く答えた。

「そうじゃの、わからんの、では作業を続けようか皆の衆、人手があるのじゃ、やってしまおうぞ」

レインは大きく笑いながら立ち上がり一同に発破をかけた、寮生はあからさまに誤魔化された事に気付いていたがレインの言葉に渋々と立ち上がる、

「お嬢様、作業着をお持ちします、ジャネットさんの分もありますが、如何でしょう?」

「うーん、私の分はあるよ、実習用の作業着で充分かな?ありがとうオリビアさん」

「いえいえ、ではお嬢様一度2階へ、ミナさん、薔薇とジギタリスは我々が植え付けます」

「うん、待ってる」

ミナはオリビアに微笑み返しつつ勝手口に駆け出した、

「だから、走らない」

ソフィアの怒声が響く、一瞬停止したミナはゆっくりと振り返りソフィアの顔を伺って、本気で怒ってない事を確認すると、はーいと気の無い返事をしてふざけたようにゆっくりと歩を進めた。
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