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序章
序呪 事の歯車
しおりを挟む古来より、日本では神や妖、物の怪などの人ならざる者が集っている。それらは悪さをする者もいれば、善い事をする者もいる。個でいる者もあれば群れるものもいた。この地に住まう人達は、これらの存在に怯え、畏れながら永き時を過ごしていた。
いつ頃からか、西の大陸より様々なものが伝わってきた。稲作を始め漢字、物品、諸々の技術・・・・・・それまでのものとは明らかに違う文化にこの地に住む人々は関心を示し、いつしか暮らしへ取り込んでいくこととなる。大陸から伝わったものの中に、人ならざる、悪事を働くに対抗することが叶うものも多く伝わってきた。
それから暫く時がたち、平安の世になると、「陰陽師」という、人ならざるに対抗し、都を守る者達が現れ始めた。それは、都だけではなく、他の地にも現れ始め、人々は人ならざる者と戦い始めた。
平安の中頃に、一人の稀代の陰陽師が誕生した。かの有名な大陰陽師・安倍晴明である。彼の活躍により、人ならざる者の勢は失われていった。
しかし、狐の子と人々から囁かれていた彼も人であった。当時の人間では長命すぎる程だったが、寿命が来てしまい、亡くなってしまった。だが、彼の人々を守るという意思はその後の時代まで受け継がれる事となる。現代も京都の土御門氏(元安部氏)をはじめとする者達がこの地の平穏を保っている。
さて、ここから話が変わるのだが、もしもあの大陰陽師・安倍晴明に双子の兄弟がいたと言ったら貴方は信じる?大体の人は信じないかもしれない。何で突然そんな話を・・・・・・と思った人もいるかもしれない。だが、予想がついている人もいるだろう。安倍晴明には双子の弟がいた。
では何故双子の弟の存在が知られていないのか。それは非常に明快で単純だ。平安の世では双子が災いをもたらすと言われていたからだ。兄であり、比較的普通に見える晴明が都に残り、普通の見た目ではない白髪赤目の弟はある程度育てられると都から遠く離れた地で生涯暮らすことになった。・・・・・・都の人の目に入らぬよう、存在を知られぬように。
彼の弟が引き取られた地。それは人と妖ものが共に暮らす人外魔境の名もなき村だった。その地には一人の大変優れた年若い陰陽師が均等を守っていた。晴明の弟・・・・・・光明(こうめい)を引き取ったのも彼であった。
かの者の名は橘元保(たちばなのもとやす)。橘氏の者である。そして、先祖をたどると安部氏の名が出てくる、安部の遠縁のものでもあった。
彼に引き取られた光明は腕利きの陰陽師として村を生涯守り、また、村の者も人と違う見た目である彼の事を他の人と同じように扱い、また、彼の事を好いていた。この村は彼、そして彼の子孫に守られ今日まで続いている。
そして、また一人、安部光明の子孫・・・・・・阿崎家の少年の物語が始まろうとしていた・・・・・・。
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