リフレイン

桃瀬わさび

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本編

リフレイン 〚カナ〛

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よだれが垂れそうになって慌てて起きたら、ベッドだと思ってたのはキサちゃんだった。
…………よだれ、垂れてないよね。
うーんと、なんでこうなったんだっけ。変なとこ舐められそうになって大泣きして、子供みたいにそのまま寝て、起きて、キサちゃんにローションを渡したらとにかく執拗にほぐされて。
う、まだ入ってる気がする。どれだけ出したのか、お腹のあたりもかぴかぴする。

「ん………カナ、」

キサちゃんのきれいな目がふわっと開いて、嬉しくて笑ったらナカがきゅんと締まった。
…………ちょっと待って、コレ、入ってない?なんか心なし大きくなった気がするんだけど。
キスをしようとキサちゃんが動いて、ナカのそれが弱いとこを抉る。
ぁっ、なんていう声が漏れて、キサちゃんが色っぽく笑った。
完全に力を取り戻したそれで、ゆっくり味わうようにナカをかき混ぜて、優しくやさしく舌を絡める。
あっという間にとろかされて、キサちゃんに縋りついて何度も啼いた。


とうとうドライを仕込まれました。
ぐじぐじと執拗に抉られて快感が溜まって、だけどもうタンクは空っぽで何も出なくて。
出さずにイッたのを見たキサちゃんが、愉しそうに笑ったときから嫌な予感はしていた。
―――カナもうイけねーの?ココはもっとって言ってるけど?
―――ぃっ、イッてるからぁっ!も、っ、…………めぇ!
びくんびくんと体を跳ねさせて啼く俺をみて満足気に笑って、敏感なのに色んなところを愛撫する。
乳首とか、腰骨とか、そんなとこも性感帯なのかと思うくらいに、キサちゃんが触れると全身がとろとろに蕩けて。
俺が啼けば啼くほど、嬉しそうに笑って。

―――キサちゃんて、ぜったい、ドSだ。


例によって腰砕けになって甲斐甲斐しく世話を焼かれながらむうっと膨れる。
ごはんを作ってくれてる後ろ姿をみながら、こっそりと昨日の動画を再生した。
再生回数は、ちょっと信じられないレベル。コメント数もえげつない。
英語しかわからないけど、賞賛の声と、これは誰か、この曲はどこで手に入れられるのかっていうのがほとんど。

俺、すごいひと、好きになっちゃった。


「また見てんの?」
「うん、英語もいいね、韻も踏んでるけど、依頼されて作ったの?」
「いや、はじめっから英語で作った歌だからな。こっちが元みたいなもんだ。」

てことは、カナリアは逆に日本語に訳してくれたってことか。………英語から歌詞を考えるとか、どれだけ達者なんだろ。すごすぎる。
すごすぎるのに、この甘さは何だろ。なんでいちいち抱きしめてキスするの!?もう、話なんて耳に入らなくなっちゃう!

後ろから抱き込まれて、キサちゃんが左手の指を絡める。
お互いの左手首に嵌まるバングルがかちりと鳴って、やわらかく光る。

「あのさ。カナ、引っ越さねぇ?」

ほうっとバングルに見惚れていて、言ってる意味がすぐにはわからなかった。
ええと、どーゆーことだろ。防音のワンルームってなかなかないんだけどな。
がじりと耳に噛みつかれて、余計頭が回らなくなった。
変な声が出て、キサちゃんがくつくつと笑う。

「だからさ、トモとミヤみたいに、一緒に住まねぇかって言ってんの。」

え、えええ?
それは、いわゆる、同棲ってやつでは、と思い至り、一気に顔が赤くなる。
楽しげに笑ったキサちゃんがぺろりと耳を舐めて、返事は?なんて甘くあまく囁いて。

「むっ、無理っ!!」

慌てて腕の中から逃げ出して、壁に背中をつけてぶんぶんと首を振った。
うれしい、嬉しいけど、一緒に住んだりしたら、心臓が保たない。無理なものは無理だからー!
ぜったい、はやく死んじゃうから!ロッカーは短命とか言うけど、俺普通に長生きしたいし!
たしかにキサちゃんと暮らせたらそりゃあそりゃあ幸せだけど、それ以上に絶対、落ち着かない!あと、なんか学校とか行きたくなくなっちゃうと思うしっ!

キサちゃんが虚をつかれたみたいにきょとんとする。
うう、いつも死ぬほどかっこいいのに、そんな顔はかわいいよう。
少し思案げに長い睫毛を伏せて、口元を押さえて、…………笑って、る?

「っはは!お前はほんと、わかんねぇなぁ!」

弾けるような笑い声。楽しげに、思いっきり笑う顔。
……そういうキサちゃんこそ、わかんないよ。なんで笑ったのかもわかんないし、いちいちすごいことを仕出かすくせにいつも平然としてるし。
断ってもこんなに嬉しそうだし。



上機嫌に笑ったキサちゃんが、俺を閉じ込めるみたいに壁に肘をついた。
う、ち、近い。これだけでこんなにドキドキするのに、やっぱり同棲なんてむりだ。
きれいな顔が近づいて、頭に、額にキスを落とす。
鼻をがじりと甘噛みして、くちびるにもそっと牙を立てて。

「絶対、頷かせるから。………覚悟しろよ?」

ぺろりと噛んだところを舐めて、獰猛に笑う。
あまりの色気に泣きそうになって、慌ててキサちゃんに抱きついた。

逞しい腕で俺を抱き込んで、また声をあげて笑って。
掠れた声で口ずさむのは、キサちゃんと出会ったときに作った歌。
『だからどうしたっていうんだ』
そう強く抗う歌詞なのに、囁くような優しい声で、甘いあまいリフレイン。


―――ああ、こんなの、反則だ。

無理って言ったばっかりなのに、はやくも頷かされそうだ。
だいたい、キサちゃんに本気で掛かられたら、俺なんてひとたまりもない。
ただでさえ、キサちゃんの何気ない行動に翻弄されてるのに。
初めて会ったときのあの一瞬で、心なんてとうに奪われてるのに。

甘いあまいリフレインを耳にとかして、それにそっと声を絡める。



潤む瞳に想いを篭めて笑いかけたら、とろけるように笑ってくれた。







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