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すべてを 〚早苗・葵〛
しおりを挟むようやく葵を手に入れて、一週間とすこし。
手に入れたことで少しはこの恋情も収まるかと思えば、そんなことはなかった。
まずはじめに、茜。
今までも散々苦労させられたあいつは、やり方を変えることにしたらしい。
「アンタみたいな腹黒陰険野郎、すぐに嫌われるに決まってる。初戦は負けたけど、最後に葵が帰ってくるのは俺のところだ。―――血は水よりも濃いからな?」
にやりと不敵に笑った宣戦布告。
………本当に似てない兄弟だ。葵はあんなにかわいいのに。
けれど弟ならではの気安さで葵に接するし、葵も少し嬉しそうにしている。
―――おもしろくない。
次に、志摩。
さっさと葵の友達の座を勝ち取り、ふたりでよく本の話をしている。
何故か6人で帰るようになった帰り道。
「月が綺麗だね」と葵に言ったら、なぜか葵も志摩も真っ赤になった。
「漱石かよ………!」って言った志摩に首を傾げれば、葵がへなへなと崩れ落ちて。
「天然かよタチわりー!葵どんまい!」なんて慰める志摩に嫉妬した。
自分でも狭量だとは思う。
でも、ふたりにしか分からない会話をされると、絆を見せられるようで焦る。
思い出の本のシーンについて話してたとき、志摩が切なくも愛しげな瞳で葵を見つめるから心臓がきゅうっと締め付けられたりもした。
俺が妬くたびに志摩は「もうふつーの友達だって」と笑うけど、完全に想いを整理できていないことくらい、見ていればわかる。
―――志摩に勝てるとこなんて、ひとつもない。
フェアで、明るくて、本当にお人好しで。
俺が葵なら、間違いなく俺じゃなくて志摩を選ぶだろう。
いちばんたちが悪いのは、葵だ。
憂いが取れて、明るく笑うようになってから一気に人気が増した。
もともと可愛いけれどどこか地味な印象だったのに、花開くように目を惹くようになって。
でかい男たちの中にいるせいか、葵はとにかく小さくて華奢に見える。
あの“芹沢茜”の双子の兄というのも、注目に拍車をかけた。
茜ほど華やかではないけれど、蒲公英みたいな楚々とした可愛らしさに本気で想いを寄せる連中がかなり多い。
―――もちろん、このときばかりは茜とも協力して敵を蹴散らすわけだけど。
これ以上敵が増えてたまるか、という俺の気持ちなんて全く気づかずに、葵はふわふわと微笑んでいる。
その葵は、いま、俺の腕の中。
恋人同士になったわけだから少しは葵の無防備も治るかと思ったらむしろ酷くなった。
家に帰ってくると、まずくっついてくる。
玄関先でぎゅううっと胸にしがみついてそのまま数分。
しばらくしてやっと離れると恥ずかしそうに頬を染めながらも嬉しそうに笑う。
その後も、今みたいにふいに抱きついてくる。
ごはんを食べたあとだとか。お風呂に入る前だとか。
―――少しも離れたくないって、言うみたいに。
かといって、ハグ以上のことは恥ずかしくて仕方ないらしい。キスだって未だに真っ赤になる。
本当にうぶだ。
―――でも、もう、待てない。
傷痕は、昨日きれいに消えた。
恥ずかしそうに見せてきた葵は、ちゃんと俺の言葉を覚えている。
「あー、あと首の後ろにちょっとだけ。………明日になったら、たぶん消えるね。」
本当はそのまま押し倒したかったけど、昨日はまだ木曜日。
葵は真面目だからあんまり学校を休みたがらないし、かといって手加減できるはずもないから1日だけは待つことにした。
「葵。―――傷、見せて?」
ふたりともお風呂あがり。
俺の部屋にきて、ほこほこした体のまま抱きついてきた葵に囁やけば、瞬時に耳が赤くなった。
どういう意味かちゃんとわかっているんだろう。
こく、と頷いた葵が震える手でパジャマの釦を外していく。
白くすべらかな肌に、色づくピンクの先端にむしゃぶりつきたい。
だけど、まだ、この光景を見ていたい。
恥ずかしげに目を伏せながら、ためらいがちに脱いでいく姿を。
「―――本当に、いい?俺に、ぜんぶ、くれる?」
NOと言われても止まれるかはわからないが、無理強いはしたくない。
葵自身が望んで、俺に抱かれてほしい。
こくりとひとつ頷いた葵が、うるんで艶めく大きな瞳で、じっと見つめてきた。
―――ぜんぶ、たべて。たくさん、つけて。
緊張に掠れたささやき声に、
すこし首を傾げてむき出しにされた首筋に、
理性のカケラも残らなかった。
✢
無垢な身体はひどく敏感だ。
キスをして舌を絡ませると応えながらも身を震わす。
首筋にしるしをつけ、そこを舐り、鎖骨に歯を立てると熱い吐息を漏らす。
ちゅうっと乳首を吸い上げると、かわいい悲鳴が耳をくすぐった。
どこもかしこも細く小さい葵は、男の象徴すらかわいらしい。
そこも思う存分かわいがりたいけど、それはまた今度。
最初からイカせすぎて最後まで出来なかったら意味がない。
ちゅっと先端にキスだけ落として、そっと脚を開かせた。
―――ここを使うことも、ちゃんと知ってるみたいだ。
真っ赤な顔で、うるんだ瞳で、だけど混乱はしていない。
ローションをあたためてそこに触れれば、やはり拒絶はない。
きっと事前に洗浄もしていたのだろう。清潔なせっけんの香り。
きつくて、せまい。
ここに、はやく。
はやく、ぜんぶ、俺のものに。
「―――っ、ゆう、き。おれ、も……」
ようやく、二本。
前立腺を探しながらくにくにと蕾を拡げていたら、そっと葵が起き上がった。
熱にうるんだ瞳で、真っ赤な顔でそっと手を伸ばし、俺の服に手をかけて。
上着を脱がし、下履きに手をかけ、………慄いたようにそろそろと屹立を撫でる姿にぞくぞくと快感がはしる。
細い指も、
華奢な体も、
焦がれる視線も、
―――ぜんぶ、俺のもの。
「葵。ちゃんと、脱がせて?」
膝立ちになりながら、葵のナカの指を増やす。
三本。
きつきつなここはまだ俺のものを受け入れられない。
感触を確かめるように内壁をまさぐっていたら、びくんっと葵の体が跳ねた。
「………ぇ、…………?」
ああ、わけがわかっていない顔。
そんな顔、すごくそそる。
座り込んで葵を呼べば、俺の指を咥え込んだまま膝の上にまたがる。
俺の屹立と葵のそれが触れ合って、びくんと躰を震わせて。
細い体を抱き込んで深く深く口付ける。
―――キスだけでとろけちゃって、かーわいい。
うるんだ瞳が至近距離であまくとろけて、もっともっとと俺を誘う。
舌を絡ませながらさっき見つけた弱いところをこすり上げれば、声にならない悲鳴があがった。
ぐりぐりと前を刺激しながら攻め立てて、逃げようとする腰をつかまえる。
こ、ら、と叱るように引っ掻けば、腹に熱い飛沫が掛かった。
―――ほんとうに、敏感だ。
まだきついかもしれないけど、もう待てない。
混乱に泣き出した葵をキスでなだめながら、手早く屹立にローションをまとわせる。
指を引き抜いて、そのまま先端をあてがって。
混乱に乗じて蕾を散らした。
―――こんなときも、声をこらえるのか。
狭いナカが、異物を押し出そうと収縮する。
俺でもキツいのに、葵の衝撃はどれくらいか。
震える体に、きつく縋り付く腕にそれを推し量るけど、声のひとつもあげはしない。
―――俺は、それも、欲しいのに。
「あおい。啼いて?」
ごりごりとナカを擦りながら耳に噛み付いて。
ひぁ、なんていうかわいい悲鳴に煽られるまま口付ける。
細い体。華奢な腰。
とても同じ男とは思えない繊弱な躰を腕の中に閉じ込めて。
ようやくすべてをおさめたら、葵がそっと擦り寄ってきた。
―――ようやく、手に入れた。
「あおい。好きだよ。」
そっとくちびるにキスを落とせば、葵がとろけるように笑った。
✢✢✢
傷痕が薄くなってきたころから、覚悟はしていた。
していたんだけど、―――ここまでなんて思ってなかった。
はじめてなのに、足腰立たなくなるまでえっちするとか。
「―――大丈夫?」
だいじょうぶ、と返そうとした声ががらがらで、違う人の声みたい。
昨日たくさん喘いだから、と思ってかぁぁっと顔に血がのぼる。
―――あおい。啼いて?
そう言われたのは繋がったばかりのころ。
そうは言われても恥ずかしくて、たまに悲鳴はあげつつも頑張って我慢してたら実力行使することに決めたらしい。
ナカにあるびりびりするところをいじめながら前を刺激して、いやらしい声で囁いて。
―――はじめてなのに、きもちいーの?
―――はは、やらしーかお。もっとほしいの?
刺激が強すぎて泣き出したら、もっともっといじめられて。
色々と聞かれることに譫言のように答えてたのは………きっと夢だ、と思いたい。
「すごく可愛かったよ。お望み通り、これから毎日してあげるね。」
―――きもちいーね、これ、すき?
ぁっ、あっ、、……すきっ、すきぃっ………!
―――そんなに好き?じゃあ毎日してもいい?奥こんこんしてもいい?
んっ、ぅんっ、………っはぁっ…、
………夢であって欲しかった…!!
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「―――すき。」
ちゅっとほっぺたに口付けたら、侑生が声をあげて笑った。
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