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第3章

閑話 高校生たちの変化

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 ソラ視点


 異世界にやってきてしばらくが経ち、私たち高校生勇者にも色々な変化がおとずれることとなる。


 まず、メイドや執事たちとイチャイチャとしている同級生が増えた。


 城の敷地内に用意された専用の居住区で生活する私たちには、勇者が雑事に追われないようにと帝国からメイドや執事があてがわれている。


 女の子には男性の執事、男の子には女性のメイド。必ず異性が担当につく。それも、一人一人に専属としてだ。


 女の子の日常生活サポートを担当する執事は、全員イケメン執事。男の子の日常生活をサポートするメイドは、全員かわいくてエッチな体をしている。


 しかも彼らは、何でも言うことを聞いてくれるのだ。もちろん、それにはエッチな命令も含まれている。


 その結果、思春期にさしかかり性的なことに強く興味を持ち始めていた多くの仲間たちが、メイドや執事と肉体関係を持ってしまった。


 そしてそんな状況がしばらく続くと、高校生勇者の中には他人を見下したり粗暴な態度を取り始める人間が多く現れることになる。


 異世界に来ていきなり強力な力を手に入れ、さらには何でも言うことを聞いてくれる魅力的な異性がずっと側で世話をしてくれるという状況に流されてしまう人は多かった。


 何でも言うことを聞いてくれる異性に身の回りの世話をしてもらえるという状況が続いたことで、ついには自分は特別な存在で何でも他人に命令できると考える人まで出始める。これからさらに、そういう人が増えていくだろう。


 まだ若く、自制心の育ちきっていない思春期の私たちが城の中で甘やかされた結果、心をいいように変えられていた。帝国が私たちを、都合よく利用しようとしているのがわかる光景だ。やはり、エルドス帝国は信用できない。


 でも、こういったことが起きてしまうのではないかと危惧していた退魔忍者の私たちは、しっかりと専属の執事さんを断っている。だから私たちの中には、この状況に巻き込まれたものはいなかった。


 でも、私たちのように力に溺れたくないと考える人は少数派だ。城の中で思う存分に性的な行為を楽しんでいない私たちを、周りのみんなは馬鹿にしていた。


 そしてみんなだけではなく、実は私たちにも新たに起きた変化がある。とある貴族と、知り合いになったのだ。というか私に、妙なできことが起きていた。


「ソラ、俺と結婚してくれないか」


「いいや、ソラ。君が結婚するのは僕とだ」


 帝国の第六皇子であるグレオールと、公爵家三男のロイが、私たちとよく行動をともにするようになっていた。彼らは平民を思いっきり見下している他の帝国貴族と違い、私たちに親しみを取って接してくれている。まるで、対等な友達のようだ。


 そして彼らはなぜか私に、いつも結婚を申し込んでくる。彼らいわく、自由な私に惹かれたらしい。どうしてこうなった。


 グレオールは金色の髪に青い瞳をした、オラオラ系のイケメン男子。そしてロイは、濃い茶髪に黄色い瞳をした知的なクール系イケメン男子だ。二人とも、その美貌から帝都中の女性にアイドルとして扱われている。


 そんな彼らが、なぜ私にいつもくっついてくるのかわからない。


「ソラにもようやく、春がきたわね!」


「おめでとう!ソラ!」


 グレオールとロイの態度を見て、アヤノとシズネが無邪気にそんなことを言っている。彼女たちは、楽しそうに恋バナをしていた。


 でも、いつもニコニコと笑っている天然系ホワホワ娘のルナだけが、なぜか真剣な顔で私に注意を促してくる。常に笑顔を絶やさないルナが真顔になるくらいに、彼女は私を心配しているようだ。


「お姉ちゃん。絶対に、あの人たちと二人っきりになっちゃだめだよ」


「ふふふ。わかったわ。ルナ!」


 どうやらお姉ちゃんっ子のルナは、彼らに嫉妬しているみたい。彼女は、私が誰かに取られてしまうと不安なのかも。めちゃくちゃに、かわいい妹だ。


 でも大丈夫。まだまだ私には、恋愛しようって気がないから。もうしばらく、ルナと一緒にいられるよ。


 それに彼らは私と友だちになりたいということを口実にして、他のみんなに近づきたいだけなのかもしれない。その被害に私が、何度あってきたと思ってるのよ!


 私に馴れ馴れしく話しかけてきた途端に、ルナやアヤノを紹介してくれって言い出す男子がどれだけいたことか……。うがあああああ!


「ソラ。何か困ったことがあったら、何でも俺に言うんだぞ」


「いいや、ソラ。君のことは僕が絶対に守るよ」


 気持ちを切り替えて、今の私たちがしていることを説明しよう。


 今日の私たちは身分を隠したグレオールとロイを引き連れて、帝都内の孤児院をおとずれていた。理由は、子どもたちと遊ぶためだ。私たちはモンスター退治が休みの日になると、たまに孤児院に遊びにきている。


 平民を思いっきり見下している帝国貴族と違って、グレオールとロイは孤児院の子どもたちとも楽しそうに過ごしてくれる。むしろ熱心に、二人は私たちが孤児院をおとずれることに協力してくれたりもしていた。彼らはどうやら、他の帝国貴族とは違うようだ。


 帝国貴族にも、こういった人たちがいるんだと安心させられるできごとでもある。何か本当に困ったときには、彼らに相談してみるのもいいかもしれない。


「ううう……ケーキが怖い!ケーキが怖い!」


 パクパクパク!


 そして私たちは、みんなで練習した演劇を披露した。今日の演目は古めだけど、孤児院の子どもたちには大受けだった。


 こうして私たちの、たまの休日がのんびりと進んでいく。


「楽しかったわね!」


「ええ!」


 孤児院からの帰り道、私はアヤノと笑い合う。帝国からの依頼でモンスターを退治するために動き回っている私たちの、貴重なやさしい気持ちになれる休日だ。


「たまにはこういう日も、いいものだな」


「まったくだ」


 グレオールとロイの二人も、私たちに賛同してくれている。なんだか二人との距離が、今日で少しだけ縮まったような気がした。


「さて、城に帰りましょうか!」


 そうして私たちは、夕焼けの街並みの中を城へと帰る。異世界での新しい人間関係が、私たちにも生まれていた。


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