87 / 155
新入生歓迎の野外演習
しおりを挟む「ヴィヴィ先輩!すごいです!」
「君たちも頑張れば、これくらいできるようになる」
俺の目の前では今、身長150cmくらいの小柄な体に黒いローブを着て黒いとんがりの魔女帽子をかぶったヴィヴィ先輩が魔法の杖を右手に掲げて佇んでいる。俺の言葉にふんすと息を吐くようにして、ヴィヴィ先輩は自慢気に俺への励ましの言葉を送ってくれていた
ヴィヴィ先輩は黒色のショートカットに青い瞳、クールなジト目をしたおっぱいがBカップくらいの小柄な女の子だ。現在の俺は希望者のみが参加できる、近隣の森に一泊二日で行う新入生歓迎の野外演習に参加をしていた
この学園ではメンターのような制度を採用しており、こうして野外演習に参加した一年生には四年生の補佐がつくことになる。この野外演習でお互いに親睦を深めることによって、新入生は学園生活での悩みをこれからその四年生の先輩に聞いてもらうことができるようになるのだ
俺とユキノ、リンネの三人グループにはヴィヴィ先輩が補佐につくこととなった。つまり俺はこれからの学園生活において、困ったことがあったらメンターであるヴィヴィ先輩に何でも相談ができるというわけだ
俺はヴィヴィ先輩に魔法を見てみたいとお願いし、彼女の魔法を見せてもらうことで現在に至る
「さて、薪を拾いに行きましょうか」
時刻は夕方になり、炊事をするための薪を探しに行くことになる。材料の仕込みをリンネとユキノがすることになり、俺とヴィヴィ先輩が薪を探しに森の中に入った
俺たちが今いる場所は街の近くにある湖の広場だ。ここには野営をする用の開けた広場があり、ここを学園は野外演習の実地場所としていた。広場の周辺は学園に雇われた冒険者が警備をしており、生徒への安全性にも配慮されている
そしてこの湖の広場には宿泊用のコテージがいくつか存在し、少し高いお金を払えばテントではなくコテージに泊まることができる。当然、俺はコテージに泊まるつもりだ
「へへ!お前ら、おとなしくしな!」
俺がそんなことを考えながらヴィヴィ先輩と湖の近くにある森を散策していると、汚らしいカッコをした野盗が刃物をちら近せながら俺たちの目の前に飛び出してくる
こいつらはラグーンに雇われた悪人だ。俺にマリアーナを奪われてしまったラグーンは功を焦り、ヴィヴィ先輩を野外演習中に誘拐して無理やり奴隷にしてしまおうという計画を立てていた
ラグーンはついでに俺のことも始末しようとも考えたようだ。都合のいいことにターゲットが人気のない森の中で二人っきりになったことで、ラグーンに雇われた悪人が動き始めることになった
「ユーリ。君は逃げて先生を呼んできて……」
先輩であるヴィヴィが、俺を逃がすために野盗に向かって一歩前に出る。彼女の肩は恐怖に震えていた。無理もない。後輩を逃がすために、下劣な悪党にだだ一人立ち向かわなくてはならないのだ
「ヴィヴィ先輩!危ない!」
そんな彼女に躊躇なく、野盗は刃物を振り下ろしてくる。傷つけるなとラグーンに命令をされているためただの威嚇行為なのだが、俺はこの隙に乗じてヴィヴィ先輩に対する自分の好感度アップをさせてもらうことにした
「先輩……。大丈夫ですか?」
「ユーリ。肩から血が……」
俺がヴィヴィ先輩をかばって彼女の体を押しのけると、代わりに剣を受けることになった俺の肩から血がポタポタと垂れ落ちてくる。まあ、これは薬液創造のスキルで作った血糊であって、本当はケガなんてしていないのだがな。俺は肩が痛むようなふりをして、血が垂れ落ち続けているように見える左肩を右手で抑え込む
「おい!何をしている!」
「ちっ!失敗か!」
そしてちょうどタイミングがいいことに、警備のために周辺を巡回していた冒険者が野盗に襲われている俺たちを見つけてくれることになった
剣を抜き、怒りの形相で駆けつけてくる冒険者を見た野盗は悔しそうにつぶやくとその場を後にしていく。ここは一旦引いて、またチャンスを伺うつもりなのだろう。まあ、ユキノとリンネに後を付けさせているから、彼らに次のチャンスなどないがな
「君たち、大丈夫かい?」
こうして、俺たちは冒険者に連れられて湖畔へと戻ることになる。湖の広場へと戻る道中の俺の隣には、心配そうな顔をしたヴィヴィ先輩がぴったりと離れずに寄り添ってくれるのであった
12
お気に入りに追加
2,128
あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?
夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。
気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。
落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。
彼らはこの世界の神。
キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。
ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。
「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜
夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。
不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。
その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。
彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。
異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!?
*小説家になろうでも公開しております。
女神様の使い、5歳からやってます
めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。
「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」
女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに?
優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕!
基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。
戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる