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新入生歓迎の野外演習
しおりを挟む「ヴィヴィ先輩!すごいです!」
「君たちも頑張れば、これくらいできるようになる」
俺の目の前では今、身長150cmくらいの小柄な体に黒いローブを着て黒いとんがりの魔女帽子をかぶったヴィヴィ先輩が魔法の杖を右手に掲げて佇んでいる。俺の言葉にふんすと息を吐くようにして、ヴィヴィ先輩は自慢気に俺への励ましの言葉を送ってくれていた
ヴィヴィ先輩は黒色のショートカットに青い瞳、クールなジト目をしたおっぱいがBカップくらいの小柄な女の子だ。現在の俺は希望者のみが参加できる、近隣の森に一泊二日で行う新入生歓迎の野外演習に参加をしていた
この学園ではメンターのような制度を採用しており、こうして野外演習に参加した一年生には四年生の補佐がつくことになる。この野外演習でお互いに親睦を深めることによって、新入生は学園生活での悩みをこれからその四年生の先輩に聞いてもらうことができるようになるのだ
俺とユキノ、リンネの三人グループにはヴィヴィ先輩が補佐につくこととなった。つまり俺はこれからの学園生活において、困ったことがあったらメンターであるヴィヴィ先輩に何でも相談ができるというわけだ
俺はヴィヴィ先輩に魔法を見てみたいとお願いし、彼女の魔法を見せてもらうことで現在に至る
「さて、薪を拾いに行きましょうか」
時刻は夕方になり、炊事をするための薪を探しに行くことになる。材料の仕込みをリンネとユキノがすることになり、俺とヴィヴィ先輩が薪を探しに森の中に入った
俺たちが今いる場所は街の近くにある湖の広場だ。ここには野営をする用の開けた広場があり、ここを学園は野外演習の実地場所としていた。広場の周辺は学園に雇われた冒険者が警備をしており、生徒への安全性にも配慮されている
そしてこの湖の広場には宿泊用のコテージがいくつか存在し、少し高いお金を払えばテントではなくコテージに泊まることができる。当然、俺はコテージに泊まるつもりだ
「へへ!お前ら、おとなしくしな!」
俺がそんなことを考えながらヴィヴィ先輩と湖の近くにある森を散策していると、汚らしいカッコをした野盗が刃物をちら近せながら俺たちの目の前に飛び出してくる
こいつらはラグーンに雇われた悪人だ。俺にマリアーナを奪われてしまったラグーンは功を焦り、ヴィヴィ先輩を野外演習中に誘拐して無理やり奴隷にしてしまおうという計画を立てていた
ラグーンはついでに俺のことも始末しようとも考えたようだ。都合のいいことにターゲットが人気のない森の中で二人っきりになったことで、ラグーンに雇われた悪人が動き始めることになった
「ユーリ。君は逃げて先生を呼んできて……」
先輩であるヴィヴィが、俺を逃がすために野盗に向かって一歩前に出る。彼女の肩は恐怖に震えていた。無理もない。後輩を逃がすために、下劣な悪党にだだ一人立ち向かわなくてはならないのだ
「ヴィヴィ先輩!危ない!」
そんな彼女に躊躇なく、野盗は刃物を振り下ろしてくる。傷つけるなとラグーンに命令をされているためただの威嚇行為なのだが、俺はこの隙に乗じてヴィヴィ先輩に対する自分の好感度アップをさせてもらうことにした
「先輩……。大丈夫ですか?」
「ユーリ。肩から血が……」
俺がヴィヴィ先輩をかばって彼女の体を押しのけると、代わりに剣を受けることになった俺の肩から血がポタポタと垂れ落ちてくる。まあ、これは薬液創造のスキルで作った血糊であって、本当はケガなんてしていないのだがな。俺は肩が痛むようなふりをして、血が垂れ落ち続けているように見える左肩を右手で抑え込む
「おい!何をしている!」
「ちっ!失敗か!」
そしてちょうどタイミングがいいことに、警備のために周辺を巡回していた冒険者が野盗に襲われている俺たちを見つけてくれることになった
剣を抜き、怒りの形相で駆けつけてくる冒険者を見た野盗は悔しそうにつぶやくとその場を後にしていく。ここは一旦引いて、またチャンスを伺うつもりなのだろう。まあ、ユキノとリンネに後を付けさせているから、彼らに次のチャンスなどないがな
「君たち、大丈夫かい?」
こうして、俺たちは冒険者に連れられて湖畔へと戻ることになる。湖の広場へと戻る道中の俺の隣には、心配そうな顔をしたヴィヴィ先輩がぴったりと離れずに寄り添ってくれるのであった
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