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とある日の午後
しおりを挟む「さて、今日は何をしようか」
俺がエーデンリッツ学園に入学してから一週間が経つ。始めのうちは俺も一応授業に出ていたのだが、やはり高等学園といっても新入生に対しては魔術全般の基礎中の基礎しか授業が行われていなかったため、暇を持て余した俺はサボタージュをすることになった。いわゆる自主休講というやつだ
「君たち、新入生だよね?」
ぷらぷらとのんびりユキノやリンネと並んで学園内を散歩しながら今日は何をしようか考えていると、俺達に声をかけてくる男がいる。キラキラとした胡散臭いイケメンスマイルで俺たちに声をかけてくるのはラグーンだ。ラグーンはまるで俺のことなど端から存在しないかのように振る舞いながら、俺と一緒に歩いていたリンネとユキノに困ったことがあったら助けになるよとやさしく囁いている
「そんな冴えない男より、僕のほうがずっと君たちをずっと満足させることができると思うんだけどな~」
そして取り付く島もなくリンネとユキノにお誘いを断られてしまったラグーンが苦し紛れに暴言を吐いてきた。その言葉を聞いたリンネとユキノから一気にぶわりと殺気が漏れ始める。しかし学園内での殺生は基本的に禁止と俺が命令をしているため彼女たちが殺気を漏らしたのは一瞬だけで、二人は自重に努めることとなった
「ラグーン先輩は、どうやら噂で聞くのとは全然違う人みたいですね」
「お前みたいな冴えない奴にまともな態度を取る必要もないだろ?それに、このことを誰かに言っても誰もお前のことなんて信じないよ。お前がみんなの仲間はずれにされるのが落ちさ」
どうにも散歩をしていてたまたま俺たちが人目のない所にいたためか、ラグーンは本来の横暴な態度で俺たちに応対することに決めたらしい。たしかこいつの所属する組織は「ガーゴイルの爪」という裏組織だっけか?よし。これからの暇つぶしの一つにガーゴイルの爪いじめを追加しておこう。俺は心の中にあるやることリストに一つ予定を付け加えることとした
ヘラヘラと笑っているラグーンを放っておいて俺たちはその場を後にする。俺は男と関わる時間を極力減らしたいんだ。男と喧嘩する時間があるなら俺は誰かとセックスをしていたい。これ以上は時間の無駄と判断した
「ご主人さまぁ♡……なんで何も言い返さないんですかぁ♡……っ♡……っ♡」
「――あっ♡――あっ♡――あっ♡……ご主人さま♡……そこぉ♡」
クチュ♡クチュ♡
ラグーンを滅したいと憤慨するリンネとユキノのおまんこに人目の無い場所で手マンをしながら、俺は彼女たちの怒りを沈めていく。ラグーンみたいな奴はもう少し泳がせてから遊ぶほうが楽しいことが起きるのだ。俺の直感がそう言っている
一回戦を終えた俺達が再び校内を散策していると、今度はソフィアと出くわした。ちょうど都合のいいことに、彼女は一人のようだ
「ソフィア先輩……相談したいことがあるんです……」
俺はラグーンとの出来事をソフィアに伝えることで、一騒動を起こすことに決めた
……。
……。
……。
「……そう。ラグーンがごめんなさいね。彼には私からきちんと言っておくから。それと、お詫びってこんなことでいいの?」
俺の話を聞いたソフィアが申し訳無さそうに謝罪をしてくる。俺から聞いたラグーンの態度を彼女が疑いもしないのは、ソフィアが過去に何度もこういったトラブルに遭遇しているからだろう。俺は何かお詫びをすると言う彼女に生徒会室を見学したい旨を伝え、素知らぬ顔で生徒会室見学にしけこむこととした
「一度、憧れの生徒会を見学してみたかったんです。ソフィア先輩。ありがとうございます。……へー!これが生徒会の資料ですか!」
生徒会室内を散策する俺をソフィアは何も止めない。どうやら生徒会予算の横領に彼女は関わっていはいないようだ。むしろ何も知らないのだろう。現にこうして俺が改ざんされた会計書を興味深そうにペラペラとめくっているのに、彼女は微笑ましいものを見るかのように笑顔でいるだけなのだから
「あれ?ソフィア先輩。会計書のここの部分、おかしくないですか?」
俺が会計書の改ざんを指摘すると最初は怪訝な顔をしていたソフィアだが、本当に会計書が改ざんされていることを知った瞬間から彼女の顔色が一気に悪くなる。その事実にものすごくショックを受けた様子の彼女は、俺に向かって真剣な顔をしながら罪を償うと伝えてきた
「ソフィア先輩。流石にこれは見逃せませんよ」
「……生徒会のトップとしてきちんと罪を償うわ」
どうやらソフィアはこのちんけな横領の罪を償うつもりのようだ。彼女自身は何もしていないが、生徒会のトップとしての責任があるのだろう。そして彼女には生徒会会計のラグーンに対しても思うところがあるようだ。ラグーンを道ずれにするつもりかな?
しかしそれでは俺にとって何も面白くない。だから俺は少し状況が俺に対して有利に動くよう、ソフィアの責任感を言葉で刺激してみることにした
「でも、このことが露見すると、生徒会の他のメンバーやソフィア先輩がいつも仲良くしているメンバーも謂れのない誹りを受けることになりますよ?」
「そんな!彼女たちは何も関係ないじゃない!」
このことには関係のない自分以外の人間にも不幸がおとずれることを示唆すると、案の定ソフィアは血相を変えて俺に話しかけてくる。どうやらこの方向で行けば彼女の心を堕とす切っ掛けが掴めそうだ
「でも、横領をしていた人たちと仲良くしていた。それだけで先輩と仲の良かった人たちを横領の協力者やおこぼれに預かっていた者だと邪推をする人はたくさんいますよ。ソフィア先輩はいつも一緒にいるヴィヴィさんやニコルさん、マリアーナさんの人生を壊したいですか?」
「そんなの嫌!」
うん。しっかりとソフィアは困ってくれたようだ。後はこの困った状況から抜け出すための甘い糸を垂らしてあげれば彼女は乗ってくるだろう。この手の人種は自分以外の人間に不幸が及ぶことを説明すると、必死にそれを守ろうとするからこの方向で責めると都合がいい
「ソフィア先輩が俺の言うことを聞いてくれるなら、このことは内緒にしてあげますよ」
「…………。少し考えさせて……」
そしてこれからの状況を、俺はこの不正を黙認するためにはソフィアが俺の言うことを聞かなければいけないという方向に持っていく。これで彼女と遊ぶことができるようになったな
「では、証拠としてこの資料は俺が一時的に預かっておきます。それでいいですね?」
「……はい」
とりあえず今日のところはこんなもんでいいだろう。ソフィアには一日をかけて存分に考えていただきたい。それに実は俺たちの会話をこっそり覗き見している者もいて、その人物がこれからどう動くかも楽しみだったりする。退屈だった学園生活も中々面白くなってきたな
「では、今日のところはこれで失礼します」
「変なことに巻き込んでしまってごめんなさいね……」
俺に対して生徒会会長として謝罪をするソフィアを背に、俺は生徒会室を後にすることにする。さて、しばらくはこのまま成り行き待ちだな
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