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決戦!ダンジョンアリーナ
しおりを挟むユキノ視点
私たちがユーリさんに頼まれてすることになった仕事は、宿屋内の清掃業務だった。あまり客のいないダンジョン前の宿屋の掃除は、室内の整理も含めて午前中にはすべて終わってしまう。そこからは自由時間だ。ユーリさんのはからいで、私たちには個室も用意してもらえた。こんなに楽な仕事でお金をもらっていいのか不安だけど、雇用主がいいって言うならまあいっか
「ユーリさん。お疲れさまです。あれ?リンネ先輩。そんなところで何をしているんですか?」
「ちょ、ちょっと♡……カウンターの内側で掃除をなぁ♡……っ♡……っ♡」
私が今日の仕事を終えて受付のカウンターに立つユーリさんに声をかけると、メイド服を着たリンネ先輩がカウンターの裏側からひょっこりと顔を出す。黒いロングスカートの白いメイド服が、ここの宿屋の制服だ。ちなみに私も業務中はきちんとこのメイド服を着用している
どうやら先輩はカウンターの内側の掃除をしていたようだ。先輩は凝り性なところがあるからなぁ。リンネ先輩は今日も、顔が火照って赤くなるまで熱心に仕事をしている様子が伺えた
「先輩。私は先に上がりますね!」
「~~っ♡~~っ♡……ああっ♡……っ♡……っ♡……私もぉ♡……この仕事が終わったらっ♡……すぐにイクからぁ♡……っ♡……っ♡……っ♡」
カウンターの内側の掃除を続けるという先輩を残し、私は先に今日の仕事を終えることにする。宿屋内の清掃を一人で任された私と違って、リンネ先輩はユーリさんのサポート役というか、つきっきりで何かを手伝っている事が多かった。まぁ、リンネ先輩は有能で真面目な女性だから、ユーリさんが重宝するのも分からなくもないけど
(――っ♡――っ♡……ユーリ殿のせーし♡……っ♡……っ♡~~っ♡~~っ♡~~っ♡……っ♡……っ♡♡♡……中に出されちゃったぁっ♡~~っ♡~~っ♡……我慢してたのにぃ♡……っ♡……らめらぁ♡……これっ♡……っ♡……イカされるぅ♡♡♡……っ♡……っ♡……っ♡)
何やらカウンターの内側から先輩の声が聞こえたような気がするけど、きっと気のせいだろう。リンネ先輩はいつものクールな顔で、こちらを見つめているだけだった。それよりも私は翌日に控えたダンジョン探索のために、体をゆっくりと休めることにする
……。
……。
……。
「リンネ先輩、遅いなぁ」
翌日になり、黒い退魔服に着替えた私はダンジョン探索の前に先輩と食堂で待ち合わせをしていた。先輩と一緒に朝食を取るためだ。リンネ先輩がこういった待ち合わせに遅刻してきたことなんて一度もないのに、今日は先輩の人生で初めての遅刻になった。慣れない土地にいることで、リンネ先輩の体に疲れが溜まっているのだろうか
「すまない。待たせてしまった」
少し遅れて、青い退魔服に着替えたリンネ先輩が息を切らしながら私の座る食堂のテーブルにやってくる。私はそれを気にすることなく、リンネ先輩と食事を取り始めることにした
「リンネ先輩。口元に白い何かの跡が付いてますよ」
「な、な、な、な、なんだとぉ!」
私は食事を取るリンネ先輩の口元に、何か白い跡みたいなものが付いていることに気づく。きれい好きの先輩にしては珍しい。私にそのことを指摘されると、先輩はハンカチを使って急ぎそれを拭き取っていた
「い、いったい、何だったんだろうなぁ。……ははっ」
それにしても驚き過ぎではあるが。何でも完璧にこなそうとする先輩は、初めて私に見せた自分の失態が恥ずかしかったのかもしれない。ダンジョンのトラップに引っかかってからの先輩は少し抜けているところがあるが、そのときのショックをまだ引きずっているのだろうか
……。
……。
……。
「先輩。ここ、ヤバイです」
「ああ。」
そうした日常を送りながらダンジョン探索を続けたある日、私たちは最初のボスフロアへとたどり着いた。コロシアムのような無人の会場に、ぽつんとした決戦場がある階層だ。そしてアリーナには、ダンジョンのボスとして人影が一人佇んでいる。その人物の実力はかなりの高レベルだということが、震える空気で簡単に分かった
そして私たちがダンジョンのボスのもとにたどり着くと、その人物の正体がユズハさんだということに気づく。彼女は一人旅に出たときと変わらぬ竜人族の民族衣装姿のまま、そこに佇んでいた。私はそんなユズハさんに声をかける
「ユズハさん!ダンジョンに取り込まれちゃったの!?」
「さあ。どうだろうね~」
昔とあいも変わらずのらりくらりとしているユズハさんが、笑いながら私と言葉を交わす。彼女の心は以前と変わっていない。それだけは分かった
「無理やりにでもユズハさんを里に連れ戻します。先輩!やりましょう!」
――ヒュン
私がユズハさんに対して戦闘態勢に入ると突然、リンネ先輩からの斬撃がユズハさんにではなく、何故か私に向かって放たれる。私が何とか先輩から受けた一撃をかわして体勢を立て直すと、リンネ先輩はユズハさんと並んで立ち、私に向かって剣を構えていた
「先輩!どうしちゃったの!?」
「すまない。ユキノ……」
驚き声をかける私に、青い退魔服姿の先輩が申し訳無さそうにうつむきながら対面をする。ユズハさんとリンネ先輩に何があったのだろうか。分からないけど、二人が今、私の敵になったということだけは分かる
「もういい!二人共、私が正気に戻してあげるんだからぁ!」
バチバチバチッ!
黒い退魔服姿の私は雷の魔術を発動させて、雷槌を全身にまといながら退魔のシノビの戦闘態勢に入る。私の雷を増幅して打ち出す特殊な形状をした短杖も二本、両手に取り出した。もう本気だ。私がユズハさんもリンネ先輩もぶっとばして、無理やり里まで連れて帰ることに決めた。詳しい事情はそれから聞けばいい
「私があなたたちの身も心も、性根からぜんぶ叩き直す!覚悟してよね!私があなたたちの体を、退魔のシノビとしてふさわしいものに調教し直してあげるんだからぁ!」
そうしてとあるダンジョンの無人アリーナにて私と、ユズハさんとリンネ先輩との戦闘が始まった
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