悪役令嬢に仕立て上げられまして…

5

　セシル王子とリディアの失脚により、王宮内でのカトリーナの評価は一変した。彼女の冷静な判断力と毅然とした態度は多くの貴族たちから称賛され、特に皇太子フェリクスの信頼を得たことが、カトリーナの立場をさらに強固なものにしていた。

「カトリーナ様、これまでのご苦労が報われましたね。」

　忠実な騎士レオナルドが微笑みながら言った。

　カトリーナは微笑んで頷きながら答えた。

「ええ、でもこれはまだ始まりに過ぎません。今後も気を引き締めていかなければ。」

　彼女は自分の勝利に酔いしれることなく、未来を見据えていた。貴族社会での戦いはこれからが本番だ。権力を得るための道は険しく、敵も少なくない。

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　ある日、カトリーナはフェリクス皇太子から招待を受け、彼の私的な集まりに参加することになった。集まったのは、国の中でも有力な貴族たちだった。彼らはフェリクスを中心に、新たな政治体制を模索していた。

　フェリクスはカトリーナに向かって言った。

「カトリーナ嬢、貴殿の知恵と勇気を今後も我々のために役立ててほしい。この国をより良くするため、共に力を合わせていこう。」

　その言葉に、カトリーナは深く頭を下げた。

「もちろんです、殿下。私もこの国の未来のため、できる限りのことを致します。」

　その場にいた貴族たちも、カトリーナの実力を認め、彼女を迎え入れた。しかし、そんな中で一人だけ、カトリーナに対して険しい視線を送る者がいた。それは、古くから王家に仕える有力な貴族家の息子、デリック・バーナードだった。

　デリックは冷ややかな声で言った。

「カトリーナ嬢、貴方の手腕がどれほどのものか、確かに見せてもらいました。しかし、今後はフェリクス殿下の側近としての責任が一層重くなります。失敗は許されませんよ。」

　その言葉には挑発的な意図が込められていたが、カトリーナは動じることなく答えた。

「その通りです。私もこれからは、より一層責任を感じております。失敗は決して許されませんから、万全の準備をして挑むつもりです。」

　デリックは微笑みを浮かべつつも、その目には不満の色が浮かんでいた。彼はカトリーナの台頭を快く思っていないのだろう。貴族社会においては、力を持つ者同士の暗黙の争いが絶えない。デリックのような者が、カトリーナの次なる障害となることは明らかだった。

　集まりが終わった後、フェリクスはカトリーナに個人的に話しかけた。

「デリックは少し厳しい男だが、実力は確かだ。彼との関係をうまく保つことが、今後の貴殿にとっても重要になるだろう。」

　カトリーナは頷きつつも、その言葉に少しの緊張を感じた。

「承知しております、殿下。彼との協力をどう進めるか、慎重に考えます。」

「貴殿ならばうまくやれるだろう。だが、常に用心することだ。権力を手に入れる者には、多くの敵が生まれるものだからな。」

　フェリクスは意味深な笑みを浮かべていた。

　その後、カトリーナはデリックと共にいくつかの貴族間の調整や政治的交渉に携わることになった。彼は表面上は協力的だったが、陰でカトリーナを試すかのような行動が目立った。カトリーナに不利な噂を流す者たちも現れ、彼女の立場を揺るがす試みが次々と起きた。

　しかし、カトリーナは決して屈することなく、冷静に状況を乗り切った。彼女の名誉を守り、権力争いに巻き込まれることなく、着実に影響力を広げていくために、彼女は計画を練り、着実に動いていた。

　彼女の背後には、常にレオナルドの存在があった。彼はカトリーナの忠実な騎士として、陰ながら彼女を支え、あらゆる危機から守っていた。

「レオナルド、いつもありがとう。あなたのおかげで、私はここまで来ることができました。」

　カトリーナは彼に感謝の言葉を述べた。

　レオナルドは淡々と答えた。

「これからも、私が貴女を守ります。どのような困難が訪れようとも、共に戦いましょう。」