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49. はやく俺の……
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「……あ、え…と、あの……ありがとう、ございます」
そんな風に率直に言われると照れてしまう。琴子は思わず下を向いてもじもじと手を擦り合わせた。顔が熱い。
「うん。だから、もう俺にしておきなさい」
鴻上は生真面目な顔でそう告げると、ズズッと自分の分のうどんを啜った。
「でもそれだと、こっちがダメなら、じゃあこっち……みたいな感じで、なんか調子よすぎじゃないですか、私」
鴻上のやさしくて強引な告白に身を委ねてしまえば琴子としては気もラクだ。でも……。
「真面目だなぁ、咲坂さんは」
箸を置いた鴻上が琴子の方に身体を向けて苦笑いを浮かべる。
「だけど、そういうトコがいいんだよな。信用できるから。仕事でもプライベートでも」
そう言って鴻上は笑った。今度は苦笑いではなく、清々しいほどの真っ当な笑顔だ。
その笑顔がまぶしすぎて、琴子は真正面から受け止めることができない。なんというか……こそばゆい。こそばゆくて仕方ない。
「も、もしかして逆玉狙ってます? うち、そんなにお金ないですよ? それとも、うちの父のコネ狙い?」
鴻上がそんな人間でないことはとっくにわかっているというのに、照れ隠しのためか、琴子の口が勝手にスベる。
案の定、さっきまで笑顔だった鴻上が眉間にシワを寄せ、思いっきり不満そうな顔になっているではないか。
「つくづく失礼なヤツだな。前にも言ったと思うけど、俺はそんなに出世したくないし、金にも困ってない。大金は身を滅ぼすからな、必要以上には持たないほうがいいんだ」
鴻上がまた力強く持論を展開する。
「はぁ。そうなんですか。じゃあ、なんで……」
「なぁ、なんで普通に『あぁ、このひと、自分に惚れてるんだな』って思わないんだよ」
ぐずぐずとはぐらかす琴子に対して、鴻上がついに決定的な言葉を口にする。
「惚れてる……んですか? 私に」
琴子は空になったうどんの丼に目を落としたまま、弱々しく尋ねた。
そんなことを言われたら、熱が上がってしまうじゃないか。
「実は俺にとって『サキちゃん』はいろいろと謎だった。正直、信用しきれない部分もあった。でも『咲坂さん』として改めて出会ってからそういう謎も解決したし、よくわからなくて空白だった部分も全部埋まったと思う。だからさ」
鴻上が琴子の後ろに回りこんで腰を下ろした。
背中に彼の体温を感じて、琴子の身体がますます熱を帯びてしまう。
「なぁ……琴子」
え? と思う間もなく、いきなり後ろから抱きしめられた。
「あっ……」
琴子がされるがまま、鴻上の腕のなかで硬直していると、鴻上が琴子の髪の毛を右側に寄せて流した。無防備に晒された左側の首筋をぺろりと舐められる。鴻上はそのまま、ちゅ、ちゅ、と首筋から肩へかけて温かな口づけを落としていく。
「あの、かちょ……う」
「休みの日まで『課長』は止めてくれ。嫌がる部下を無理やり手籠めにしてる気分になって、むしろ逆に興奮するから」
鴻上は冗談とも本気ともつかない発言をしながら、琴子の身体をまさぐっていく。気がつくと、いつのまにか鴻上の手のひらがやわやわと琴子の胸を揉みしだいていて、琴子は思わず声を上げた。
「ちょっ、……どこ触ってるんですか!?」
「え? ダメ?」
「ダメです」
そういえば、なぜかノーブラだ。誰が外したんだろう……って、鴻上に決まっている。もしや計画的犯行か。
「でも、サキちゃんのダメは、もっと……って意味だよな?」
鴻上はわざと吐息を漏らしながら琴子の耳元で囁くと、固くなりかけた琴子の胸の先っぽを弾いた。
「んぅ……!」
鴻上の指先が敏感なトコロをカリカリと刺激してくるもんだから、琴子の口から鼻から抜けるような声が漏れてしまう。このままでは流されてしまう。琴子は彼の手から逃れようと身をよじった。
すると鴻上が「逃がさない」とでも言うように乳首をぎゅっと摘んで強めの刺激を与えてくる。
「やぁ……ダメ、って言ってるのに……」
「嘘つくなよ、もう素直になればいいのに。そんで、はやく俺の……」
鴻上の右手が胸から離れて、こんどは琴子の太ももを撫ではじめた。すりすりと外側を撫でていたかと思うと、次第に内ももへと伸びてきて、脚の付け根の際どい部分をもったいつけたように掠めていく。左手は相変わらず乳首をいじめてくるし……。
いけない、これは本格的に始まる感じの触り方だ。
「んっ……ダメ、です……ダメ、いまは…まだ……」
琴子が熱に浮かされたように「ダメ、ダメ」と繰り返した。
いままでのように、このまま流されて鴻上を受け入れてしまえばいいのかもしれない。でも琴子の頭の片隅に残った理性が「それでいいのか」と訴えてくる。あぁでも、身体が……熱い。頭の中がトロトロに蕩かされて、なにも考えられなくなってしまう。鴻上の強引さは琴子の身体を熱くする。
そして、そのやさしさは――琴子の心を温かく満たしてくれる。直人のそれとはちがって、ただただ温かいのだ。
「サクちゃん……いえ、課長…………わたし、」
琴子がこのまま鴻上に身を委ねてしまおうかと彼の胸に倒れこむと――
「サキちゃん、大丈夫か? おい、なんかすごい熱いぞ……!?」
鴻上が血相を変えて慌てている。
このときふたりは、そういえば琴子が「病み上がり」だった事実をようやく思い出したのである。
そんな風に率直に言われると照れてしまう。琴子は思わず下を向いてもじもじと手を擦り合わせた。顔が熱い。
「うん。だから、もう俺にしておきなさい」
鴻上は生真面目な顔でそう告げると、ズズッと自分の分のうどんを啜った。
「でもそれだと、こっちがダメなら、じゃあこっち……みたいな感じで、なんか調子よすぎじゃないですか、私」
鴻上のやさしくて強引な告白に身を委ねてしまえば琴子としては気もラクだ。でも……。
「真面目だなぁ、咲坂さんは」
箸を置いた鴻上が琴子の方に身体を向けて苦笑いを浮かべる。
「だけど、そういうトコがいいんだよな。信用できるから。仕事でもプライベートでも」
そう言って鴻上は笑った。今度は苦笑いではなく、清々しいほどの真っ当な笑顔だ。
その笑顔がまぶしすぎて、琴子は真正面から受け止めることができない。なんというか……こそばゆい。こそばゆくて仕方ない。
「も、もしかして逆玉狙ってます? うち、そんなにお金ないですよ? それとも、うちの父のコネ狙い?」
鴻上がそんな人間でないことはとっくにわかっているというのに、照れ隠しのためか、琴子の口が勝手にスベる。
案の定、さっきまで笑顔だった鴻上が眉間にシワを寄せ、思いっきり不満そうな顔になっているではないか。
「つくづく失礼なヤツだな。前にも言ったと思うけど、俺はそんなに出世したくないし、金にも困ってない。大金は身を滅ぼすからな、必要以上には持たないほうがいいんだ」
鴻上がまた力強く持論を展開する。
「はぁ。そうなんですか。じゃあ、なんで……」
「なぁ、なんで普通に『あぁ、このひと、自分に惚れてるんだな』って思わないんだよ」
ぐずぐずとはぐらかす琴子に対して、鴻上がついに決定的な言葉を口にする。
「惚れてる……んですか? 私に」
琴子は空になったうどんの丼に目を落としたまま、弱々しく尋ねた。
そんなことを言われたら、熱が上がってしまうじゃないか。
「実は俺にとって『サキちゃん』はいろいろと謎だった。正直、信用しきれない部分もあった。でも『咲坂さん』として改めて出会ってからそういう謎も解決したし、よくわからなくて空白だった部分も全部埋まったと思う。だからさ」
鴻上が琴子の後ろに回りこんで腰を下ろした。
背中に彼の体温を感じて、琴子の身体がますます熱を帯びてしまう。
「なぁ……琴子」
え? と思う間もなく、いきなり後ろから抱きしめられた。
「あっ……」
琴子がされるがまま、鴻上の腕のなかで硬直していると、鴻上が琴子の髪の毛を右側に寄せて流した。無防備に晒された左側の首筋をぺろりと舐められる。鴻上はそのまま、ちゅ、ちゅ、と首筋から肩へかけて温かな口づけを落としていく。
「あの、かちょ……う」
「休みの日まで『課長』は止めてくれ。嫌がる部下を無理やり手籠めにしてる気分になって、むしろ逆に興奮するから」
鴻上は冗談とも本気ともつかない発言をしながら、琴子の身体をまさぐっていく。気がつくと、いつのまにか鴻上の手のひらがやわやわと琴子の胸を揉みしだいていて、琴子は思わず声を上げた。
「ちょっ、……どこ触ってるんですか!?」
「え? ダメ?」
「ダメです」
そういえば、なぜかノーブラだ。誰が外したんだろう……って、鴻上に決まっている。もしや計画的犯行か。
「でも、サキちゃんのダメは、もっと……って意味だよな?」
鴻上はわざと吐息を漏らしながら琴子の耳元で囁くと、固くなりかけた琴子の胸の先っぽを弾いた。
「んぅ……!」
鴻上の指先が敏感なトコロをカリカリと刺激してくるもんだから、琴子の口から鼻から抜けるような声が漏れてしまう。このままでは流されてしまう。琴子は彼の手から逃れようと身をよじった。
すると鴻上が「逃がさない」とでも言うように乳首をぎゅっと摘んで強めの刺激を与えてくる。
「やぁ……ダメ、って言ってるのに……」
「嘘つくなよ、もう素直になればいいのに。そんで、はやく俺の……」
鴻上の右手が胸から離れて、こんどは琴子の太ももを撫ではじめた。すりすりと外側を撫でていたかと思うと、次第に内ももへと伸びてきて、脚の付け根の際どい部分をもったいつけたように掠めていく。左手は相変わらず乳首をいじめてくるし……。
いけない、これは本格的に始まる感じの触り方だ。
「んっ……ダメ、です……ダメ、いまは…まだ……」
琴子が熱に浮かされたように「ダメ、ダメ」と繰り返した。
いままでのように、このまま流されて鴻上を受け入れてしまえばいいのかもしれない。でも琴子の頭の片隅に残った理性が「それでいいのか」と訴えてくる。あぁでも、身体が……熱い。頭の中がトロトロに蕩かされて、なにも考えられなくなってしまう。鴻上の強引さは琴子の身体を熱くする。
そして、そのやさしさは――琴子の心を温かく満たしてくれる。直人のそれとはちがって、ただただ温かいのだ。
「サクちゃん……いえ、課長…………わたし、」
琴子がこのまま鴻上に身を委ねてしまおうかと彼の胸に倒れこむと――
「サキちゃん、大丈夫か? おい、なんかすごい熱いぞ……!?」
鴻上が血相を変えて慌てている。
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