「承知しました。」~業務命令により今夜もトロトロに焦らされています〜

スケキヨ

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14. 耐えられるかな?

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 窓から見える空はとっぷりと暮れていた。
 星は見えない。
 もちろん星は存在しているのだろうけれど、少なくとも琴子ことこの目には映らなかった。
 琴子の目に入ったのは窓の下に置かれた小型のテーブルの上に並ぶである。
 もはや何本あるのか、わからない。
 最初のニ、三本までは本数を数えていた気もするが、途中でやめてしまった。

 チューハイを飲んだ。ハイボールも飲んだ。ワインと日本酒も飲んだ気がする。
 普段の琴子なら、いくらストロングであっても、ここまで酔ったりはしない。
 今夜だけだ。今夜はちょっとおかしい。ちょうど中身が空きそうになるタイミングで、鴻上こうがみが次から次へと琴子の好きそうなお酒を差し出してくるものだから、ついつい飲み過ぎてしまったのだ。

 つまりサクちゃんが悪い。

「大丈夫、サキちゃん? ほら、ここに横になりな」

 サクちゃんの優しい声がぼんやりと聞こえる。
 ふいに、ふわりと身体が軽くなったかと思うと、次の瞬間には柔らかな感触に包まれていた。
 なんだかフワフワしている。
 地面から身体が何センチか浮かびあがっているような……そんな感覚である。

「サキちゃんさー、覚えてる? 俺たちが二回目に会ったときのこと」

 唐突に投げかけられたサクちゃんからの質問。

「二回目?……覚えてないでーす」

 心地よい酩酊感に浸りきっている琴子が夢うつつで答えた。
 二回目どころか一回目も覚えていない。

「だよな。すっげえ酔ってたもんな、二人とも。だから俺もところどころ記憶が曖昧なんだけど」

「ん……?」

 ふいに琴子の周りの空気が熱を帯びる。

「俺の腕のなかで悶えて乱れるサキちゃんがすっごい可愛かったことはよく覚えてる」

「はぁ……?」

 琴子が生返事をしつつ薄目を開くと、すぐ目の前にサクちゃんの綺麗な顔がある。目が合うと、サクちゃんが口角を引き上げてニヤリと笑った。

「え……?」

 まるで新しい悪戯いたずらを思いついた子供みたいに嬉しそうな顔で笑うサクちゃん……じゃない、鴻上こうがみ課長の姿が琴子の意識を現実に引き戻しかけた。だが、琴子の意識が醒めるよりも先に両腕を掴まれて、身動きが取れなくなってしまう。

「え? え? え?」

 戸惑う琴子に構わず、鴻上はあっさりと彼女の両腕を頭の上に持ち上げると、両方の手首をひとつに縛りつけてしまった。ごわごわとした赤い紐みたいなもので拘束される。

「ん……なに、これ」

 琴子は急速に醒めていく感覚のなかで、その赤いものが鴻上のネクタイであることに気づいた。

「今からさぁ、思い出させてあげる」

「思い出す、って……何を?」

 琴子の上に覆いかぶさるようにして、鴻上の顔が近づいてくる。

「耐えられるかな? サキちゃん」

「……んぅ、っ」

 強引に口を塞がれ、思わず漏れた呻き。
 性急に唇を割って入り込んできた彼の舌が、咥内を余すところなく探るように動きまわる。

 琴子は首を左右に振って逃れようとしたが、鴻上が琴子の両頬をしっかりと挟んで固定しているものだから避けられない。

「んんぅ……!」

 息苦しくなった琴子がくぐもった悲鳴を上げると、鴻上がちゅっ、と音を立てて離れていく。ハァハァ、と肩を揺らして思いっきり酸素を吸い込む琴子を、鴻上が悠然と見下ろしている。

「酒くさ。もう何の酒かも区別できないくらい酒臭いよ、サキちゃん」

 鼻をつまんで「臭い臭い」と言いながら、鴻上は愉快でたまらないというようにニコニコと気味の悪い笑みを浮かべつづけている。

「ヒッ……」

 鴻上の手がずいっと琴子の胸元に伸びてきたかと思うと、彼女が羽織っていたモヘアのカーディガンの前を開いた。そのまま、下に着ていたシャツのボタンを、プチ、プチと外していく。

 アルコールで火照った琴子の身体を冷たい空気が撫でる。

 いつのまにか背中に回りこんでいた鴻上の手にホックを外されると、胸の締め付けが一気に緩む。鴻上はわずかに浮き上がったブラをずらして琴子の乳房を露出させると、慣れた手つきで揉みはじめた。柔らかい肉が鴻上の意のままに形を変える。少し体温の高い温かな手は琴子の肌によく馴染む。

 慣れ親しんだ熱に触れて、琴子の身体は内側からザワザワと騒ぎはじめた。


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