月と秘密とプールサイド

スケキヨ

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秘密

秘密(2)※

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 脇田わきたはひな子の目の前で黒い小瓶を揺らしてみせる。
 その瓶には見覚えがあった。
 中身を無理やり飲まされて、そして――。

 その後の記憶は、ぼんやりとしている。

 身体が疼いた。
 どうしようもなく疼いた。
 疼いて疼いて、しょうがなかった。

 全身がモヤモヤして、どこもかしこも、ちょっと触られただけで、ビクビクと反応した。浜辺に打ち上げられた魚みたいにビチビチと跳ねまわる身体を、自分ではもう抑えることができなかった。

 あれは確か夏の終わり……プールサイドで火神かがみに見つかった夜のことだ。

 ――オカシクなる。

 あの薬を飲まされたら――自分が自分でなくなってしまう。
 理性が吹き飛んで、ただの肉欲の塊になってしまう……。

「いや、いやぁぁぁ……っ!」
「うるせぇぞ、羽澄はすみ

 煩わしそうに顔を歪めた脇田が、ひな子の腹に一撃、蹴りを入れる。

「ぐっ……うぅぅ……」

 容赦のない衝撃に、一瞬、息が止まりそうになる。胃液がせり上がってきて、潰れた蛙のような呻きが漏れる。
 更衣室の空気が揺れて、ロッカーのひとつがガタっと音を立てた。

「そんなに怖がんなって。前に使ったとき、気持ちよさそうに喘ぎまくってたじゃねぇか」

 片方の口の端をくいっと持ち上げて、脇田が気味の悪い猫なで声を出す。意地の悪い笑みを浮かべながら、人差し指の先で、剥き出しになったひな子の乳首をツン、と突いた。

「ふぅ……ん、っ」

 思わず漏れてしまった甘い声に、ひな子は打ちのめされる。
 ぷっくりと膨らんだ赤い実を、脇田はそのまま指の先でグリグリと刺激してくる。

「んぅ……はぁ、あぁ……やめ、っ」
「やめていいのかよ? こんなに固くなってんのに?」

 その言葉にひな子の顔が羞恥に染まる。

 ――こんな身体じゃなかったのに。
 
 脇田を……男を知って、ひな子の身体は変わってしまった。

「なぁ、カッちゃんばっかズルくね? はやく俺にも使わせてくれよ、ソレ」

 後ろの男が痺れを切らして、不満気な声を漏らす。

「まぁまぁ、そんなに焦んなって」

 脇田が薄ら笑いを浮かべて、ひな子に絡みつく男を牽制する。

「コレ、お前が好きだって言ってたあの時にも使ったヤツだし。一発じゃ収まんねぇくらい効果あるから、そんな慌てんなよ」
「あぁ、あの水着のやつ? あの動画、スゴいよかったよぉ! 俺、何回も観てるもん」
「……で、抜きまくってんのか? まったく、ろくでもないな、お前は」
「おいおい、ロクでもないのはカッちゃんのほうだろう? トモダチから金取っといて」

 男が恨めしそうに言うと、

「毎度ありがとうございまーす」

 脇田がまったく心のこもってない棒読みで返した。

「あと、あの縛るやつもよかったよなぁ。デカいおっぱいがさらに強調されてて。アレもやってみたいなぁ」
「アホ。そういう要望は先に言っとけって。今日は持ってきてねぇよ」

 縛る?
 男の言った内容には覚えがあった。
 あれはたしか更衣室で龍一郎から貰ったネックレスを失くしたあとのことだ。なぜか脇田からネックレスの画像が送られてきて「返してほしければ来い」と呼び出されたのだ。なぜ脇田がネックレスを持っていたのだろう? ひな子が体育の授業を受けている間に更衣室へ忍び込んだのだろうか。

 ――まさか。

 ひな子はあの日、更衣室へ行くまでに出会った女の顔を思い出した。

「まぁ、そんなわけだから。せいぜいサービスしてやってくれよ、
「ぇ……」

 ひな子が顔を上げると、脇田が自分を見下ろしていた。脇田がひな子を見る目――それはまるで捨てられた小動物でも見るみたいな目だった。

健気けなげだよなぁ、羽澄は。水島みずしまのため……いや、今日来たのはあの火神とかいう教師のためだっけ?」
「…………」
「ほんっとにケナゲで……バカだよなぁ!」

 突然大声を出した脇田が身をよじって笑い始めた。底冷えする更衣室に、脇田の高笑いが響く。

「まったく、衣梨奈えりなといい、お前といい……あんなヒョロい男の何がそんなにいいんだ?」
「そりゃ、がいいんだろ? なぁ?」

 後ろの男がニタニタと笑いながら、ひな子の耳元で囁く。囁きながらクチャクチャと耳朶をねぶった。

「こんなに美味しそうなおっぱいが目の前にぶら下がってたら、しゃぶりつくなってほうがムリだろ……へへへ、教師なんて変態ばっかだもんなぁ」

 下品な声でせせら笑うと、男は背後から抱きすくめていたひな子の身体をくるっと回転させた。

「いただきまーす」

 大口を開けてひな子の胸元に顔を埋めると、ぷるんと揺れる乳房に食らいついた。

「ゃ、あぁぁ……んっ!」

 ざらざらとした分厚い舌に舐めまわされて、ひな子の胸はあっという間に粘っこい唾液まみれになる。
 男は自分の涎で汚れたひな子の胸に吸い付いて、じゅるじゅると啜り上げた。
 卑猥な水音に混じって、片隅のロッカーがガクンと乾いた音を立てる。

「……風か?」

 警戒するようにキョロキョロと周りを見回す脇田をよそに、

「どう? 気持ちイイ? ……じゃあ次は、俺のをしゃぶってもらおっかなぁ♪」

 男がウキウキといかにも楽しそうな様子で、自分のベルトに手をかけた。

「っ……!」

 ひな子の髪の毛を乱暴に掴むと、すでに大きく反り返った自分の肉棒の前に跪かせた。ムワッとした生ぐさい臭いが、鼻の粘膜を直撃する。ひな子が思わず目を瞑って顔を背けると、

「……キミ、失礼だね」
「痛……っ!」

 さっきよりも強く髪の毛を引っ張られて、顔を引き戻される。掴まれた髪がぶちぶちと千切れる音がした。

「カッちゃーん、ちゃんと撮っといてよ」
「わかってるって」

 機嫌よく答えた脇田がカメラを構えてひな子のサイドへと回り込んできて、横顔にピタリとレンズの照準を合わせた。

「はーい、口開けて」

 男はひな子の顎を掴んで強引に上向かせると、今にも暴発しそうな一物を喉の奥まで突っ込んだ。

「んっ……ぐ、っ」
「イテっ! おい、お前……歯ぁ立てたら、あの写真、ネットにバラまくからな!」
「大丈夫大丈夫。ちゃんと教えてあるから……なぁ、羽澄? いつものようにヤってやれよ、俺のを咥えてるときみたいに」

 ひな子は泣きながら、顔を前後に動かした。
 男がひな子の頭を押さえつける。喉の奥の深いところにまで突っ込まれて、吐きそうになる。

「ほらほら、ちゃんと舌も使ってー」
「んっ……!」

 ジュッポジュッポと抜き差しされて、ひな子の目から涙が溢れる。拭われることなく流れ続けた涙が頬に張り付いたまま乾いていく。乾いた涙の跡を新しい涙が伝っていって、更衣室の冷たい床を濡らす。

「あ、そうだ。おっぱいでも挟んでみてよ」

 男が思いついたように呟いて、ひな子の口からモノを抜いた。

「うっ、……げほ、っ……ごほっ、く……」

 ひな子ががっくりと膝をついて苦しそうに咳き込んだ。その拍子に、更衣室の扉が揺れてガタンと鳴る。

「チッ……何なんだよ、さっきから」

 神経質そうに舌打ちした脇田が、カメラを床に置いて、早足で扉へと向かう。

「おいっ!」

 扉を開けた脇田が、外に向かって苛立たしげな声を上げた。

「おいっ、水島っ! ちゃんと見張ってんだろうな!?」


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