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秘密
秘密(1)※
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暗い。
電灯の一つもない夜の校庭は闇に沈んでいた。
今夜は満月のはずなのに、薄っすらと雲がかかっていて、月明かりさえもほとんどない。
校舎の窓から漏れる幾らかの光も届かない校庭の隅、屋外プールに隣接して設置された更衣室。
ひな子が足を踏み入れると、ひんやりとした空気が肌を撫でた。
闇に目が慣れてくると、壁際に並べられたロッカーが浮かび上がってくる。無機質なそれらは寒々とした印象を強める。
九月で屋外プールの使用が終了してから、ここ二ヶ月は使われていないはずだった。
冬のあいだ、捨て置かれたように放置された更衣室は、少し埃っぽい。
乾燥した空気が喉に絡んで、ひな子は小さく咳き込んだ。
――閉鎖された更衣室。
ひな子もここに来るのは久しぶりだった。
前に来たのは、夏休みが明けてすぐの頃……龍一郎から貰ったネックレスを失くした日だ。
あの日は学校で火神に揶揄われて。
そして、その日の夜は……。
ひな子は激しく頭を振って、 それ以上、記憶を辿るのを止めた。
「……あの、」
ひな子が中にいるであろう人物に声をかけた。
返事はない。
ひな子が電気のスイッチがある辺りを目指して足を向けると――
「きゃ……っ!」
いつのまにか、ひな子のすぐ後ろに忍び寄っていた人影が、背後からいきなりひな子の胸を鷲掴んだ。
「お。でっけぇ!!」
ヘラヘラと嬉しそうな男の声がひな子の頭の上から降ってくる。
――誰!?
その声は、ひな子の予想していた人物のものではなかった。
聞き覚えのない声に、ひな子の頭が真っ白になる。
――怖い。
恐怖で身体が固まる。
振り返ることも、振りほどくこともできない。
男の鼻息が荒くなる。生温かい呼気が、ひな子の髪の毛を揺らす。
「ひっ……!」
ひな子の喉から引き攣った悲鳴が漏れた。
「そんなに怖がんないでよぉ。だぁいじょうぶ、気持ちよくしてやるからさぁ」
男が笑いながらひな子の耳元で囁く。
妙に馴れ馴れしい猫撫で声が生臭い息とともに耳の穴に入り込んでくる。
――気持ち悪い。
男はひな子を押さえつけるようにいっそう密着して腰を擦り付けてくる。
お尻の辺りに固い感触を感じて、ひな子の全身がぞわっと波立った。
――気持ち悪い。
身体に纏わりついてくる男の体温が、感触が、息づかいが……何もかも気持ち悪くてしょうがない。
「ナマで触るともっとイイぜ」
アドバイスでもするみたいに後ろから聞こえてきた声。その声には今度こそ聞き覚えがあった。
ひな子が声のした方へ恐る恐る首を向けるやいなや、待ち構えていたかのように、背後の男がひな子の唇に吸いついてきた。
「んっ……やぁっ……!」
嫌だ。嫌だ。嫌だ。
胸を触られるよりもずっと強い嫌悪感に、涙がこみ上げてくる。
「おい、そんな焦んなって。ちょっと待てよ……今、セットするから」
後から来た男は呆れたようにそう言うと、何やらゴソゴソと音を立てた。
その間もひな子に纏わりつく男の手は止まることなく、彼女の胸をまさぐり続けている。
「早くしてくれよ、カッちゃん。俺、もう我慢できないんだけど」
すでに勃起している股間をひな子の身体に圧しつけながら、男は制服のブレザーを剥ぎ取った。露わになったブラウス越しに、盛り上がった胸元を執拗に撫でまわしてくる。
「はぁぁ……たまんねぇな、この弾力。ちょっと待ってね。いま、直接、触ってあげるから」
頼んでもないのに恩着せがましい男の物言いに、ますます嫌悪感が募っていく。
男はブラウスの合わせに手をかけて、力づくで左右に引っぱった。小さなボタンがいくつか弾け飛んで、バラバラと床に転がり落ちる。
そのまま無理やりブラジャーをずり下ろされると、桃のように白くて豊満な乳房がまろび出た。
「あぁぁ……やわらけぇ~」
恍惚とした声を上げながら、男はむぎゅむぎゅと好き放題にひな子の胸を揉みしだく。
「痛……っ!!」
汚らしく伸びた爪がひな子の柔肌に食い込んだ。痛い。
「わかってるよぉ、ちょっと痛いのが好きなんでしょ? キミの好みはちゃーんと知ってるからね。だって、いつも観てるからさぁ……キミの動画」
「!?」
「やっぱり本物は違うよねぇ……ずっと、こうしたかったんだぁ」
うっとりと胸を揉みながら、ひな子の耳殻に舌を這わせた。ネチャネチャとした厭らしい音が薄暗い更衣室に響く。
ひな子はぎゅっと目を閉じた。
目だけでなく、耳も、鼻も、口も、すべての感覚を閉ざしてしまいたかった。
何も感じない、魂の抜けた人形になったつもりで、ただただ時間が過ぎるのを待った。
いつものことだ。
「おい羽澄、なに寝てんだよ。ちゃんと目ぇ開けて、こっち見ろよ」
いつの間にかひな子の正面に回り込んでいたもう一人の男が、不遜な口調で命令する。その手には小型のビデオカメラが構えられている。
「張り切ってんなぁ、カッちゃん。俺の顔は映さないでくれよ」
背後の男が言うと、
「わかってるって。お前の顔が映ってたら使えねぇだろ」
カッちゃんと呼ばれた男――脇田勝利が薄く笑いながら答えた。
「ちゃんと先っぽも弄ってやれよ。こいつ、ソコ、すげぇ弱いから」
「どれどれ? あ、ホントだぁ」
嬉しそうにひな子の胸元を覗きこんだ男が、赤く膨らんだ乳首を尖った爪の先で引っ掻いた。
「ふ、んぅ……っ」
「ハハハ! 大人しそうな顔して、くっそエロい身体してんな、この女子高生」
「だろ? 俺が仕込んでやったからな」
身勝手な男たちの会話を耳にして、ひな子の目に涙が滲む。
もう嫌だ……。
まったく身も知らぬ気持ちの悪い男に触られても敏感に反応してしまう自分が……自分のその淫らな身体が――。
「そろそろコッチも触ってあげるからねぇ」
ひな子の胸の先を血が滲むくらい弄り倒した男が、今度はスカートの中に手をつっこんでくる。
「や……っ」
「はいはい。イヤよイヤよも好きのうち、ってね~。……あれ? あんまり濡れてないなぁ?」
下着の隙間から指を差し込んだ男が不満そうに首をかしげる。
「まぁ、待てよ」
脇田は男を制すると、何かを取り出して、目の前に掲げてみせた。
「コレ飲ませてみ。ビチャビチャに濡らして、よがりまくるからよ」
暗い。
電灯の一つもない夜の校庭は闇に沈んでいた。
今夜は満月のはずなのに、薄っすらと雲がかかっていて、月明かりさえもほとんどない。
校舎の窓から漏れる幾らかの光も届かない校庭の隅、屋外プールに隣接して設置された更衣室。
ひな子が足を踏み入れると、ひんやりとした空気が肌を撫でた。
闇に目が慣れてくると、壁際に並べられたロッカーが浮かび上がってくる。無機質なそれらは寒々とした印象を強める。
九月で屋外プールの使用が終了してから、ここ二ヶ月は使われていないはずだった。
冬のあいだ、捨て置かれたように放置された更衣室は、少し埃っぽい。
乾燥した空気が喉に絡んで、ひな子は小さく咳き込んだ。
――閉鎖された更衣室。
ひな子もここに来るのは久しぶりだった。
前に来たのは、夏休みが明けてすぐの頃……龍一郎から貰ったネックレスを失くした日だ。
あの日は学校で火神に揶揄われて。
そして、その日の夜は……。
ひな子は激しく頭を振って、 それ以上、記憶を辿るのを止めた。
「……あの、」
ひな子が中にいるであろう人物に声をかけた。
返事はない。
ひな子が電気のスイッチがある辺りを目指して足を向けると――
「きゃ……っ!」
いつのまにか、ひな子のすぐ後ろに忍び寄っていた人影が、背後からいきなりひな子の胸を鷲掴んだ。
「お。でっけぇ!!」
ヘラヘラと嬉しそうな男の声がひな子の頭の上から降ってくる。
――誰!?
その声は、ひな子の予想していた人物のものではなかった。
聞き覚えのない声に、ひな子の頭が真っ白になる。
――怖い。
恐怖で身体が固まる。
振り返ることも、振りほどくこともできない。
男の鼻息が荒くなる。生温かい呼気が、ひな子の髪の毛を揺らす。
「ひっ……!」
ひな子の喉から引き攣った悲鳴が漏れた。
「そんなに怖がんないでよぉ。だぁいじょうぶ、気持ちよくしてやるからさぁ」
男が笑いながらひな子の耳元で囁く。
妙に馴れ馴れしい猫撫で声が生臭い息とともに耳の穴に入り込んでくる。
――気持ち悪い。
男はひな子を押さえつけるようにいっそう密着して腰を擦り付けてくる。
お尻の辺りに固い感触を感じて、ひな子の全身がぞわっと波立った。
――気持ち悪い。
身体に纏わりついてくる男の体温が、感触が、息づかいが……何もかも気持ち悪くてしょうがない。
「ナマで触るともっとイイぜ」
アドバイスでもするみたいに後ろから聞こえてきた声。その声には今度こそ聞き覚えがあった。
ひな子が声のした方へ恐る恐る首を向けるやいなや、待ち構えていたかのように、背後の男がひな子の唇に吸いついてきた。
「んっ……やぁっ……!」
嫌だ。嫌だ。嫌だ。
胸を触られるよりもずっと強い嫌悪感に、涙がこみ上げてくる。
「おい、そんな焦んなって。ちょっと待てよ……今、セットするから」
後から来た男は呆れたようにそう言うと、何やらゴソゴソと音を立てた。
その間もひな子に纏わりつく男の手は止まることなく、彼女の胸をまさぐり続けている。
「早くしてくれよ、カッちゃん。俺、もう我慢できないんだけど」
すでに勃起している股間をひな子の身体に圧しつけながら、男は制服のブレザーを剥ぎ取った。露わになったブラウス越しに、盛り上がった胸元を執拗に撫でまわしてくる。
「はぁぁ……たまんねぇな、この弾力。ちょっと待ってね。いま、直接、触ってあげるから」
頼んでもないのに恩着せがましい男の物言いに、ますます嫌悪感が募っていく。
男はブラウスの合わせに手をかけて、力づくで左右に引っぱった。小さなボタンがいくつか弾け飛んで、バラバラと床に転がり落ちる。
そのまま無理やりブラジャーをずり下ろされると、桃のように白くて豊満な乳房がまろび出た。
「あぁぁ……やわらけぇ~」
恍惚とした声を上げながら、男はむぎゅむぎゅと好き放題にひな子の胸を揉みしだく。
「痛……っ!!」
汚らしく伸びた爪がひな子の柔肌に食い込んだ。痛い。
「わかってるよぉ、ちょっと痛いのが好きなんでしょ? キミの好みはちゃーんと知ってるからね。だって、いつも観てるからさぁ……キミの動画」
「!?」
「やっぱり本物は違うよねぇ……ずっと、こうしたかったんだぁ」
うっとりと胸を揉みながら、ひな子の耳殻に舌を這わせた。ネチャネチャとした厭らしい音が薄暗い更衣室に響く。
ひな子はぎゅっと目を閉じた。
目だけでなく、耳も、鼻も、口も、すべての感覚を閉ざしてしまいたかった。
何も感じない、魂の抜けた人形になったつもりで、ただただ時間が過ぎるのを待った。
いつものことだ。
「おい羽澄、なに寝てんだよ。ちゃんと目ぇ開けて、こっち見ろよ」
いつの間にかひな子の正面に回り込んでいたもう一人の男が、不遜な口調で命令する。その手には小型のビデオカメラが構えられている。
「張り切ってんなぁ、カッちゃん。俺の顔は映さないでくれよ」
背後の男が言うと、
「わかってるって。お前の顔が映ってたら使えねぇだろ」
カッちゃんと呼ばれた男――脇田勝利が薄く笑いながら答えた。
「ちゃんと先っぽも弄ってやれよ。こいつ、ソコ、すげぇ弱いから」
「どれどれ? あ、ホントだぁ」
嬉しそうにひな子の胸元を覗きこんだ男が、赤く膨らんだ乳首を尖った爪の先で引っ掻いた。
「ふ、んぅ……っ」
「ハハハ! 大人しそうな顔して、くっそエロい身体してんな、この女子高生」
「だろ? 俺が仕込んでやったからな」
身勝手な男たちの会話を耳にして、ひな子の目に涙が滲む。
もう嫌だ……。
まったく身も知らぬ気持ちの悪い男に触られても敏感に反応してしまう自分が……自分のその淫らな身体が――。
「そろそろコッチも触ってあげるからねぇ」
ひな子の胸の先を血が滲むくらい弄り倒した男が、今度はスカートの中に手をつっこんでくる。
「や……っ」
「はいはい。イヤよイヤよも好きのうち、ってね~。……あれ? あんまり濡れてないなぁ?」
下着の隙間から指を差し込んだ男が不満そうに首をかしげる。
「まぁ、待てよ」
脇田は男を制すると、何かを取り出して、目の前に掲げてみせた。
「コレ飲ませてみ。ビチャビチャに濡らして、よがりまくるからよ」
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