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強かな女、鈍感な男
鈍感な男(1)※
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*****
「ひゃあ……っ!」
突然の雷鳴に、ひな子は驚いて悲鳴を上げた。
空を見上げると、いつのまにか湧いていた黒い雲からポツポツと大粒の雨が降り出した。
「ウソでしょ……」
バケツをひっくり返したような勢いで降りしきる雨が、無防備なひな子の身体を濡らしていく。
「どうしよう……でもあと少しだし……」
すぐには止みそうにない雨を前にして迷ったものの、
「しょうがない、走るか……!」
右足をかばいつつ、紺色のカーディガンの前をかき合わせて走り出した。締め付けのない胸が揺れて痛い。
(あの変態教師……!)
火神への恨みが募る。
「はやく帰ろ」
ひな子は揺れる胸を押さえながら、自分の帰りを待っているであろう人の顔を思い浮かべて足を速めた。
*****
「あ、ひな子!」
ひな子が息を切らしてようやく自宅へと辿り着くと、家の前で所在なくたたずむ龍一郎の姿が目に入った。
「龍ちゃん、ごめん! 待った?」
「ううん、そんなに……って、お前ずぶ濡れじゃねぇか!」
「大丈夫か?」と、自分を気づかう龍一郎に笑ってみせながら、ひな子は鍵を取り出して、自宅に龍一郎を招き入れた。
「ありがとう、助かったよ。いきなりすげぇ雨も降ってくるしさぁ……ほんと、どうしようかと思った」
リビングのソファにどかっと腰を下ろした龍一郎が、白い歯をこぼして笑う。
今日、龍一郎の母親は夜まで帰ってこないらしく、鍵を忘れて家に入れず困っていた龍一郎がひな子を呼び出したのだった。
相変わらず、こっちの都合なんてお構いなしだ。そう思ったが、龍一郎の笑顔を見ると、小さな不満などつい忘れてしまう。
ひな子は昔から龍一郎の笑顔に弱かった。ニヒヒ……と無邪気に笑いかけられると、昔から、大抵のことは許してしまう。
ひな子と龍一郎の家は斜向かいにある。子供の頃はしょっちゅうお互いの家を行き来していたが、最近ではそういうこともあまりなくなっていた。そういえば、龍一郎がうちに入るのは久しぶりだ。
ひな子は洗面所からバスタオルを二枚取ってくると、一枚を龍一郎に渡した。
ひっくり返したバケツの水をそのままかぶったようなひな子と違って、玄関の庇の下に退避していたおかげか、龍一郎はそれほど濡れてはいないようだ。
拭き終わった龍一郎がソファから立ち上がってリビングの中央にある電灯の紐を引っぱった。薄暗かった室内がパッと明るくなる。
「ひな子ん家は変わってないなぁ」
室内をキョロキョロと見回しながら、龍一郎が感心したように言った。
「そうかな?」
返事もそこそこに、ひな子はバスタオルで濡れた自分の身体を拭いていく。長い髪の先からはポタポタと雫が垂れ、雨を吸ったカーディガンはずっしりと重かった。スカートもその中の下着もずぶ濡れで、脚やお尻に張りついて気持ち悪い。早く脱いでしまいたい、と気が急いたひな子が何の気なしにカーディガンを脱いで、ブラウス一枚になると――
「ひな子……」
龍一郎が喉にへばりついた声を無理やり引き剥がしたような掠れた声で、ひな子の名前を呼んだ。釘付けになったように、ひな子を見つめている。
「ん? 龍ちゃん、どうかした……」
瞬きもしないで一心に見つめる龍一郎の視線の先をたどって自分の胸元へと目を落としたひな子は、
「嫌っ……!」
雨に濡れてぐっしょりと肌に張りついた白いブラウスを、ぷっくりと膨らんだピンク色の蕾が押し上げていた。固く尖った先端を取り囲む薄桃色の乳輪まで、くっきりと浮かび上がって透けている。
ひな子は慌てて龍一郎に背を向けると、彼の視線から胸元を隠した。
透けているのは仕方ないにしても、下着を身に着けていないのは不自然すぎる!
「……ひな、こ」
龍一郎がひな子の名前を呼びながら、ゴクリ、と唾を飲み込んだ。
ちらりと振り向いて様子をうかがうと、龍一郎がフラフラと上体を揺らしながら、ひな子の方へと近づいてくる。
「りゅ、龍ちゃん? どうしたの……なんか、変だよ」
いつもと雰囲気の違う龍一郎にひな子はあっという間に壁際へと追いつめられた。
水泳で鍛えた筋肉質な腕に囲われて、とても逃げ出せそうにない。
「……ひな子」
「きゃ……っ」
龍一郎の右手が、ひな子の左胸をむんずと掴んだ。
「あ……っ、んぅ……」
ひな子の口から思わず鼻にかかった声が漏れる。
龍一郎の熱い手のひらに包まれると、ついさっきまで火神に弄られていた身体は過敏に反応してしまう。ひな子の意思とは無関係に。
「ひな子……もしかして、感じてる?」
龍一郎は意外そうに言ってから、
「はぁっ……あぁ……んっ!」
ひな子の乳首にブラウスごとしゃぶりついた。
「やっ……龍ちゃん、やめ……て、」
ひな子のなけなしの抵抗を無視して、龍一郎はひな子の固く勃ちあがった胸の先端を、つぼめた舌先でコリコリと刺激してくる。もう片方の胸は白い肌に痕がついてしまいそうなほど強く五指を埋めて、むぎゅむぎゅと思いのまま揉みしだいているようだ。
「あっ……、はぁ……んっ、あぁっ……」
火神のせいで普段より敏感になっているひな子の身体は、龍一郎の乱暴な愛撫にも簡単に悦んでしまう。雨足は徐々に弱まっているのに、それに反比例するかのようにひな子と龍一郎の息づかいは激しさを増していく……。
「ひゃあ……っ!」
突然の雷鳴に、ひな子は驚いて悲鳴を上げた。
空を見上げると、いつのまにか湧いていた黒い雲からポツポツと大粒の雨が降り出した。
「ウソでしょ……」
バケツをひっくり返したような勢いで降りしきる雨が、無防備なひな子の身体を濡らしていく。
「どうしよう……でもあと少しだし……」
すぐには止みそうにない雨を前にして迷ったものの、
「しょうがない、走るか……!」
右足をかばいつつ、紺色のカーディガンの前をかき合わせて走り出した。締め付けのない胸が揺れて痛い。
(あの変態教師……!)
火神への恨みが募る。
「はやく帰ろ」
ひな子は揺れる胸を押さえながら、自分の帰りを待っているであろう人の顔を思い浮かべて足を速めた。
*****
「あ、ひな子!」
ひな子が息を切らしてようやく自宅へと辿り着くと、家の前で所在なくたたずむ龍一郎の姿が目に入った。
「龍ちゃん、ごめん! 待った?」
「ううん、そんなに……って、お前ずぶ濡れじゃねぇか!」
「大丈夫か?」と、自分を気づかう龍一郎に笑ってみせながら、ひな子は鍵を取り出して、自宅に龍一郎を招き入れた。
「ありがとう、助かったよ。いきなりすげぇ雨も降ってくるしさぁ……ほんと、どうしようかと思った」
リビングのソファにどかっと腰を下ろした龍一郎が、白い歯をこぼして笑う。
今日、龍一郎の母親は夜まで帰ってこないらしく、鍵を忘れて家に入れず困っていた龍一郎がひな子を呼び出したのだった。
相変わらず、こっちの都合なんてお構いなしだ。そう思ったが、龍一郎の笑顔を見ると、小さな不満などつい忘れてしまう。
ひな子は昔から龍一郎の笑顔に弱かった。ニヒヒ……と無邪気に笑いかけられると、昔から、大抵のことは許してしまう。
ひな子と龍一郎の家は斜向かいにある。子供の頃はしょっちゅうお互いの家を行き来していたが、最近ではそういうこともあまりなくなっていた。そういえば、龍一郎がうちに入るのは久しぶりだ。
ひな子は洗面所からバスタオルを二枚取ってくると、一枚を龍一郎に渡した。
ひっくり返したバケツの水をそのままかぶったようなひな子と違って、玄関の庇の下に退避していたおかげか、龍一郎はそれほど濡れてはいないようだ。
拭き終わった龍一郎がソファから立ち上がってリビングの中央にある電灯の紐を引っぱった。薄暗かった室内がパッと明るくなる。
「ひな子ん家は変わってないなぁ」
室内をキョロキョロと見回しながら、龍一郎が感心したように言った。
「そうかな?」
返事もそこそこに、ひな子はバスタオルで濡れた自分の身体を拭いていく。長い髪の先からはポタポタと雫が垂れ、雨を吸ったカーディガンはずっしりと重かった。スカートもその中の下着もずぶ濡れで、脚やお尻に張りついて気持ち悪い。早く脱いでしまいたい、と気が急いたひな子が何の気なしにカーディガンを脱いで、ブラウス一枚になると――
「ひな子……」
龍一郎が喉にへばりついた声を無理やり引き剥がしたような掠れた声で、ひな子の名前を呼んだ。釘付けになったように、ひな子を見つめている。
「ん? 龍ちゃん、どうかした……」
瞬きもしないで一心に見つめる龍一郎の視線の先をたどって自分の胸元へと目を落としたひな子は、
「嫌っ……!」
雨に濡れてぐっしょりと肌に張りついた白いブラウスを、ぷっくりと膨らんだピンク色の蕾が押し上げていた。固く尖った先端を取り囲む薄桃色の乳輪まで、くっきりと浮かび上がって透けている。
ひな子は慌てて龍一郎に背を向けると、彼の視線から胸元を隠した。
透けているのは仕方ないにしても、下着を身に着けていないのは不自然すぎる!
「……ひな、こ」
龍一郎がひな子の名前を呼びながら、ゴクリ、と唾を飲み込んだ。
ちらりと振り向いて様子をうかがうと、龍一郎がフラフラと上体を揺らしながら、ひな子の方へと近づいてくる。
「りゅ、龍ちゃん? どうしたの……なんか、変だよ」
いつもと雰囲気の違う龍一郎にひな子はあっという間に壁際へと追いつめられた。
水泳で鍛えた筋肉質な腕に囲われて、とても逃げ出せそうにない。
「……ひな子」
「きゃ……っ」
龍一郎の右手が、ひな子の左胸をむんずと掴んだ。
「あ……っ、んぅ……」
ひな子の口から思わず鼻にかかった声が漏れる。
龍一郎の熱い手のひらに包まれると、ついさっきまで火神に弄られていた身体は過敏に反応してしまう。ひな子の意思とは無関係に。
「ひな子……もしかして、感じてる?」
龍一郎は意外そうに言ってから、
「はぁっ……あぁ……んっ!」
ひな子の乳首にブラウスごとしゃぶりついた。
「やっ……龍ちゃん、やめ……て、」
ひな子のなけなしの抵抗を無視して、龍一郎はひな子の固く勃ちあがった胸の先端を、つぼめた舌先でコリコリと刺激してくる。もう片方の胸は白い肌に痕がついてしまいそうなほど強く五指を埋めて、むぎゅむぎゅと思いのまま揉みしだいているようだ。
「あっ……、はぁ……んっ、あぁっ……」
火神のせいで普段より敏感になっているひな子の身体は、龍一郎の乱暴な愛撫にも簡単に悦んでしまう。雨足は徐々に弱まっているのに、それに反比例するかのようにひな子と龍一郎の息づかいは激しさを増していく……。
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