月と秘密とプールサイド

スケキヨ

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はやく食べて……

はやく食べて……(1)※

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*****

「大丈夫?」

 ひょこひょこ、と右足を軽く引きずりながら歩くひな子を果穂かほが心配そうに見つめている。

「うん、もうほとんど痛みはないんだけど」

 ひな子は果穂を安心させるために笑ってみせた。
 階段から落ちてケガをした日から半月が過ぎている。
 十月に入り、ようやく夏の気配が薄れてきて、ひな子も果穂も数日前から制服のブラウスの上にカーディガンを羽織るようになっていた。

 ふたりが三年B組の前を通りかかると、開いた窓から龍一郎りゅういちろうの姿が見えた。
 龍一郎の隣には……真山まやま先生。
 秋らしいワインレッドのV字ニットに黒のスキニーパンツ。形の良いお尻とすらっと伸びる長い脚が遠目にもよくわかった。
 龍一郎と何を話しているのか……楽しそうな笑い声とそれに合わせて揺れる栗色の髪の毛が、ひな子の心をザワつかせる。
 ひな子が立ち止まって龍一郎と真山の姿を見つめていると――。
 視線に気づいたらしい真山が横目でチラリとひな子に視線を寄越した。

「……っ!」

 一瞬、目が合った気がして、ひな子は思わず息を飲んだ。あれ以来、真山の姿が目に入ると、どうしても身が竦んでしまう。

「なんかイヤな感じだよねぇ、真山先生。水島みずしまくんにくっつきすぎ。生徒に色目使うなっての」

 ひな子の気持ちを代弁するかのように、果穂が辛辣な言葉を吐いた。
 なんとなくその場を動けないでいるひな子に見せつけるかのように、真山が龍一郎との距離を縮める。

「うわぁ、水島くんの筋肉スゴいね」
「えぇまあ、鍛えてますから」

 真山の必要以上に大きな声と、彼女におだてられて嬉しそうに答える龍一郎の声が聞こえてくる。
 
「ちょっと触らせてもらってもいい?」
「え? あ、もちろんです!」

 真山が綺麗に整えられた爪の先で、ツンツン、と龍一郎の盛り上がった胸筋をつついた。

「うわ、かた~い!」

 真山のはしゃいだ様子に、龍一郎の日に焼けた顔が赤く染まる。
 龍一郎の胸元に指を這わせながら、真山が横目でひな子を見やった。ローズ色に塗られた唇の端がわずかに持ち上がる。

「……ひな、大丈夫?」

 果穂が首をかしげながら、ひな子の腕に軽く手を添えた。

「ぁ……」

 ひな子は果穂に触れられて、はじめて自分の身体が震えていたことに気がつく。

「うん……大丈夫。教室、戻ろ」

 ひな子は果穂を促すと、龍一郎に見つからないことを願いながら、足早に自分たちのその場を離れた。





*****

羽澄はすみ……、お前まさかワザと赤点取ってるんじゃないだろうな」

 放課後の化学準備室。
 すっかり恒例となってしまった補習に、頬杖をついた火神かがみが呆れた視線をひな子に向ける。

「……そんなわけないじゃないですか。そんなことして、何になるんですか?」
「ナニってそりゃあ、」
「あっ……」

 火神の大きな手のひらがひな子の太腿を撫でる。

「もう、やめてください……」

 口ではそう言いつつ、ひな子の脚は火神の侵入を喜んで迎え入れるかのごとく、自然に開いていく。

「そんな気持ち良さそうな表情かおするなよ」
「……してません」
「へぇ」

 火神の手がスカートの中に入ってきた。
 揉みほぐすように、ひな子のスベスベとした内股をまさぐる。

「あ……やっ」
「……、じゃないよな」

 火神の指が下着の上からそっと割れ目をなぞった。
 そこがもう既にぐっしょりと湿っていることには、ひな子も気がついていた。

「ほら、もうこんなになってる」
「ん……っ」

 下着の隙間から差しこまれた火神の指が、あたたかな肉襞をかきわけて、さらに奥へと侵入してくる。ひな子の膣内なかを長い指が掻きまわして、ぐちゅぐちゅと音が鳴った。

「あっ……んんっ、ん」

 ひな子はもはや抵抗する素振りも見せず、火神の与える快感にただ身をゆだねている。

「だから、そんなカオすんな……って」
「……そんなカオって、どんな表情かおですか?」

 ひな子が問いかけると、火神がニヤリと口元を持ち上げて言った。

「”触ってほしくてたまらない”、ってカオだよ」

 うつむいて赤くなるひな子を、火神かがみが笑いながら見下ろす。

「もっと嫌がれよ」

 火神の指の動きが激しさを増した。

「あっ、あ……はぁ、ん……」

 火神の指に翻弄されて、ひな子の喘ぎ声も大きくなる。

「お前は俺に脅されて、無理矢理こんなコトされてるんだろ? だったら、」

「やっ、あ……ソコ、んっ……ダメ、っ……あ」

 膨らんだ陰核をヌルヌルと刺激されて、ひな子はますます乱れてしまう。

「でも、先生はもう……言うつもり、ないんですよね?」

 ひな子は目に涙をためながら、火神の顔を見つめた。

「……どうして、そう思う?」

 火神はなおも笑いながら、ひな子に問いかける。

「質問に質問で返すのはズルいです……。それに……どうせ私は、もう――」

 何ごとかを言いかけて口をつぐんだひな子に、

「……どうした?」

 火神が穏やかな声で、優しく問いかけた。
 いたずらな指は動きを止めている。
 ひな子はしばらくの間、瞬きもしないで火神の顔を見つめていたが、

「……なんでもないです」

 うつむいて、再び口を閉ざした。

「そうか……。やっぱり喋るつもりはないんだな」

 火神が落胆したように肩を落として、ひな子から視線を逸らした。

「まぁいい。それより、たまには真面目に勉強しないとな」

 重くなった雰囲気を変えるためか、火神は明るい調子でそう言うと、ひな子の秘所から手を離した。

「ぁ……」

 ひな子の口から切なげな声が漏れる。

「そんな声出すなよ。また今度、な」

 苦笑いした火神が身を引いて、ひな子との距離を取ろうとする。

「あっ……」

 自分から離れていこうとする火神の腕を、ひな子は無意識に掴んでいた。

「ん?」

 ひな子の思いがけない行動に首をかしげる火神の腕を、ひな子は強引に自分の胸元へと導いた。

「先生は、ズルいです……」

 ひな子は下を向いて火神の顔を見ないようにした。

「ズルい」

 恥ずかしくて顔が上げられない。火神の顔が見れない。なのに――

「こっちも…………して」

 止まらなかった。


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