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5. 言うとおりにしてやろうじゃないか!

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「リアム、お願いがあるの。もっと…………触って」

 これは夢か? 幻覚か? それとも脳が勝手に作り出した妄想なんだろうか。
 リアムは目の前の光景が信じられなくて自問した。

「リア、ム……おねがい……」

 嘘だろう?
 あのミアが、目を潤ませて俺に懇願してくるなんて。

 ミアによって導かれた右の手のひらが、彼女の左胸を包んでいた。温かい。ドクドク、と脈打つ心臓の音まで聞こえてきそうだ。

 リアムは、むにゅ、とその柔らかな肉を揉み込んでみた。

「あっ、ん……」

 ミアの口から甘い声が漏れた。
 信じられない。
 いつもはきつく結ばれた彼女の唇がだらしなく開かれている。

「んぅ……もっと、強く」

 リアムはもう一方の手もミアの胸に当てると、もにゅもにゅと思うがまま揉みはじめた。

「ぁあ、……きもち、いぃ……もっと」

 艶かしく悶えるミア。
 これが媚薬の効果なのか、とリアムは戦慄する。あの堅物のミアをこんなに蕩けさせてしまうなんて、どれほど効力のあるクスリなのか、と。
 そして、一体どうすれば治まるんだ、これは。

「ねぇ、リアム……」

 考えこんだせいで手の止まったリアムをせき立てるように、ミアが甘い声で彼の名を呼んだ。

「はっ! 待て待て。ここじゃマズい!」

 リアムはミアを背負うと自分の寮の部屋へと急いだ。新人の官吏のために建てられた寮は、幸いこの図書館からそう離れてはいないが、ミアが背中のうえで「あぁ……」だの「あん……」だの妙に色っぽい吐息をこぼすものだから、リアムは気が気でなかった。
 やっとの思いで部屋にたどり着いてミアを下ろすと、

「リアムぅ……」

 ミアがさっそく抱きついてきた。リアムの首に手をまわして、まるで甘えん坊のネコのように、すりすりと彼の胸に顔をうずめてくる。

「ミア……」

 マズい。リアムの頭の中で警鐘が鳴り響く。
 今日のミアはものすごく可愛い。しかも、とんでもなく積極的だ。
 こんな機会、人生のうちでもう二度と訪れないに違いない……!

「ねぇ、直接、触って」

 ミアがブラウスのボタンに手をかけてプチ、プチと自ら一つずつ外していく。
 白い胸元が露わになるにつれて、リアムの興奮度も増していく。
 やがて全てのボタンを外し終わると、ミアは上半身を包んでいたブラウスから腕を抜いて、下着だけの姿になった。豊かな双丘のあいだにできた谷間が目に入ってリアムの呼吸が荒くなる。
 胸を覆っていた下着もすべて外してしまうと、ついに白い乳房がまろびでた。先端で色づく小さな赤い実がいかにも美味しそうだ。

「リアム、触って……」

 いつものミアなら絶対に出さないような甘い声で誘われて、リアムの理性は崩壊しかけた。だが――

「待て待て待て!」

 今にもしゃぶりつきたい気持ちを抑えて、リアムは待ったをかけた。
 ミアが自分に好意を抱いていないことは明らかだ。むしろ敵視されているであろうこともわかっている。当然、異性として意識されているわけもないだろう。

 そんな関係なのに、このまま流されていいのか?
 正気に戻ったミアにこれまで以上に嫌われたらどうする?

 一瞬、冷静さを取り戻したリアムは机の引き出しから一枚の紙を取り出すと、手早く何ごとかを書きつけた。

「ミア、これにサインしろ」
「なに、これ……?」
「同意書だ」
「どうい……?」

 ミアはリアムが差し出すその契約書とペンを自分の手元へ引き寄せると、言われるがままにサインした。

「これで、いい……?」

 そこにはたしかにミアの名前が書かれていた。
 焦っていたのか、彼女の筆跡は乱れている。
 あっけなく手に入った彼女からの「同意」に、リアムはその筆跡をまじまじと見入った。おそらく書かれた内容をちゃんと読んでいない。普段のミアなら書類に書かれている内容をろくに確認もせず自署するなんてあり得ないが、いまは非常事態なんだから仕方ない。リアムはそうやって自分を納得させる。

「それより、はやく……」

 ミアが目を真っ赤に潤ませながら、リアムの袖を引いた。
 両腕を寄せているせいで胸の谷間が協調されていて、リアムの視線はどうしてもそこに吸い寄せられてしまう。
 リアムは自分のなかで何かがプツリと切れるのがわかった。

 本人が触ってくれと言ってるんだ。
 きちんと同意も取った。
 言うとおりにしてやろうじゃないか!


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