媚薬を盛られた私をいろんな意味で救けてくれたのは、大嫌いなアイツでした

スケキヨ

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4. 何をする気だ?

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 リアムがシモンとその仲間たちに遭遇したのは昨日の夜だった。
 外交視察の打合せで遅くなってしまったリアムが自部署の執務室へと戻ると、男が四人ばかり居残っている。こんな時間まで残業していたのか、と驚いたリアムが労いの言葉をかけようと近づいてみると、男たちのコソコソとした会話が耳に入ってきた。

「そもそも、あの女は生意気なんだよ」
「まったくだ。成り上がりの商人のくせに」
「俺たちのような由緒正しい貴族に楯突こうなんて」
「一度、思い知らせてやらないとな」

 誰の話をしているかなんて、すぐにわかった。
 聞き覚えのある声はリアムたちの同期に違いない。
 リアムは物陰に隠れて、男たちの会話に耳をそばだてた。

「それにしても、シモンはあんな高飛車な女のどこがいいんだよ?」

 仲間から話を振られたシモンはフフンと鼻で笑ってから口を開いた。

「ああいう自信満々でお高くとまった女を泣かせるのが気持ちいいんじゃないか。それに、みんな気づいてないかもしれないけど、ミアって結構スタイルも良いんだよな。腰は折れそうなくらい細いのに胸は大きいし。普段はゆったりとした服を着ているからわかりにくいけど、馬術の授業のときなんか気になって仕方なかったんだ」

 たしかに馬術の授業では身体の輪郭に沿ったぴっちりとした服を着るから、ミアのくびれた腰やはちきれんばかりの胸元を確認することができた。
 それについては実のところリアムも気づいていたのだが、あらためて他の男の口から聞かされると、腹立たしいことこの上ない。

 ――どこを見てるんだよ!
 ――ミアが隠れ巨乳なことに気づいているのは俺だけでいいんだ!
 ――なんでお前まで気づいてんだよ!?

 シモンを罵る言葉が次から次へとリアムの脳裏に浮かんできたが、口に出すのはなんとか堪えた。

「まぁたしかに見た目は悪くないな」
「そういえばさぁ、この前、うちの御用聞きの貿易商が面白いクスリを売り込みに来たんだけど……」
「クスリ?」
「そうそう。なんでも異国の媚薬だとかで、すごい効果があるらしいんだよ」
「おい、まさかそれをミアに試そうっていうんじゃ……」

 物騒な話になってきたぞ、とリアムが息を呑むと、

「いいねぇ! 面白そうだ。ヤろうよ、みんなで」

 会話の内容にはあまりにも不釣り合いなくらい明るい声で、シモンが提案した。

「明日でいいんじゃない? ちょうど生誕祭だし。ミアのことだから、どうせ休みの日でもここに出てくるんだろうし。そうだな、場所は……」

 どんどん進んで行く計画話に、リアムは焦った。

 媚薬だって!?
 ミアに飲ませて何をする気だ?
 何って……そんなの決まってるじゃないか!

 リアムは気が気でなかった。ミアがこいつらに襲われるなんて考えただけでも胸糞が悪い。なんとしてでも、阻止しなければ……!

 そうして、リアムは生誕祭の日、休みだというのに朝早くから出勤して、ミアの安否を探っていたのだった。


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