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終章
一歩①
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あれから十年――
……は、まだ経ってないんだけど。
俺が場違いなプロポーズ(?)をしてから一年が経った。
あの後、藍原に神が「憑く」ことはなかった。少なくとも、今のところは……。
ついでに言うと、俺にも憑いていない。
祖父さんは今でも俺に家を継がせることを諦めていないみたいだけど、だからと言ってうるさく責め立てる人でもないから、ひとまず俺たちのことを傍観している。
高校三年生になった俺の目下の悩みは進路のことで。
楠ノ瀬は神職の資格を取るために東京の大学に行く。
俺はというと――
「すごい! すごい! じゃあ春からは一緒に東京だね」
俺が東京の大学に合格したことを報告すると、楠ノ瀬は飛び跳ねて喜んでくれた。
放課後の音楽室。
黄金色の夕日が楠ノ瀬の笑顔をさらにまばゆいものにしていた。
「でも医学部だと勉強大変なのかな」
楠ノ瀬の婚約者だった徳堂に対抗したというのもあるけど。
高遠の後継者としてではなくとも、楠ノ瀬の婿としてそれなりの学校を出ておくように……と婆さんに脅されたのだ。
これで一歩、自分の選んだ未来に近づけたかな?
あの婆さんに認めてもらうのは、うちの祖父さんを説得するよりも難しそうだけど。
「じゃあ、高遠くんの合格を祝って……」
楠ノ瀬がピアノに向かった。白くて細い指が鍵盤を撫でる。音楽に疎い俺はそれが何の曲かはわからなかったけど、ゆったりとした心地良い旋律に耳を傾けた。
楠ノ瀬の頬が上気してほのかに赤く染まっている。
俺は彼女の背後に回り込むと後ろから腕をまわして、その華奢な体をすっぽりと自分の胸の中に閉じ込めた。
「もぅ……弾けなくなっちゃうでしょ」
「ん……ちょっとだけ」
楠ノ瀬に触れるのは久しぶりだ。
受験勉強が忙しかったのもあるけど、もう神憑りをしない俺にあの「治療」は必要ないだろう……と、これまた婆さんに楠ノ瀬との接触を禁じられてしまったのだ。
楠ノ瀬の耳の輪郭を唇でそっとなぞりながら耳孔に向かって湿った息を吹きかけると、
「んんっ……」
彼女の紅く色づいた唇から、鼻にかかった甘い声が漏れた。
俺は両手をゆっくりと下ろして、厚手のブレザー越しにもその存在を主張しまくっている胸元へと手を伸ばした。手に余るほど量感のあるそれを円を描くように揉みしだく。
「もぅ、ダメだってば……」
弱々しく拒絶の言葉を発する楠ノ瀬を無視して、俺は固く尖り出した胸の先っぽを、指の先で集中的に捏ねた。
「はぁ……っ…………ぁん」
ピアノの音が乱れた。
楠ノ瀬が体をくゆらせて、熱い呼気を放つ。
――あぁ、直接触りたい。
あの白くて柔らかくてスベスベした肌に……。
俺はブレザーのボタンに手を掛けた。逸る気持ちを抑えて、一つ、一つ……とボタンを外していく。
ブレザーをはだけさせると、白いカッターシャツの上からより激しく指を動かした。生地が薄い分、楠ノ瀬の肉体の火照りがダイレクトに伝わってくる。
俺が愛撫に夢中になっている間にいつのまにかピアノの音が止んでいた。目を閉じて口を半開きにした楠ノ瀬が、俺に身を預けてされるがままになっている。
――ヤバい……止まらない。
俺の指がシャツのボタンを外しに掛かった。
上から三番目のボタンまで開けてしまうと、柔らかそうな双丘に挟まれてくっきりと刻まれた胸の谷間が目に入ってくる。
――あと、もう少しだけ……。
俺の指が四番目のボタンに手を掛けた時。
「清乃ー? そろそろ帰るよ!」
扉を開けて入ってきたのは――
「……あんたら、何ヤってんの?」
……は、まだ経ってないんだけど。
俺が場違いなプロポーズ(?)をしてから一年が経った。
あの後、藍原に神が「憑く」ことはなかった。少なくとも、今のところは……。
ついでに言うと、俺にも憑いていない。
祖父さんは今でも俺に家を継がせることを諦めていないみたいだけど、だからと言ってうるさく責め立てる人でもないから、ひとまず俺たちのことを傍観している。
高校三年生になった俺の目下の悩みは進路のことで。
楠ノ瀬は神職の資格を取るために東京の大学に行く。
俺はというと――
「すごい! すごい! じゃあ春からは一緒に東京だね」
俺が東京の大学に合格したことを報告すると、楠ノ瀬は飛び跳ねて喜んでくれた。
放課後の音楽室。
黄金色の夕日が楠ノ瀬の笑顔をさらにまばゆいものにしていた。
「でも医学部だと勉強大変なのかな」
楠ノ瀬の婚約者だった徳堂に対抗したというのもあるけど。
高遠の後継者としてではなくとも、楠ノ瀬の婿としてそれなりの学校を出ておくように……と婆さんに脅されたのだ。
これで一歩、自分の選んだ未来に近づけたかな?
あの婆さんに認めてもらうのは、うちの祖父さんを説得するよりも難しそうだけど。
「じゃあ、高遠くんの合格を祝って……」
楠ノ瀬がピアノに向かった。白くて細い指が鍵盤を撫でる。音楽に疎い俺はそれが何の曲かはわからなかったけど、ゆったりとした心地良い旋律に耳を傾けた。
楠ノ瀬の頬が上気してほのかに赤く染まっている。
俺は彼女の背後に回り込むと後ろから腕をまわして、その華奢な体をすっぽりと自分の胸の中に閉じ込めた。
「もぅ……弾けなくなっちゃうでしょ」
「ん……ちょっとだけ」
楠ノ瀬に触れるのは久しぶりだ。
受験勉強が忙しかったのもあるけど、もう神憑りをしない俺にあの「治療」は必要ないだろう……と、これまた婆さんに楠ノ瀬との接触を禁じられてしまったのだ。
楠ノ瀬の耳の輪郭を唇でそっとなぞりながら耳孔に向かって湿った息を吹きかけると、
「んんっ……」
彼女の紅く色づいた唇から、鼻にかかった甘い声が漏れた。
俺は両手をゆっくりと下ろして、厚手のブレザー越しにもその存在を主張しまくっている胸元へと手を伸ばした。手に余るほど量感のあるそれを円を描くように揉みしだく。
「もぅ、ダメだってば……」
弱々しく拒絶の言葉を発する楠ノ瀬を無視して、俺は固く尖り出した胸の先っぽを、指の先で集中的に捏ねた。
「はぁ……っ…………ぁん」
ピアノの音が乱れた。
楠ノ瀬が体をくゆらせて、熱い呼気を放つ。
――あぁ、直接触りたい。
あの白くて柔らかくてスベスベした肌に……。
俺はブレザーのボタンに手を掛けた。逸る気持ちを抑えて、一つ、一つ……とボタンを外していく。
ブレザーをはだけさせると、白いカッターシャツの上からより激しく指を動かした。生地が薄い分、楠ノ瀬の肉体の火照りがダイレクトに伝わってくる。
俺が愛撫に夢中になっている間にいつのまにかピアノの音が止んでいた。目を閉じて口を半開きにした楠ノ瀬が、俺に身を預けてされるがままになっている。
――ヤバい……止まらない。
俺の指がシャツのボタンを外しに掛かった。
上から三番目のボタンまで開けてしまうと、柔らかそうな双丘に挟まれてくっきりと刻まれた胸の谷間が目に入ってくる。
――あと、もう少しだけ……。
俺の指が四番目のボタンに手を掛けた時。
「清乃ー? そろそろ帰るよ!」
扉を開けて入ってきたのは――
「……あんたら、何ヤってんの?」
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