おっぱい、触らせてください

スケキヨ

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2. じょ、冗談だよね?

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「…………へ」

 いきなり何を言い出すんだ? 聞き間違い?
 弟の友人たちの中でも大人しくて真面目そうなイメージだった彼の口から出た思いがけない要求に、私はりっくんの真っ赤に染まった耳をまじまじと凝視してしまう。

「じょ、冗談だよね?」

「本気です」

「…………そ、そう」

 参った。
 まさか、そっち系のお願いをされるとは……。
 こちらとしてはずっと弟みたいに思っていた相手だ。そういう対象として見られることがあるなんて考えてもみなかった。なんだ、私もまだまだ捨てたもんじゃないなー……なんて、不謹慎にも喜んじゃったりして。
 いやでも待て待て。
 りっくんは単に手近なところで性欲を解消したいだけなのかも。
 うーん、どうしよう。
 別に減るもんでもないし、恥ずかしがる歳でもないし。
 ……でも弟の友達だよ? どうする? どう対応するのが正解なの?

「あの、ダメ……ですか?」

 返事に迷う私の様子をうかがうように、りっくんが上目遣いで見つめてきた。潤んだ目と赤く染まった頬がもう完全に捨てられた仔犬だ。そんな顔されたら、放っとけないじゃん。
 くそぅ、あざとい奴め。
 私はりっくんに掴まれている方とは別の手を伸ばして、彼の頭をなでなでしてみた。柔らかな髪が手のひらに当たって気持ちいい。

「りっくんさ、付き合ってる人とかいないの?『友達の姉ちゃん』なんて手近なとこじゃなくて、ちゃんとした彼女つくったほうがいいと思うよ」

 と、一応は年長者らしく説得にかかってみる。しかし、

「手近じゃないです。全然近くない。七海ななみさんは近いけど……遠かったです。ずっと」

 大人しく私に撫でられるがままになっていたりっくんが真顔で呟いた。

「七海さんはおれの憧れでしたから。綺麗で優しくて、笑うと可愛くて……」

 私から目を逸らしたまま、こっぱずかしいセリフを重ねていくりっくん。
 どこまで本気かはわからないけれど、そんな風に言われて、もちろん悪い気はしない。むしろ嬉しい。嬉しいに決まってる。なんてお手軽な私。 

「……じゃあ、ちょっとだけだよ。服の上からなら」

 気づけば、そう答えてしまっていた。
 おかしい。ありえない。普段の自分なら、こんなこと絶対言わないのにーー。

「い、いいんですか!?」

 鼻の頭に皺を寄せて破顔したりっくん。満面の笑みだ。嬉しそう。すっごい嬉しそう。
 え、そんなに嬉しいの?
 これぐらいのことで、そんなに喜ばれてしまうと、こちらまで照れてしまう。

 りっくんはいそいそと立ち上がって、テーブルを跨いで私の背後へと回り込んできた。そのまま、私を挟み込むように両脚を伸ばして座る。

「……では、いきます」

 律儀に開始宣言(?)を述べたりっくんの熱い呼気が耳元を掠めた。少し荒い息づかいを至近距離で感じて、私は少しだけ後悔しそうになる。
 りっくん……もしかして、けっこう本気?

「ん……っ」

 そろりと脇の間から差し込まれたりっくんの両手が私の胸を覆う。
 熱い。
 りっくんの掌の熱がTシャツ越しにじんわりと広がる。

「はぁ……柔らかい。ってか、なんでノーブラなんですか」

 下乳を掬い上げるように揺らしながら、りっくんが呆れたように息をついた。

「だって家だし」

「……無防備すぎます」

 口ではそんなふうに説教じみたことを言いながら、りっくんはやわやわと私の胸を揉みつづけている。

「あッ……」

 りっくんの指が勃ちあがりはじめた私の乳首を掠めた。思わず漏れた嬌声はりっくんの耳にもしっかり届いていたらしく、

「敏感なんですね、七海さん。かわいい」

 嬉しそうに笑って、そのままグリグリと私の乳首を圧しつぶしてくる。

「もぅ……あ、んぅ……その触り方……ダメ、だって」

「なにがダメなんですか? 服の上からならいい……って言ってくれましたよね」

「そう、だけど……。あ、んッ!」

 きゅうっと強めに摘まれて、びくりと反応してしまう。すると、いつのまにか、りっくんが私の首筋に顔をうずめて、くんくんと鼻を鳴らしはじめた。

「やだ、汚いよ。今日、汗かいたから」

「汚くないです。七海さんはいつも綺麗だし」

「もう……。褒めてもこれ以上はダメだからね」

「これ以上、って?」

「…………」

 具体的に答えられないでいると、後ろからりっくんの笑い声が聞こえてきた。
 案外イジワルだな、こいつ。

「七海さん、こっち向いてください」

 りっくんが私の脇に手を添えて、くるっと反転させた。正面から向かい合う形になり、思わず下を向いてしまった。なんだろう。この状況が恥ずかしすぎて、りっくんの目をまともに見られない。

「ふ、んぁ……っ」

 ふいに視界がりっくんの頭でいっぱいになったかと思うと、胸の先が生温かいもので包まれた。

「こら、りっくん……! 舐めてもいいとは言ってない!」

「でも服の上からならいいんですよね? 服の上から触ってるだけですよ、舌で」

「もぅ……っ、屁理屈ばっか……」

 りっくんに舐めまわされて、べっとりと唾液に濡れたシャツが肌に張りついて、ぷっくりと勃ちあがった乳首の形がはっきりと浮き上がっている。

「最高です、七海さん。すごい……エロい」

 私の胸元を見つめるりっくんの目がギラギラしている。

「やだ、見ないで……」

 りっくんから距離をとるように身体を捩りながら腕で胸を隠そうとしたけれど――

「だめ。もっとよく見せてください」

 りっくんに両方の手首を掴まれて、むしろ彼の前に胸を突き出すような格好になってしまった。シャツを押し上げて尖った胸の先に、どうしても意識が集中してしまう。

「あぁもう無理。目の前にこんなのがあったら……」

 じゅるっという音が聞こえてきそうなくらいの勢いでしゃぶりつかれて、

「あぁ、ん! も、ダメだって……」

 肌に張りつくシャツの感触が気持ち悪い。
 りっくんの舌と私の肌を隔てている布が邪魔くさい。
 あぁ、もういっそ、直接舐めてくれればいいのに……って、なにを考えてるんだ、私は。
 そんな自分からおねだりするようなこと、言えるわけない。……でも。

「んぅ、ふ……っ、ぁ」

 私の意思に反して、身体は子供みたいに正直だ。甘ったるい声をあげて、目の前の男に差し出すみたいに胸を突き出している。
 勃ちあがった乳首の周りをべろべろと舐めまわされて、身体の中心が熱を帯びる。どうしよう、どうしよう。もっと欲しい。もっと欲しい。もっと欲しい!
 あぁもうやっぱり邪魔だ、シャツ。
 りっくんの熱を直接感じられないじゃないか。

 考えるより先に身体が動いて、私は自分から肌に纏わりつくシャツを脱ぎ捨てていた。標準より少し大きめの胸がふるんと揺れる。

「え? え? え?」

 自ら脱ぎ出した私に、りっくんが目を丸くしている。

「……ベタベタして気持ち悪かったから」

 何を言ってるんだ、私は。
 着替えるにしても、りっくんの目の前でやることないでしょ?
 自分でも自分の行動が恥ずかしくて床に目を落とした。自分の身体を抱きこんで胸を隠すように腕を前に回す。

「あ……。これで終わり、ですか?」

 私の仕草を拒絶と受け取ったのか、りっくんが、しゅんと項垂れた。耳を垂らした犬みたいだ。可愛い。だけど……。

 そんなわけないだろー!

「これで終わり」だったら、これ見よがしにりっくんの前で脱いだりしないよ。バカ。りっくん、鈍すぎ!

「……さ、触っていいよ」

 勇気を振り絞って言ってみたけど、緊張して、ちょっと声が裏返ってしまった。もっと色っぽく、余裕のある「大人の女」って感じで誘いたかったのに全然できなかった。
 恥ずかしい……! あまりの恥ずかしさに、思わず下を向いてしまう。

 りっくんの反応を確かめるのが怖かったけど、しばらく経っても全然反応がないので、恐る恐る顔を上げてみた。

 りっくんが口を半開きにしたまま固まっている。

「え……? あの……え、いいんですか?」


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