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諦め気味の私は、やけ食いでもするかと屋台を物色し、どれもこれも美味しそうだったので、気づけば両手一杯に持っていた。
フライドポテトとチキンの丸焼きに交互に噛り付いていると、にこにこしながら、キース様が近づいてくる。
その目は私の持っている食べ物に釘付けじゃないか?
「ねえ、アリア嬢。それ僕にも……」
「あげませんわよ?」
「…………」
即答した私に驚いた顔をしつつも、キース様はその視線を外さない。
さっきまで、たこ焼きを食べていたのに。案外、食い意地を張っているのか。
「……そう、僕はアリア嬢の命の恩人だと思ってたのにな。僕はその程度ってことか」
そう言い、悲しげに目を伏せるキース様はとても絵になる。
もはや絵画である。肉を挟んだパンを食べながら、思わず眉をひそめる。
分かっててこの顔をやっているのだろう。というか、命の恩人って何だ。
確かに入学前に助けてもらったけど、そのセリフは自分で言うことでは無いのでは? まあ、私は全く言う気は無いが。
儚げに目を伏せるキース様に渋々フライドポテトを差し出すと、顔を振る。
「そっちが欲しい」
と、今まで私が噛り付いていたパンを指差した。
「……え? で、でも、こちらは私の食べかけですし」
「でも美味しそうだなって、ね? 一口ちょうだい」
そう言ってあー、と口を開けるキース様に慌てる。え? 私が食べさせるの?
気づけば、人の多いところで食べていたからか、視線を集めているような気がする。
なぜ、こんな恋人みたいなことをやらせようとするのか。
キース様が数多の女性と遊ぶような女好きだから? ついでに私で遊んでいるのだろうか。
そう考えるとなぜかムカッとしたので、振り切るようにキース様のその口に思いっきりパンを突っ込む。
結構勢いよく口に入れたつもりだったのだけれど、キース様には特に何もなく、もぐもぐと美味しそうに食べるだけだった。
「これ、美味しいね」
そう言いながらフライドポテトも食べるキース様に眉をひそめる。いや、食べないのでは無かったのか。
気づけばだいぶ食べられてしまったパンは、あと少ししか無い。残りを食べようと口を開いて、気づく。
あれ? これ口を付けたところが……。
そのままパンを見たまま止まってしまった。こんな、人と何かを分けたこともほとんど無い。だから、考えが及ばなかったのだ。
キース様をちらりと見れば、私を見ていて、目が合う。フッと笑うその顔にカッと頬が熱くなったような気がして、やけになりながらパンを一口で食べた。
美味しかったはずのそれは味が全くせず、なんだかうまく飲み込めなかった。
フライドポテトとチキンの丸焼きに交互に噛り付いていると、にこにこしながら、キース様が近づいてくる。
その目は私の持っている食べ物に釘付けじゃないか?
「ねえ、アリア嬢。それ僕にも……」
「あげませんわよ?」
「…………」
即答した私に驚いた顔をしつつも、キース様はその視線を外さない。
さっきまで、たこ焼きを食べていたのに。案外、食い意地を張っているのか。
「……そう、僕はアリア嬢の命の恩人だと思ってたのにな。僕はその程度ってことか」
そう言い、悲しげに目を伏せるキース様はとても絵になる。
もはや絵画である。肉を挟んだパンを食べながら、思わず眉をひそめる。
分かっててこの顔をやっているのだろう。というか、命の恩人って何だ。
確かに入学前に助けてもらったけど、そのセリフは自分で言うことでは無いのでは? まあ、私は全く言う気は無いが。
儚げに目を伏せるキース様に渋々フライドポテトを差し出すと、顔を振る。
「そっちが欲しい」
と、今まで私が噛り付いていたパンを指差した。
「……え? で、でも、こちらは私の食べかけですし」
「でも美味しそうだなって、ね? 一口ちょうだい」
そう言ってあー、と口を開けるキース様に慌てる。え? 私が食べさせるの?
気づけば、人の多いところで食べていたからか、視線を集めているような気がする。
なぜ、こんな恋人みたいなことをやらせようとするのか。
キース様が数多の女性と遊ぶような女好きだから? ついでに私で遊んでいるのだろうか。
そう考えるとなぜかムカッとしたので、振り切るようにキース様のその口に思いっきりパンを突っ込む。
結構勢いよく口に入れたつもりだったのだけれど、キース様には特に何もなく、もぐもぐと美味しそうに食べるだけだった。
「これ、美味しいね」
そう言いながらフライドポテトも食べるキース様に眉をひそめる。いや、食べないのでは無かったのか。
気づけばだいぶ食べられてしまったパンは、あと少ししか無い。残りを食べようと口を開いて、気づく。
あれ? これ口を付けたところが……。
そのままパンを見たまま止まってしまった。こんな、人と何かを分けたこともほとんど無い。だから、考えが及ばなかったのだ。
キース様をちらりと見れば、私を見ていて、目が合う。フッと笑うその顔にカッと頬が熱くなったような気がして、やけになりながらパンを一口で食べた。
美味しかったはずのそれは味が全くせず、なんだかうまく飲み込めなかった。
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