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私の人生
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しおりを挟む気づけば私は城にある地下の牢屋に連れて行かれた。埃っぽく暗いここは、普段は使われていないようで、私はこの場所を知らなかった。
痛む頬を手で押さえながら、へたりと座り込む。
これから私はどうなるの? お父様のことは本当のことなの? どうして、彼女を殺そうとした人がいるの? 彼女を虐めていた人も襲おうとした人も誰なの?
私は妃として、彼が隣にいなくても、彼を支えていると思っていた。それだけ毎日、妃としての仕事をこなせていると思っていた。
たとえ、後継ぎを産めなくても、それ以外の仕事は完璧だと勝手に思っていた。
けど、実際は彼女を襲おうとした人も思い当たらない。国の情勢も、社交界の状況も分かっていたようで、分かっていなかった。だって、彼女を襲い、私に罪を被せようとした人が全く思いつかないのだ。
母はいなかったし、王妃様も私が社交界デビューする前に亡くなった。誰も私に教えてはくれなかった。
あと1年後には彼は王太子に即位する予定だが、それが絡んでいるかも分からない。
「何も分からないわ……」
ぽたりと涙が溢れる。学園で、自分なりに頑張ったつもりだった。王妃になるべく、彼を支えるべく、ずっと勉強し、様々な人に声をかけ、話を聞くよう心掛けたつもりだった。
けれども、所詮「つもり」だった。何も身を結んでいない。結局当たり障りのない態度しか取れず、様々な人から一線を引かれていた。それを飛び越える力が私にはなかった。
「うっ……くっ……」
私には王妃どころか、彼を支える器すらなかった。彼女とあの庭園で抱き合うのを見たときに婚約を解消すればよかった。そうすれば今頃牢屋に入っているなんてことは無かったはずだ。
涙がポロポロと零れ落ちる。ひりひりと痛む頬は私を責めているようだった。
「ミーア?」
顔を上げると、ランプを持ったジルト様が立っていた。思わず目を見開く。
彼は息を切らしていて、随分と急いで来たみたいだった。
「どうして……」
声は掠れていたが、聞こえたようで眉が動いた。
「君が牢屋に入れられたと聞いてね、思わず来たんだ。アーバン男爵の娘が襲われたことについて、君とオリファント公爵が首謀者だということになっている」
「それは……!」
思わず声を荒げる。ジルト様に私がやったことだと思われたままでは嫌だった。
「分かってる。ミーアとオリファント公爵はやっていない。それは知っている」
「知ってるって、どういうこと……」
ジルト様が言っている意味が理解出来ず、聞き返す。
なぜやっていないと言い切れるのかと困惑する。
「ごめん。詳しくは言えないけど、必ずここから出すから。だから、私を信じて待っていてほしい」
言えないこととは何だろう。私には見当も付かない。けど、ジルト様の瞳を見ていると、私とお父様の無実を証明してくれるような気がした。
「ジルト様お願いします……お父様を……! 私を……! 助けて下さい……っ!」
「うん、必ず助ける。……お願いがあるんだけど、ここから出れた時には、私の話を聞いてほしい」
話が何か分からなかったけど、そう言うジルト様は真剣な目で私を見ていた。その目に押されるがままに頷く。
「ありがとう。……ルドルフに叩かれたんだって? こんなもので申し訳ないけど、よければ使って」
「あ……、ありがとうございます」
思い出したように差し出されたそれは、水に濡れた布だった。叩かれた頬に当てると、気持ち良い。
「ごめん、もう行かなきゃ。少し時間がかかるかもしれないけど、必ず助けるから」
そういうとジルド様は行ってしまった。窓もなく、暗い地下の牢屋はろうそくの明かりが少しあるだけで、暗闇に目が慣れてもあまり見えない。
埃っぽいからか、息苦しくとてもじゃないが眠ることなんて出来なかった。
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