1 / 10
私の人生
1
しおりを挟む
初めて出会ったのは8歳になった頃だった。
父に手を引かれ、王宮に初めて来た私は周りの煌びやかさに落ち着かず、父の手をぎゅっと握った。
「ミーア、もうすぐ王子に会うのだから、大人しくしなさい」
「はい、おとうさま」
父と離れた手に、少し寂しさを覚えつつ、大きな扉の前に立つ。
父に付いていくと前には女性と男の子がいた。
「彼がミーアの婚約者だよ」
そう言われて前に出ると、彼、ルドルフ様は私と視線を合わせるように、膝を曲げ、私の手を取った。
「はじめまして、これからよろしく。ミーア嬢」
ふわりと微笑む彼の澄んだ青空のような瞳と目が合う。
どき、と心臓が跳ね、頬が赤くなっていくのが分かった。
「はじめまして、ルドルフさま。ミーアともうします。よろしくおねがいたします」
これが彼、ルドルフ第一王子との出会いだった。
彼は素敵な人だ。王族の証と言われているプラチナブロンドの髪に、アクアマリンの宝石を落とし込んだような青い瞳。
鋭い目をしながらも、笑うと優しい雰囲気を纏う。
第1王子として文武両道なだけでなく、周囲の人には勇敢で時に優しい王子として、とても好かれている。
そんな彼の婚約者に私が選ばれた大きな理由は、亡き母と王妃様がとても仲が良かったから。
元々候補として挙がっていた令嬢のなかで一番地位が上の家は私の家であるオリファント公爵家だ。
けど、それだけで婚約者になるとは限らず、最終的に数人になった中から、王妃様が私を選んだと聞いた。
そんな私たちは一つ違いということもあり、子供の頃はとても仲が良かった。よく王宮の庭園で2人でお茶を飲んだり、走り回ったりした。
この頃が一番楽しく、未来に対して何の疑いもなく、彼の妻になることを純粋に望んでいた。
ルドルフ様が13歳になる年に、男子のみの寮制の騎士学校に入った。
しばらく会えなくなることが寂しくて、泣く私に三年後に帰ってくるからと優しく頭を撫でて、ルドルフ様は行ってしまった。
三年間厳しい王妃教育にひたすら耐えて、ルドルフ様に会えることを楽しみにしていた。王妃様はかなり厳しく、「これぐらいあなたのお母様はもうあなたの歳には出来ていましたよ? 彼女の娘なんだからあなたにも出来ます」と口癖のように言っていた。
王妃様の期待に答えるべく、私は夜遅くまで、ずっと勉強づけの日々だった。母は私が3歳の時に亡くなり、父は私を見ると母を思い出すのかあまり会おうとはしなかった。
私が14歳の時、ルドルフ様は騎士学校を首席で卒業して帰ってきた。
久しぶりに会うルドルフ様はそれは端正な美青年に育っており、どきどきと心臓が跳ねた。
「やあ、ミーア嬢。久しぶりだな」
そう言って微笑むルドルフ様に顔が赤くなるのを止められなかった。
やっと帰ってきたルドルフ様だったけれど、王族や貴族ならば16になる年に入学する学園に入ると、会えるのはせいぜい月に一度くらい。
来年には私も学園に入るのでルドルフ様と一緒に居る時が多くなるのを楽しみにしていた。
父に手を引かれ、王宮に初めて来た私は周りの煌びやかさに落ち着かず、父の手をぎゅっと握った。
「ミーア、もうすぐ王子に会うのだから、大人しくしなさい」
「はい、おとうさま」
父と離れた手に、少し寂しさを覚えつつ、大きな扉の前に立つ。
父に付いていくと前には女性と男の子がいた。
「彼がミーアの婚約者だよ」
そう言われて前に出ると、彼、ルドルフ様は私と視線を合わせるように、膝を曲げ、私の手を取った。
「はじめまして、これからよろしく。ミーア嬢」
ふわりと微笑む彼の澄んだ青空のような瞳と目が合う。
どき、と心臓が跳ね、頬が赤くなっていくのが分かった。
「はじめまして、ルドルフさま。ミーアともうします。よろしくおねがいたします」
これが彼、ルドルフ第一王子との出会いだった。
彼は素敵な人だ。王族の証と言われているプラチナブロンドの髪に、アクアマリンの宝石を落とし込んだような青い瞳。
鋭い目をしながらも、笑うと優しい雰囲気を纏う。
第1王子として文武両道なだけでなく、周囲の人には勇敢で時に優しい王子として、とても好かれている。
そんな彼の婚約者に私が選ばれた大きな理由は、亡き母と王妃様がとても仲が良かったから。
元々候補として挙がっていた令嬢のなかで一番地位が上の家は私の家であるオリファント公爵家だ。
けど、それだけで婚約者になるとは限らず、最終的に数人になった中から、王妃様が私を選んだと聞いた。
そんな私たちは一つ違いということもあり、子供の頃はとても仲が良かった。よく王宮の庭園で2人でお茶を飲んだり、走り回ったりした。
この頃が一番楽しく、未来に対して何の疑いもなく、彼の妻になることを純粋に望んでいた。
ルドルフ様が13歳になる年に、男子のみの寮制の騎士学校に入った。
しばらく会えなくなることが寂しくて、泣く私に三年後に帰ってくるからと優しく頭を撫でて、ルドルフ様は行ってしまった。
三年間厳しい王妃教育にひたすら耐えて、ルドルフ様に会えることを楽しみにしていた。王妃様はかなり厳しく、「これぐらいあなたのお母様はもうあなたの歳には出来ていましたよ? 彼女の娘なんだからあなたにも出来ます」と口癖のように言っていた。
王妃様の期待に答えるべく、私は夜遅くまで、ずっと勉強づけの日々だった。母は私が3歳の時に亡くなり、父は私を見ると母を思い出すのかあまり会おうとはしなかった。
私が14歳の時、ルドルフ様は騎士学校を首席で卒業して帰ってきた。
久しぶりに会うルドルフ様はそれは端正な美青年に育っており、どきどきと心臓が跳ねた。
「やあ、ミーア嬢。久しぶりだな」
そう言って微笑むルドルフ様に顔が赤くなるのを止められなかった。
やっと帰ってきたルドルフ様だったけれど、王族や貴族ならば16になる年に入学する学園に入ると、会えるのはせいぜい月に一度くらい。
来年には私も学園に入るのでルドルフ様と一緒に居る時が多くなるのを楽しみにしていた。
31
お気に入りに追加
2,860
あなたにおすすめの小説
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね
さこの
恋愛
恋がしたい。
ウィルフレッド殿下が言った…
それではどうぞ、美しい恋をしてください。
婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました!
話の視点が回毎に変わることがあります。
緩い設定です。二十話程です。
本編+番外編の別視点
魅了魔法…?それで相思相愛ならいいんじゃないんですか。
iBuKi
恋愛
私がこの世界に誕生した瞬間から決まっていた婚約者。
完璧な皇子様に婚約者に決定した瞬間から溺愛され続け、蜂蜜漬けにされていたけれど――
気付いたら、皇子の隣には子爵令嬢が居て。
――魅了魔法ですか…。
国家転覆とか、王権強奪とか、大変な事は絡んでないんですよね?
第一皇子とその方が相思相愛ならいいんじゃないんですか?
サクッと婚約解消のち、私はしばらく領地で静養しておきますね。
✂----------------------------
カクヨム、なろうにも投稿しています。
田舎者とバカにされたけど、都会に染まった婚約者様は破滅しました
さこの
恋愛
田舎の子爵家の令嬢セイラと男爵家のレオは幼馴染。両家とも仲が良く、領地が隣り合わせで小さい頃から結婚の約束をしていた。
時が経ちセイラより一つ上のレオが王立学園に入学することになった。
手紙のやり取りが少なくなってきて不安になるセイラ。
ようやく学園に入学することになるのだが、そこには変わり果てたレオの姿が……
「田舎の色気のない女より、都会の洗練された女はいい」と友人に吹聴していた
ホットランキング入りありがとうございます
2021/06/17
愛しの貴方にサヨナラのキスを
百川凛
恋愛
王立学園に通う伯爵令嬢シャロンは、王太子の側近候補で騎士を目指すラルストン侯爵家の次男、テオドールと婚約している。
良い関係を築いてきた2人だが、ある1人の男爵令嬢によりその関係は崩れてしまう。王太子やその側近候補たちが、その男爵令嬢に心惹かれてしまったのだ。
愛する婚約者から婚約破棄を告げられる日。想いを断ち切るため最後に一度だけテオドールの唇にキスをする──と、彼はバタリと倒れてしまった。
後に、王太子をはじめ数人の男子生徒に魅了魔法がかけられている事が判明する。
テオドールは魅了にかかってしまった自分を悔い、必死にシャロンの愛と信用を取り戻そうとするが……。
私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。
死にたくないので真っ当な人間になります
ごろごろみかん。
恋愛
公爵令嬢セシリアは《王妃の条件》を何一つ守らなかった。
16のある日、セシリアは婚約者のレイアルドに「醜悪だ」と言われる。そしてレイアルドはセシリアとの婚約を無に帰し、子爵令嬢のエミリアと婚約を結び直すと告げた。
「龍神の贄としてセシリア。きみが選ばれた」
レイアルドは人柱にセシリアが選ばれたと言う。しかしそれはただ単純に、セシリアを厄介払いする為であった。龍神の贄の儀式のため、セシリアは真冬の冷たい湖の中にひとり飛び込み、凄まじい痛みと凍えを知る。
痛みの中、セシリアが思うのは今までの後悔と、酷い悔しさだった。
(やり直せるものならば、やり直したいーーー)
そう願ったセシリアは、痛みのあまり意識を失ってしまう。そして、目を覚ますとそこは自室でーーー。
これは屑で惰性な人生を歩んでいたセシリアが、何の因果か10歳に戻り、死なないために真っ当な人間になろうとするお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる