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ブカレア教会

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ブカレア教会
人口3000人の町ブカレアに暮らすほぼ全ての住民がこの教会に一度は来たことがある、
洗礼の儀式はここで行われる。
年初の15の日にはその3年前に産まれた子を
父と母を伴い教会に来て儀式をうけ、精霊を決めるのだ。

アーゴットの母でありジキルの妻はここに住み込みで働いている。
別に仲が悪いわけではなく、鍛冶という職業柄よくあることである。
教会は町の南西広場に面しており、ジキルの火屋根とは程近くにある。

教会の運営はリグレア大陸から派遣された司教が行っており、
人々に愛され運営費はもっぱら十分寄付だけで成り立っている。
これは既存の宗教とことなり洗礼と祈りによって人々が精霊の存在を信じるのではなく知っており。
信仰というより対価に近い感覚で向き合っているためでもあるかもしれない。
実際に精霊への祈りをやめた鍛冶屋がリフレアの魔法を使えなくなった話や
漁師が溺れ死んだ話もある。

現在教会にはこの街をはじめに作ったブカレアが彫ったといわれる紋章が飾られており、
王教会のエリス神の小さな絵画が横に安置されている。
戦時下にあっては神像を本国にお願いしたり、住民から寄付を募って作るのは憚られているからだ。
木製の像にはエリスが木精霊ドライアドと仲が悪いため加護が無い。
アーゴットが給料1年分にもなる鉄製の神像を寄付する話は住民たちに瞬く間に広まった。
住民「あのアーゴットがなあ。。あいつそんなに精霊様に感謝をしていたのか」
住人「おれも祈りは欠かさないようにしよう」
素行が悪いわけでもなく、町の好青年くらいの印象しかもっていなかったアーゴットは、
住民の間で神の子、精霊の申し子などという大げさな呼称まで広がりつつあるその日。

鍛冶ギルドにはギルドの関係者が集まって会議が開かれていた。
ジル、ジキル、ジン、ジンクス、ジリアンの5人である
ジアン、ジオ、ジオンは王教会の鍛冶師として、リグレア大陸の首都ルーファスにジオとジオンが
ジリアンの親継承者ジアンはテランの町に赴任している。
ジル「今日集まってもらったのは他でもない、ジキルにギルドマスターを移譲する件だ」
ジン「異論はない」
ジンクス「異論なし」
ジリアン「おめでとうございますジキル殿」
ジル「良かった、まあ反対するものなどいようはずもないが、すでに教会に依頼して精霊交信によって他3名の同意もとってある」
パチパチパチパチ、ギルドに拍手が沸き起こる。
ジル「そしてもう一つわしの娘、ミリアムと、ジキルの息子アーゴットの結婚を発表する」
歓声がギルド内に沸き起こる。
ギルドメンバーの子弟A「これはめでたい事が続きますな、今日は宴でもどうだみんな?」
B「おおそれがいい、料理ならまかせておけ」
C「じゃあ今日は仕事も休みだな!」
日中からこの騒ぎである。
しかし次の言葉で一同は静まり返る
ジル「そしてわしは引退し、アーゴットにジルの加護を譲ろうと思う」
静かになったギルドホール
ジン「ジルさん、悪いがジキルの息子といえば15才だろう、娘が可愛いのはわかるがそれはないんじゃないのか?神像の寄付とは別の話だろう」
ジル「加護の継承はギルドの同意も、教会の許可もいらないはずだ、これは報告だ、相談ではない」
「だがしかしお前さんたちの話もわかる、親馬鹿で加護を継承するのかといいたいのだろう?」
「それを証明するために、近々小ハンマーを皆に贈らせる事にしてある」
新任のギルドメンバーは鍛冶に使う大ハンマーを前任者からうけとり、
子弟の手伝いにつかう小ハンマーを他のメンバーに贈る風習がある。
ジル「その小ハンマーの出来をみてやってくれ、俺の言っている意味がわかるはずさ」
それまでは必要のない承認ではあるが、仮でいいというジルの意図をくみ取った他メンバー。
ジンクス「私はジルさんを信頼している、そういう事ならハンマーを楽しみにしているよ」
ジリアン「見ものですな」
ジル「それでは今日は解散とする」

アーゴットはギルドマスターの執務室で待っていた
ジルに話が大きくならないように、ここで待てと言われていたのである。
自分の子供のようなアーゴットを見ながらの話ではギルドメンバーの気持ちが収まらないかもしれないと、
ジルの考えだった。
ジル「そういえば神像はできたのか?」
アーゴット「はいこの箱に」
ジルは開けてみて顔がひきつっている
ジル「お前これ。。銀製じゃないか。。まさかジキルが銀のインゴットを寄付したのか?」
アーゴット「親父は好きに使えっていってたから」
ジル「ジキルのやつ。。。おもいきったなあ」
銀のインゴットを使っていることはジキルは知らないが・・
ジル「まあいい、これからやることは死ぬまで他言無用だぞ」
そういうと青い瞳でジルはエリス神像をみた。
聖属性 銀のエリス神像、設置された周囲5mを神域とし、あらゆる魔を消し去る
設置された周囲2㎞を加護領域として、洗礼を受けたものへの不運を取り去る
洗礼を受けたものの加護を信仰心の強さによってエリスが庇護する。

何だこの効果・・
不運を取り去る。。幸運とでもあれば強すぎる効果が街に異変をもたらすかもしれないが
この程度なら良いとして、神域・・
近寄る者を消し去るとは・・そのような不浄の者が教会に近寄れるわけもないから構わないか・・
エリスが庇護か。よくわからないが祈りの強いものは、今も強い力が使えるのだから変わらないはずだ。

あきらかに大陸の港街、ガープの真鍮のエリス神像より出来が良い・・・
ジルはその昔鑑定眼で盗み見たことがあるのだ。
接収しようと強権を王教会が使えば民衆の信仰を奪うのかと騒ぎになるだろうし、
その心配はないと思いたい。

アーゴット「なにか不味い事でも?」
ジル「いやなんでもない、よく出来たな、それじゃあジルの加護を継承する」
アーゴット「そんな簡単に出来るんですか?儀式とかは?」
ジル「儀式は神に対して行うものだ、人同士で渡すのになんの儀式がいるんだ」
「だが加護だからなお互いの効き手を合わせるんだ、俺は右利きだ、お前もか?」
そういわれアーゴットは右手を差し出す
ジル「よく覚えておけ、お前もいつか継承する日が来る」
「バッカスの加護をこの者に継承する、エリスの聖名において承認されたし、我の誓いは彼の者の誓いに」
アーゴット手の甲に鍛冶師バッカスの紋章が浮かび上がり、ジルからは消えた
ジル「そうそう、おまえはいつか継承するまで酒は一切のめないからな」
そういうことは早く言えとおもったが
アーゴット「元々、酒は飲みませんよ」
と言い返した。
ジル「俺は今夜から生まれて初めての酒だぜ。くぅうううこの日をどれだけ夢に見た事か」
ジル「それと鑑定は神の遺物に対しては使ってはならない、これは例外なく死罪だ」
ごくりと唾を呑んだ・・
ジル「人間にたいして使うときは目元を隠すんだな、鑑定で青く光ることは知られている」
アーゴット「はい・・」
ジル「それとこれから加護のある限り、お前の作るすべての製品の価値、
修理の精度は2割増しになる、バッカスの加護によって酒を飲んでしまうその日までな」


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