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鍛冶見習いアーゴット
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深緑が、強い日差しを遮り。
海風はその木々の合間をすり抜け熱を失う。
静かな林の枝を踏みしめる革靴が小枝を割った音が響き渡る。
温帯気候のその森には兎にリスのような小動物をはじめ、それを餌にする猛禽類や爬虫類
中型の肉食獣までが闊歩し、食料調達の資源庫となっている。
「ノーアの森」は、
この世界エリス、リグレア大陸の南に位置する人口5万人のリアム島。
その海沿いにある城塞港ブカレアの南に広がる森である。
斧を腰にくくりつけ、丸太を担いだ少年が空を仰ぎ見て、額から汗を流す。
「今日はこのくらいで良いか」
今年で15歳
港町ブカレアの鍛冶屋「ジキルの火屋根」の下働きである
アーゴットはいつもの日課をこなしていた。
丸太5本を手製のそりで引きずり門を抜ける。
「あとで親父さんに頼んどいた包丁とりに寄るからよろしくな」
町の入り口の警備兵が気さくに話しかけ
「わかった、でも包丁ぐらいなら今度は俺に頼めよなゲイル」
とアーゴットが返す。
小さく横に首を振る警備兵
鍛冶屋と言っても武器や防具ばかりの仕事では成り立たないのがこのご時世
包丁に農具、馬具に車輪の修理までやるが、なかなか仕事は1人でまだ任せてはもらえない。
町の連中にしたってこの道50年の親父に頼むほうが間違いがない。
俺は親父の仕事をこうして手伝い、蒔の切り出しはいつもの日課だ。
(みれば肩口から腰回りに同世代の少年よりも筋肉が張り出している)
町には5件の鍛冶屋がある、人口3000人程度の町だが日中は港に町に外部からの人間が入るから
ざっと2-3倍には増えているだろう。
現在リアム島には港町ブカレアを中心とする北部商業連合(町と町の周辺地域の総勢8000名)と
南部遊牧民の移動町シープを中心とする、南部遊牧会議(人口1万2000)
その二つを統治するリグレア大陸を支配するルーファス王家の直轄領テラン灯台街の王教会がある。(人口は3万人である)
王教会は世襲の王がリグレア神教を法に大陸を収める、王政に教皇の権限を足した。本来であれば非常に強力な政治体制であるが。
本来であればと前述したのには理由がある。
北部商業連合が独立する動きをみせているからだ。
当然王教会は認めることはしないし、中央から急遽騎士団100名が駐屯に来ている。
そんな話を酒場「猫柳亭」で、アーゴットはこの所毎晩聞かされている。
「まあ俺には関係ないさ、おっさんミルクくれ」
「おいぼうず、そろそろ酒も頼んでみる気はねえのか?」
「俺には鍛冶師だ酔っぱらってる時間なんてねーんだよ、酒なら騎士様にお出ししとけよ」
「言われなくて出すさ、中央大陸の銅貨で払ってくれる気前のいいお客様だからな」
駐屯兵のおかげで町は少し活気づいている、騎士団員は全員が名門の子弟であり
金払いが良いからだ。
この時代通貨は統一されておらず、銅貨1枚といっても島で鋳造するものより中央の銅貨のほうが価値が1割ほど高いのである。
銅貨1枚は銀貨は銅貨5枚、金貨は銅貨10枚
銅貨1枚の価値は1000円でそれ以下の支払いは物々交換が基本だ、
アーゴットの場合は余分に切り出した蒔を支払いにしている。
「じゃあなおっさん」
アーゴットはこの夜から毎晩の日課があるのだ
明日の朝使う斧を打つのである。腰には短めの柄を皮布で巻いただけの剣が装備されている。
朝、斧を振るい蒔をあつめ、昼過ぎまで親方の仕事を手伝い。
親父の帰った後の自分だけの鍛冶場で剣を打つ、材料は斧だ。
この街の鍛冶職人は結婚した女性と同居出来ない呪いのようなしきたりがあり
家事他雑用もこなさねばならないので午前中しか鍛冶仕事は基本しない。
そして剣の練習をしたあと、夜には斧に打ち直す。
斧の材料は鉄と錬鋼という付近の山でとれる特産品の合金だ。
錬鋼は鉄と混ぜると硬度だけでなく粘度もあがり折れ欠けしなくなるのが特徴といわれている。
鉄は鍛鉄という言葉があるように打てば打つほど層が重なり研いで切れ味が増す。
練鋼には打つほど叩いた力が蓄積する効果がある。
せいぜい1000分の1程度の能力向上であるため、そのために時間をかけて打ち直すものはほぼいない。
高性能の武器を求める騎士などは鉄をレアメタルであるカーマイトやミスリルに変えて注文し、
装備を更新するものだが。
金のないアーゴットはこれを毎日2回打ち直しているのである。
父の手伝いをはじめた7年前から・・・。
この世界エリスの住民は
精霊神エリスの加護により生まれた時から精霊術の素養を兼ね備えている。
とはいえ平民は4大精霊のうち一つを選択し3歳で洗礼を受け、
8歳になるまでの5年間毎日欠かさず祈りを捧げることによって、
やっと最下位の基本魔法を使える程度にしかならない。
鍛冶の家系であれば火精霊サラム
漁師の家系であれば水精霊アクア
狩人の家系ならば風精霊シルフ
商人や農民であれば旅の無事と作物の豊穣のために土精霊ノームに祈りを捧げるのが普通だ。
鍛冶場にはアーゴットの使える唯一の魔法リフレア(発火させたことのある火炎鉱石にもう一度火を灯す精霊魔法)
によって火がともされ、ジキルのハンマーによって軽快に音が鳴り響いている。
魔術師ならば火炎鉱石に限らず、なんでも火を戻す事が出来るが平民にはこのような強力な触媒があって
始めて再点火できる。
鍛冶師であれば小さな火炎鉱を皮袋にいれて持ち歩くのが普通であり、
アーゴットも着火したあとは腰にさげた袋にしまう。
ざっと5000回にもなるこの打ち直しによって
通常の鉄武器の5倍もの性能を持つ剣と斧は今もなお成長中である。
鉄とカーマイトやミスリルの性能比ですら2割にも満たないのであるから、
アーゴットの鍛えるこの斧はいまや規格外の強さになっているが、
本人はもちろんまわりも気が付いてはいない。
「せめて火炎鉱でも買えればなあ。。。炎の剣ブレイブソード!、なんてものが打てるかもしれないが」
「まあそれじゃ斧にした時に木が燃えちまって仕事にならねえか、、、買えるわけもないし夢のまた夢だな」
(ちなみに火炎鉱は素材として使えば、完成品に火属性を付与する高級鉱石で、斧や剣に使う量であればアーゴットの給料10年分はいる)
(火の精霊術を使わない長期航海の漁師が、棒状に加工して火種に船長が携帯する事があるが高価)
別に剣士を目指しているわけではない、ブカレアの住民は戦時には全員兵士となる
アーゴットは完璧を目指す思考があり、石の剣での練習では本当の剣術は身につかないと思っている。
このような手間を毎日かけているのはそのせいだ。
町を囲う城塞のような石壁は自衛のためであるが、
住民やアーゴットの独立に対する思いや自由思想を育む礎に、
独立運動は町の住人会の暴走ともいわれているが、
住民の気質からいっていつかこんな日が来るのは時間の問題だったのかもしれない。
「よっしこんなもんか」
いつもどおり斧を打ち終えると、
鍛冶場の音が止んだタイミングを、
見計らうかのように扉をノックする音が聞こえる
「入って良いぞー」
どうせ同い年のミリアムである、鍛冶ギルドの受付でギルド長の娘でもある。
ミリアム「アーゴットまたこんな時間まで」
(時刻で20時といったところだ)
アーゴット「まあそういうなって斧と剣2本分の鉄なんて、食うのに精いっぱいでおれの稼ぎじゃ買えねえんだよ」
(それに鍛冶仕事の練習にもなる)
島の一般的な給与平均は7万円程度、自給自足の生活が基本で、
成人の警備兵で12万円、家賃は無料か1万円程度だが、
鉄のインゴットは1本で現在50万円。
練鉱石なら1㎏で1万円だ。
金属の値段がとても高騰しているのは隣国アーガイアとの慢性的な戦争の度に海に飲まれる膨大な鉄が原因だ。
戦争の始まる10年も前なら価格は10分の1程度だったらしいが、今では農家の隙や鍬まで登録制だ。
産まれた時からこの値段のアーゴットには鉄や金属は大事に扱うもの、敬意を払うものとして頭に刷り込まれている。
これには師匠であり親でもあるジキルの影響も大いにある。
武具の材料になる鉄を含めた金属全般は現在王教会と町が管理しており、
新規で個人所有するには手続きが必要だし高価である。
そのため石斧も普及している程で貴重なものだ。
職人には生産活動のために一定量の個人所有が認められている。
そんなわけで鍛冶仕事を手伝うといっても、見ているだけの事が多いのである。
アーゴット「親父がいつ死んでも、俺はもう跡をつげるぜ?」
磨き上げた斧をミリアムに見せつける。
ミリアム「そんな事ジキルさんが聞いたら殺されるわよ」
ジキルにしても手伝わせたいのはやまやまだが貴重な金属を扱うわけで、
戦争でも終わればと思うに留まっている。
しかしアーゴットの腰にいつもある斧を毎日みて腕が上がっているのは理解しているのは秘密だ。
ミリアム「パン屋のエリーがこれ持っていってだってさ」
いつも売れ残りのパンを俺にわけてくれる38歳のパン屋店主だ、美人じゃないけど明るくて優しい。
「ありがてえ腹減ってたんだよ」
(サラム様今日も糧をありがとうございます)と心の中で祈る
むさぼり食うアーゴット
そういうとミリアムは鍛冶ギルドの紋章の入った銀の水筒から水をコップに注いでくれる。
銀には殺菌や防毒の効果があるが貴重な銀を水筒に出来るのは貴族くらいのものだ。
鍛冶ギルドの娘なのだから可能なのだろうが娘にこれを持たせるあたり、
ギルドマスターの親馬鹿ぶりがうかがえる。
ミリアム「ねえあたし明日暇なんだけど、朝の森に私も連れて行ってよ」
アーゴット「はあ?森の入り口とはいえ女連れていける場所じゃないんだぞ仕事だ仕事」
ミリアム「じゃあ明日はパン貰ってきてあげないわよ?」
(っく。。。こいつ。。。)
アーゴット「大人しくしとけよ?」
ミリアム「やったあ、じゃあお弁当は任せて!」
そういって扉から跳ねるように家を飛び出していった。
まあ仕方ないか。。。
海風はその木々の合間をすり抜け熱を失う。
静かな林の枝を踏みしめる革靴が小枝を割った音が響き渡る。
温帯気候のその森には兎にリスのような小動物をはじめ、それを餌にする猛禽類や爬虫類
中型の肉食獣までが闊歩し、食料調達の資源庫となっている。
「ノーアの森」は、
この世界エリス、リグレア大陸の南に位置する人口5万人のリアム島。
その海沿いにある城塞港ブカレアの南に広がる森である。
斧を腰にくくりつけ、丸太を担いだ少年が空を仰ぎ見て、額から汗を流す。
「今日はこのくらいで良いか」
今年で15歳
港町ブカレアの鍛冶屋「ジキルの火屋根」の下働きである
アーゴットはいつもの日課をこなしていた。
丸太5本を手製のそりで引きずり門を抜ける。
「あとで親父さんに頼んどいた包丁とりに寄るからよろしくな」
町の入り口の警備兵が気さくに話しかけ
「わかった、でも包丁ぐらいなら今度は俺に頼めよなゲイル」
とアーゴットが返す。
小さく横に首を振る警備兵
鍛冶屋と言っても武器や防具ばかりの仕事では成り立たないのがこのご時世
包丁に農具、馬具に車輪の修理までやるが、なかなか仕事は1人でまだ任せてはもらえない。
町の連中にしたってこの道50年の親父に頼むほうが間違いがない。
俺は親父の仕事をこうして手伝い、蒔の切り出しはいつもの日課だ。
(みれば肩口から腰回りに同世代の少年よりも筋肉が張り出している)
町には5件の鍛冶屋がある、人口3000人程度の町だが日中は港に町に外部からの人間が入るから
ざっと2-3倍には増えているだろう。
現在リアム島には港町ブカレアを中心とする北部商業連合(町と町の周辺地域の総勢8000名)と
南部遊牧民の移動町シープを中心とする、南部遊牧会議(人口1万2000)
その二つを統治するリグレア大陸を支配するルーファス王家の直轄領テラン灯台街の王教会がある。(人口は3万人である)
王教会は世襲の王がリグレア神教を法に大陸を収める、王政に教皇の権限を足した。本来であれば非常に強力な政治体制であるが。
本来であればと前述したのには理由がある。
北部商業連合が独立する動きをみせているからだ。
当然王教会は認めることはしないし、中央から急遽騎士団100名が駐屯に来ている。
そんな話を酒場「猫柳亭」で、アーゴットはこの所毎晩聞かされている。
「まあ俺には関係ないさ、おっさんミルクくれ」
「おいぼうず、そろそろ酒も頼んでみる気はねえのか?」
「俺には鍛冶師だ酔っぱらってる時間なんてねーんだよ、酒なら騎士様にお出ししとけよ」
「言われなくて出すさ、中央大陸の銅貨で払ってくれる気前のいいお客様だからな」
駐屯兵のおかげで町は少し活気づいている、騎士団員は全員が名門の子弟であり
金払いが良いからだ。
この時代通貨は統一されておらず、銅貨1枚といっても島で鋳造するものより中央の銅貨のほうが価値が1割ほど高いのである。
銅貨1枚は銀貨は銅貨5枚、金貨は銅貨10枚
銅貨1枚の価値は1000円でそれ以下の支払いは物々交換が基本だ、
アーゴットの場合は余分に切り出した蒔を支払いにしている。
「じゃあなおっさん」
アーゴットはこの夜から毎晩の日課があるのだ
明日の朝使う斧を打つのである。腰には短めの柄を皮布で巻いただけの剣が装備されている。
朝、斧を振るい蒔をあつめ、昼過ぎまで親方の仕事を手伝い。
親父の帰った後の自分だけの鍛冶場で剣を打つ、材料は斧だ。
この街の鍛冶職人は結婚した女性と同居出来ない呪いのようなしきたりがあり
家事他雑用もこなさねばならないので午前中しか鍛冶仕事は基本しない。
そして剣の練習をしたあと、夜には斧に打ち直す。
斧の材料は鉄と錬鋼という付近の山でとれる特産品の合金だ。
錬鋼は鉄と混ぜると硬度だけでなく粘度もあがり折れ欠けしなくなるのが特徴といわれている。
鉄は鍛鉄という言葉があるように打てば打つほど層が重なり研いで切れ味が増す。
練鋼には打つほど叩いた力が蓄積する効果がある。
せいぜい1000分の1程度の能力向上であるため、そのために時間をかけて打ち直すものはほぼいない。
高性能の武器を求める騎士などは鉄をレアメタルであるカーマイトやミスリルに変えて注文し、
装備を更新するものだが。
金のないアーゴットはこれを毎日2回打ち直しているのである。
父の手伝いをはじめた7年前から・・・。
この世界エリスの住民は
精霊神エリスの加護により生まれた時から精霊術の素養を兼ね備えている。
とはいえ平民は4大精霊のうち一つを選択し3歳で洗礼を受け、
8歳になるまでの5年間毎日欠かさず祈りを捧げることによって、
やっと最下位の基本魔法を使える程度にしかならない。
鍛冶の家系であれば火精霊サラム
漁師の家系であれば水精霊アクア
狩人の家系ならば風精霊シルフ
商人や農民であれば旅の無事と作物の豊穣のために土精霊ノームに祈りを捧げるのが普通だ。
鍛冶場にはアーゴットの使える唯一の魔法リフレア(発火させたことのある火炎鉱石にもう一度火を灯す精霊魔法)
によって火がともされ、ジキルのハンマーによって軽快に音が鳴り響いている。
魔術師ならば火炎鉱石に限らず、なんでも火を戻す事が出来るが平民にはこのような強力な触媒があって
始めて再点火できる。
鍛冶師であれば小さな火炎鉱を皮袋にいれて持ち歩くのが普通であり、
アーゴットも着火したあとは腰にさげた袋にしまう。
ざっと5000回にもなるこの打ち直しによって
通常の鉄武器の5倍もの性能を持つ剣と斧は今もなお成長中である。
鉄とカーマイトやミスリルの性能比ですら2割にも満たないのであるから、
アーゴットの鍛えるこの斧はいまや規格外の強さになっているが、
本人はもちろんまわりも気が付いてはいない。
「せめて火炎鉱でも買えればなあ。。。炎の剣ブレイブソード!、なんてものが打てるかもしれないが」
「まあそれじゃ斧にした時に木が燃えちまって仕事にならねえか、、、買えるわけもないし夢のまた夢だな」
(ちなみに火炎鉱は素材として使えば、完成品に火属性を付与する高級鉱石で、斧や剣に使う量であればアーゴットの給料10年分はいる)
(火の精霊術を使わない長期航海の漁師が、棒状に加工して火種に船長が携帯する事があるが高価)
別に剣士を目指しているわけではない、ブカレアの住民は戦時には全員兵士となる
アーゴットは完璧を目指す思考があり、石の剣での練習では本当の剣術は身につかないと思っている。
このような手間を毎日かけているのはそのせいだ。
町を囲う城塞のような石壁は自衛のためであるが、
住民やアーゴットの独立に対する思いや自由思想を育む礎に、
独立運動は町の住人会の暴走ともいわれているが、
住民の気質からいっていつかこんな日が来るのは時間の問題だったのかもしれない。
「よっしこんなもんか」
いつもどおり斧を打ち終えると、
鍛冶場の音が止んだタイミングを、
見計らうかのように扉をノックする音が聞こえる
「入って良いぞー」
どうせ同い年のミリアムである、鍛冶ギルドの受付でギルド長の娘でもある。
ミリアム「アーゴットまたこんな時間まで」
(時刻で20時といったところだ)
アーゴット「まあそういうなって斧と剣2本分の鉄なんて、食うのに精いっぱいでおれの稼ぎじゃ買えねえんだよ」
(それに鍛冶仕事の練習にもなる)
島の一般的な給与平均は7万円程度、自給自足の生活が基本で、
成人の警備兵で12万円、家賃は無料か1万円程度だが、
鉄のインゴットは1本で現在50万円。
練鉱石なら1㎏で1万円だ。
金属の値段がとても高騰しているのは隣国アーガイアとの慢性的な戦争の度に海に飲まれる膨大な鉄が原因だ。
戦争の始まる10年も前なら価格は10分の1程度だったらしいが、今では農家の隙や鍬まで登録制だ。
産まれた時からこの値段のアーゴットには鉄や金属は大事に扱うもの、敬意を払うものとして頭に刷り込まれている。
これには師匠であり親でもあるジキルの影響も大いにある。
武具の材料になる鉄を含めた金属全般は現在王教会と町が管理しており、
新規で個人所有するには手続きが必要だし高価である。
そのため石斧も普及している程で貴重なものだ。
職人には生産活動のために一定量の個人所有が認められている。
そんなわけで鍛冶仕事を手伝うといっても、見ているだけの事が多いのである。
アーゴット「親父がいつ死んでも、俺はもう跡をつげるぜ?」
磨き上げた斧をミリアムに見せつける。
ミリアム「そんな事ジキルさんが聞いたら殺されるわよ」
ジキルにしても手伝わせたいのはやまやまだが貴重な金属を扱うわけで、
戦争でも終わればと思うに留まっている。
しかしアーゴットの腰にいつもある斧を毎日みて腕が上がっているのは理解しているのは秘密だ。
ミリアム「パン屋のエリーがこれ持っていってだってさ」
いつも売れ残りのパンを俺にわけてくれる38歳のパン屋店主だ、美人じゃないけど明るくて優しい。
「ありがてえ腹減ってたんだよ」
(サラム様今日も糧をありがとうございます)と心の中で祈る
むさぼり食うアーゴット
そういうとミリアムは鍛冶ギルドの紋章の入った銀の水筒から水をコップに注いでくれる。
銀には殺菌や防毒の効果があるが貴重な銀を水筒に出来るのは貴族くらいのものだ。
鍛冶ギルドの娘なのだから可能なのだろうが娘にこれを持たせるあたり、
ギルドマスターの親馬鹿ぶりがうかがえる。
ミリアム「ねえあたし明日暇なんだけど、朝の森に私も連れて行ってよ」
アーゴット「はあ?森の入り口とはいえ女連れていける場所じゃないんだぞ仕事だ仕事」
ミリアム「じゃあ明日はパン貰ってきてあげないわよ?」
(っく。。。こいつ。。。)
アーゴット「大人しくしとけよ?」
ミリアム「やったあ、じゃあお弁当は任せて!」
そういって扉から跳ねるように家を飛び出していった。
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