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SDR-10002: 黒兎(くろうさぎ)
しおりを挟むSDR-10002: 黒兎(くろうさぎ)
日和神聖帝国所属 三ツ葉重工業 供与機
体長高: 175cm
総重量: 270kg
総出力: 1033kW
推定開発費用: 6420億円
SDR-10002: 黒兎(くろうさぎ)は大陸最南端戦争第三次武力侵攻中期に三ツ葉重工業から供与された機体であり、少なくとも合計23機が日和神聖帝国で運用された実績が残っている。
第二次武力侵攻終結直後、三ツ葉重工業と日和神聖帝国は不慮の武力衝突により敵対関係となってしまった。ただ、この関係は双方が望むものではなく、日和神聖帝国はこれ以上不用意な形で敵対関係勢力を増やしたくなかったし、また、三ツ葉重工業側もクグツという大変興味深い新技術の発明に至った日和神聖帝国と技術的な提携を結びたかったのである。
そのため第三次武力侵攻開始前の段階から三ツ葉重工業から秘密裏に日和神聖帝国への接触があったと言われ、結果行われた秘密会談は10を超えたとされている。とはいえ、三ツ葉重工業は第三次武力侵攻時点でいくつかの南端国家に対して技術提供とクグツ生体部品の委託生産を行っており、日和神聖帝国としても簡単に三ツ葉重工業を信用することも、技術提携を容認することもできなかった。そのため、この二大勢力の密会は第三次武力侵攻後も続けられ、その密会内容は日和神聖帝国に対する三ツ葉重工業側からの情報提供で占められていたと言われる。主に、三ツ葉重工業が保有する融合大陸(コンチネント・オブ・フュージョン)の歴史、紛争、どのような国家があるか、また三ツ葉重工業の成り立ちにいたるまで詳細に共有した。それは、融合大陸へ融合したばかりの日和神聖帝国にとって大変貴重な情報ばかりであったが、巨大複合企業である三ツ葉重工業にとっては取るに足らない情報にすぎなかったのである。
ともあれ、この膨大な情報の共有と、三ツ葉重工業がいずれの勢力にも与さない、または与する必要が無い巨大企業であるということが日和神聖帝国側にも十分に伝わり、第三次武力侵攻中期に三ツ葉重工業と日和神聖帝国は勢力ぐるみでの技術提携契約を結ぶこととなる。この時、契約中の南端国家の手前、大々的に日和神聖帝国を支援できない三ツ葉重工業側から生産元を秘匿した状態の実験機体が数百機ほど供与されている。
その機体の1つが、このSDR-10002: 黒兎(くろうさぎ)である。
装甲には三ツ葉重工業製の改良型のアラミディカル合成繊維を使用、物理飛翔体のみならず融合系兵器に対しても顕著な防御力を発揮することに成功していた。また、生体部品を60.087%にまで削減しセンサー類や融合炉搭載のスペースを大きく確保することで総合性能の向上が図られている。兵装は融合石の塊を丸ごと搭載しエネルギー源とする直粒融合砲で、広く拡散するように大出力の融合砲を発射し一撃のもとに中隊規模の部隊を殲滅することが可能とされていた。外観は、三ツ葉重工業お得意の生体部品とアラミディカル合成繊維により非常になめらかで曲線的なシルエットが与えられており、ブラックパールとブラッドレッドの配色と、完全機械型の頭部、また兎型目の耳介を模した大型センサーによりエキゾチックで独特な雰囲気を醸し出している。
この機体は、三ツ葉重工業から供与機であるが、その事実は固く秘匿されるべきものであったため、その運用方法や配備場所については非常に資料が少ない。戦後に発見された資料に、おそらく本機であろうと思われる機体の目撃情報や強襲を受けた部隊の記録カメラに朧げに映っていることが確認されているが、それもごくわずかである。
非公式のデータとして日和神聖帝国の元将校の証言が残っているが、一種の都市伝説的なものとして扱われ正確な情報として認定されていないのが現状である。
日和神聖帝国元将校の証言
「あれらは、三ツ葉重工業からの供与機だった。まぁお偉いさん方から聞いたぶんにはそうだったのさ。だがねぇ、あれらはどこにも配属されなかった。あれらはあれらで何かずっと探していたよ。そうさ、あの大きな耳をクルクル回してねぇ。最初は単なる高性能な偵察機だと思っていたよ。でもある日、奇妙なことが起きたんだ。
黒兎たちが突然、一斉に同じ方向を向いたんだ。まるで何かを聞いたかのように。そして...一瞬にして姿を消したんだ。
数日後、あたしらは驚愕の報告を受けた。南端の某国のある町が一晩で壊滅したというんだ。生存者はほとんどいなかった。現場に残されていたのは、融合エネルギーの痕跡と...黒い毛皮のような物質だけだった。
その後も、黒兎たちは時々姿を消した。そして必ず、どこか小さな町や村で破壊が起こった。まるで...何かの声に導かれているかのようだったよ。
最も恐ろしかったのは、ある日の夜のことだ。あたしらは基地の近くで作戦会議をしていた。そのとき、遠くから聞こえてきたんだ。ウサギの鳴き声のような...けれど人間の悲鳴のようなその音を。そして黒兎たちが一斉に基地の方向へ向き直ったんだ。私たちはその場で凍りついた。幸い、その夜は何も起こらなかった。だが...あの音は今でも忘れられない。
わたしらは、帝国は本当に、あの機体を制御できていたのかねぇ。それとも...別の何かが、あれらを操っていたのだろうか。」
SDR-10002: 黒兎(くろうさぎ)の情報は大陸最南端戦争後、途絶えている。
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