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二十話 とある戦いに挑む男性の話
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これは、いつの話か分からない。ここではない、何処かの話。
ここは、人間の町にある、俺の家。俺と、女が2人。
この世界は、人間が武器を持って、日々戦いをする世界。
魔法?・・・なぁ、これって本当に、魔法なのか?
今は真夜中。自宅で椅子に座っている俺。その向かいにあるベッドに腰掛ける、桃色髪のナイスバディな裸の女。
「うあああっ、ああっ、ああああああっ」
そして、俺の胸元で咽び泣く、白髪の小柄な女。
「・・・さすがの俺でも。何も言えんな、ソレは」
震えが止まらない。マジかよソレ。
「・・・私。団長さんに、悪い事をしちゃったかな」
その一方で、冷静な桃色髪の女。
お前・・・ゲンブは。どうして、そんなに冷静でいられるんだ?
「今なら分かる。団長さんがどんな気持ちで、私にあんな話をしたのか。どれほどの覚悟を持って、私と向き合ってくれたのか」
少し前まで、お前も酷く落ち込んでいたのに。
「話を聞いて、取り乱した私に、殺される覚悟をしてまで。私達の真実に、向き合ってくれた。だから、私はもう迷わない。逃げずに、この真実を受け入れる」
ゲンブは何も言わず、枕を持って立ち上がる。少し汚れた枕のシーツを新しくし、オマケに2人分の枕を用意してくれた。
そして何も言わず、服を着る。ビッグス用に用意した男物の服のスペアだが、裸で出歩くよりはマシだろうな。
「リオン、お金を貰うね。私は私で、やりたいことがあるの」
・・・そうか、なるほど。お前はお前の決着を付けに行くわけか。
なら、俺はコイツの相手だな。未だに俺の胸元で泣く女を担ぎ上げて、ベッドに優しく乗せる。お互い服を着たままだ。とりあえず、横になろうぜ?
昨日。久々に故郷に帰って来て。
俺達を狙っていた奴等にそれ相応の報復をして、これでしばらくは安泰だと、2~3日はゆっくりできると、思っていたのに。
いつのまにか、新しい同胞が増えていて。いや、これ自体は歓迎するぜ?ほほう鳥になれる同胞か、初めて見るタイプだな。・・・初めて見る奴、だよな?
なのに、芦毛のおっさんと、大怪我から復帰したばかりの虎は、鳥の同胞こと鴉の事を、昔馴染みの仲間だと言い張りやがる。そして鴉本人も、俺達とは旧知の仲だと言ってきやがった。
確かに、俺達はどれだけの付き合いか分からないほどに長くは共に生きてはいるがな。これまでに、鴉なんて同胞はいなかった。これは断言して言える。
実際、俺と共に故郷を離れていたヨヅキとビッグスは首を傾げていた。俺もだ。どういうことだよオイ。まるで意味が分かんねえぞ。
だが、ここで。俺は嫌な予感を感じた。感じてしまった。
故郷の森を離れていた者達と、故郷の森にいた者達と、意見が食い違うということは。まさか、いやまさかそんなことは・・・。
その時に、ヨヅキと視線が合った。いや、アイコンタクトってやつだな。俺は咄嗟に、虎の元気な顔さえ見れたら十分だと言って、俺とヨヅキは森から少し離れて。
・・・本当なら、ビッグスにも声を掛けるべきだったのかもしれない。だが、そんな余裕は無かった。というより、故郷に帰る少し前にヨヅキとは話したからな。
俺達って何者なのだろうか、と。だから俺とヨヅキは違和感にいち早く気づき、故郷の森を離れることができたのだろう。
そして、俺達2人だけで再びここに戻って来て。色々と話をした。
ヨヅキは最後まで嫌がっていた。仲間を疑いたくない、もし本当にそんなことが起きるのであれば私では何もできない、怖くて何もできない、と怯えてしまって。
だから、あの人の力を借りることにした。今の俺達には、故郷の同胞達以外にも、頼れる仲間が2人もいるからな。
そのうちの1人はゲンブと共にデート・・・じゃなくて、仕事のために遠出していたので。もう1人の方、我らの先輩殿に。そう言えば俺達って、先輩殿の本名を聞いてないよな・・・。
まあともかく、ヨヅキは先輩殿に、ひとまずは詳細を伏せて協力を頼んだが。先輩殿は二つ返事で引き受けてくれたそうだ。マジで有り難い。
俺は俺で、再び森に戻り、ビッグスに町に来るように話をして。この時にビッグスに話を聞こうとも思ったが・・・俺も、聞くのが怖かったんだ。
そして、その結果が・・・。たった1日で、ビッグスまで。鴉の事を長い付き合いだと、言っていたそうだ。これでも十分キツいぜ。
でも、今はそれ以上にキツい。マジかよ団長、なんという真実を調べやがったんだよチクショウめ。そしてそれを、朝まで仲良くヤった後のゲンブに話すとか中々のクレイジーだな。なるほど、ウチに来たばかりのゲンブが泣いてた理由は分かった。
・・・しかし、ゲンブと真正面から向き合ってくれる男も、団長しかいない。先程のゲンブの話を聞く限りでは、団長も覚悟を決めた上での決断だったのだろう。だから、これ自体はとやかく言うつもりは無い。むしろ、団長の覚悟に感謝している。
ヨヅキは未だに、俺の胸の中で泣いている。
「もう嫌だ、怖い、怖すぎる。リオン、怖いの、だからリオンが欲しいの、お願いリオン、私と交尾してよ、私をイジめてよ」
俺もだ。俺も限界だ、もう何も考えたくない。今すぐヨヅキとヤりたい。何も考えずにヨヅキと延々と朝までヤりたい。だけど、
「怖い、嘘だ、私は、私達は、いや、嘘だ、あ、ああっ」
おそらく、それはしてはいけない。
「嫌だ、怖い、お願いリオン、私を抱いて、思いっきりヤって、優しくしないで、手を縛ってもいいから、朝までヤっても、気を失うまでヤってもいいから、私を」
ヤってはいけない。誤魔化してはいけない。
「お願い、私をメチャクチャにしてよ、いつもみたいにイジめてよ、私を好きにしていいから、お願いだから、今なら何でもヤってあげるから、う、うう、ううあああ」
この前が、そうだったから。
ヨヅキが、森から離れ人間の生活を体験したことで。知らないはずの事ができてしまって。それで戸惑い、迷い、恐怖し。それを忘れるために、俺を求めて。
俺もまた、自分なりに俺達の正体について考えようとして、俺達の真実を調べようとして。だけど結局、何も考えるのをやめて、ヨヅキを求めて。
「助けて、誰か助けて、私を助けて、私は、私は、私は」
無意識に、思い出さないようにするために。俺達がいったい何者なのかを、分からないようにするために。
俺は、そう気づいていたはずなのに。やはり、もうどうでもいいと、これが魔法の力なら、全てを受け入れると。そう思ってしまった。
こんなの認めない。こんなの受け入れる訳にはいかない。
こんな魔法などクソ食らえだ。これは呪いか祟りの類だ。
「あああっ!怖いっ!怖いの!お願いだから、う、う、うあああああああああっ!お願いだからっ!私とヤって!朝まで抱いて!ねぇっ!ねぇったら!」
だから。もう俺は、逃げない。
「なんでもヤるから、なんでもヤってあげるから、そうだ、この前先輩から教わった新技があるの、それをヤってあげる、だから、ねえ、お願い、私を」
今度こそは。絶対に逃げたりしない。
「う、うぅ、何で、リオン、無視、する、の・・・?う、うん、そうだよね。服を着てたらヤれないよね。ちょっと待ってて。今、裸に・・・って、えっ」
だから、ヨヅキを抱く。
「えっ、ちょっと、何するの、やめてよ、何してるの?」
ただし。こうやって抱く。
「ねぇ。ちょっと、これ、どういう、交尾なの?」
交尾はしない。してやらない。
「う、ぐ、ぐう、いや、ダメ、振りほどけ、ない」
ヨヅキの両腕ごと、肘の関節を固定するように、ガッチリと抱き締める。ついでに足も絡ませてやるぜ。これはベッドの上でやる行為と言うよりは、
「う、動け、な、い」
戦いの最中で敵を捕まえるための技だな。
「ね、ねぇ、何コレ、意味分かんない、んだけど」
それでは、お望み通り。朝まで抱いてやるぜ?
「ぐ、う、う、うりゃあああああああああっ!」
ヨヅキは必死に力を込めて、俺の体を振り解こうとする。だが、無理。ヨヅキは小柄ながら、人並み以上・・・いや、もはや人ですらない力を持ってはいるが、
「はぁっ、はぁっ、ぐ、うう、やっぱり、勝てない・・・」
それでも、俺の方がヨヅキより力が強いからな。ついでに言うと体格でも大きく勝っている。なのでせいぜい動かせるとしたら、手首の先と足首の先ぐらいだな。
「ぐ、う、うあああああああああっ!」
ということで今度は、首をできる限り動かして、俺に頭突きを仕掛けてくる。ありとあらゆる体術を身に付けているヨヅキの、得意技の一つだな。
だが、ヨヅキはさっきまで、俺の胸元に泣きついていたので。その体勢のままガッチリ固定してやったもんだから、
「う、ダメだ、こんなんじゃ、ダメ、だ」
この体勢と密着具合では、頭突きでは大した威力を出せない。不意打ちで顔面にでも食らわない限りは、俺には通用しない。
そして他にも。ヨヅキには、体術とは別のとっておきの技があるが、
「ぐ、あぐぐぐ、うう、何この服、噛み切れないぃ・・・」
そりゃあそうだ。仮にも俺は冒険者を名乗っている男だ。
人間の歯で噛みつかれた程度では、俺の服は食い千切れん。もしこれでヨヅキが狐の姿だったら、あるいは食い千切れたかもしれないがな。
「う、うう、せっかく先輩に乳首責め手コキを教えてもらったのに・・・」
オイ、お前いったい何を教わっ・・・チクショウ興味があるぜ。
それでも、俺は我慢する。ヨヅキは必死に抵抗する。
「う、う、うう、何で、何でこんな事を、う、ううっ」
全身を動かしてジタバタして、服に噛みついて、あるいはかろうじて動く手を動かして、服で爪で引っかいたりして。
「い、いや、怖い、やめて、こんなことしないで、こういうのじゃなくて、もっと別の事で、怖がらせてよ、ねえ、お願いだから」
だが、やはり無意味。どう足掻いても、ヨヅキは俺から逃げられない。
「や、やめて、お願いだから、こんなことしないでよ、無視しないでよ、交尾してよ、エッチしてよ、セックスしてよ、お願いだから、何もかも忘れさせてよ、う、あ、あ、嫌あああああああああああああっ!」
俺だってヤりたい。こんな事はしたくない。
こんなに恐怖し、泣き叫ぶヨヅキなんて見たくない。
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ、ゲンブが死んでいたなんて、嘘だ、嘘だああっ!」
だが、続ける。まだまだ続けてやる。
「嫌だあああっ!絶対に嫌だあああっ!死んでなんかないっ!私は、私達は、死んでなんかないっ!う、うああ、嘘だ、あれはゲンブが冗談を言ってるんだ、だから、あ、あ、う、うああああああああああああああああああああっ!」
お前を泣かしていいのは、俺だけだ。
だから、この真実と向き合う。ヨヅキを、俺達を支配する魔法と戦う。これ以上、ヨヅキが苦しまないようにするために。もう二度と、泣かないようにするために。
だから、俺は。俺達の真実と、戦う。
ヨヅキは、抵抗を止めた。というよりは体力を使い果たした。
「酷い、よ。離して、よ。私は一度姿を変えたら、時間が必要なのに・・・う、ううっ、なんでリオンやゲンブは自在に姿を変えられるの・・・私と何が違うのよ・・・」
違いも何も・・・この町に来るまでのお前は人間嫌いを拗らせすぎて、人間の姿になるのは最小限にしていたからな。ただ単に、練習不足だ。
ついでに言うと、お前は負けず嫌いだから。大型の獣を相手にしても、白狐の姿のままで逃げずに立ち向かおうとするから。
だから俺は、姿を自由に変えられるように練習したんだ。状況に応じて姿を変え、どういう事態に陥っても戦えるようにするために。お前の代わりに戦うために。
あの時もそうだったな。白い狐の毛皮は高く売れるからと、お前を弓矢で狩ろうとした女がいて、なのにお前は狐の姿で戦おうとしたから、その女をブチのめしてやったんだよな。あの桃色髪の――。
って待て、このナイスバディな体つきには見覚えがあるぞ。・・・嘘だろ、オイ。
「嫌だ、嘘だ、私達は死んでなんかない、生きているんだ、私も、リオンも、仲間達も、みんな生きているんだ、あの時もそうだ、虎ちゃんが崖から落ちた時、も・・・ひいいいいぃっ!?い、う、うあ、嘘、だ」
ああ、そうか。俺達は同胞だったな。つまりはみんなも、そうなのか。俺達と同じように。しかも、俺達の手によって。
「ち、違うの、ごめんなさい、そんなつもりで、虎ちゃんを脅したつもりは、いや違う、こんなのありえない、虎ちゃんが服を、あんな可愛い服を着てる、だなんて、何で、分かる、の?」
チクショウお前のせいで俺も思い出しちまったぞ。森で迷子になって泣いていたのに、そのうえ更に俺とお前の2人掛かりで追いかけ回しちまったのかよ。
は、はは。俺達の真実って、思ってた以上に、酷かった、な。
俺は、まだ耐えている。というより、
「あ、ああ、そうなん、だ。ゲンブが言ってた、大猿の、ように。芦毛さんも、私、が。あ、ああっ・・・私は、仲間に、なんて、ことを」
コイツの方がはるかに重症なので。どうにか、持ちこたえている。
「私が、私が、仲間を、私が、私が」
そうだよな。お前は同胞達の中でも特に、仲間意識が強いからな。
「私が、殺して、しまった。そして、リオンは、ゲンブを。ゲンブは、ビッグスを。鴉は恐らく、芦毛さんが。虎ちゃんも、私達が殺したようなもの」
こんな真実、受け入れられるわけがないよな。
「私は、私達は、そんな、仲間、だった、の?私達は、お互いに、殺して、殺されて。だけど、そんな事を忘れて、いや、忘れさせられて。仲間だと、勘違い、して」
だが、俺は受け入れる。受け入れるしかない。
「私は、何で。生きて、いるの?何の、ために?仲間のため、だなんて。もう、言えない。私は、私達は、仲間なんか、じゃ、い、嫌だ、嫌だ、それを否定するのは嫌だ、それを否定するのだけは嫌だああああああああああああっ!」
まずは俺が真実と向き合わないと。ヨヅキがいつまで経っても、真実と向き合ってくれないから。魔法の力に屈してしまうから。
「私は仲間を大事にするんだ。何があろうとも仲間と共に生きるんだ。仲間達との絆は何よりも固くて重いんだ。・・・だから、それだけは、だけど、もうそんなことを、言う資格が、あ、ああ、ああああああああああああっ!」
だから。何があろうとも、
「もう無理、もうこんなの耐えられない、もう嫌、もう頭がおかしくなる、う、うう、リオン、ヤろ?また昼までヤろ?なんなら一日中ヤろ?もうこんなことは忘れよ?リオンもそうなんでしょ?リオンも、私と、同じだか、ら。・・・う、ううっ、無視しないでよ、いつもみたいにヤってよ、お願いだから全てを忘れさせてよおおおっ!」
ヨヅキを守るために。俺は、負けない。
そして、気付けば朝になって。寝れるわけねぇだろこんなの。
「・・・う、そ・・・だ」
一方のヨヅキは、少し前に寝落ちした。そりゃあ、あれだけ暴れて、泣き叫んでたからな。力を使い果たすに決まっている。
だが、ときおり寝言を言いながら、泣いている。寝言の内容から、何かしらの悪夢を見ているというのだけは嫌でも想像できる。
ちなみに、ヨヅキは熟睡すると自動的に白狐の姿になってしまう。なので狐になったヨヅキを枕の上に置いて、俺はベッドから離れる。
俺はヨヅキの事は何でも知っているからな。この様子なら、夕方までは眠ったままだろう。だから今のうちに、やれるだけのことをする。
「わた、し・・・は・・・」
そうだよな。肝心のそこが分からねぇんだよな。
同胞達のことは大体は分かった。思い出しちまった順番からして、あの森で死んでこの力を得たのは、俺とお前のどちらかが最初のはず。
だが。俺達は、どうしてこうなった?それが分からない。
・・・これは長期戦になるな。ありったけの金を用意しておくか。
まず行く場所は決まっている。ヨヅキが働いている2つの職場だ。
一つが自警団詰め所。団長は不在だったので、一筆を書いて夜勤明けの奴等に託した。団長なら分かってくれると思うから。ちなみにゲンブもここを訪れて、団長の所在を確認してたようだ。・・・ああ、俺達も頑張るからな。
もう一つがここ。ヨヅキが住み込みで働いている娼館。
どうも店長さん、ヨヅキがお世話になってます。実はその・・・諸事情で、ヨヅキを辞めさせたくて。そうだよな、まだ雇って間もないのに・・・えっ?別にいいって?
なるほど、ここは仕事の内容がアレだから、急に辞める女も多いと。それに元々、自警団と兼業という訳アリで働いていたのは知っているから、これくらいは想定内だと。
いやマジで申し訳ない。ならばせめて、迷惑料としてこの金を受け取ってくれ。そしてもし余るのなら先輩殿の給料にしてくれ。・・・ありがとよ、店長さん。
あとは・・・この人だな。ふむ、ここがヨヅキの寝泊まり部屋か。イイ匂・・・じゃなくて、どうもヨヅキがお世話になってます。
「あら、リオン君。昨日はありがとう、とてもいい思い出になったわ。ビッグス君なら、少し前に帰って行ったわよ?」
中にいた女性はベッドに腰掛けていて。俺はその真向かいにあるベッドに腰掛ける。あぁあこのベッドがヨヅキが使ってい・・・じゃなくてだな。
「ヨヅキからは、ある程度の事情は聞いたつもり。でも、それよりももっとアレな事情がありそうね。深くは聞くつもりはないけどね」
「・・・先輩殿。俺はしばらくの間、ヨヅキを連れて旅に出ます。俺達の事は、ビッグスがまたここに来た時にでも伝えといてください」
「ええ、それは構わないわよ。・・・ヨヅキは、元気?」
何も言えない。これについては答えられない。
「先輩殿。俺達って、何なんでしょうね。・・・俺達は、何者なのか。どうして、こんな妙な力を手に入れてしまったのか。どうして、俺達は」
「魔法。それ以上に説明できる言葉が無いわ」
「・・・先輩殿。まだそんな事を」
「これは魔法。誰が何と言おうとも、魔法よ。あなた達は不思議な魔法使い。魔法の力で助けられた私が言うんだから、間違いないわ」
先輩殿の表情は、マジだ。
「その魔法は、多くの敵を倒し。その魔法は、誰かの命を守り。その魔法は、誰かに力を与え。その魔法は、誰かを幸せにする。そして、その魔法は。誰かを絶望から解き放ってくれる。何度でも言ってやるわ、あなた達は魔法使いよ」
そして、マジな表情のまま。両手で、俺の手を握り、
「行きなさい、リオン君。あなたが、ヨヅキを救ってあげるのよ。・・・そしてあなたも、ヨヅキに助けてもらいなさい。最後まで、希望を持ってね?」
・・・ああ、分かった。気休めでもありがたいぜ。
さて、行くか。当てはない。
いや、ある。何となく分かる。
例えば。俺は今、分岐路に立っている。右に行くべきか、左に行くべきか。そして何も考えずに一歩を踏み出た方向の・・・真逆を、行く。
こっちに進まない方が良い、こっちに来てはいけない、と直感で感じた道を、敢えて選ぶ。この行きたくも無い道の先に、俺達の答えがあると信じている。
それにしても、今日で何日目かなぁ。結構歩いたよなぁ。道なき道を、荒野を、木々の中を、人目に付かない道を、延々と。
「・・・もう、帰してよ」
それでも俺は行く。道なき道を。だって、
「もう帰してって言ってるでしょ!せっかく仕事を覚えたのに!先輩と団長になんて謝ればいいのよ!?リオンがやれって言った仕事なのに、何で勝手に辞めさせるの!?勝手なことしないでよ!」
喋る白狐を連れた状態で、人目に付く所を歩けないからな。
「無視するなあああっ!答えてよっ!」
俺は、何も言わない。黙々と歩き続ける。
「出してっ!出してったら!う、う、あああああああっ!」
ガシャガシャと金属音。暴れるヨヅキもとい白狐。だが無理。
「う、うう、意味分かんない、オリに入れて私を持ち運ぶとか意味分かんない、リオンが一体何したいのか理解できない、リオンなんて嫌い」
片手で持てるサイズのオリ。もしくは動物用の捕獲ケースとでもいえば言いのかな。白狐がギリギリ入る大きさのものを選んでやりました。
そしてもしこの状態で無理やり人間の姿になろうとしたらどうなるのか・・・お互いに予想が付かないので、白狐も無闇に人間の姿になれないというワケだ。
そして、夜は夜で。よし今日はこの宿にするか。
ほれ白狐、オリから出してやろう。おっと、出て早々に人間の姿になりやがった。そして自らベッドに寝っ転がる。言わずもがな全裸だ。
「・・・今日こそは、ヤってよ」
ヨヅキのアソコは既に濡れている。だが、手を出さない。
「ねぇ、お願いだから。もう我慢できない。あの町を出て行ってからずっと、発情したままで、苦しいの。だからお願い、今日こそは私を抱い・・・ひいいいいっ!?い、いや、やめて、また、する、の?」
ヨヅキの手首足首にそれぞれロープを結んで、ベッドの四隅に取り付ける。
「なん、で・・・。どうして、抱いて、くれない、の?私、リオンに、悪い事、した?あの町を出てから、ずっと。オリに閉じ込めて、動けなくして・・・なんで?どうして?」
両手両足を伸ばしたまま、ガッチリ固定しているから。ヨヅキは一切動けない。動けるとしたら胴体が僅かと、首から上だけ。
「もしかし、て。・・・リオン、思い出した、の?」
ヨヅキはもう、同胞達の事と、俺達は一度死んだことに関しては、何とか受け入れてくれたようだ。だが、
「まさか。それで、嫌な事を、思い出したから?こんな事を、している、の?私に、怒ってる?私への、復讐?私は一体、何をしてしまったの?」
やはり、それまで。それ以上の事は思い出せない。
「ねえ。何か言ってよ。お願い、もうこれは嫌なの。リオンに無視されて、体を動けなくされて、そのうえ放ったらかしにされるの、は。――もう、嫌だあああああっ!気が狂うっ!おかしくなるっ!もうこれ以上は頭の中がメチャクチャになるからああああっ!」
俺もまだ、思い出せない。頭がおかしくなりそうだ。
もうこんなことしたくない。
確かに俺はヨヅキをイジめて泣かすのが好きだがな。こんな事はしたくない。ていうかヤりたい。ただひたすらヤって、ヨヅキを満足させてやりたい。
ヨヅキは、俺に負けたくないというプライドを捨ててまで、俺を求めている。普段は絶対に言わないような下品なおねだりまで言ってしまった。
いくら俺だって、そこまでやる趣味は無い。ただひたすらに、延々と可愛がってやりたい。望むのなら一日中ヤってやる。
それに我慢のし過ぎでおかしくなりそうなのは俺も同じなんだ。
ヤりたいだけじゃない。あの森に帰りたくて仕方が無い。
もう真実などどうでもいい。眼を背けたくなる真実を嫌と言うほど知って、思い出したくないことを思い出して。これ以上いったいどんな過去が待っているというのか。
ある意味では、これは魔法の力なのかもしれない。思い出したくも無い酷い過去を忘れさせてくれた、とも言えるのかもしれない。
だから。もうこの魔法の力に負けて、何もかもを忘れて、森に帰って、少し前までの日常に戻りたい。森の空気を吸いたい。森の中を駆け回りたい。同胞達とも話したり、遊んだりしたい。
虎の元気な顔を見れたのはいいけど、どうせなら虎と色々な話がしたい。先輩殿がお前にどれだけ感謝しているかと、先輩殿の近況を話してやりたい。
それと、せっかくだから鴉とも色々話してみたいな。芦毛のおっさんがあそこまで女にデレデレしてるのは初めて見たし。
でも、ダメ。逃げてはいけない。なぜなら、
「抱いて、よ。お願い、だから」
コイツは、逃げないからだ。
昼に移動する時にはオリに入れているから。もうやめてくれ、あの町に帰してくれと、色々と不満を言ってくるが。
「ねぇ。ずっと同じ姿勢だから、体も痛いの。縄を解いてよ。・・・返事、してよ。無視しないでよ。もう、こんなの・・・う、うああああああああああああっ!」
今はもう。白狐の姿に戻れるのに。
ずっとそうだ。宿に泊まって、ヨヅキをこうしてやって、放置して、ヨヅキが泣き喚いて。でも、朝になるよりももっと前から、ヨヅキは白狐に戻れるんだ。
なのに、戻らない。町に帰らない。俺から逃げない。ずっとこうしてる。ずっと、嫌で嫌で仕方が無いコレを、我慢して受け続けている。
もうやめたい。でも、やめてはいけない。
もう泣きたい。でも、泣いてはいけない。
もう諦めたい。でも、諦めてはいけない。
もう森に帰りたい。でも、帰ってはいけない。
もう魔法の力に負けたい。でも、負けてはいけない。
もう何もかも忘れたい。でも、忘れてはいけない。
もう真実なんてどうでもいい。でも、知らないといけない。
もうヨヅキを苦しめたくない。でも、こうしないといけない。
「・・・ごめんな、さ、い」
限界まで疲れ果てて、眠る・・・いや、気を失うまで。ヨヅキは耐えて、俺の傍にいて、イヤイヤ言ってもなお、俺に付き合ってくれるから。
今までがそうであったように。今もなお、こうしてくれている。
だから。まだ続けないといけない。
コイツは俺が守るんだ。あの日、そう誓ったんだから。
・・・あの日って何だよ。おそらくは俺が思い出せていない過去の話だな。まぁとにかく、コイツは俺が守る。だから俺はいくらでも強くなれたのだから。
ヨヅキの事は何でも分かるから。寝落ちしたヨヅキが、眼を覚ますまでの時間も分かるから。眠るように気を失っている間に、ちょっくら冒険者家業をして、金は確保しつつ。
「今日も、するの?・・・じゃなくて、してくれないの?」
食事は、色々と取って来て。ヨヅキの好みも知っているからな。
「・・・うん。食べ終わったから、オリに戻るね」
ヨヅキとは、最小限しか言葉を交わさない。喋りたい、いくらでも話をしたい、お前が大好きだと言ってやりたい。お前を愛してると叫びたい。
「・・・いいよ。今日も、そうするんだ、ね」
でも、してはいけない。
「うん。またそうするんだね。・・・う、ううっ、もう、嫌、だぁ」
俺が心の底からやりたいことを、否定し続ける。
「う、うあ、あ、欲しい、して欲しい、ヤって欲しい、リオンに触って欲しい、リオンにイジめて欲しい、リオンとヤりたい、う、うあっ、あああっ」
でも、もう俺は駄目かもしれん。
「・・・まだ、私を、憎んでるの?ごめん、ね」
それだけは違うんだと、叫びたいから。
違う。誰がお前を憎むものか。憎まれるのは俺の方だ。どれだけお前をイジめてきたと思っている。どれだけ俺が力に物を言わせてお前を従えさせたと思っている。
それでもお前は俺に付き合って、俺の傍にいてくれたから。
俺は、お前を。
そして、今日も。宿の一室で窓の外を見る。
空に月は無い。いやあった。今日は新月か。ええと、この前の満月の日がカチコミの日で、そこから数日後に町を出て・・・うわぁ、もうそれだけ経ったのか。
そして、例によって。ベッドの上にヨヅキだけを寝かせて、手足を四隅に括り付けて、何も言わず、何もヤらず。
「・・・。」
ヨヅキは、ただ泣いているだけ。
少し前から、一切の抵抗を止めて、何も言わなくなった。抱いてくれとも言わなくなった。ただひたすらに耐えて、我慢して・・・心が、壊れてしまったかもしれない。
昼はオリに入れて。夜はこんなことをして。自由も無い、ロクに体も動かせない、ただただ地獄の日々だっただろう。そりゃあ、心もへし折れるわな。そして、
「・・・これは、魔法」
うわ言のように、変な事を言い続けている。
「先輩が言うんだから、間違い、ない・・・」
まぁ、そうだよな。故郷の同胞達の真実と、ここ最近の俺の度重なるイジメがあったとなれば。あの人を頼りたくなるよな。
「・・・その魔法は、多くの敵を倒し。その魔法は、誰かの命を守り。その魔法は、誰かに力を与え。その魔法は、誰かを幸せにする」
オイオイ先輩殿、それヨヅキにも言ってたのかよ。
「・・・私、も。希望と、共に、生きる」
・・・希望、か。先輩殿には悪いが、そんなの気休めでしかない。コイツを救ってやれだの、コイツに助けてもらえ、だの、と。
「――あっ」
「・・・リオ、ン?」
そう、言えば。
虎が酷い姿になって帰ってきた、あの日。
「・・・ヨヅキ」
「・・・久々だね。私の名前を、呼んでくれるのは」
普段とは違い、ヨヅキが少しだけデレてくれたというか。
「ありがとう。ここまで俺に、付き合ってくれて」
「・・・うん。これからも、リオンには付き合ってあげるから」
娼婦の仕事をやらせる前だったのに、ヨヅキの方から俺に抱き着いてきて。
「俺がこんなことをしているのは。俺達の真実を、お前を本当に苦しめているものを、調べているからなんだ。俺もお前と一緒だ、一緒に苦しんでいるんだ」
「――嬉、しい。リオン、そこまで。私の、ことを」
泣き止んで。照れていて。可愛い笑顔で、笑ってくれて。
「場合によっては、もっと酷い事をすることになるだろう。でも、さすがに俺だけでは他にいい方法が思いつかなくてな。それで、一緒に考えて欲しいんだ」
「・・・うん、そういう理由なら、イイよ」
そうだ。その笑顔を、俺は見たかったんだ。
「だから。俺を、助けてくれないか?」
「・・・いいよ。あの時のように、ね」
――先輩殿、マジで感謝する。
「ん?あの時って何だよオイ」
「――あっ」
マジで。あなたの言う通りだった、ぜ。
うわぁ昔の俺ってこんな感じかよ・・・。
顔を手で覆う。駄目だ恥ずかしい。
「・・・リオンも、思い出した?」
駄目だ泣けてくる。自分の無力さに。
「ふふ。リオンが泣いているの、久しぶりに見た」
なるほどな。俺が心の底からやりたいことを否定し続けるのは、一応は間違ってはいなかったんだな。だけどな、
「俺、お前に守ってもらってたのかよ・・・」
まさか、ヨヅキを守ることを、否定せねばならんとは。
「は、はは。お前、俺より、強かった、んだな」
「人間だった頃は、そうみたいだね。・・・そうか、だから私は」
俺が強さを求めていたのは。ヨヅキを守る為ではない。
「それで、今のリオンは。私より、強くなったんだね」
人間だった頃のヨヅキに、守られていたから。
俺が弱かったせいで。俺達は、あんなことに。
この魔法の力を得てから、いくらでも強くなれたのも、ヨヅキを力づくで乱暴したのも。俺が昔、できなかったことだから。
「でも・・・不思議と、私達の名前は思い出せないね」
「いいんだよそれで。お前はヨヅキで、俺はリオンだ。・・・フッ、ようやく頭ん中がスッキリできた」
「そう。・・・なら、体の方も、スッキリしたい、かな?」
ああ。俺も今そう思ってたところなんだ。
少し待ってくれ、俺も裸になるから。
「・・・でもやっぱり、イジワルするんだ」
仰向けで両手足を伸ばして、ベッドに縛り付けた姿勢のまま。
「うん、いいよ。好きにヤってくれって、何度も言っちゃったからね」
そしてさらにオマケをしてやろう。布切れで目隠しをしてっと。
「・・・ふぅ、ああっ、はぁっ、はぁっ、ずっと、待ってた」
ヨヅキはまた泣きだした。でもこれは、恐怖や悲しみではない。
「はぅ、うぅ、あぁ、ようやく、やっと、やっとしてくれる、やっとしてくれるんだ、もうダメ、今すぐし、あ、ああああっ!?やっとキたあああっ!」
オイオイ、腹を撫でただけでそんなに喜ぶなよ。
「な、なに、これぇ・・・今までと、全然、違、あ、ああ」
元々、反応が良かったところに。さんざん我慢させ、そのうえ眼を塞いでやったもんだから。いわゆる感度ビンビン状態ってやつだな。
それでは次は太ももを撫でてやる。ついでに顔を舐めてやろう。
「あ、ああ、ああ、ひ、うあ、あっ――、――!」
どうやら、あまりにも気持ち良すぎて、もはや言葉にならないのだろう。全身を思いっきり震わして、快楽を味わってやがる。
「も、もっとぉ・・・激しく、してぇ・・・」
よしよし分かった、そろそろ肝心なところを触って・・・やらない。
「あぅ・・・。やめ、ない、でよ」
手を放し、しばらくヨヅキの様子を見て。
「もう、放置するのはやめひゃああああああああっ!?」
油断したところで、アソコを軽く一撫で。ほいイった。
「う、あぅ、う、うん、もっと・・・するんで、しょ?」
当然だ。もっとイジめてやるから、覚悟しろよ?
「あう、ああっ、イイ、もっと、もっ・・・う、止めない、でよ」
ほどほどに撫で回して、ある程度ヤったら手を放して。
「あ、ああっ、つ、次は、どこを、触るの?やだ、これ、怖い、目隠し怖い、何されるか分かんなああああああああああああっ!?」
不意打ち気味に感度の高いとこを責めて、イかしてやって。
「あ、ぐぅ・・・、目隠しって、思ってた以上に、厄介なんぎゃああああああっ!?だからいきなりクリを捻らあああああああああっ!?」
焦らすフリをして、連続でイかせてみたり。
「あうっ、もうそろそろイかせ・・・うぅ、また優しく、するの?お願いだから、もう激しくし・・・いや、手を離さないでよ、もっとヤってよおおおおっ!」
もう一度我慢させてみたり。
「う、うあっ、もう、また、イっ・・・かせて、よ・・・。ねぇ、また放置しぎゃあああああああっ!?ひいいいいいいっ!?いきなり本番はやめ、いや、もっとしてえええええええっ!」
そしてまた不意打ち気味に、俺のアソコをブチ込んでやって。
「ヨヅキ、俺も我慢してたんだ。もう出すぞ?」
「イイっ!好きなだけしてえええっ!いくらでも出してええええっ!――うわああああああああっ!・・・あ、ああう、熱、い、気持ち、イイ、よぉ。・・・リオン。キスも、して?」
分かった分かった、それくらいは言う通りにしてやろう。
「フッ。お前がここまで素直になってくれるとはな」
「・・・う、ん。それもまた、魔法だった、から、ね」
目隠しを取ってやる。・・・可愛い、笑顔だなぁ。
「まったく、リオンったら。いっつも妙な事ばかり、思いついて」
やはり拘束はそのまま。
「アレとかコレとかソレとか。今思い出しても、二度とやりたくないことばっかり。しかもほとんど、私の同意も無く無理矢理だし」
お互いの顔を、じっと見ている。
「でも・・・。今なら、分かる。リオンだけでなく私も、それを求めていたんだね。だから、何度リオンに酷い事をされても。私達は、抱き合ってたんだ」
「フッ、同胞達にも散々ネタにされてるからな。アレな事ばかりしている俺も大概だが、それに逃げずに付き合うお前も物好きだって」
俺は上に覆い被さって。いつでもブチ込める姿勢。
「・・・だから、いいよ。今日はこのまま、続けて?」
「ああ。なんなら明日も明後日もヤってやるぜ」
「・・・いや。やっぱり、たまには優しくして欲しいかな。せっかくお互いに、正直になれたんだから。もう少し普通の、男女のセックスがしてみたいの」
「ほう。ならば条件があるな。・・・分かるだろ?」
おっと顔を逸らしやがった。なので顎を掴んで、グイッと引っ張ってやる。こっち見やがれ。顔が真っ赤っかだぜ。
「ふん、言わない。こんなことするリオンなんて、大っ嫌い」
フッ。やはりお前は正直になれない女だな。
「もういいでしょ。リオンの顔なんて見てられないから、眼を瞑ってやる。・・・早く、続きをしてよ。恥ずかしいの」
お前の事は何でも分かるんだ。照れちまって、可愛いなぁ。
それからは語るまでも無い。
俺も我慢してたから、ヤりつく・・・せなかった。
「・・・ぅ、・・・あ、ぁぁ」
というのも、いつもよりだいぶ早く、ヨヅキが寝入ってしまったんだ。長い事オリに入れたり身動きを封じてたせいで、疲労が溜まっていたんだろう。
そして白狐になったコイツを、俺の胸の上に置いて。
「すぅ・・・ふ、ふ、まだ、ヤる、の・・・ぅ」
何だお前、夢の中でもヤってんのかよ。
そして朝になって、白狐を肩に乗せて。もうこんなオリは不要・・・いや、せっかくだから持って行くか。毎日はともかく、時々はヨヅキを監禁するのも、
「リオン、もうそれだけはやめて。さもないと今すぐ人間の姿になって、コイツに服を脱がされました、と大声で叫んでやるからね」
やめてくださいどう足掻いてもワイセツの罪になります許してくださいもうこんなの使いませんから。ホレ、然るべきところに捨てたから、これで許してくれよ。
「うん、よろしい。それでリオン、これからどうするの?さすがに先輩には報告しないといけないから、あの町には行って・・・その後は、どうする?」
そうだよなぁ。もし今あの森に帰ったら、俺達はどうなるのか。また記憶がアレになるのか、でも記憶を完全に取り戻した今だとどうなるのか・・・試したいような、試したくないような。
「・・・今すぐ帰らないのなら、少しお願いがあるんだけど」
おう何でも言いやが・・・えっ。
ま、まぁお前が良いのならやってやるが・・・。
町を出て、ちょっとした森に入って。ヨヅキは人気が無い事を確認し、人間の姿になった。ほい、多分サイズは合っているはずだ、これでいいんだろ?
「うん、ピッタリ。・・・さて、ヤろ?」
場所は、森の中にある、少し開けた場所。
俺の眼の前には、最低限の急所部分を防具で覆ってある、動きやすい戦闘服を着たヨヅキが。しかも槍を構えてやがる。ちなみに槍は練習用だとかで刃が潰されている物を選びました。
「リオンのせいで運動不足なんだ。付き合ってよ」
「フン。いくら記憶を取り戻したからって、はっちゃけ過ぎだろ。まさかお前が自ら、そんな恰好をするとは」
「ふふん。こうでもしないとリオンには勝てないからね。だから、今日こそは勝ってみせる。久々に、私が勝ってやるんだから」
そうかそうか。ならば俺は服を脱ごう。
そして。小さくなれ。俺の体、小さくなれよ。
月のように。小さくなる月のように。小さくなれ、俺の体よ。
「・・・ねぇ、少しくらいは手加減してよ。さすがにその姿のリオン相手は無理だって。動きが速すぎて、私じゃうわあああっ!?あ、危なっ」
ほい隙アリ。さあお望み通りヤってやるぜ?
「うう・・・やっぱりリオンなんて、好きになれない」
フッ。でも結局、付き合ってくれるんだろ?
それじゃあ遊ぼうぜ。これからも、俺達は一緒だからな。
ただひたすらに、強さを求めていた。
ただひたすらに、彼女を求めていた。
ただひたすらに、生き抜こうとしていた。
でも、俺は。力及ばず、一度は死んでしまって。
「はぁっ、ふぅ、やっぱり、リオン、強い、や」
だから。俺はいくらでも強くなれた。
「・・・リオン、ありがとう。大好き、だよ」
ただひたすらに、この言葉を聞きたかったから。
これはやはり、魔法だったんだな。
いや、若干少々納得が行かない部分もあるけどな。
それでも、俺はあの森の魔法に感謝している。
彼女と共に、俺は生きていく。これからも、一緒に。
――今回の主役:リオン
ここは、人間の町にある、俺の家。俺と、女が2人。
この世界は、人間が武器を持って、日々戦いをする世界。
魔法?・・・なぁ、これって本当に、魔法なのか?
今は真夜中。自宅で椅子に座っている俺。その向かいにあるベッドに腰掛ける、桃色髪のナイスバディな裸の女。
「うあああっ、ああっ、ああああああっ」
そして、俺の胸元で咽び泣く、白髪の小柄な女。
「・・・さすがの俺でも。何も言えんな、ソレは」
震えが止まらない。マジかよソレ。
「・・・私。団長さんに、悪い事をしちゃったかな」
その一方で、冷静な桃色髪の女。
お前・・・ゲンブは。どうして、そんなに冷静でいられるんだ?
「今なら分かる。団長さんがどんな気持ちで、私にあんな話をしたのか。どれほどの覚悟を持って、私と向き合ってくれたのか」
少し前まで、お前も酷く落ち込んでいたのに。
「話を聞いて、取り乱した私に、殺される覚悟をしてまで。私達の真実に、向き合ってくれた。だから、私はもう迷わない。逃げずに、この真実を受け入れる」
ゲンブは何も言わず、枕を持って立ち上がる。少し汚れた枕のシーツを新しくし、オマケに2人分の枕を用意してくれた。
そして何も言わず、服を着る。ビッグス用に用意した男物の服のスペアだが、裸で出歩くよりはマシだろうな。
「リオン、お金を貰うね。私は私で、やりたいことがあるの」
・・・そうか、なるほど。お前はお前の決着を付けに行くわけか。
なら、俺はコイツの相手だな。未だに俺の胸元で泣く女を担ぎ上げて、ベッドに優しく乗せる。お互い服を着たままだ。とりあえず、横になろうぜ?
昨日。久々に故郷に帰って来て。
俺達を狙っていた奴等にそれ相応の報復をして、これでしばらくは安泰だと、2~3日はゆっくりできると、思っていたのに。
いつのまにか、新しい同胞が増えていて。いや、これ自体は歓迎するぜ?ほほう鳥になれる同胞か、初めて見るタイプだな。・・・初めて見る奴、だよな?
なのに、芦毛のおっさんと、大怪我から復帰したばかりの虎は、鳥の同胞こと鴉の事を、昔馴染みの仲間だと言い張りやがる。そして鴉本人も、俺達とは旧知の仲だと言ってきやがった。
確かに、俺達はどれだけの付き合いか分からないほどに長くは共に生きてはいるがな。これまでに、鴉なんて同胞はいなかった。これは断言して言える。
実際、俺と共に故郷を離れていたヨヅキとビッグスは首を傾げていた。俺もだ。どういうことだよオイ。まるで意味が分かんねえぞ。
だが、ここで。俺は嫌な予感を感じた。感じてしまった。
故郷の森を離れていた者達と、故郷の森にいた者達と、意見が食い違うということは。まさか、いやまさかそんなことは・・・。
その時に、ヨヅキと視線が合った。いや、アイコンタクトってやつだな。俺は咄嗟に、虎の元気な顔さえ見れたら十分だと言って、俺とヨヅキは森から少し離れて。
・・・本当なら、ビッグスにも声を掛けるべきだったのかもしれない。だが、そんな余裕は無かった。というより、故郷に帰る少し前にヨヅキとは話したからな。
俺達って何者なのだろうか、と。だから俺とヨヅキは違和感にいち早く気づき、故郷の森を離れることができたのだろう。
そして、俺達2人だけで再びここに戻って来て。色々と話をした。
ヨヅキは最後まで嫌がっていた。仲間を疑いたくない、もし本当にそんなことが起きるのであれば私では何もできない、怖くて何もできない、と怯えてしまって。
だから、あの人の力を借りることにした。今の俺達には、故郷の同胞達以外にも、頼れる仲間が2人もいるからな。
そのうちの1人はゲンブと共にデート・・・じゃなくて、仕事のために遠出していたので。もう1人の方、我らの先輩殿に。そう言えば俺達って、先輩殿の本名を聞いてないよな・・・。
まあともかく、ヨヅキは先輩殿に、ひとまずは詳細を伏せて協力を頼んだが。先輩殿は二つ返事で引き受けてくれたそうだ。マジで有り難い。
俺は俺で、再び森に戻り、ビッグスに町に来るように話をして。この時にビッグスに話を聞こうとも思ったが・・・俺も、聞くのが怖かったんだ。
そして、その結果が・・・。たった1日で、ビッグスまで。鴉の事を長い付き合いだと、言っていたそうだ。これでも十分キツいぜ。
でも、今はそれ以上にキツい。マジかよ団長、なんという真実を調べやがったんだよチクショウめ。そしてそれを、朝まで仲良くヤった後のゲンブに話すとか中々のクレイジーだな。なるほど、ウチに来たばかりのゲンブが泣いてた理由は分かった。
・・・しかし、ゲンブと真正面から向き合ってくれる男も、団長しかいない。先程のゲンブの話を聞く限りでは、団長も覚悟を決めた上での決断だったのだろう。だから、これ自体はとやかく言うつもりは無い。むしろ、団長の覚悟に感謝している。
ヨヅキは未だに、俺の胸の中で泣いている。
「もう嫌だ、怖い、怖すぎる。リオン、怖いの、だからリオンが欲しいの、お願いリオン、私と交尾してよ、私をイジめてよ」
俺もだ。俺も限界だ、もう何も考えたくない。今すぐヨヅキとヤりたい。何も考えずにヨヅキと延々と朝までヤりたい。だけど、
「怖い、嘘だ、私は、私達は、いや、嘘だ、あ、ああっ」
おそらく、それはしてはいけない。
「嫌だ、怖い、お願いリオン、私を抱いて、思いっきりヤって、優しくしないで、手を縛ってもいいから、朝までヤっても、気を失うまでヤってもいいから、私を」
ヤってはいけない。誤魔化してはいけない。
「お願い、私をメチャクチャにしてよ、いつもみたいにイジめてよ、私を好きにしていいから、お願いだから、今なら何でもヤってあげるから、う、うう、ううあああ」
この前が、そうだったから。
ヨヅキが、森から離れ人間の生活を体験したことで。知らないはずの事ができてしまって。それで戸惑い、迷い、恐怖し。それを忘れるために、俺を求めて。
俺もまた、自分なりに俺達の正体について考えようとして、俺達の真実を調べようとして。だけど結局、何も考えるのをやめて、ヨヅキを求めて。
「助けて、誰か助けて、私を助けて、私は、私は、私は」
無意識に、思い出さないようにするために。俺達がいったい何者なのかを、分からないようにするために。
俺は、そう気づいていたはずなのに。やはり、もうどうでもいいと、これが魔法の力なら、全てを受け入れると。そう思ってしまった。
こんなの認めない。こんなの受け入れる訳にはいかない。
こんな魔法などクソ食らえだ。これは呪いか祟りの類だ。
「あああっ!怖いっ!怖いの!お願いだから、う、う、うあああああああああっ!お願いだからっ!私とヤって!朝まで抱いて!ねぇっ!ねぇったら!」
だから。もう俺は、逃げない。
「なんでもヤるから、なんでもヤってあげるから、そうだ、この前先輩から教わった新技があるの、それをヤってあげる、だから、ねえ、お願い、私を」
今度こそは。絶対に逃げたりしない。
「う、うぅ、何で、リオン、無視、する、の・・・?う、うん、そうだよね。服を着てたらヤれないよね。ちょっと待ってて。今、裸に・・・って、えっ」
だから、ヨヅキを抱く。
「えっ、ちょっと、何するの、やめてよ、何してるの?」
ただし。こうやって抱く。
「ねぇ。ちょっと、これ、どういう、交尾なの?」
交尾はしない。してやらない。
「う、ぐ、ぐう、いや、ダメ、振りほどけ、ない」
ヨヅキの両腕ごと、肘の関節を固定するように、ガッチリと抱き締める。ついでに足も絡ませてやるぜ。これはベッドの上でやる行為と言うよりは、
「う、動け、な、い」
戦いの最中で敵を捕まえるための技だな。
「ね、ねぇ、何コレ、意味分かんない、んだけど」
それでは、お望み通り。朝まで抱いてやるぜ?
「ぐ、う、う、うりゃあああああああああっ!」
ヨヅキは必死に力を込めて、俺の体を振り解こうとする。だが、無理。ヨヅキは小柄ながら、人並み以上・・・いや、もはや人ですらない力を持ってはいるが、
「はぁっ、はぁっ、ぐ、うう、やっぱり、勝てない・・・」
それでも、俺の方がヨヅキより力が強いからな。ついでに言うと体格でも大きく勝っている。なのでせいぜい動かせるとしたら、手首の先と足首の先ぐらいだな。
「ぐ、う、うあああああああああっ!」
ということで今度は、首をできる限り動かして、俺に頭突きを仕掛けてくる。ありとあらゆる体術を身に付けているヨヅキの、得意技の一つだな。
だが、ヨヅキはさっきまで、俺の胸元に泣きついていたので。その体勢のままガッチリ固定してやったもんだから、
「う、ダメだ、こんなんじゃ、ダメ、だ」
この体勢と密着具合では、頭突きでは大した威力を出せない。不意打ちで顔面にでも食らわない限りは、俺には通用しない。
そして他にも。ヨヅキには、体術とは別のとっておきの技があるが、
「ぐ、あぐぐぐ、うう、何この服、噛み切れないぃ・・・」
そりゃあそうだ。仮にも俺は冒険者を名乗っている男だ。
人間の歯で噛みつかれた程度では、俺の服は食い千切れん。もしこれでヨヅキが狐の姿だったら、あるいは食い千切れたかもしれないがな。
「う、うう、せっかく先輩に乳首責め手コキを教えてもらったのに・・・」
オイ、お前いったい何を教わっ・・・チクショウ興味があるぜ。
それでも、俺は我慢する。ヨヅキは必死に抵抗する。
「う、う、うう、何で、何でこんな事を、う、ううっ」
全身を動かしてジタバタして、服に噛みついて、あるいはかろうじて動く手を動かして、服で爪で引っかいたりして。
「い、いや、怖い、やめて、こんなことしないで、こういうのじゃなくて、もっと別の事で、怖がらせてよ、ねえ、お願いだから」
だが、やはり無意味。どう足掻いても、ヨヅキは俺から逃げられない。
「や、やめて、お願いだから、こんなことしないでよ、無視しないでよ、交尾してよ、エッチしてよ、セックスしてよ、お願いだから、何もかも忘れさせてよ、う、あ、あ、嫌あああああああああああああっ!」
俺だってヤりたい。こんな事はしたくない。
こんなに恐怖し、泣き叫ぶヨヅキなんて見たくない。
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ、ゲンブが死んでいたなんて、嘘だ、嘘だああっ!」
だが、続ける。まだまだ続けてやる。
「嫌だあああっ!絶対に嫌だあああっ!死んでなんかないっ!私は、私達は、死んでなんかないっ!う、うああ、嘘だ、あれはゲンブが冗談を言ってるんだ、だから、あ、あ、う、うああああああああああああああああああああっ!」
お前を泣かしていいのは、俺だけだ。
だから、この真実と向き合う。ヨヅキを、俺達を支配する魔法と戦う。これ以上、ヨヅキが苦しまないようにするために。もう二度と、泣かないようにするために。
だから、俺は。俺達の真実と、戦う。
ヨヅキは、抵抗を止めた。というよりは体力を使い果たした。
「酷い、よ。離して、よ。私は一度姿を変えたら、時間が必要なのに・・・う、ううっ、なんでリオンやゲンブは自在に姿を変えられるの・・・私と何が違うのよ・・・」
違いも何も・・・この町に来るまでのお前は人間嫌いを拗らせすぎて、人間の姿になるのは最小限にしていたからな。ただ単に、練習不足だ。
ついでに言うと、お前は負けず嫌いだから。大型の獣を相手にしても、白狐の姿のままで逃げずに立ち向かおうとするから。
だから俺は、姿を自由に変えられるように練習したんだ。状況に応じて姿を変え、どういう事態に陥っても戦えるようにするために。お前の代わりに戦うために。
あの時もそうだったな。白い狐の毛皮は高く売れるからと、お前を弓矢で狩ろうとした女がいて、なのにお前は狐の姿で戦おうとしたから、その女をブチのめしてやったんだよな。あの桃色髪の――。
って待て、このナイスバディな体つきには見覚えがあるぞ。・・・嘘だろ、オイ。
「嫌だ、嘘だ、私達は死んでなんかない、生きているんだ、私も、リオンも、仲間達も、みんな生きているんだ、あの時もそうだ、虎ちゃんが崖から落ちた時、も・・・ひいいいいぃっ!?い、う、うあ、嘘、だ」
ああ、そうか。俺達は同胞だったな。つまりはみんなも、そうなのか。俺達と同じように。しかも、俺達の手によって。
「ち、違うの、ごめんなさい、そんなつもりで、虎ちゃんを脅したつもりは、いや違う、こんなのありえない、虎ちゃんが服を、あんな可愛い服を着てる、だなんて、何で、分かる、の?」
チクショウお前のせいで俺も思い出しちまったぞ。森で迷子になって泣いていたのに、そのうえ更に俺とお前の2人掛かりで追いかけ回しちまったのかよ。
は、はは。俺達の真実って、思ってた以上に、酷かった、な。
俺は、まだ耐えている。というより、
「あ、ああ、そうなん、だ。ゲンブが言ってた、大猿の、ように。芦毛さんも、私、が。あ、ああっ・・・私は、仲間に、なんて、ことを」
コイツの方がはるかに重症なので。どうにか、持ちこたえている。
「私が、私が、仲間を、私が、私が」
そうだよな。お前は同胞達の中でも特に、仲間意識が強いからな。
「私が、殺して、しまった。そして、リオンは、ゲンブを。ゲンブは、ビッグスを。鴉は恐らく、芦毛さんが。虎ちゃんも、私達が殺したようなもの」
こんな真実、受け入れられるわけがないよな。
「私は、私達は、そんな、仲間、だった、の?私達は、お互いに、殺して、殺されて。だけど、そんな事を忘れて、いや、忘れさせられて。仲間だと、勘違い、して」
だが、俺は受け入れる。受け入れるしかない。
「私は、何で。生きて、いるの?何の、ために?仲間のため、だなんて。もう、言えない。私は、私達は、仲間なんか、じゃ、い、嫌だ、嫌だ、それを否定するのは嫌だ、それを否定するのだけは嫌だああああああああああああっ!」
まずは俺が真実と向き合わないと。ヨヅキがいつまで経っても、真実と向き合ってくれないから。魔法の力に屈してしまうから。
「私は仲間を大事にするんだ。何があろうとも仲間と共に生きるんだ。仲間達との絆は何よりも固くて重いんだ。・・・だから、それだけは、だけど、もうそんなことを、言う資格が、あ、ああ、ああああああああああああっ!」
だから。何があろうとも、
「もう無理、もうこんなの耐えられない、もう嫌、もう頭がおかしくなる、う、うう、リオン、ヤろ?また昼までヤろ?なんなら一日中ヤろ?もうこんなことは忘れよ?リオンもそうなんでしょ?リオンも、私と、同じだか、ら。・・・う、ううっ、無視しないでよ、いつもみたいにヤってよ、お願いだから全てを忘れさせてよおおおっ!」
ヨヅキを守るために。俺は、負けない。
そして、気付けば朝になって。寝れるわけねぇだろこんなの。
「・・・う、そ・・・だ」
一方のヨヅキは、少し前に寝落ちした。そりゃあ、あれだけ暴れて、泣き叫んでたからな。力を使い果たすに決まっている。
だが、ときおり寝言を言いながら、泣いている。寝言の内容から、何かしらの悪夢を見ているというのだけは嫌でも想像できる。
ちなみに、ヨヅキは熟睡すると自動的に白狐の姿になってしまう。なので狐になったヨヅキを枕の上に置いて、俺はベッドから離れる。
俺はヨヅキの事は何でも知っているからな。この様子なら、夕方までは眠ったままだろう。だから今のうちに、やれるだけのことをする。
「わた、し・・・は・・・」
そうだよな。肝心のそこが分からねぇんだよな。
同胞達のことは大体は分かった。思い出しちまった順番からして、あの森で死んでこの力を得たのは、俺とお前のどちらかが最初のはず。
だが。俺達は、どうしてこうなった?それが分からない。
・・・これは長期戦になるな。ありったけの金を用意しておくか。
まず行く場所は決まっている。ヨヅキが働いている2つの職場だ。
一つが自警団詰め所。団長は不在だったので、一筆を書いて夜勤明けの奴等に託した。団長なら分かってくれると思うから。ちなみにゲンブもここを訪れて、団長の所在を確認してたようだ。・・・ああ、俺達も頑張るからな。
もう一つがここ。ヨヅキが住み込みで働いている娼館。
どうも店長さん、ヨヅキがお世話になってます。実はその・・・諸事情で、ヨヅキを辞めさせたくて。そうだよな、まだ雇って間もないのに・・・えっ?別にいいって?
なるほど、ここは仕事の内容がアレだから、急に辞める女も多いと。それに元々、自警団と兼業という訳アリで働いていたのは知っているから、これくらいは想定内だと。
いやマジで申し訳ない。ならばせめて、迷惑料としてこの金を受け取ってくれ。そしてもし余るのなら先輩殿の給料にしてくれ。・・・ありがとよ、店長さん。
あとは・・・この人だな。ふむ、ここがヨヅキの寝泊まり部屋か。イイ匂・・・じゃなくて、どうもヨヅキがお世話になってます。
「あら、リオン君。昨日はありがとう、とてもいい思い出になったわ。ビッグス君なら、少し前に帰って行ったわよ?」
中にいた女性はベッドに腰掛けていて。俺はその真向かいにあるベッドに腰掛ける。あぁあこのベッドがヨヅキが使ってい・・・じゃなくてだな。
「ヨヅキからは、ある程度の事情は聞いたつもり。でも、それよりももっとアレな事情がありそうね。深くは聞くつもりはないけどね」
「・・・先輩殿。俺はしばらくの間、ヨヅキを連れて旅に出ます。俺達の事は、ビッグスがまたここに来た時にでも伝えといてください」
「ええ、それは構わないわよ。・・・ヨヅキは、元気?」
何も言えない。これについては答えられない。
「先輩殿。俺達って、何なんでしょうね。・・・俺達は、何者なのか。どうして、こんな妙な力を手に入れてしまったのか。どうして、俺達は」
「魔法。それ以上に説明できる言葉が無いわ」
「・・・先輩殿。まだそんな事を」
「これは魔法。誰が何と言おうとも、魔法よ。あなた達は不思議な魔法使い。魔法の力で助けられた私が言うんだから、間違いないわ」
先輩殿の表情は、マジだ。
「その魔法は、多くの敵を倒し。その魔法は、誰かの命を守り。その魔法は、誰かに力を与え。その魔法は、誰かを幸せにする。そして、その魔法は。誰かを絶望から解き放ってくれる。何度でも言ってやるわ、あなた達は魔法使いよ」
そして、マジな表情のまま。両手で、俺の手を握り、
「行きなさい、リオン君。あなたが、ヨヅキを救ってあげるのよ。・・・そしてあなたも、ヨヅキに助けてもらいなさい。最後まで、希望を持ってね?」
・・・ああ、分かった。気休めでもありがたいぜ。
さて、行くか。当てはない。
いや、ある。何となく分かる。
例えば。俺は今、分岐路に立っている。右に行くべきか、左に行くべきか。そして何も考えずに一歩を踏み出た方向の・・・真逆を、行く。
こっちに進まない方が良い、こっちに来てはいけない、と直感で感じた道を、敢えて選ぶ。この行きたくも無い道の先に、俺達の答えがあると信じている。
それにしても、今日で何日目かなぁ。結構歩いたよなぁ。道なき道を、荒野を、木々の中を、人目に付かない道を、延々と。
「・・・もう、帰してよ」
それでも俺は行く。道なき道を。だって、
「もう帰してって言ってるでしょ!せっかく仕事を覚えたのに!先輩と団長になんて謝ればいいのよ!?リオンがやれって言った仕事なのに、何で勝手に辞めさせるの!?勝手なことしないでよ!」
喋る白狐を連れた状態で、人目に付く所を歩けないからな。
「無視するなあああっ!答えてよっ!」
俺は、何も言わない。黙々と歩き続ける。
「出してっ!出してったら!う、う、あああああああっ!」
ガシャガシャと金属音。暴れるヨヅキもとい白狐。だが無理。
「う、うう、意味分かんない、オリに入れて私を持ち運ぶとか意味分かんない、リオンが一体何したいのか理解できない、リオンなんて嫌い」
片手で持てるサイズのオリ。もしくは動物用の捕獲ケースとでもいえば言いのかな。白狐がギリギリ入る大きさのものを選んでやりました。
そしてもしこの状態で無理やり人間の姿になろうとしたらどうなるのか・・・お互いに予想が付かないので、白狐も無闇に人間の姿になれないというワケだ。
そして、夜は夜で。よし今日はこの宿にするか。
ほれ白狐、オリから出してやろう。おっと、出て早々に人間の姿になりやがった。そして自らベッドに寝っ転がる。言わずもがな全裸だ。
「・・・今日こそは、ヤってよ」
ヨヅキのアソコは既に濡れている。だが、手を出さない。
「ねぇ、お願いだから。もう我慢できない。あの町を出て行ってからずっと、発情したままで、苦しいの。だからお願い、今日こそは私を抱い・・・ひいいいいっ!?い、いや、やめて、また、する、の?」
ヨヅキの手首足首にそれぞれロープを結んで、ベッドの四隅に取り付ける。
「なん、で・・・。どうして、抱いて、くれない、の?私、リオンに、悪い事、した?あの町を出てから、ずっと。オリに閉じ込めて、動けなくして・・・なんで?どうして?」
両手両足を伸ばしたまま、ガッチリ固定しているから。ヨヅキは一切動けない。動けるとしたら胴体が僅かと、首から上だけ。
「もしかし、て。・・・リオン、思い出した、の?」
ヨヅキはもう、同胞達の事と、俺達は一度死んだことに関しては、何とか受け入れてくれたようだ。だが、
「まさか。それで、嫌な事を、思い出したから?こんな事を、している、の?私に、怒ってる?私への、復讐?私は一体、何をしてしまったの?」
やはり、それまで。それ以上の事は思い出せない。
「ねえ。何か言ってよ。お願い、もうこれは嫌なの。リオンに無視されて、体を動けなくされて、そのうえ放ったらかしにされるの、は。――もう、嫌だあああああっ!気が狂うっ!おかしくなるっ!もうこれ以上は頭の中がメチャクチャになるからああああっ!」
俺もまだ、思い出せない。頭がおかしくなりそうだ。
もうこんなことしたくない。
確かに俺はヨヅキをイジめて泣かすのが好きだがな。こんな事はしたくない。ていうかヤりたい。ただひたすらヤって、ヨヅキを満足させてやりたい。
ヨヅキは、俺に負けたくないというプライドを捨ててまで、俺を求めている。普段は絶対に言わないような下品なおねだりまで言ってしまった。
いくら俺だって、そこまでやる趣味は無い。ただひたすらに、延々と可愛がってやりたい。望むのなら一日中ヤってやる。
それに我慢のし過ぎでおかしくなりそうなのは俺も同じなんだ。
ヤりたいだけじゃない。あの森に帰りたくて仕方が無い。
もう真実などどうでもいい。眼を背けたくなる真実を嫌と言うほど知って、思い出したくないことを思い出して。これ以上いったいどんな過去が待っているというのか。
ある意味では、これは魔法の力なのかもしれない。思い出したくも無い酷い過去を忘れさせてくれた、とも言えるのかもしれない。
だから。もうこの魔法の力に負けて、何もかもを忘れて、森に帰って、少し前までの日常に戻りたい。森の空気を吸いたい。森の中を駆け回りたい。同胞達とも話したり、遊んだりしたい。
虎の元気な顔を見れたのはいいけど、どうせなら虎と色々な話がしたい。先輩殿がお前にどれだけ感謝しているかと、先輩殿の近況を話してやりたい。
それと、せっかくだから鴉とも色々話してみたいな。芦毛のおっさんがあそこまで女にデレデレしてるのは初めて見たし。
でも、ダメ。逃げてはいけない。なぜなら、
「抱いて、よ。お願い、だから」
コイツは、逃げないからだ。
昼に移動する時にはオリに入れているから。もうやめてくれ、あの町に帰してくれと、色々と不満を言ってくるが。
「ねぇ。ずっと同じ姿勢だから、体も痛いの。縄を解いてよ。・・・返事、してよ。無視しないでよ。もう、こんなの・・・う、うああああああああああああっ!」
今はもう。白狐の姿に戻れるのに。
ずっとそうだ。宿に泊まって、ヨヅキをこうしてやって、放置して、ヨヅキが泣き喚いて。でも、朝になるよりももっと前から、ヨヅキは白狐に戻れるんだ。
なのに、戻らない。町に帰らない。俺から逃げない。ずっとこうしてる。ずっと、嫌で嫌で仕方が無いコレを、我慢して受け続けている。
もうやめたい。でも、やめてはいけない。
もう泣きたい。でも、泣いてはいけない。
もう諦めたい。でも、諦めてはいけない。
もう森に帰りたい。でも、帰ってはいけない。
もう魔法の力に負けたい。でも、負けてはいけない。
もう何もかも忘れたい。でも、忘れてはいけない。
もう真実なんてどうでもいい。でも、知らないといけない。
もうヨヅキを苦しめたくない。でも、こうしないといけない。
「・・・ごめんな、さ、い」
限界まで疲れ果てて、眠る・・・いや、気を失うまで。ヨヅキは耐えて、俺の傍にいて、イヤイヤ言ってもなお、俺に付き合ってくれるから。
今までがそうであったように。今もなお、こうしてくれている。
だから。まだ続けないといけない。
コイツは俺が守るんだ。あの日、そう誓ったんだから。
・・・あの日って何だよ。おそらくは俺が思い出せていない過去の話だな。まぁとにかく、コイツは俺が守る。だから俺はいくらでも強くなれたのだから。
ヨヅキの事は何でも分かるから。寝落ちしたヨヅキが、眼を覚ますまでの時間も分かるから。眠るように気を失っている間に、ちょっくら冒険者家業をして、金は確保しつつ。
「今日も、するの?・・・じゃなくて、してくれないの?」
食事は、色々と取って来て。ヨヅキの好みも知っているからな。
「・・・うん。食べ終わったから、オリに戻るね」
ヨヅキとは、最小限しか言葉を交わさない。喋りたい、いくらでも話をしたい、お前が大好きだと言ってやりたい。お前を愛してると叫びたい。
「・・・いいよ。今日も、そうするんだ、ね」
でも、してはいけない。
「うん。またそうするんだね。・・・う、ううっ、もう、嫌、だぁ」
俺が心の底からやりたいことを、否定し続ける。
「う、うあ、あ、欲しい、して欲しい、ヤって欲しい、リオンに触って欲しい、リオンにイジめて欲しい、リオンとヤりたい、う、うあっ、あああっ」
でも、もう俺は駄目かもしれん。
「・・・まだ、私を、憎んでるの?ごめん、ね」
それだけは違うんだと、叫びたいから。
違う。誰がお前を憎むものか。憎まれるのは俺の方だ。どれだけお前をイジめてきたと思っている。どれだけ俺が力に物を言わせてお前を従えさせたと思っている。
それでもお前は俺に付き合って、俺の傍にいてくれたから。
俺は、お前を。
そして、今日も。宿の一室で窓の外を見る。
空に月は無い。いやあった。今日は新月か。ええと、この前の満月の日がカチコミの日で、そこから数日後に町を出て・・・うわぁ、もうそれだけ経ったのか。
そして、例によって。ベッドの上にヨヅキだけを寝かせて、手足を四隅に括り付けて、何も言わず、何もヤらず。
「・・・。」
ヨヅキは、ただ泣いているだけ。
少し前から、一切の抵抗を止めて、何も言わなくなった。抱いてくれとも言わなくなった。ただひたすらに耐えて、我慢して・・・心が、壊れてしまったかもしれない。
昼はオリに入れて。夜はこんなことをして。自由も無い、ロクに体も動かせない、ただただ地獄の日々だっただろう。そりゃあ、心もへし折れるわな。そして、
「・・・これは、魔法」
うわ言のように、変な事を言い続けている。
「先輩が言うんだから、間違い、ない・・・」
まぁ、そうだよな。故郷の同胞達の真実と、ここ最近の俺の度重なるイジメがあったとなれば。あの人を頼りたくなるよな。
「・・・その魔法は、多くの敵を倒し。その魔法は、誰かの命を守り。その魔法は、誰かに力を与え。その魔法は、誰かを幸せにする」
オイオイ先輩殿、それヨヅキにも言ってたのかよ。
「・・・私、も。希望と、共に、生きる」
・・・希望、か。先輩殿には悪いが、そんなの気休めでしかない。コイツを救ってやれだの、コイツに助けてもらえ、だの、と。
「――あっ」
「・・・リオ、ン?」
そう、言えば。
虎が酷い姿になって帰ってきた、あの日。
「・・・ヨヅキ」
「・・・久々だね。私の名前を、呼んでくれるのは」
普段とは違い、ヨヅキが少しだけデレてくれたというか。
「ありがとう。ここまで俺に、付き合ってくれて」
「・・・うん。これからも、リオンには付き合ってあげるから」
娼婦の仕事をやらせる前だったのに、ヨヅキの方から俺に抱き着いてきて。
「俺がこんなことをしているのは。俺達の真実を、お前を本当に苦しめているものを、調べているからなんだ。俺もお前と一緒だ、一緒に苦しんでいるんだ」
「――嬉、しい。リオン、そこまで。私の、ことを」
泣き止んで。照れていて。可愛い笑顔で、笑ってくれて。
「場合によっては、もっと酷い事をすることになるだろう。でも、さすがに俺だけでは他にいい方法が思いつかなくてな。それで、一緒に考えて欲しいんだ」
「・・・うん、そういう理由なら、イイよ」
そうだ。その笑顔を、俺は見たかったんだ。
「だから。俺を、助けてくれないか?」
「・・・いいよ。あの時のように、ね」
――先輩殿、マジで感謝する。
「ん?あの時って何だよオイ」
「――あっ」
マジで。あなたの言う通りだった、ぜ。
うわぁ昔の俺ってこんな感じかよ・・・。
顔を手で覆う。駄目だ恥ずかしい。
「・・・リオンも、思い出した?」
駄目だ泣けてくる。自分の無力さに。
「ふふ。リオンが泣いているの、久しぶりに見た」
なるほどな。俺が心の底からやりたいことを否定し続けるのは、一応は間違ってはいなかったんだな。だけどな、
「俺、お前に守ってもらってたのかよ・・・」
まさか、ヨヅキを守ることを、否定せねばならんとは。
「は、はは。お前、俺より、強かった、んだな」
「人間だった頃は、そうみたいだね。・・・そうか、だから私は」
俺が強さを求めていたのは。ヨヅキを守る為ではない。
「それで、今のリオンは。私より、強くなったんだね」
人間だった頃のヨヅキに、守られていたから。
俺が弱かったせいで。俺達は、あんなことに。
この魔法の力を得てから、いくらでも強くなれたのも、ヨヅキを力づくで乱暴したのも。俺が昔、できなかったことだから。
「でも・・・不思議と、私達の名前は思い出せないね」
「いいんだよそれで。お前はヨヅキで、俺はリオンだ。・・・フッ、ようやく頭ん中がスッキリできた」
「そう。・・・なら、体の方も、スッキリしたい、かな?」
ああ。俺も今そう思ってたところなんだ。
少し待ってくれ、俺も裸になるから。
「・・・でもやっぱり、イジワルするんだ」
仰向けで両手足を伸ばして、ベッドに縛り付けた姿勢のまま。
「うん、いいよ。好きにヤってくれって、何度も言っちゃったからね」
そしてさらにオマケをしてやろう。布切れで目隠しをしてっと。
「・・・ふぅ、ああっ、はぁっ、はぁっ、ずっと、待ってた」
ヨヅキはまた泣きだした。でもこれは、恐怖や悲しみではない。
「はぅ、うぅ、あぁ、ようやく、やっと、やっとしてくれる、やっとしてくれるんだ、もうダメ、今すぐし、あ、ああああっ!?やっとキたあああっ!」
オイオイ、腹を撫でただけでそんなに喜ぶなよ。
「な、なに、これぇ・・・今までと、全然、違、あ、ああ」
元々、反応が良かったところに。さんざん我慢させ、そのうえ眼を塞いでやったもんだから。いわゆる感度ビンビン状態ってやつだな。
それでは次は太ももを撫でてやる。ついでに顔を舐めてやろう。
「あ、ああ、ああ、ひ、うあ、あっ――、――!」
どうやら、あまりにも気持ち良すぎて、もはや言葉にならないのだろう。全身を思いっきり震わして、快楽を味わってやがる。
「も、もっとぉ・・・激しく、してぇ・・・」
よしよし分かった、そろそろ肝心なところを触って・・・やらない。
「あぅ・・・。やめ、ない、でよ」
手を放し、しばらくヨヅキの様子を見て。
「もう、放置するのはやめひゃああああああああっ!?」
油断したところで、アソコを軽く一撫で。ほいイった。
「う、あぅ、う、うん、もっと・・・するんで、しょ?」
当然だ。もっとイジめてやるから、覚悟しろよ?
「あう、ああっ、イイ、もっと、もっ・・・う、止めない、でよ」
ほどほどに撫で回して、ある程度ヤったら手を放して。
「あ、ああっ、つ、次は、どこを、触るの?やだ、これ、怖い、目隠し怖い、何されるか分かんなああああああああああああっ!?」
不意打ち気味に感度の高いとこを責めて、イかしてやって。
「あ、ぐぅ・・・、目隠しって、思ってた以上に、厄介なんぎゃああああああっ!?だからいきなりクリを捻らあああああああああっ!?」
焦らすフリをして、連続でイかせてみたり。
「あうっ、もうそろそろイかせ・・・うぅ、また優しく、するの?お願いだから、もう激しくし・・・いや、手を離さないでよ、もっとヤってよおおおおっ!」
もう一度我慢させてみたり。
「う、うあっ、もう、また、イっ・・・かせて、よ・・・。ねぇ、また放置しぎゃあああああああっ!?ひいいいいいいっ!?いきなり本番はやめ、いや、もっとしてえええええええっ!」
そしてまた不意打ち気味に、俺のアソコをブチ込んでやって。
「ヨヅキ、俺も我慢してたんだ。もう出すぞ?」
「イイっ!好きなだけしてえええっ!いくらでも出してええええっ!――うわああああああああっ!・・・あ、ああう、熱、い、気持ち、イイ、よぉ。・・・リオン。キスも、して?」
分かった分かった、それくらいは言う通りにしてやろう。
「フッ。お前がここまで素直になってくれるとはな」
「・・・う、ん。それもまた、魔法だった、から、ね」
目隠しを取ってやる。・・・可愛い、笑顔だなぁ。
「まったく、リオンったら。いっつも妙な事ばかり、思いついて」
やはり拘束はそのまま。
「アレとかコレとかソレとか。今思い出しても、二度とやりたくないことばっかり。しかもほとんど、私の同意も無く無理矢理だし」
お互いの顔を、じっと見ている。
「でも・・・。今なら、分かる。リオンだけでなく私も、それを求めていたんだね。だから、何度リオンに酷い事をされても。私達は、抱き合ってたんだ」
「フッ、同胞達にも散々ネタにされてるからな。アレな事ばかりしている俺も大概だが、それに逃げずに付き合うお前も物好きだって」
俺は上に覆い被さって。いつでもブチ込める姿勢。
「・・・だから、いいよ。今日はこのまま、続けて?」
「ああ。なんなら明日も明後日もヤってやるぜ」
「・・・いや。やっぱり、たまには優しくして欲しいかな。せっかくお互いに、正直になれたんだから。もう少し普通の、男女のセックスがしてみたいの」
「ほう。ならば条件があるな。・・・分かるだろ?」
おっと顔を逸らしやがった。なので顎を掴んで、グイッと引っ張ってやる。こっち見やがれ。顔が真っ赤っかだぜ。
「ふん、言わない。こんなことするリオンなんて、大っ嫌い」
フッ。やはりお前は正直になれない女だな。
「もういいでしょ。リオンの顔なんて見てられないから、眼を瞑ってやる。・・・早く、続きをしてよ。恥ずかしいの」
お前の事は何でも分かるんだ。照れちまって、可愛いなぁ。
それからは語るまでも無い。
俺も我慢してたから、ヤりつく・・・せなかった。
「・・・ぅ、・・・あ、ぁぁ」
というのも、いつもよりだいぶ早く、ヨヅキが寝入ってしまったんだ。長い事オリに入れたり身動きを封じてたせいで、疲労が溜まっていたんだろう。
そして白狐になったコイツを、俺の胸の上に置いて。
「すぅ・・・ふ、ふ、まだ、ヤる、の・・・ぅ」
何だお前、夢の中でもヤってんのかよ。
そして朝になって、白狐を肩に乗せて。もうこんなオリは不要・・・いや、せっかくだから持って行くか。毎日はともかく、時々はヨヅキを監禁するのも、
「リオン、もうそれだけはやめて。さもないと今すぐ人間の姿になって、コイツに服を脱がされました、と大声で叫んでやるからね」
やめてくださいどう足掻いてもワイセツの罪になります許してくださいもうこんなの使いませんから。ホレ、然るべきところに捨てたから、これで許してくれよ。
「うん、よろしい。それでリオン、これからどうするの?さすがに先輩には報告しないといけないから、あの町には行って・・・その後は、どうする?」
そうだよなぁ。もし今あの森に帰ったら、俺達はどうなるのか。また記憶がアレになるのか、でも記憶を完全に取り戻した今だとどうなるのか・・・試したいような、試したくないような。
「・・・今すぐ帰らないのなら、少しお願いがあるんだけど」
おう何でも言いやが・・・えっ。
ま、まぁお前が良いのならやってやるが・・・。
町を出て、ちょっとした森に入って。ヨヅキは人気が無い事を確認し、人間の姿になった。ほい、多分サイズは合っているはずだ、これでいいんだろ?
「うん、ピッタリ。・・・さて、ヤろ?」
場所は、森の中にある、少し開けた場所。
俺の眼の前には、最低限の急所部分を防具で覆ってある、動きやすい戦闘服を着たヨヅキが。しかも槍を構えてやがる。ちなみに槍は練習用だとかで刃が潰されている物を選びました。
「リオンのせいで運動不足なんだ。付き合ってよ」
「フン。いくら記憶を取り戻したからって、はっちゃけ過ぎだろ。まさかお前が自ら、そんな恰好をするとは」
「ふふん。こうでもしないとリオンには勝てないからね。だから、今日こそは勝ってみせる。久々に、私が勝ってやるんだから」
そうかそうか。ならば俺は服を脱ごう。
そして。小さくなれ。俺の体、小さくなれよ。
月のように。小さくなる月のように。小さくなれ、俺の体よ。
「・・・ねぇ、少しくらいは手加減してよ。さすがにその姿のリオン相手は無理だって。動きが速すぎて、私じゃうわあああっ!?あ、危なっ」
ほい隙アリ。さあお望み通りヤってやるぜ?
「うう・・・やっぱりリオンなんて、好きになれない」
フッ。でも結局、付き合ってくれるんだろ?
それじゃあ遊ぼうぜ。これからも、俺達は一緒だからな。
ただひたすらに、強さを求めていた。
ただひたすらに、彼女を求めていた。
ただひたすらに、生き抜こうとしていた。
でも、俺は。力及ばず、一度は死んでしまって。
「はぁっ、ふぅ、やっぱり、リオン、強い、や」
だから。俺はいくらでも強くなれた。
「・・・リオン、ありがとう。大好き、だよ」
ただひたすらに、この言葉を聞きたかったから。
これはやはり、魔法だったんだな。
いや、若干少々納得が行かない部分もあるけどな。
それでも、俺はあの森の魔法に感謝している。
彼女と共に、俺は生きていく。これからも、一緒に。
――今回の主役:リオン
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