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十五話 とある夢を見る少女の話

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 これは、いつかわからない。ここではない、どこかのはなし。
 ここは、どこ?わたしは、なに?わからない。
 このせかいは、なんなの?よく、わからない。
 まほう?なにそれ?わからない。なにも、わからない。

 おもいだせ。おもいだせ。思い出せ。思い出せっ!
 ・・・そうだ。私は、そうだった。
 鎖に繋がれて。冷たくて臭い牢屋に入れられて。私は。
 い、いやだ、やっぱりこれは思い出したくない。いや、やめて、来ないで。もう痛い事はしないで。いや、知らないよ。そんなの知らないってば。
 知らないって言ってるでしょ!ひっ!?い、いや、何それ、ぎゃああああああああああああああああっ!?
 ぐあああっ、い、ぐう、あああああああああああっ!い、痛い、やめ、ぐわああああああああああああああっ!う、うう、う、きゃあぁっ!?ううう、冷たい、いきなり顔に水を掛けないでよ・・・。
 痛いよ、やめてよ、なんで、こんなことを・・・えっ、噂?
 何それ?知らないよ、そんなの。というより、そんなのいるの?
 えっ、私?あ、ああ、その、あの山で、道に迷っちゃって。
 う、うん。そうなの。服もボロボロになって。だから裸だったの。
 だから、私、そんなの、知らな・・・ひ、ひいいいいいっ!?い、いやだ、それだけは、いや、やめて、私、初めてだから、まだ、そんなことするのは、早、いや、ぎゃああああああああああああああああっ!
 い、痛いいっ!止めてええっ!血が出てる!血が出てるからあっ!
 痛い痛い痛い痛いいいいいいいいいいいいいいいいいっ!
 ひいっ!いやだからそんなの知らないって言ってるの!知らないっ!人間になれる動物なんて知らないんだからあああっ!嫌あああああああああああああああっ!

 ぐ、う、がふっ、う、うう、死ぬかと、思っ、た。
 なる、ほど。こいつらの、狙いは、分かった。
 理由は、分からないけど。私達を、狙っている。
 これが、人間という生き物か。時々、道に迷った旅人さんに出会うことはあるけど。ほとんどは丁寧にお話すれば、ちゃんと帰ってくれるから。
 いい人ばかりだと、思ってたのに。とんでもない、人間というのは、なんて酷い奴等なんだ。酷い、こんな奴らに私の初めてを奪われるなんて。
 ふざけてやがる。許せない。それにしても、私達を狙うだなんて。どんな理由かは分からないけど、絶対に口は割らない。お前らのような酷い奴等に、何も話すもんか。
 仲間は裏切らない。何があろうとも。ヤるならヤれ。煮るなり焼くなり好きにしろ。う、う、ぎゃあああああああああああああああっ!
 ・・・ぐ、うう、うう、いや、負けない。こんな人間共になんか。
 負けてたまるか。耐えろ、耐えるんだ私。月さえ見れたら、どうにか・・・うぅう、ここって地面の下にあるのか。どうしよう。月が、空が、見れない。
「・・・アンタ、新入り?大丈夫?」
 誰?この人。グムッ、何よ、いきなり抱き着かないでよ、やめてよ、離してよ。人間なんて嫌い、お前らもあいつ等の仲間なんだ、許さない、こっち来ないで、やめてよ、だから抱き着くのはやめてよ。泣きながら抱き着くなんて意味が分からない。
 やめてよ。ねえ、なんで。なんであなた達も、泣いているの?
 ・・・そう、なん、だ。お姉さん達も、私と同じ、なんだ。
 うん、分かった。先輩、ありがとうございます。もう大丈夫ですから。

 ふ、ふふ、頑張って、よかった。
 耐えてよかった。諦めなくてよかった。最後まで希望を持ってよかった。先輩のおかげです、希望を持てと言ってくれた先輩のおかげです。
 もう許さない。私は、私達は、無駄な命は奪わない。
 でも、今回ばかりは奪ってやる。こいつらの命を奪ってやる。こいつらは生かしてはおけない。私だけじゃない、同族の人間に対してまで酷い事をする奴等なんて、絶対に生かしてはおけない。
 私が何をしたというの?先輩達が、お前達に何をしたというんだ!
 先輩達がどれだけ泣いたと思ってるんだ!あんなことをさせられて、どれだけ泣いたと思ってるんだ!私のために、どれだけ泣いてくれたと思ってるんだ!
 これは私だけの戦いじゃない!先輩達の恨みも込めてやる!
 許さない!暴れてやる!私の思いの全てを、ブチこんでやる!
 くたばれ人間共が!片っ端から噛み砕いてやる!こうなった私はもう止まらない!こうなった私を止められるのはリオンさんと白狐さんだけだ!
 なんだその槍は。その弓矢は。全然痛くない。こんなの全然痛くない!
 そんなもので私が止まるものかああっ!どけっ!道を開けろっ!邪魔だ貴様らあああっ!今です先輩達!早く行ってください!
 ・・・お待たせ。後は私が相手をしてあげる。先輩達を、追わせはしない。死にたい奴から、かかってこい。私はまだまだ、戦える、んだ。
 なんだ、その、槍。その、弓矢。痛く、ない。こん、なの。
 うがあああああああああああああああああっ!

 うん。あの時の私って、無茶苦茶だったなぁ。
 いや、別に後悔はないんだけどね。先輩達のために、死ぬ覚悟はできていたから。いやぁ痛かったなぁアレとかコレとかソレとか。
 私って、人間の姿では非力だし、かといって虎の姿では力が有り余っちゃって力加減ができないから、狩り以外の戦いはあまりやらないからなぁ。だからあれが初めての実戦だったかも。我ながら、壮絶な初陣だったなぁ・・・。
 突き刺された槍や弓矢は気合と根性で何とか乗り越えたけど、冗談抜きで死ぬかと思った。あの時どれだけ刺されたんだろ・・・うげっ、思い出したくもないや。
 ううう、死に掛けるのはこれで2回目かぁ。あれも冗談抜きで死ぬかと思ったなぁ。ええと、いつの頃だったかな。
 親と喧嘩して、家出して、馬車に乗って知らない町に行って、ヤケになって山に登って、足を滑らせて、崖から転んで・・・。うん、この時も無茶苦茶だったなぁ。
 一瞬、この世と思えない綺麗なお花畑とか、死んだはずのおばあちゃんが手招きしてた姿が見えたりして、あぁあ私はこのまま死ぬのかなぁ、って思ったけど。
 どういう訳か、私は生きていて。崖の下まで落ちちゃったから登れなくて困っていたけど、夜になって、月を見たことで、私は・・・。
 ん?あれ?私は何を言ってるの?
 親?家出?馬車?知らない町?おばあちゃん?何それ?
 そもそも、崖から転ぶって何よ。そんなの虎の姿でも死んじゃうって。仮に人間の姿でそうなったら、どう考えても即死だよね。生きているわけがない。

 うん。やっぱり、私は夢を見てるんだ。
 時々、そういう夢を見るんだよね、私って。
 夢の中で。私は、もう一人の私に会うの。だって、見た目も声も私と同じだから、これは私で間違いない。だから、もう一人の私。夢の中の私。
 夢の中の私は。花を育てるのが好きで、自然の中で遊ぶのが好きで。お花畑に囲まれて、その中でお昼寝するのが好きで。
 人間の女の子のように、ちゃんと服を着ていて。人間のように、椅子に座ってテーブルの上にあるご飯を食べて、夜はベッドの上で寝て、時には街でお買い物をして。そういう光景が、頭の中を駆け巡るの。
 しかも、光景だけじゃなくて。嗅いだことの無い花の香り、食べたことの無い食べ物の味、誰か分からない人の声、誰か分からない人の手の温もり。
 うん。間違いなく、私の五感が覚えている。視覚、嗅覚、味覚、聴覚、触覚。その全ての記憶があるの。私の知らない何かの、記憶が。
 いや、知らないんじゃない。忘れているんだ。忘れてしまったんだ。
 何か、忘れてはいけないものを忘れてしまった。でも、思い出したくないこともあるから、忘れている。無かったことにしている。
 そして、眼を覚ましたら。夢の事・・・いや、昔の事なんて、忘れてしまう。今の私は、ずっと眠っているから。だから、ここまで思い出すことができたのかな。
 ・・・だけど、いいの。もうそんなことは、どうでもいい。
 私は、そろそろ眼覚めるから。ありがとう、夢の中の私。久々に会えて楽しかったよ。今度また、夢の中で会おうね。じゃあ、行ってくるね。
 私は、仲間の所へ帰らなきゃいけないから。ここが私の居場所だから。このために、私は生きているのだから。私の命は、仲間のためにあるのだから。
 この絆は何よりも固く、重い。この絆は、誰にも邪魔させない。

 思い出せ。私は誰?
 思い出せ。ここはどこ?
 そうだ。そうだった。私は虎だ。ここは私の故郷だ。人里離れた山奥の森。とても空気が綺麗で、自然豊かな、私達の住処。
 うぐぐ、痛てててて。・・・おはようございます、といっても今は夜か。
 ここは、どこ?いや故郷の森の中だとは思うけど、ええと、ここは。
 ああ、なるほど。私がよく寝床に使っている洞穴だ。
 うわわ、私の体に布切れがいっぱい。動き辛いから外してやる。・・・うん、傷は無い。これなら多分、虎の姿に戻っても問題なく動けるはず。
 私達って、怪我の治りが早いよね。あの時に突き刺された槍や弓矢は気合と根性で何とか乗り越えたけど、あれは冗談抜きで死ぬかと思った。
 あの時どれだけ刺されたんだろ・・・うげっ、思い出したくもないや。ううう、死に掛けるだなんて生まれて初めてかも。私って狩り以外の戦いはあまりやらないからなぁ。
 だって私、人間の姿で森の中を歩いていても、獣達からは襲われることが無いもん。それと、他の仲間達は暇つぶしと称して戦いの練習をする事があるけど、私は非力だからその手の遊びはやらないからね。だからあの時が初めての実戦だったかも。我ながら、壮絶な初陣だったなぁ・・・。
 少し外に出て、月を見てみる。おぉお、今日の月は一番大きい。私があのクソ野郎共から逃げられた時は、とても小さい細長い線のような月だったから・・・。
 あれ?もしかして私って結構長い事寝てたの?というより気を失っていたというべきか。うわぁ本当に死に掛けてたんだ私。生きてて良かったぁ・・・。

 月を見ている。ずっと月を見ている。
 ずっと探してた。やっと会えて、嬉しかった。月のおかげで、私は無事に故郷に帰ることが・・・いや無事じゃなかったですハイ。致命傷ってレベルじゃないですアレ。
 まあそれはそれとして。私ってやっぱり、不思議だなぁ。
 私は月を見ながら念じることで、虎の姿に戻ることができる。今の人間の姿は仮の姿・・・と言いたいけど。やっぱり私の場合は、人間の姿の方が元の姿なのかなぁ。
 だって、どう考えても虎に戻れる時間の方が少ないもん。月を見て、念じて、ようやく虎の姿になれて。だけど昼頃にはどうしても人間の姿になってしまう。あと、寝入った場合もどうやっても人間の姿になる。
 それとは別に、一度虎の姿に戻ると、自力では人間の姿にはなれない。時間が経つか、寝るかのどちらかじゃないと、無理。
 姿を変えるのは、どうしても苦手・・・というよりは、制限があると言うべきなのかな?なにせ今まで必要性を感じなかったというか、別に不自由は無かったから、特に練習をしてこなかったの。
 だから、あのクソ野郎共に地下室で囚われてた時は、どう足掻いても絶望だった。もう少し練習しておけばよかったと思ったけど、時すでに遅し。そしていいようにヤられてしまって・・・うげっもう思い出したくないあんなの。吐き気しかしない。
 でも、まあいいもん。私は生きているから。
 ふあぁあぁ、夜だけどまだ寝足りない。本来なら私は夜行性なのに、ずっと寝てたから、生活習慣が乱れちゃったのかな?
 ええと、お腹具合は・・・うん、大丈夫。私は4日か5日に1回食事をすれば十分だからね。それに、あそこを出る際にクソ野郎共をたらふく食べたから、まだお腹には余裕がある。ずっと寝てたから、お腹が空いてないのかな。
 それじゃあ、今日はもう寝ようっと。ゆっくり体を休めて寝なきゃ・・・。

 寝れるわけがないよこんなの。ムラムラするに決まってるでしょ。
 もう一度寝床を出る。見える。私には見える。たとえどんなに暗くて寒い日でも、いくらでも見える眼を持っているから。
 見える、というよりは。見てしまった。見えてしまった。
 湖のほとりで。髭面のおじさんと、黒髪の若い女性が、交尾をヤってらっしゃる。うわぁ中々アグレッシブな動きだぁ・・・。
 あの髭面のおじさんは、芦毛さん。元の姿は芦毛の馬だから、私達はそう呼んでいる。黒髪の女性は・・・初めて見る顔だ。
 見たところ、合意の上での交尾だと思う。とても楽しそう。
 う、うん、この森ではよくあることだから、どうぞごゆっくり・・・というワケにはいかない。見てしまったから。見えてしまったから。
 う、うう、いや、やだ、やめて、ううう、あう、眼が離せないぃ・・・。あ、あう、やっぱり、私のおマンコもウズウズしてるぅ・・・。
 あまり言いたくないけど、他の仲間達は、まあそこそこに交尾をヤってらっしゃる。だけど私は体が小さいから、交尾をするならもう少し成長してからと心に決めている。もっとも、この前クソ野郎共に純潔は奪われてしまったけど・・・。
 そして、元の姿でも交尾はしない・・・というより、この森は私以外に虎なんていないから、ヤる相手がいない。なので私は例のクソ野郎共を除き、今まで交尾をしたことがなかった。
 でも、こういうことはする。ずっとしていたから。両膝を地に付けて、股を開いて。自らのおマンコに、両手を、指を這わせて。
 うっ・・・もう、濡れてる・・・あ、あう、指が止まらないぃ。

 毒蛇さんから聞いたけど、これは自慰やオナニーと呼ばれるものらしい。人間達も、発情したけどヤる相手がいない場合は、仕方が無いからコレをヤって自分を慰めているんだって。毒蛇さん、どこでそんな情報を手に入れたのよ・・・。
 はあっ、ああっ、他人の交尾を見ながら、自分のおマンコを、自分で弄り回している私・・・う、うう、でも、気持ち、イイ、よぉ・・・。
 あ、あう、指が止まらない、気持ちいい、う、う、ああう・・・。ふぅ、意識が飛んで、少しスッキリ・・・するわけがない。
 まだまだ指が止まらない。あ、あう、止められないぃ、自分で自分の性器を弄るとか意味が分かんない、でも止まらない、止められない、まだまだ続けてる。
 ずっとそうなの。私はずっと、そうなの。純潔は守りたい、だけど無性にムラムラして、交尾したくてしたくて仕方なくなるから、ずっとこうしてきたの。
 だってこの森にいたら嫌でも発情しちゃうんだから仕方ないでしょ!?みんなあっちやこっちで交尾しすぎだって!いくら仲間内でヤれば妊娠しないからってみんな色々ヤりすぎだよ!ていうか人間の姿になれるからって異種族同士でヤりすぎじゃないの!?馬×狐とか兎×蛇って冷静に考えて無茶苦茶にもほどがあるよ!?
 特にリオンさんと白狐さんなんて見境無さすぎだよ!いっつも夜から朝までヤりっぱなしで!しかも白狐さんの物凄い喘ぎ声が森中に響き渡ってうるさくてうるさくて!私達って耳も良いんだから嫌でも聞こえちゃうんだって!
 それにリオンさんったら、いっつも変な交尾ばかりするんだから!白狐さんの手を縛って延々とイジめるだなんて、どう考えても交尾じゃないでしょ!?白狐さんも白狐さんで、嫌々言いながらも結局最後まで付き合ってるし!あと以前ヤってた、アソコ同士を合体させながら白狐さんを抱えて森の中を歩き回る交尾は意味不明ってレベルじゃなかったよ!?

 あ、あう、ダメだ、今の私は特にダメだ。
 う、うう、あのクソ野郎共め・・・私に思ってた以上の後遺症を残しやがって。今度あいつらの仲間に会ったらまた噛み砕いてやる。許さない。
 私は、あのクソ野郎共に捕まって、思い出したくもない酷い交尾をさせられてた。初めても奪われた。一度に何人もの男を相手させられていた。
 ほとんどは苦痛を受けるか、気持ち悪いだけだったけど・・・ほんの少しだけ、気持ち良い事もあった。これは事実だから認めるしかない。思い出したくないけど。
 だから。無理矢理とはいえ、一度は交尾を経験してしまったから。
 もう、こんなのでは満足できない。自分でヤったのでは、満足できない。
 う、うう、私もヤりたい。ちゃんとした交尾をヤってみたい。あんな酷い交尾じゃなくて、男性と女性同士が合意の上でやる、普通の交尾がヤりたい。
 ヤりたいヤりたいヤりたいヤりたい私だってヤりたいヤりたいヤりたいヤりたい交尾したいヤりたいヤりたいヤりたいヤりたい我慢できないヤりたいヤりたいヤりたいヤりたい発情してしまったヤりたいヤりたいヤりたいヤりたい駄目だ今すぐヤりたい。
 でも、できない。2人がヤってる場所までは、この姿ではいけない。険しい道を超えるために、虎の姿に戻る必要がある。でも、私は一度虎になったら、すぐには人間にはなれない。さすがに虎の姿で交尾してくれなんてことは言えないし。
 あ、あうう、やっぱり指が止まらないぃ。あ、あう、あ、ああああっ!・・・う、ううう、ダメ、こんなことしてたら余計にムラムラするぅ。
 でも指が止まらない。こうするしかないから。ううう、今なら何でもヤれるのにぃ。リオンさんでも小兎さんでもどっちでもいい。どっちか私とヤってください。あと小兎さん、一度誘ってくれたのに追い返してしまってごめんなさい。それと一晩中、虎の姿で追いかけ回してごめんなさい・・・。

 ああ、あう、だめ、おかしくなる。頭がおかしくなる。ムラムラしすぎて、指が止まらなくて、でも満足できなくて、またムラムラして以下略。ううう、もう耐えられないぃ・・・。
 もう駄目だ。やる。月を見上げる。初めてやることだけど、ヤってみる。
 うう、でも、もし失敗したら、ええい、もうどうにでもなれぇっ!
 大きくなれ!私の体、大きくなれよ!
 月のように!大きくなる月のように!大きくなれ、私の体よ!
「うがあああああああああああああああああっ!」
 こうなった私はもう止まらない!こんな道なんてサッサと通り抜けてやるぅ!そして思いっきり飛びかかってやるぅ!
「えっ・・・ギャアアアアア虎がああああああっ!?」
「むう?おお、虎か。元気そうで何よりだ」
 芦毛さんの胸の中で怯えている黒髪の女性。うん、驚かせてごめんなさい。でもこれはあなた達の責任です。あなた達のせいでこうなったんです。
 だから、やってやる。あの時のように、気合と根性で!
 小さくなれ!私の体、小さくなれよ!
 月のように!小さくなる月のように!小さくなれ、私の体よ!
「えっ・・・虎が、金髪の女の子に。あ、ああそうか、お前か」
「おぉお。虎、姿を変えるのがうまくなったな」
 ふ、ふふ、結構疲れるね、これって。でも、頑張って、よかった。希望を持ってよかった。先輩のおかげです、希望を持てと言ってくれた先輩のおかげです。
「私、も。混ぜ、て?」
 ふふ、集団でヤるのは慣れてるからね。

「あううう!?うああああっ!?やめ、そこは、きゃあああっ!?」
「オイ虎。人が仲良くヤってるところに横槍するとはいい度胸してんじゃねえか。よしよし分かった、ここはこの俺様が存分に可愛がってやるぜ」
 な、に、こ、れ。
「むう。相変わらず、鴉の交尾は不思議だな」
 芦毛さん、やめてください、ジロジロ見ないでください。
 いや、その、確かに、混ぜてくれとは、言ったけど、さ。
「それにしても鴉。女同士で交尾するとは、変わった趣味を持っているな」
 黒髪の女性こと、鴉さんに後ろから抱きかかえられて。鴉さんは、私のおマンコを、ひたすらイジめてくる。ああう何その指の動きぃ、そんなの知らないぃあうう。
「ハッハッハ。俺様は人間の町では男のフリをしてるからな。それで時々、俺様を男と勘違いしてナンパしてくる女がいるんだよ。まあそれで、少々な」
「ふむう。人間は同性でも交尾をするのか。儂には理解ができん」
 私も理解が追い付かない。でも、鴉さんの指が、とても気持ち良くて。
「ひ、ひいい、また、イっちゃ・・・あ、あう、鴉さん、止めないで、くださいぃ・・・う、うう、イジワルしないでぇ・・・」
「ほう。続きをして欲しいのか。じゃあ悪いけど、俺様の手を綺麗にしてくれないか?そしたら続きをしてやるよ、ほれ」
 あ、あう、やだ、さっきまで私のおマンコを弄ってた指を、私の汚い汁が付いた指を、私の口に突き付けてきて。でも私は口を開けて、鴉さんの指を、しゃぶって。
「あ、あう・・・鴉さんの指・・・美味しい・・・ですぅ・・・」
「むう・・・やはり、儂には理解ができん」
 あうう、指で私の舌を弄らないでぇ・・・。

「オイおっさん、もう少しゆっくりしてやれ」
「むう、分かった。これくらいでいいか?」
「ぎゃああああああああああああああっ!」
 四つん這いになって。後ろから、芦毛さんに。
 や、やっぱり痛い、あの時の事を思い出して、やっぱり辛い。でも、平気。むしろ、気持ちいい。あ、あう、芦毛さんのおちんちん、気持ち、いい、よぉ・・・。
「虎、力を抜け・・・といっても、無理か。仕方ない、俺様が手伝ってやろう。ほら、もう何も考えなくていいから」
「むう。相変わらず、鴉はキスという物が好きなんだな」
 四つん這いになった私の前に、鴉さんの顔が。
 あ、あう、やだ、女同士で、唇を、そんな、あ、あう、あううう。
「あう・・・もっとぉ・・・鴉さん、もっと、してぇ・・・」
「ふふ。イイじゃねえか、そうだ、その顔で良い。どうだ虎、気持ち良くなってきたか?じゃあ今度は舌を入れてやるよ」
 う、うう、私の想定してた交尾とは、全然違う。だけど、
「虎、そろそろイくぞ。いいな?」
「あうううん!う、う、うわあああああああああああああっ!」
 あ、熱い。お腹の中が、熱い。
 この感覚、久しぶり。あの時は、ただ単に気持ち悪くて、痛くて、吐き気を催すほどで、とにかく酷かった、けど。
「ふふ。どうだ虎、気持ち良かったか?・・・じゃあおっさん、次は俺様だ。どうせまだまだヤれるんだろ?」
 もう私は、何も考えられないぃ・・・。とても、幸、せ。

 そこからは、何も覚えていない。気が付いたら、私はまた鴉さんに後ろから抱きかかえられて、湖に浸かっていた。
「いやぁ、それにしてもおっさんとヤるのは楽しいなぁ。また朝までヤっちまったぜアッハッハッハ」
 芦毛さんは、湖のほとりで。馬の姿に戻ってます。横になってます。
「ふあぁあぁ、だからと言ってあまり無理をさせないでほしいな。儂は夜は静かに寝たいというのに、まったく・・・」
 芦毛さんはそっぽを向いている。でも本心では、とても楽しいのだろう。こんなにご機嫌な芦毛さんを見るのは初めて・・・いや、アレ?えっ?
 えっと。芦毛さんに、こんなに仲のいい女性がいたっけ?そもそも、私達の仲間に鴉さんなんていたっけ?あれ、あれれ、えええええっ!?
「えっと・・・?鴉さん、で。いいん、ですよね?」
 なんだかよく分からなくなってきた。えっと、この黒髪の女性は、
「何言ってんだよ虎、俺様は鴉で間違いないって。ははぁ、お前ずっと寝込んでいたからなぁ、頭がボケちまったな?」
「そうだぞ虎。仲間の顔を忘れるとは。・・・まぁ、あれだけの大傷を負ったのだ、仕方の無い事か。だがお前のせいで、リオンはおろか白狐や小兎まで人里に出る羽目になってしまってなぁ」
「えっ。どういうことです?私が寝てる間に、いったい何が」
「ああ。どうやら俺様達を狙う悪い奴等がいてなぁ。というより、お前に酷い事をした連中なんだけど、そいつらを懲らしめるために――」

 うわぁ・・・私がずっと寝ている間に、そんなことが。
 みんな、私のために。嬉しい。とても嬉しい。
 よかった。本当に生きててよかった。ここに帰ることができて。仲間のもとへ帰ることができて、本当によかった。そうだ、ここが私の居場所だ。ここが私の故郷だ。
 ここで仲間達と共に生きていて、本当によかった。だからこそ、仲間達との絆は何よりも固く、重い。この絆は、誰にも邪魔させない。
 私達は仲間なんだから。いままでも、これからも、ずっと。
 私は湖から出て、体を震わせて、水気を切って、大きく息を吸う。あぁあ、とても良い朝だ。清々しい。そして改めて見ると、ここは本当に良い所だ。
 優雅で美しい木々に囲まれて。空気も綺麗で、美味しくて。これであとは、人里に出て行ったみんなが帰ってくれば、何も言うことは、
「虎ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
 おおっ、思った内から早速、みんなが。
「あ、皆さんお帰りなさグムッ。し、白狐さん、苦しいですぅ・・・」
 服を着た白髪の小柄な女性に、全力で抱き着かれてます痛いですやめてください離してくだ・・・うう、そんなに泣かれてしまっては、仕方ないです。心配を掛けて申し訳ありませんでしたハイ。
「むう。お前ら、帰ってきたか」
 少し離れたところに、青髪の大柄な男性と、茶髪のお兄さんが。2人とも服を着て・・・あれ、1人足りないけど。ああ、毒蛇さんはまたどこかに遊びに行ったのかな?
「おう、芦毛のおっさん。俺らが町に出向いている間、変わりは無かったか?」
「へっ、大丈夫さ。なにせ俺様がついてるからな」
「・・・誰?この人、初めて見るけど」
 えっ。もう白狐さんったら、冗談キツいですよぉ。
「いや、僕も初めて見るけど。虎ちゃん、この人はいったい?」
 ええっ?小兎さんまで・・・。もしかして疲れてるのかな?
 この人は、私達の仲間の――。えっ、3人ともどうしたの?


「どうしたんです?3人とも不思議そうな顔をして」
 リオンさん。白狐さん。小兎さん。どうしたの?
「いや、虎よ。そりゃ意味が分からないに決まってるだろ?」
 えええっ!?リオンさんも!?私も意味が分かんない!
「むう?儂らの何がおかしいと言うんだ?」 
「オイオイ酷ぇなぁ。俺様の顔を忘れるとはなぁ」
「いやだって、誰だよコイツ。初めて見る顔だぞ」
 芦毛さんと鴉さんも、不思議そうな顔をしている。
「・・・リオン。私達って、いったい何なの?」
 何って。白狐さんったら、決まっているじゃないですか。
「私達は仲間です。いままでも、これからも、ずっと」
 この絆は、誰にも邪魔させない。私達は、仲間なのだから。


 ――今回の主役:虎(人間時の姿:金髪の少女)
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