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12.終わりの始まり(いちおう最終回)

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 現実を受け入れるのに、少々時間が掛かった。
 だけど未だに受け入れられないのが現実。


 大がかりな手術を終えて、どうにか退院して、間もないうちに。再び手術を受けるようにと勧められた。二度目にして、これが最後の手術になるから、と。
 手術の内容は、点滴タイプの抗癌剤を効率よく入れられるようにするための道具を体の中に埋め込む、というもの。道具と言っても、大きさは硬貨一枚ほどの広さで、蚊に刺されたような膨らみのコブができる程度のもの。
 ただし、手術はめっちゃ痛かった。今回は局所麻酔で、私の意識がある状態で行ったのだが・・・力任せのごり押しで、グリグリと押し込まれる印象が強かった。
 それと同時にやってくる、物凄い激痛。比喩表現抜きで神経が剥き出しになっている状態で、その部分に道具をグリグリと押し付けているのか、あるいはメスで肉を裂いているのかは判別はつかなかったけど、とにかく痛かったの一言に尽きる。
 手術自体は1時間ほど。終われば自力で歩いて病室に戻り、そのまま一泊・・・ならぬ、ほぼ一週間寝泊まりする羽目に。何故なら抗癌剤治療はここからが本番で、翌日からいきなり点滴タイプの抗癌剤を受けるからだ。
 点滴を受ける期間は、丸々二日。しかも点滴は持ち歩きができるようになっている。大きさで言えばスマホほどで、これが入った袋を首にぶら下げたり、あるいは腰元にぶら下げることで、点滴を受けつつ普段の生活が送れるようになっている。
 ただ、今回は初めての点滴タイプで副作用が物凄いらしいので、もしものことがあってはいけないとのことで、ここまで入院が長くなった。実際、2回ほど意識が無くなった。私はこれからコレを延々と受けねばならんのか・・・。

 少し前に、錠剤タイプの抗癌剤を経験した私だが。
 それではもう効果が薄いから、点滴タイプになった。
 本来であれば手術で癌を切り取るのがベストだが、どうやっても切り取れない場所に癌が住みついているから、こうすることしかできない。妙な物を肉体に埋め込んで、点滴をよりよく受けられるようにすることしか、できない。
 ・・・親が泣き崩れる姿だけは、見たくなかったなぁ。
 一応は、運が良ければ治るかもしれない、とは言われている。
 ただし、確率はとてつもなく低い。5年生存率20%未満、と断言された。
 つまりは80%以上の確率で、5年以内に死ぬ。今受けている抗癌剤を始めとして、ありとあらゆる延命処置を施せばもう少しは生きられるかもしれないけれど。
 健康寿命――健康上の問題なく、日常生活が無事に送れるという意味での寿命は、もう尽きた。これからの私は万に一つの可能性にすがりながら、抗癌剤を受け、これから更に激しくなるだろう副作用に耐え、それでも生き延びなければいけない。
 ・・・死にたい。
 もう私は、健康的には生きられない。やりたいことも大幅に制限されたり、あるいは二度とできなくなったり。それでいて体は苦しいままで、治療費だけが積み重なっていく。80%以上の確率で、5年以内に死ぬというのに。
 それだったら、やっぱり今のうちに死ねばいいのでは?その方が親の負担は減るし、私も楽になれる。こんなことを書いたらまた削除処分を食らうかもしれないけれど、実際に余命宣告をされた以上は、どうしてもこう考えてしまうんだ。


 本当だったら、まだまだ書きたいことはいっぱいあるけれど。
 これ以降は、この手の内容が続きそうなので、この文章はこれまでにする。
 一応は、今は自ら死ぬつもりは無い。副作用も、前々から体のあちこちにくすぶり続けている苦痛も、今のところはどうにか耐えられているので。
 だけど、耐えきれなくなった時には・・・自分でも、どうなるかは分からない。これからどうなるのかは、私自身にも分からないのだから。
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