貴石奇譚

貴様二太郎

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前日譚 ~結末に至る為の悲劇~

最後の一人、最初の一人

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 魔法使いと人間の戦争――
 大地を焼き、町を灰燼かいじんに帰し、生き残った人々の心と体をむしばんだ愚かな戦い。そんな負の遺産しか生み出さなかった戦争から百と二十年。

 ――ここ、は?

 模造品を生み出すフラスコの中、目覚めるはずのなかった少女が一人……朱に染まった世界で目覚めた。


 ※ ※ ※ ※


 透明な膜のような丸天井ドームに堅固な壁。戦争の後、奇病により弱り切っていた人間たちが救世主に導かれ、ようやくたどり着いた最後の理想郷。

「ここがコロナ……裏切り者の箱庭、無知な略奪者たちの理想郷」

 薫衣草ラベンダー翡翠ひすいのような白菫しろすみれ色の髪をさらりと揺らし、少年――ファートゥム――は翡翠色の瞳をすがめると、くすんだ膜で隔てられた空を仰いだ。

「しかし、なんなんだ? この町中まちなかの、魔素エーテル濃度の異常な薄さは」

 眉をひそめたまま視線を戻し、ファートゥムは再び歩き出す。町の中心、人間たちの王がいる館を目指して。

 穹窿きゅうりょう都市コロナ。
 いつ誰が、どんな材質でいかなる技術を用いて――そのすべてが謎に包まれた時代錯誤遺物オーパーツ。主を失い眠っていた遺跡に再び命を吹き込んだのは、賢者テオフラストゥスと彼に導かれやって来た人間たち。
 テオフラストゥスの手により眠りから目覚めた遺跡に人々が根付き、百と余年。いまや無人だったのが信じられないほどに町は隆盛を極めていた。
 美しく整えられた石畳を行き交うのは満ち足りた人々。閉ざされた町は常に一定の温度に保たれ、暑さや寒さに悩まされることもない。堅牢な壁に守られた人々は外敵に怯えることもなく、与えられた安寧をひたすら貪っていた。
 清潔で平和で、何不自由することなく毎日を送ることのできる理想郷。人間にとっての理想郷。
 それを支えているのは――

「コイツはもうだめだな」

 石畳の上に倒れ伏すのは小さな人影。汚れたガラスのような瞳は何も映さず、小さな口は何も語らず。少年は打ち捨てられた人形のように転がっていた。

「ちょっと錬金術師様呼んでくるわ。このままこんなとこに放置しておくのも邪魔だしな」

 男は倒れている少年をまるでゴミか何かのように言うと、そのまま立ち去ってしまった。そしてしばらくすると、二人組の男女と一体の鉄人形ゴーレムを連れて戻ってきた。

「錬金術師様、これなんですが」

 先ほどの男が二人組の男女に倒れている少年を指し示す。

「外の農園用ホムンクルスか」
「製造年からして寿命でしょう。通報ありがとうございました。これはこちらで回収しておきます」

 錬金術師様と呼ばれた二人組の男女は倒れている少年のうなじを確認すると男に礼を言い、少年を回収するように鉄人形へと指示を出した。荷物のように無造作に運ばれる少年。けれど彼は一切抵抗することなく……
 消えていく三人と一体を見つめるのはファートゥム。拳を固く握りしめ、薄暗い路地から彼らの様子をうかがっていた。

「死体の山の上で自分たちだけの幸せを貪る愚者どもが」

 吐き捨てたのはファートゥム。憎々し気に、忌々し気に。
 この清潔で平和な町を支えているのは、錬金術師たちの作りだした人造人間――ホムンクルス――だった。外へ出られない人間の代わりに町の外で畑を耕し、家畜を育て、漁をする。さらには町の中でも、人間がやりたがらない仕事をこなしている。

「待ってろ……必ず……」

 ファートゥムはひとつ。少年が連れていかれた先――町の中心、王の館を見つめながら。


 ※ ※ ※ ※


 魔法使いと人間たちの戦争が起きたとき、ファートゥムはまだ子供だった。
 幼い彼は当然戦力外で、それは戦争が終わるまで変わらなかった。大人たちが作った結界の中で息をひそめ、ただ成すすべなく家族の帰りを待つことしかできなかった。
 一人、また一人と帰ってこなくなる家族、親戚……。戦争末期、ファートゥムたち記憶転移の魔法使い一族は、とうとう姉とファートゥムの二人だけになってしまっていた。

『大丈夫、絶対帰ってくるから』

 刹那、彼の脳裏をよぎったのは苦い記憶。最後に見た姉の笑顔、守られなかった約束。

「嘘つき」

 ファートゥムの姉もまた戦争が終わる直前、ファートゥムを一人残していなくなってしまったのだ。

「ま、どうせ戦争なんてなくても、俺たちはいずれ消える運命だったんだけどな」

 彼は路地裏の壁に背をあずけると、ぼんやりとした空を見上げた。
 戦争が起こる前――もうその頃からすでに、魔法使いたちの数はかなり少なくなっていた。子が、生まれにくくなっていたから。

「流れなくなった水は腐るんだよ」

 魔法使いたちは一族それぞれ、特有の固有魔法というものを持っている。
 炎を操るのが得意な炎火の一族、精神に干渉するのが得意な精神干渉の一族、遠見や予言の千里眼の一族……そして、直系血族の記憶を情報として引き継ぐ、記憶転移の一族。
 そんな固有魔法を守るため、彼らは一族同士で婚姻を結ぶことが当たり前だった。特に記憶転移の一族はそれが顕著で、代を重ねるごとに血が濃くなり、体は弱くなっていき、戦争末期には子が生まれなくなっていた。

「愚者だってんなら、俺たちも大概だけどな」

 右の人差し指にはめていた指輪から小さな針を出すと、ファートゥムはそれで自身の左の親指を傷つけた。ぷくりと膨れ上がる血の玉。それをぺろりと舐めると、ファートゥムは人気のない路地を転移魔法で短縮して進みながら一人自嘲する。

「しかも最後に残ったのが、よりにもよって出来損ないの俺と……」

 ファートゥムは同族からずっと、出来損ないと蔑まれていた。
 本来、記憶転移の一族の固有魔法は、直系血族の記憶を情報としてすべて受け継ぐ能力。それは親から子へ、連綿と受け継いできたものを次へと渡す力。けれどファートゥムは、その受け継ぐべき財産を受け取れなかった。
 彼は記憶転移の一族としてはあり得ない、まったくのまっさらな状態で生まれてきてしまったのだ。

 子供が生まれにくくなっていた魔法使いという種の中で、ファートゥムは実に二百年ぶりに生まれた希望の子だった。けれどそのファートゥムが固有魔法を継承していなかったことに、魔法使いたちは種の終わりを実感せざるを得なかった。
 そして程なくして始まってしまった人間との戦争。それは裏切者の出現による戦況の悪化、人間に比べて身体的に脆弱な個体が多かったこと、圧倒的な数の差、魔法を使うための代償――様々な要因が重なり、結果、魔法使いたちはこの地から去ることとなった。

「しっかし……この魔法使うための代償、なんとかなんねぇかな」

 戦争で魔法使いたちを追い詰める原因となった一つ、魔法を使うための代償。それは“自傷行為”だった。
 魔法使いたちが使う魔法は、魔臓から作られる魔力と大気から取り込んだ魔素からなるもの。けれど、それだけでは魔法は発動しない。理由は不明だが、魔法発動にはそれと引き換えに、自らの体の一部を傷つける必要があった。

「一回一回ちくちく地味に痛いんだよな、これ」

 文句を言いながら入り組んだ路地を進んでいくファートゥム。やがて、彼の目の前に目的の館が現れた。再び指を刺し、今度は擬態魔法で姿を周囲の景色に溶け込ませると、ファートゥムは路地から目的の建物を見上げた。
 四角い箱のような、つるりと継ぎ目のない石に似た材質で造られた建物。二階から上は建て増しされたもののようで、一階とはまったく違う建築様式の石造りの建物が乗っている。どうやらこの二つの建物は中で繋がっていないらしく、外壁に添うように上部分への階段が作られていた。
 一階のつるりとした部分の窓という窓には鉄格子が嵌められていて、入り口らしき扉の前には鉄人形の門番。さらには扉そのものにも何かからくりが施されているようで、あからさまに部外者を拒んでいた。

「転移魔法が使えれば一発だったのにな。町の中は魔素が薄すぎて大がかりな魔法使えないし、ほんと面倒くせぇ」

 ブツブツとぼやきながらも、ファートゥムは頭の中で別の侵入手段の算段を始めていた。
 町の中心部にそびえたつ一際異質な建物――それがこの目の前の王の館。かつてテオフラストゥスに連れられやって来た人間たちの中で、彼の技術を受け継いだ一族が住んでいる館。忌まわしき錬金術師たちの巣窟。
 固有魔法がなくともファートゥムとて魔法使い。それ以外の魔法は一通り使えるし、もちろん転移魔法も使える。けれどこの王の館、正確には王の館の一階から地下の部分にだけ特殊な結界が施されていて、それは魔法使いであるファートゥムをも拒絶していた。

「どこの誰がこんな面倒な防御結界を……って、まあそれもだいたい見当はついてるけどな」

 暇を紛らわすように不満を口にするファートゥム。けれどその視線は、しっかりと館に固定されたまま。そして――

「ようやく来たか」

 ファートゥムの見つめる先、そこにいたのは先ほどの二人組の錬金術師と鉄人形。そして鉄人形に抱えられたホムンクルスの少年だった。
 彼らが門番と扉に四角い札カードのようなものをかざすと、ぶ厚い鉄の扉は呆気なく開かれた。

「あれが鍵か」

 それから待つこと数時間――日が沈み、夜のとばりが下りた頃。ようやく先ほどの二人組のうちの一人、男の方が館から出てきた。物陰で擬態魔法を使い姿を消し、男の後を追うファートゥム。やがて男は二階建ての集合住宅へと入っていった。男の後について無事不法侵入を果たしたファートゥム。直後、幸いなことに男は風呂場へ。
 ファートゥムは脱ぎ捨てられた男の衣服をあさり、目的の四角い札入門許可証を抜き出した。

「平和ボケか? 不用心すぎ」

 ほくそ笑み、ファートゥムは魔法で男の姿に擬態した。そして何食わぬ顔で男の部屋を出ると来た道を戻って、先ほどの門番に入門許可証を見せた。すると門番も扉も、拍子抜けするほどあっさりとファートゥムを中へと招き入れた。怪しまれないうちにとファートゥムは早足で扉を抜ける。
 白い蛍光灯の光を受けつるりと光る廊下はひとけがなく、しんと静まり返っていた。

 ――館の中ここは町と違って魔素があるのか。って、当たり前か。ここは魔術錬金術師たちの作業場だもんな。

 魔術錬金術師――魔術の知識と力を使い、普通の錬金術師に作り出せない魔道具を作り出すことのできる錬金術師。精霊錬金術師と似てはいるが、こちらは精霊ではなく魔術の力を使う。
 魔術も魔法や精霊術と同じように、自分の中の魔力と大気中の魔素をかけ合わせて力を発現させる。

「あら? あなた、さっき帰ったんじゃなかった?」

 不意に背後からかけられた声に、ファートゥムの心臓がびくりと跳ねた。慌てて振り向いたファートゥムの視線の先、そこにいたのは扉の隙間から廊下に顔を出した女性の姿だった。
 
「忘れ物でもしたの?」
「あ、や……ちょっと」

 女性の眉間にしわが寄る。

「あなた……なんか声、おかしくない?」

 女性の言葉にファートゥムの背をいやな汗が流れ落ちる。だが幸い女性はそれ以上追求してくることなく、「暇ならこれ、下に持ってっといて」と資料の束を押し付けてきた。
 女性が部屋の中に戻り扉が閉まると同時に、ファートゥムの口からは思わずといったため息がもれた。
 擬態魔法には二種類あって、ひとつは光を操りまわりの景色と同化するもの。そしてもう一つは、人の視覚認識を歪めて姿をごまかすもの。ちなみにファートゥムが今使っているのは、人の視覚をごまかす方。この擬態の場合は、撮像機器監視カメラなどの機械類には通用しない。

「……って、別にもうばれても構わないんだった」

 苦笑いを浮かべると、ファートゥムは擬態を解いた。中に入ってしまえば、彼にはもうごまかす必要などなかったから。中に入れさえすれば目的は果たせる、果たす自信があったから。

「返してもらうぞ、略奪者ども」

 流れてくる魔素を辿り見つけたのは、選ばれたものだけが通れるよう魔術結界を張られた厚い鉄の扉。この先は選ばれた者だけが足を踏み入れることのできる、命が生まれ、消えていく場所。
 ホムンクルスたちのゆりかごで墓場、このコロナの子宮であり心臓でもある場所。

「さすがにただの人間たちが出入りするようなとこに、こんな複雑な結界張るわけないよな。てか、こんなもん人間に張れるわけないか」

 傷つけた指先から浮き出た血の玉を舐めると、ファートゥムはあっさりと魔術結界を解除した。そして残った鉄の扉には、烈火をまとわせた暴風をぶつけて吹き飛ばした。

「誰だ!?」
「誰か! 衛兵を呼べ!!」

 襲い来る猛炎や扉の残骸と突如現れた不審人物に、中にいた錬金術師たちは慌てふためき右往左往。そこへ警報を聞きつけやって来た機械人形や衛兵たちも加わり、部屋の中はまさに蜂の巣をつついたような大騒ぎ。
 けれどその喧騒は、瞬時に静寂へと塗り替えられた。部屋と機械人形たちは真朱まそほに、人間たちは朱殷しゅあんに、瞬く間に塗りつぶされたから。そして飛び回る蜂が消えた部屋の中に残されたのは、赤く染まったファートゥム一人。

「恨むならトリスとテオフラストゥス……そして、悪魔の知識を受け入れた先祖たちを恨むんだな」

 耳障りな警報が鳴り響く中、ファートゥムはフラスコの森を抜けて奥へと進む。奥へ奥へ――閉ざされていた扉を無理やりこじ開け、さらに奥へ。
 やがてたどり着いたのは最奥の小さな部屋。いくつか並んだガラス管の中の一つで揺蕩っていたのは、切り刻まれた無残な裸身をさらす白菫色の髪の少女。
 
「やっと、会えた」

 ファートゥムは赤い指先でガラス管に触れ、今にも泣き出しそうな顔で少女を見上げた。

「遅くなってごめんな」

 次の瞬間、ガラス管は粉々に砕け散った。勢いよく流れ出る液体に乗って落ちてきたボロボロの少女を受け止めると、ファートゥムはそのまま彼女を床に横たえる。そしてひとつ深呼吸をすると、左の耳たぶを刺し――

 少女を、燃やした。
 肉も骨も髪も、すべてを燃やし尽くし、灰にした。

「くそっ……やっぱり持っていかれてたか」

 悔しげにつぶやいた後、ファートゥムは諦めたように灰へ向かって指をかざした。滴り落ちる血を一粒受け、灰は見る間に舞い上がる。そのまま宙に現れた黒い球体の中に吸い込まれた灰は、しばらくするとごつごつとした青みがかった透明な石ダイアモンドとなって吐き出された。
 黒い球体を消し、ファートゥムは手の中に落ちた青い石をじっと見つめる。そして胸の前で、祈るようにそれを握りしめた。

「帰ろう、姉さん……俺たちの家へ」

 顔を上げると、ファートゥムは残りのガラス管もすべて砕いた。そして出てきた全員を火で弔い、灰白色かいはいしょくの塵にすると持っていた瓶へと収める。
 とその時、部屋の外から一際大きな破砕音が響いた。目的を果たし、ちょうど部屋を出ていこうとしていたファートゥムの目の前、そこには――――

「ここ、は?」

 今しがた生まれた、ホムンクルスの少女がいた。
 
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