22 / 181
黒玉の章 ~ジェット~
21.奇跡と代償
しおりを挟むユニオールの首都・リユニオンに着いたどー!
道中は魔物と遭遇する事もなく、国境超えもギルドカードのおかげで問題なくパス。平和なものだった。……揺り返しが怖いくらい平和だったんだが、これマジで大丈夫なのか?
「何をビクビクしていますの? 不審者と間違われても文句言えませんわよ」
と、言われましても……。お前はこの何も問題の無い現状に思うところは無いのか? 平和すぎるんだぞ!?
「貴方こそ何を仰っているのか……。平和ならそれに越したことはないでしょうに」
「とりあえず魔物エンカウント率が異常すぎるんだよ! 無ぇよ二週間、昼どころか夜さえ遭遇しないとか!」
普通は魔物避けの香とか焚かないと野宿とか無理って本で読んだぞ! いくらダンマスのダンジョンを宿にしてるからって襲撃が一度も無いとかおかしいだろ!
……レベル上げてぇのに獲物が来ない。待ちの姿勢がイカンのか? 攻めの姿勢で行かないと駄目なのか? 討伐依頼の時みたいに。
「絶対に何か巻き込まれるフラグだこれ……」
「単に私達に魔物が恐れをなしただけではありませんの?」
「駆け出しのくせになんでそう自信満々なんだ……このお嬢様は!」
俺らのレベルどんくらいだと思ってんだ? 少なくとも俺のレベルはまだ20にも行ってないぞ。ゴブリンの巣潰しは戦闘訓練には適してたんだが、レベル上げにはそれほど役立たなかった件ェ……。まあ、某RPGでいうところのスライムだもんな。
それにしてもエンカウント無しの原因を……原因を誰か教えてくれ――
スキル『威圧』発動中。(発動者:神山龍司)
発動者のレベルプラス5以下の害意ある魔物や獣を近寄らせない様にする。自動発動スキルのため、オフにするには『まりょく』が10以上必要。
なんか森羅さんのお陰でアッサリ解決……この二週間悶々としてた俺の気苦労って一体……?
いつの間にか新たなスキルをゲットしていたらしい。最近、ステータスのスキル欄見てなかったから気付かなかった……。それにしても俺って、気配遮断といいこの威圧といい、非戦闘スキル多くない? 戦うなって事なん?
*
冒険者ギルドは首都にあるだけあって、めっちゃ広い役所のような場所だった。
一階が総合受付カウンター。二階が図書室。三階より上は関係者以外立ち入り禁止の詳細不明スペースな四階建て。お約束の酒場はとなりに併設されていた。ほかにも訓練場とか学習塾まである。広い街なので支部とかもあるらしい。都心の冒険者ギルド、まじですごいな。
俺たちはとりあえず、受けられそうな依頼が無いか探すために総合カウンターへ向かった。
「いらっしゃいませ! 本日は依頼をお探しですか?」
にこやか営業スマイル! すげえ、某ファーストフード店もビックリなマニュアル対応だ! ファンタジー世界なのに!!
「あの……?」
驚愕のあまり俺が動かなくなったので、戸惑う受付嬢。
「彼は無視して良いですわ。何か初心者向けの依頼はあって?」
俺の代わりにシータが手続きを進めた。なんだかんだいって彼女の度胸は俺以上なのだ。
「あ、はいっ。それでしたらこちらになります」
受付嬢が取り出したのは、やたら重量感のある分厚いファイル。流石におののくシータさん。俺もちょっと引いた。|初心者向け依頼(おつかい)だけでも、こんなにあるのかよ! 軽く人が殺せるぞ、これ!?
「……ぶ、分厚いんですのね」
「何しろ大きな街ですから!」
雑用が多いんですね、わかります。でもって処理速度が追いついてないのな。この街、近場にダンジョンがあるから、みんなそっちに流れるんだろうなー。雑用よりは実入りがいいっぽいし。
「とりあえず俺は荷運び系かねぇ。こんな大きな街には草刈りとか需要なさそうだ」
「いやにこだわりますわね、草刈り」
「そらまー、はじめて受けて成功させた依頼だからな。思い入れもあるさ」
あと報酬が割とオイシイんだよなー。みんなやりたくねーけど、いつかはやらなきゃいけない系だから。
「――草刈りをご所望……なんですか!?」
――ん? どうしたんだ受付嬢さんよ。なんか目がキラキラし始めてるが。え、なにその意外な反応。
「――貴方が神か!!」
カウンターから乗り出し、俺の手をガシッと掴む受付嬢。目がらんらんとしていてヤベぇ。
――というか…………………はい? いや確かに俺、神さまですけど。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説

王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です

【完結】27王女様の護衛は、私の彼だった。
華蓮
恋愛
ラビートは、アリエンスのことが好きで、結婚したら少しでも贅沢できるように出世いいしたかった。
王女の護衛になる事になり、出世できたことを喜んだ。
王女は、ラビートのことを気に入り、休みの日も呼び出すようになり、ラビートは、休みも王女の護衛になり、アリエンスといる時間が少なくなっていった。

完結 婚約破棄は都合が良すぎる戯言
音爽(ネソウ)
恋愛
王太子の心が離れたと気づいたのはいつだったか。
婚姻直前にも拘わらず、すっかり冷えた関係。いまでは王太子は堂々と愛人を侍らせていた。
愛人を側妃として置きたいと切望する、だがそれは継承権に抵触する事だと王に叱責され叶わない。
絶望した彼は「いっそのこと市井に下ってしまおうか」と思い悩む……

【完結】本当の悪役令嬢とは
仲村 嘉高
恋愛
転生者である『ヒロイン』は知らなかった。
甘やかされて育った第二王子は気付かなかった。
『ヒロイン』である男爵令嬢のとりまきで、第二王子の側近でもある騎士団長子息も、魔法師協会会長の孫も、大商会の跡取りも、伯爵令息も
公爵家の本気というものを。
※HOT最高1位!ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる