貴石奇譚

貴様二太郎

文字の大きさ
上 下
1 / 181
プロローグ

極夜国

しおりを挟む
 
 極夜国ノクス
 そこは朝も昼も夜も、常に闇に包まれた常夜とこよの国。温かな太陽の代わりにこの地を照らすのは、冷冷れいれいとした白い月の光。
 そんな極夜国に住んでいるのは、貴石きせきの加護を受けた人々――石人いしびと――たち。

 彼らはこの世に生を受けるとき、左右どちらかの瞳に必ず自分だけの守護石をもって生まれてくる。金剛石ダイアモンド紅玉ルビー蒼玉サファイア翠玉エメラルド変彩金緑石アレキサンドライト……
 これらが守護石と呼ばれるゆえんは、それぞれの貴石には必ず何かしらの力が宿っているから。不屈、勇気、誠実――その加護は実に様々で、同じ石でも全く違う力が宿っていることもある。加護の力も、強いものから些細なものまで千差万別。

 そんな石人たちの中でも強い力を持つ者は、圧倒的に貴族に偏っていた。彼らは古い血を脈々と繋ぎ、力の強い者同士で結びついてきたからだ。

 金剛石の王家、
 三大公爵家のコランダム、ベリル、クリソベリル――

 けれど。そうまでして心とは別に理性で血を繋いできた彼らでも、決して抗えない本能というものがあった。

 半身――それは石人にとって、最高の幸せと最高の不幸をもたらすもの。出会ってしまったらもう抗うことなどできない、呪いのような魂を縛り付ける伴侶。

 彼らは探す。己の石に導かれ、魂の片割れ、すべてを捧げるべき存在を。たとえ国を捨てることになっても、相手が同族でなくても、死が訪れるそのときまで探し続ける。
 

 消えてしまう思い出に涙する黒玉ジェットの娘、譲られた力に思い悩む蒸着水晶アクアオーラの少年、満たされる心を探して流浪する藍玉アクアマリンの青年、変彩金緑石アレキサンドライトと歯車に導かれる亜人の少女、人造宝石YAGが宝物の人騒がせな魔法使いの青年…… 
 赤虎目石レッドタイガーアイに導かれ、貴石たちは舞台で踊る。

 さて、これより語るのは、巡る貴石の物語。

 ――貴石奇譚――




しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結済み】婚約破棄致しましょう

木嶋うめ香
恋愛
生徒会室で、いつものように仕事をしていた私は、婚約者であるフィリップ殿下に「私は運命の相手を見つけたのだ」と一人の令嬢を紹介されました。 運命の相手ですか、それでは邪魔者は不要ですね。 殿下、婚約破棄致しましょう。 第16回恋愛小説大賞 奨励賞頂きました。 応援して下さった皆様ありがとうございます。 リクエスト頂いたお話の更新はもうしばらくお待ち下さいませ。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

【完結】少年の懺悔、少女の願い

干野ワニ
恋愛
伯爵家の嫡男に生まれたフェルナンには、ロズリーヌという幼い頃からの『親友』がいた。「気取ったご令嬢なんかと結婚するくらいならロズがいい」というフェルナンの希望で、二人は一年後に婚約することになったのだが……伯爵夫人となるべく王都での行儀見習いを終えた『親友』は、すっかり別人の『ご令嬢』となっていた。 そんな彼女に置いて行かれたと感じたフェルナンは、思わず「奔放な義妹の方が良い」などと言ってしまい―― なぜあの時、本当の気持ちを伝えておかなかったのか。 後悔しても、もう遅いのだ。 ※本編が全7話で悲恋、後日談が全2話でハッピーエンド予定です。 ※長編のスピンオフですが、単体で読めます。

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

処理中です...