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佐々木宗佑という人間

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ひらひらと桜の花びらが弧を描いていた。
その光景があまりにも叙情的で僕は思わず足を止める。
いや、本当は学校に急がないといけないんだ。
だが、この景色を楽しめないようじゃ、ただの生き急ぐサラリーマンとなんら変わらない。
そう思って俺は時間を忘れ、ゆっくりと眺めた。
俺は、普通の高校生だ。
多くの連中だってそう思うし自分自身もそう思う。
何も変わらない平凡な毎日を愛し、普通の友達もいた。
だが、最近思うことがある。
両親は普通を愛してるが、俺はそうなのだろうか。
本当は非日常に憧れているのだろうか。
そもそもこんなことを考えてる時点で異常なのか。
……やめよう、辛気臭い。とにもかくにも俺は両親のように公務員になり、立派な社会人になるんだ。
そう思うと桜の花びらさえも俺のようにみえてきた。
きっと人生を楽しんでるやつは落ちてこない桜の花なんだろうな。
そうおもって数分の花見は終わり、登校活動に戻る。
「宗佑君おはようっす」
「ああ、小春か」
普通な友達にありがちな運動部少女、三昧堂なるみだった。
「そういえば、お前って髪切らないよな」
「ああ、このロングのこと? そりゃそーっしょ。アイデンティティーだよ。珍しいね宗佑君が
私の髪を気にしてくれるなんて」
ちょっと、距離感を詰めすぎたか。小春もやっぱり女の子か。
「ちょっと無難な話題のネタ切れでさ」
「いやいや、それでも嬉しいっしょ。あーちなみに普段からよくきれきれきれいわれてさー。
おまいらは、カミキリ虫かって」
「カミキリ虫は別にお前の髪を切らないよ」
「え、虫?虫は嫌だよ。宗佑君は好き?」
「虫か……俺は好きだな」
虫には翅がついている。その翅が俺にもあったらとんでどっかに行きたい。
「ま、俺はカミキリ虫なんて大したもんじゃなくて、そこらへんにいるバッタみたいなもんだ。
バッタだけにバッタモン、なんてな」
「ふふふ、宗佑君らしいね。でも宗佑君はそんなバッタって感じじゃないよ。
私はきっと、ダチョウかな。」
「おい、ダチョウは虫じゃないぞ」
「いやー、虫は嫌いなんで、あと足早い虫なんてしらないし」
「で、俺がバッタじゃなかったらなんだ?」
「私からしたら、鷹かなぁ」
「はあー、俺が鷹ぁー? お前俺と何年友達やってんの?」
「さ、三年ですけどぉー。だけどだけどだけど私からしたら鷹なんだもん。
あまり急がずに高いとこにいてさ、要領よく急降下して獲物捉えてさ。
私からしたら賢くて要領いいようにみえるけどなぁ」
「いや、俺がそんな鷹みたいなやつだったら、今頃高校生活は、もっとエンジョイしてるんじゃないか」
「宗佑君、部活動に委員会だって入ってるじゃん」
「いや、活動してるか怪しい文芸部に生徒会長の小間使いという名の書記だぞ。
ううっ、自分で口にだしてても気分が」
「それがいいと思うんだけどな」
「ダチョウなるみさんがそうおっしゃるならそうかもね」
「鷹宗佑君がそれいっちゃう?」
「俺の名前は佐々木だ。鷹って名前がつくならそのほうがいいけどさ、いやそれは身分不相応か」
「まーたそうやって普通バリアはりはじめる」
普通バリアってのは、俺が普通であろうと留まりつづけることらしい。
勝手に三昧堂語録に入っていた。
「ほっとけって」
「あ……ごめんなさい」
なぜだろう。少しだけイラっとした。俺は別に普通が好きなんだろ? なあ、佐々木宗佑。
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