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2、奇跡はね、起こらないから奇跡っていうんだよ

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「んああ……ねむい。おはよう、さやぼー」
「また、あんたエロゲしてたんでしょ」
「私がしない日はないよ」
「そんなによくも懲りずに……」
「まーそれは、いろんな女の子が攻略できるからね、
しかも私には天才作家桑畑英梨がいるわけだから、
ストーリー設定はいいけど女の子に物足りなさを感じたときは
英梨ちゃんに書き直してもらってます」
「なんて勿体無いことを……」
遠くから聞こえてくる声。
「お、お姉ちゃんー!」
ぴこぴこという効果音がかなたには聞こえてくる。
そして少女はこける。
盛大に足を開脚して、白黒のパンツが見えている。
「あ、いたたたた」
「ねぇ、はるかはるか、そこで<うぐぅ>って言ってみて」
「う、うぐぅ。いたいよ……これでいいの?」
「うーん、スペシャルマックスハートで可愛いねー遥は、抱きしちゃお」
かなた、遥に抱擁する。
「あんた、変なこと言わせて人の妹に抱きつくなよ」
「言いじゃん、可愛さ増し増し、あ、萌えも入れますってかんじで」
「しかもなによ、うぐぅって」
かなたの頭のトリガーが入った。
「それを聞いてしまいますか、いいでしょう。うぐぅとは、かの有名なkanonにおける
月宮あゆの口癖です。KEY作品を今も爆発的に売れるきっかけにした最初の作品だから
エロゲオタクに聞いたら誰でも知ってるよ。ちなみに、パンかじってる女の子がぶつかる
んじゃなくて、あゆはたい焼き齧るけど」
「そのゲームのどこが面白いのかわからないわ・・・」
「初期の美少女ゲームだね。厳密にいうとONEっていう作品がはやいけど、
angelbeatsとか見せたでしょ? あれ、KEY作品だよ」
「え、どゆこと? アニメじゃないの、あれ」
「KEYだけ大きなブランドだからアニメ化できたんだろうね、経緯はしらん!」
「へー、エロゲってもっと日陰にあるもんかと思ったわ、って遥はなんの用事だったの?」
さっきから頷きながら遥は聞いてたが、用事を思い出したらしく、身体を揺らし慌て始めた。
「わわ、お姉ちゃん。次の授業体育なんだけど、体操着かしてほしいんだよ」
「え、さやぼーのってサイズあってるの? どう見ても……」
「おい、おまえ、今どこを遥と比較したっ!」
グーパンチがかなたの右肩にめりこんだ。
「いたた、お、怒らないでよ。心のち○この声が聞こえたんだよ。
おっぱいのサイズ合ってますかって」
「ねぇ、心のち○こってなあに?かなちゃん」
「んーそれはねー、男のもごもご」
紗耶香、かなたの口を押さえる。
「あんた、人の妹に何を吹き込もうとしてるのよ、ち○ことか。
遥はそんなことしらなくていいのよ」
「うーん、わからないけど……わかったよ」
「遥にはおち○ん○んにすれば……ぐばっ」
かなたに苦痛を感じた時、一瞬自分の腹に何かがめり込む感触を感じたとき、宙を舞った。
その時、かなたにはみえた。
誰かの「もうゴールしてもいいよね」という声。
だが現実世界では遥が半泣き、紗耶香は呆れ顔。
「かなたちゃん!かなたちゃん! 大丈夫!」
遥がかなたの身体を揺さぶる。
しかし、かなたは白目を剥いて倒れたまま。
その時、かなたにはきこえた。
「あかん、ゴールしたらあかん!」という脳内の響き。
その声にすくっと身体が立ち上がるかなた。
「いやーまずかった。AIRの名シーンが流れてきちゃったよ。
このまま起き上がらなかったら私も鴉になってたかなぁ」
かなたは平然とした様子だが、遥は涙を流している。
「もう、かなちゃん起きないかと思ったよ。お姉ちゃんのコークスクリューは
世界を狙えるから」
「それはどこの一歩さんですかな……私はまだしなないよ。エロゲを作ってすらいないのに。
いやーいい一発をもらったわ、遥は大げさだなぁ、天使のいない12月の主人公の気分になったのはたしかだけどね。
作中に飛び降り自殺未遂しちゃうからね。おっとネタバレイクナイ」
腕を組む紗耶香。
「あんたの自業自得だからね」
「だとしても私は言い続けよう。お○ん○んとね。エロゲにこれが無かったら終わりなんだよ。
奇跡はね、起こらないから奇跡なんだよ?」
「奇跡でもなんでも、とにかく起きてよかったぁあ」
遥は号泣する。
「おーよしよし、遥は本当に攻略可能キャラみたいだなぁ。将来の彼氏が楽しみだね」
そう思いながらも、かなたは遥をなんとか育成できないと計画しようとするのだった。
遥育成計画はまたずっとずっと先の話になるが。
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