生き残りBAD END

とぅるすけ

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第6章 頂点に立つ

改めて!

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 その後、剣得はショウとの話を終えると、日が暮れる街へ消えて行った。
 剣得は神ヶ丘家へ帰る。

「ただいまー」

 剣得がと開くと、花麗が飛びついてくる。
 
「お帰りー!! 剣得ぉーー」

 剣得は花麗の猫の耳の様な部位を倒しながら、頭を撫でる。

「ただいま、花麗ちゃん…。あれ? 一人?」

「うん! 楓彩も瑛太も帰ってないぞ?」

「そうか(まだ帰ってないか)」

 剣得は花麗に手を引かれるままに、客間に入り、適当な場所に腰を下ろす。

「今ご飯用意するな?」

 花麗はそう言うと剣得を置いて台所へ向かった。

「……はあ…どう渡そうかな…」


「ただいまー」「ただいまです」


 その時、玄関の方から楓彩と瑛太の声がする。

「っ!」

 剣得は思わず身構えてしまった。

「か、帰ってましたか…総督…」

「……」

「お、おう…お帰り…」

 瑛太は机を挟んで剣得の前に座り、楓彩は剣得から距離をとった位置で座る。

「………」

「………」

「………」

 その恐怖の沈黙に耐え切れなくなった瑛太は、

「み、花麗の手伝いしてきますね?」

 と、罪悪感を感じながらも、客間から出た行った。

「な、なぁ…? か、楓彩?」

「何ですか?」

 剣得は勇気を振り絞って楓彩に話しかける。
 だが、楓彩は目を合わせようとしない。

「い、いや…そ、その…お疲れ様…」

「はい」

「そ、それでだ、仕事の調子はどうだ…慣れたか?(何言ってんのーーー!? もし不調なら俺のせいだぞ!!!!)」

 剣得は自分の失言に、息を飲む。

「ええ、まぁ、ぼちぼちです」

「………」

 依然として楓彩は目を合わせてくれない。
 そこで、

「ご飯できたぞー」

 花麗が料理を持って、客間に入ってくる。そして、逃亡犯瑛太も気まずそうな顔して花麗の後ろから着いてくる。

「(すみません)」

「ん? 楓彩もおかえり!」

「はい! ただいまです!」

 楓彩は花麗に剣得には見せなかった柔らかい笑顔を見せる。
 だが、それは剣得にとってはそこまでショックではなかった。
 なぜなら、楓彩がまだそう言った表情を作れるということは、もう一人の破壊衝動の楓彩に全てを飲まれたという可能性が、無くなったということが分かったからだ。

 その後、逃亡犯瑛太と、花麗によって客間のテーブルにもの見事な夕食が並べられる。
 今日のメニューは花麗ちゃん特製のスペシャルハンバーグ、自称三つ星レストラン顔負けのコーンスープ。
 Etc…

 だが、剣得はその素晴らしい料理もよく味わって食べることができなかった。

「美味しです! 花麗さん!」

「そうか? そうだろう! ウチが作ったんだからな」

 そんな微笑ましい少女達の会話も、瑛太と剣得は口角を上げることができず、その時は来た。

「楓彩…ちょっといいか?」

「?」

 楓彩は、不意に呼ばれて肩を少しすくめると、無表情になり、剣得を見る。
 そして、呼んだ本人も緊張する。

「こ、これを、お前にやる…」

 剣得は懐からショウから受け取った携帯の入った箱をテーブルに置く。

「これは?」

「携帯電話だ…これ、良かったら使ってくれ」

 と、剣得は楓彩にその箱を近づける。

「え?」

「まぁ、セッティングとかは任せろ」

 数秒の間、沈黙が訪れる。

「んく……」

「剣得さん……」

「お、おう…」

「ありがとうございます」

 その言葉と共に、剣得には数時間ぶりのハイパー・デラックス・エクストラ・プリティーな笑顔が向けられた。

「かふっ!!」

「ふぇっ!?」

 剣得のダメージのくらい様に、楓彩も少し驚く。

「いや、何でもない…す、すまなかった…楓彩…」

「いえ、私こそ…自分勝手ですみません…」

 楓彩と剣得の仲直りを見て、瑛太も詰まっていた息を吐き出す。
 花麗は何の事か分からず、首をかしげていたが。




 その頃、ショウの工房には彩楓が訪れていた。

「へぇ、楓彩が…」

「うん、お兄ちゃんから見てどうよ…」

「ただの苛立ちだろ? そう長くは続かないと思うが…その、ショウムートからのプレゼントで機嫌は直ると思うぞ?」

「そう? だといいんだけど…」

 ショウはパソコンに目を向けたままソファで我が物顔でくつろぐ彩楓と話す。

「さてと、これなんだけど…」

 ショウは剣得にも見せた、楓彩が抜刀した瞬間の画像を見せ、説明する。

「ほぉ? 心鉄器がね…。実はだな…俺の刀も心鉄器なんだが…俺は触った時から鋭かったぞ?」

「へぇー…あんたも…………───えっ!? あんたも心鉄器持ってたの!?」

「あぁ、これか?」

 彩楓は脇に立ててあった刀を抜刀する。
 見た目は普通の刀だ。

「ちょっと、触らせて?」 

 彩楓は刀をショウに渡す。
 ショウが柄を持った瞬間、刀の刃は綺麗な弧をそのままに、ノコギリのようにギザギザし、狂気じみた。

「わぁ、ホントだ! すごい…世界は狭いね…一つの島に絶滅危惧種の刀が2本も…」

「そんな事より…お前の心境を疑うよ…なんだその形状は…」

「んーー…綺麗な薔薇には刺があるみたいな?」

「それは自分で言う台詞ではないぞ…」


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