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しおりを挟む王子アランとの関係が少しずつ変わり始めたことを実感していた。先日、彼に協力したことで、私たちの間に少しの信頼が生まれたように感じていた。王国の古文書を一緒に探す中で、彼の冷徹な態度も少し和らいだようだ。
「リリィ、君が手伝ってくれたおかげで、無事に情報を得ることができた。本当に助かった」
王子が微笑んで言ってくれるその言葉に、私は少しだけ胸が高鳴るのを感じた。だが、心の中で冷静さを保とうと努める。私はただ、彼に少しずつ近づいているだけに過ぎない。まだ、王子が私に抱いている感情が何なのか、はっきりとは分からない。
「お役に立てて何よりです、殿下」
私は平静を装いながら答えた。しかし、その微笑みの中に、ほんの少しだけ王子が私に対して感じている優しさを見た気がした。それが本当に王子の真意なのか、それともただの礼儀なのかはわからない。しかし、私はその瞬間を大切にしようと決意した。
その後も、王子とのやり取りは続き、私たちの関係は少しずつ変化を見せていた。王国の問題に対する協力を通じて、私は王子と多くの時間を過ごすようになり、そのたびに彼の思いやりや、少し不器用な一面を見ることができた。
ある日、王国の外にある辺境の村で不穏な動きがあり、王子はその問題を解決するために出陣することとなった。その知らせが届くと、私は何も言わずに心の中で一つの決意を固めた。
「王子が無事に戻ることを祈るだけでは済まされない。私も、彼を支えるためにできることをしなければならない」
私は、このまま王子と距離を置いているだけでは意味がないと思った。悪役令嬢として、そして一人の女性として、王子に何かできることがあるはずだ。王国の未来を左右する重要な問題が起きている今こそ、私が動かなければならない時だと感じた。
王子の出発を見送りながら、私は心の中で誓った。
「私は、この運命を変えるために何でもする」
そして、数日後、王子からの手紙が私の元に届いた。内容は、辺境の問題が予想以上に厳しく、解決には時間がかかりそうだというものだった。それを読んだ私は、すぐに行動を開始した。王国の近衛兵や情報網を活用し、私も王子の手助けをする方法を探ることにしたのだ。
「リリィ、お前がそのように動いているのは聞いているぞ」
ある晩、父親が私に声をかけてきた。私は驚きつつも、冷静に答えた。
「はい、私は王子が無事に戻るためにできる限りのことをしたいと思っております。王国にとっても大切な問題ですし、王子自身も心配です」
父親は少しだけ黙って考え込むと、やがて穏やかに答えた。
「そうか、リリィ。それなら、できるだけ気をつけて行動しろ。君が動くことで、王子の心にも何か変化があるかもしれない。ただ、無理はするな」
私はその言葉に感謝しつつ、再び決意を新たにした。王子が遠くの地で戦っている今、私は彼に何かできることを見つけ、少しでも力になりたい。そして、今度こそ、私の存在が王子にとって必要不可欠なものとなるように努めるつもりだった。
数週間後、王子から再び手紙が届いた。それには、状況が少し落ち着いたこと、そして近く王子が帰国する予定であることが書かれていた。私はその手紙を手に取り、ほっと息をついた。王子が無事に戻るなら、これからまた彼と少しずつ関係を築いていけるはずだ。
「王子が帰ってきたら、今度こそ、私はもっと彼に近づこう」
心の中で誓いながら、私は手紙をそっとしまい、王子の帰還を待つことにした。
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