上 下
389 / 582
第十一楽章 目指した先には

配置

しおりを挟む
「ふぅ、、。」

大きく息を吐く。
合奏中止を言い渡され部員それぞれパート練習や個人練習に行ったみたいだ。
ユーフォニアムの前田先輩から一緒に練習するか誘われたが気が乗らず断った。

部室には雨宮。
トロンボーンパート全員。
パーカッション。
そして中畑先輩。
若菜が残っていた。

中畑先輩は帰宅したい人は帰ってもいいと言ったのだが今のところ誰も帰ってない。
多分みんな練習に行ったのだろう。

「はぁ。何も成長できてない、、。くそ、」

「どうした?」

「あ、杉山先輩。
いや、どうしたら上手くなると思いますかね。」

「それは俺が知りたい。」

「はは、、。そうですよね。
杉山先輩って上手いじゃないですか?
いろんな楽器できるじゃないですか。
演奏中とか練習のときって何やってるんですか?」

「ええ?特に、、。目の前の演奏に集中するとか?」

「はぁ。」

「そういえば前にもこんなこと2人で話したよな。」

「あ、そうでしたね。メンタルの話。」

「それで周り見れるようになったのか?」

「う、うーん。まぁぼちぼちです。でも
割とよく聞こえるようにはなりましたよ。
前横は特に!栗本先生はしっかり見てます。でもなんでだろう?」

「、、、もしかして雨宮。
その位置にいるからじゃないか?」

「え?」

「ほら雨宮の合奏位置って端だろ。
それだから結構見やすいんじゃないか?」

「そうですか?」

「おう。試しに真ん中座ってみろ。」

「え?あ、、はい。」

雨宮は合奏の真ん中の席に座る。
顔をまっすぐに指揮台へ向ける。
だが前は見えるが横一列は隣の席しか見えない。

「、、、視野が狭まる。」

「わかったよ。お前の周りが見えたとかって言ったの。お前はすごく視野が広いんだよ。」

「え?」

「稀にいるんだよ、演奏家の中に。
演奏してるときに観客席にいる人の顔が全部見える人。上からも俯瞰して見えるっていう人もいた。」

「俯瞰、、。」

そうか、、
そういえば周りを見ることは大事にしていた。自分がここにいるからできることはあるはず。

ホルンは指揮者から見て左側。
1stの篠宮先輩の右に座るので
雨宮は4月からずっと端にいるのだ。

「そういえばここの立ち位置ってみんなの様子が結構見えるんだよな。
今日はみんないい感じとか、
自分の後ろはあんまり見えないけど音がよく聞こえる位置にいるからすぐわかる。
横の人前の人全部見える。」

「俯瞰して全ての楽器を束ねる。
若菜や小林にできないこと。
雨宮は司令塔だな。」

篠宮先輩と違った新しい
ホルン奏者。
それが雨宮。

「司令塔、、、。
はい!!」

自分の役目。
自分の武器。

やっとわかった気がする。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

坊主女子:友情短編集

S.H.L
青春
短編集です

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

俺の家には学校一の美少女がいる!

ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。 今年、入学したばかりの4月。 両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。 そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。 その美少女は学校一のモテる女の子。 この先、どうなってしまうのか!?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

処理中です...