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第七楽章 県大会が始まる。
自由曲 星の旅
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すぐさま息を整え楽器に溜まった水を出す。
そしてもう一度姿勢を正す。
栗本先生は全体の動きが落ち着くのを待った。そしてもういちど右手を上げフルートの小林と顔を合わせた。
前の席の小林の背中を見つめる。
その姿は思いを託された姿。
「頑張れ。」
ただ、それだけだ。
栗本先生が小林と息を合わせ曲が始まった。
綺麗なフルートのソロ。
ゆったりとしたフレーズ、コンクール会場を恐ろしく静かな空間の中。
1人吹き続ける。
星の旅。旅の始まりは小さな音。
一つの音を一つずつ繋げていく。
ため息が出るほど綺麗な音。夏合宿で一生懸命練習した日。
それがたったの数秒で終わってしまう。
美しく儚いそんな音が小林のフルートが奏でる。
観客席まで届けるように。
そして静寂を切り裂くように
高くどこまでも伸びていくよな
アルトサックスの音が入っていく。
会場でフルートとアルトサックスの2人が
ユニゾンで歌う。
ふと雨宮は思う。
もし、若菜がアメリカから来なかったら。
小林と合わなかったら。
この2人の演奏は聞けなかっただろう。
運命なのだろうか。
だけどそれが目の前で観客席よりも近い同じステージの上で。
怖いもの知らずの音が会場全体の
注目を集める。
「私を見ろ。」
「俺を見ろ。」
そんな自分を主張するような音が響いていく。
それに続き木管と金管とパーカッションがそれに続いていく。ゆっくり流れていた曲にリズムを刻むパーカッション。トランペットの高いファンファーレが響く。
その瞬間、ティンパニーの激しいロールが
静寂をを切り裂く。
ゆったりとしたメロディーから
一転して曲調が変わる。
雨宮と篠宮は2人はホルンで高く吠える。
それに続き他の楽器も続く。
フルートもクラリネットもそれに追い掛けるように続く。
不思議と指と動く。何回も練習したからだろうか。だが自分で動かしてない無意識にやれてるような。まるで自分を自分でコントロールしているようなそんな感覚に陥ってた。
「いい感じだ。」
周りを見ていないが全員の思いは一つ。
「いくぞ!」
激しさを増し栗本先生の指揮もアップテンポになる。メロディーをちから強く
そしてホルンの裏メロ。
何回も練習してやっと吹けるようになった。
吹きたかった裏メロ。練習していた日々を思い出す。
「よし。」
ふと横にいる篠宮先輩を見る。
目がたまたま合い篠宮先輩はとても笑顔だった。
そしてトロンボーンのグリッサンド。
懸命に追いかける。
チューバ、コントラバスも懸命に
下から支える。
この会場全てを巻き込みクレッシェンドして
栗本先生の指揮が振り上げられた。
曲が最後に向かう。
これで終わる。終わってしまう。
最後まで気を抜かない。全員楽器を栗本先生を見る。腹筋に力を入れて栗本先生の顔から汗が吹き出す。
「はぁはぁ。」
「はぁはぁ。」
栗本先生が指揮台から全員を起立させ
客席にお辞儀をする。
割れんばかりの拍手が聞こえた。
「あっもう終わっちゃった。」
「ただいまの演奏は北浜高校吹奏楽部の皆さんでした。」
アナウンスの声が聞こえた。
そしてもう一度姿勢を正す。
栗本先生は全体の動きが落ち着くのを待った。そしてもういちど右手を上げフルートの小林と顔を合わせた。
前の席の小林の背中を見つめる。
その姿は思いを託された姿。
「頑張れ。」
ただ、それだけだ。
栗本先生が小林と息を合わせ曲が始まった。
綺麗なフルートのソロ。
ゆったりとしたフレーズ、コンクール会場を恐ろしく静かな空間の中。
1人吹き続ける。
星の旅。旅の始まりは小さな音。
一つの音を一つずつ繋げていく。
ため息が出るほど綺麗な音。夏合宿で一生懸命練習した日。
それがたったの数秒で終わってしまう。
美しく儚いそんな音が小林のフルートが奏でる。
観客席まで届けるように。
そして静寂を切り裂くように
高くどこまでも伸びていくよな
アルトサックスの音が入っていく。
会場でフルートとアルトサックスの2人が
ユニゾンで歌う。
ふと雨宮は思う。
もし、若菜がアメリカから来なかったら。
小林と合わなかったら。
この2人の演奏は聞けなかっただろう。
運命なのだろうか。
だけどそれが目の前で観客席よりも近い同じステージの上で。
怖いもの知らずの音が会場全体の
注目を集める。
「私を見ろ。」
「俺を見ろ。」
そんな自分を主張するような音が響いていく。
それに続き木管と金管とパーカッションがそれに続いていく。ゆっくり流れていた曲にリズムを刻むパーカッション。トランペットの高いファンファーレが響く。
その瞬間、ティンパニーの激しいロールが
静寂をを切り裂く。
ゆったりとしたメロディーから
一転して曲調が変わる。
雨宮と篠宮は2人はホルンで高く吠える。
それに続き他の楽器も続く。
フルートもクラリネットもそれに追い掛けるように続く。
不思議と指と動く。何回も練習したからだろうか。だが自分で動かしてない無意識にやれてるような。まるで自分を自分でコントロールしているようなそんな感覚に陥ってた。
「いい感じだ。」
周りを見ていないが全員の思いは一つ。
「いくぞ!」
激しさを増し栗本先生の指揮もアップテンポになる。メロディーをちから強く
そしてホルンの裏メロ。
何回も練習してやっと吹けるようになった。
吹きたかった裏メロ。練習していた日々を思い出す。
「よし。」
ふと横にいる篠宮先輩を見る。
目がたまたま合い篠宮先輩はとても笑顔だった。
そしてトロンボーンのグリッサンド。
懸命に追いかける。
チューバ、コントラバスも懸命に
下から支える。
この会場全てを巻き込みクレッシェンドして
栗本先生の指揮が振り上げられた。
曲が最後に向かう。
これで終わる。終わってしまう。
最後まで気を抜かない。全員楽器を栗本先生を見る。腹筋に力を入れて栗本先生の顔から汗が吹き出す。
「はぁはぁ。」
「はぁはぁ。」
栗本先生が指揮台から全員を起立させ
客席にお辞儀をする。
割れんばかりの拍手が聞こえた。
「あっもう終わっちゃった。」
「ただいまの演奏は北浜高校吹奏楽部の皆さんでした。」
アナウンスの声が聞こえた。
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