上 下
13 / 582
第一楽章 始まりの日

新入生歓迎コンサート④

しおりを挟む
「じゃあまずマウスピースを口に当てて吹いてみよっか?」

そう言われここまできてしまってはもう後戻りはできない。なんとかして誤魔化さないと。

なんとかして演技して、と思いつつ
大海がこちらに寄ってくる。

「オース!雨宮!俺サックスやりたくてちょっと向こう行ってたわ。あれ?雨宮?お前、ホルンじゃないの?ホルンのスペースあっちだぜ?」

「げぇ。」

「え?それどういうこと?」

トロンボーンを教えてくれている杉山先輩が
聞き返す。

「え?いやぁ。ホルンはあっちで。
あっ。しまった、、」

「どういうことかな?」
ジーっと杉山先輩が聞いてくる?

「すみませんでした。経験者です。」

「それなら素直にいえばいいのに。」

「いやだって。言ったら勧誘されると思って」

「それは勧誘するでしょ。だって経験者の一年生は戦力だもん。」

「おーい。篠宮先輩!今いいですか?。」 

大きな声で杉山がホルン楽器を持ってる女子生徒に声をかける。
すると、「はーい!」と大きな声で返事をする。

ショートヘアで少し茶髪に見える、女子の先輩、篠宮と呼ばれた女子の先輩がこちらに声をかける。

「新入生?プーちゃん?」

「そうです。聞いたところによると経験者だったので、少し指導してあげてください。」

「なんかあったのかはあえて聞かないけどわかった!ついてきて。」

「はい、」何も言い返せなくなり、自分のしたことが裏目になってしまったが。全て大海のせいにしようと思った。大海を睨む。


「とりあえずなんか吹いてみる?私も経験者で入ったんだけど歴は長いから一応先輩かな?名前はなんて言うの?」

「雨宮洸です。南中にいました。」

「そうなんだ。じゃあ今年で4年目か。」

「まだ4年目になるかはわからないですけど」

「大丈夫。4年目やりたくなるから。」

無理矢理にでもこの人たちは俺に入部させようとしているのかと思いながらも曲を選んでみる。先輩の譜面が入ったファイルには全部綺麗な字で書き込まれていた。

最後のページには「絶対全国金賞」

そう書かれていた。

「これなんかどう?」

譜面を見せてくる。譜面のタイトルは
「星の王子さま」

「まずは簡単な曲から。」

「わかりました。メトロノームはテンポゆっくりめで。」

「オッケー!」

今日初めて会う人。なんも会う予定がなかった2人で。唐突に。性別も違う2人のホルン奏者が部室で吹き始める。




吹奏楽部の部室からゆっくり春の風が入ってくる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

坊主女子:友情短編集

S.H.L
青春
短編集です

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

始業式で大胆なパンチラを披露する同級生

サドラ
大衆娯楽
今日から高校二年生!…なのだが、「僕」の視界に新しいクラスメイト、「石田さん」の美し過ぎる太ももが入ってきて…

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

俺の家には学校一の美少女がいる!

ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。 今年、入学したばかりの4月。 両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。 そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。 その美少女は学校一のモテる女の子。 この先、どうなってしまうのか!?

切り裂かれた髪、結ばれた絆

S.H.L
青春
高校の女子野球部のチームメートに嫉妬から髪を短く切られてしまう話

処理中です...