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桃源星編
不安と焦り
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「よし。今日はもういいぞ。」
「はい…。」
あれから1週間経つが、どうやら今日も超能力を教えてもそうにない。もうすぐ7月に差し掛かるというのに。
さらに1週間が経ったが、トレーニングしかやらせて貰えないままその日も終わった。俺の体力はまだ不十分なのだろうか。そんな思いからか、俺は夜も1人でトレーニングをすることにした。俺がトレーニングをしている頃、他の出場者はもう超能力を覚えているのかと思うと不安で仕方がないのだ。
次の日も同じメニューを繰り返して終わった。一体どうしたらいいのだ…。いっこうに超能力を教わる気配がない。俺はまたこっそりトレーニングを続けた。
同じような日が3日くらい続いた頃だろうか。いつも通り、1人で夜にトレーニングをし、寮へ戻ろうとすると、
「お疲れ様です~。居残り練習ってやつですか?」
振り返るとそこにはアダムが立っていた。
「ああ。」
「ちょうど良かった。これから一緒に大浴場に行きましょうよ。毎日部屋の風呂だと飽きてきませんか?」
どうやらこの近くには温泉まであるらしい。
「いや…」
「ついでにこの街も案内しますよ。」
「…分かったよ。」
あまり乗り気ではなかったが、そこまで言われては断りづらい。
「いやーこんな近くに温泉があるんなら言ってくれりゃー良かったのに。」
歩いて5分程の場所にあった温泉は湯加減も丁度良く、疲れた体によく染み渡る。
「すいませんねぇ。」
「他にも名所は色々あるのか?」
「うーん。ベツレヘムは比較的新しい国ですからねぇ…。まぁ強いて言えば〝神の館〟くらいですかね。」
ベツレヘムとはここのことらしく、桃源星にはベツレヘムの他にもいくつか国があるらしい。
「〝神の館〟?」
「ええ…。世界最大の図書館です。世界各国の貴重な資料が保管されていますよ。調べたいことがあれば〝神の館〟に行くと大体分かります。」
「へぇ…。」
てっきり娯楽的な意味での名所を想定していたが、それはそれでアダムらしい。
「ところで居残り練習の成果は出てますか?」
「あぁ…良くなってるよ。」
「嘘はいけませんよ。今まさに壁にぶち当たってるとこでしょう?だから夜まで1人で練習していたんでしょうに。」
それにしても流石は天才科学者である。俺の内情も丸わかりというわけか。
「…わかってんなら最初から聞くなよ。まぁ正直そうだな…。予選まであと5ヶ月しかないのに俺は超能力を覚えてすらない。少し焦ってはいる。」
「焦るのは分かります。ですが、冷静になって下さい。受験の時も基礎を大事にしたから東京大学に受かったのでしょう?」
「わかってるよ。だからその基礎を練習するために夜まで練習してんだろ。」
「過度な練習はマイナスです。休むことも大事なんですよ。なにせただでさえキツいビティのトレーニングを受けているんですから。」
「ならどうしたらいんだよ。このままだと12月の予選には間に合わないだろ!」
焦る気持ちからか、俺はつい声を荒げてしまった。すぐアツくなってしまう所は俺の欠点である。
「今は辛いかもしれませんが、ここが踏ん張り所です。ビティを信じて頑張るしかありません。ですが…」
アダムは少し間を置いた。
「もしU-20バトルトーナメントに出たくないのであれば辞退してもいいですよ。他の事務仕事とかもありますから。別に辞退したからといって金を返して貰うなんてことはしませんし。」
「おいおい…。辞める訳がねぇだろ。ここまで来て超能力を諦めろとでも言うのか?それにこの仕事の方が儲かるからアンタも俺にやらせたんだろ?」
「確かにそうです。ですけど別に私は金なんて必要ありません。何故なら死ぬ程持ってますからねぇ。金の話を抜きにして君は本当にこの仕事をやりたいと思っていますか?」
「そんな訳ねぇだろ。そりゃ出来ることなら地球にいたい。だが、ここまで来たら俺はやる。超能力だって覚えたいしな。俺はU-20で優勝する。そんでアンタに借りた金を返す。そうじゃないと気が済まないからな。」
「そうですか。付き合わせてしまってすいませんね。」
「そりゃコッチのセリフだ。もともとはウチの借金が原因なんだからな。」
「…そうですね。では私は先に上がります。」
そう言うとアダムは風呂から出ていった。
「あぁ…わかった。」
俺はアダムが一瞬間を開けたことが気になったが、それでも温泉に浸かっているうちに忘れていった。少し経って俺も風呂から出ることにした。
次の日、いつも通りにトレーニングを始めるのかと思いきや、ビティは突然
「よーし。今日は鬼ごっこでもするか。」
と言いだした。今までは無難に筋トレやダッシュ、長距離走などをしていたのにである。
「鬼ごっこ?」
「あぁ。ルールは知ってんだろ?今回は制限時間の1時間で最後に鬼だった方の負けだ。俺が勝ったらお前はもう残って練習するのは禁止。お前が勝ったら超能力を教えてやる。あと、一応言っとくが俺は能力を使わない。」
ビティにまでバレていたとは。だが、そんなことより、俺は勝つことに集中する。何故なら勝てばついに超能力について教えて貰えるからである。しかも相手は能力使用不可。このチャンスを活かさない訳にはいかない。
「はい…。」
あれから1週間経つが、どうやら今日も超能力を教えてもそうにない。もうすぐ7月に差し掛かるというのに。
さらに1週間が経ったが、トレーニングしかやらせて貰えないままその日も終わった。俺の体力はまだ不十分なのだろうか。そんな思いからか、俺は夜も1人でトレーニングをすることにした。俺がトレーニングをしている頃、他の出場者はもう超能力を覚えているのかと思うと不安で仕方がないのだ。
次の日も同じメニューを繰り返して終わった。一体どうしたらいいのだ…。いっこうに超能力を教わる気配がない。俺はまたこっそりトレーニングを続けた。
同じような日が3日くらい続いた頃だろうか。いつも通り、1人で夜にトレーニングをし、寮へ戻ろうとすると、
「お疲れ様です~。居残り練習ってやつですか?」
振り返るとそこにはアダムが立っていた。
「ああ。」
「ちょうど良かった。これから一緒に大浴場に行きましょうよ。毎日部屋の風呂だと飽きてきませんか?」
どうやらこの近くには温泉まであるらしい。
「いや…」
「ついでにこの街も案内しますよ。」
「…分かったよ。」
あまり乗り気ではなかったが、そこまで言われては断りづらい。
「いやーこんな近くに温泉があるんなら言ってくれりゃー良かったのに。」
歩いて5分程の場所にあった温泉は湯加減も丁度良く、疲れた体によく染み渡る。
「すいませんねぇ。」
「他にも名所は色々あるのか?」
「うーん。ベツレヘムは比較的新しい国ですからねぇ…。まぁ強いて言えば〝神の館〟くらいですかね。」
ベツレヘムとはここのことらしく、桃源星にはベツレヘムの他にもいくつか国があるらしい。
「〝神の館〟?」
「ええ…。世界最大の図書館です。世界各国の貴重な資料が保管されていますよ。調べたいことがあれば〝神の館〟に行くと大体分かります。」
「へぇ…。」
てっきり娯楽的な意味での名所を想定していたが、それはそれでアダムらしい。
「ところで居残り練習の成果は出てますか?」
「あぁ…良くなってるよ。」
「嘘はいけませんよ。今まさに壁にぶち当たってるとこでしょう?だから夜まで1人で練習していたんでしょうに。」
それにしても流石は天才科学者である。俺の内情も丸わかりというわけか。
「…わかってんなら最初から聞くなよ。まぁ正直そうだな…。予選まであと5ヶ月しかないのに俺は超能力を覚えてすらない。少し焦ってはいる。」
「焦るのは分かります。ですが、冷静になって下さい。受験の時も基礎を大事にしたから東京大学に受かったのでしょう?」
「わかってるよ。だからその基礎を練習するために夜まで練習してんだろ。」
「過度な練習はマイナスです。休むことも大事なんですよ。なにせただでさえキツいビティのトレーニングを受けているんですから。」
「ならどうしたらいんだよ。このままだと12月の予選には間に合わないだろ!」
焦る気持ちからか、俺はつい声を荒げてしまった。すぐアツくなってしまう所は俺の欠点である。
「今は辛いかもしれませんが、ここが踏ん張り所です。ビティを信じて頑張るしかありません。ですが…」
アダムは少し間を置いた。
「もしU-20バトルトーナメントに出たくないのであれば辞退してもいいですよ。他の事務仕事とかもありますから。別に辞退したからといって金を返して貰うなんてことはしませんし。」
「おいおい…。辞める訳がねぇだろ。ここまで来て超能力を諦めろとでも言うのか?それにこの仕事の方が儲かるからアンタも俺にやらせたんだろ?」
「確かにそうです。ですけど別に私は金なんて必要ありません。何故なら死ぬ程持ってますからねぇ。金の話を抜きにして君は本当にこの仕事をやりたいと思っていますか?」
「そんな訳ねぇだろ。そりゃ出来ることなら地球にいたい。だが、ここまで来たら俺はやる。超能力だって覚えたいしな。俺はU-20で優勝する。そんでアンタに借りた金を返す。そうじゃないと気が済まないからな。」
「そうですか。付き合わせてしまってすいませんね。」
「そりゃコッチのセリフだ。もともとはウチの借金が原因なんだからな。」
「…そうですね。では私は先に上がります。」
そう言うとアダムは風呂から出ていった。
「あぁ…わかった。」
俺はアダムが一瞬間を開けたことが気になったが、それでも温泉に浸かっているうちに忘れていった。少し経って俺も風呂から出ることにした。
次の日、いつも通りにトレーニングを始めるのかと思いきや、ビティは突然
「よーし。今日は鬼ごっこでもするか。」
と言いだした。今までは無難に筋トレやダッシュ、長距離走などをしていたのにである。
「鬼ごっこ?」
「あぁ。ルールは知ってんだろ?今回は制限時間の1時間で最後に鬼だった方の負けだ。俺が勝ったらお前はもう残って練習するのは禁止。お前が勝ったら超能力を教えてやる。あと、一応言っとくが俺は能力を使わない。」
ビティにまでバレていたとは。だが、そんなことより、俺は勝つことに集中する。何故なら勝てばついに超能力について教えて貰えるからである。しかも相手は能力使用不可。このチャンスを活かさない訳にはいかない。
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