幼馴染はファイターパイロット(アルファ版)

浅葱

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第一部

第十六話 お祝い

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- side 優香 –

翔太が空手部の翔太が次期主将になった事も、驚きだった。
帰り道で、事前に打診されていた事を教えてくれたが、前もって教えてくれてたらよかったのに…って、文句を言ったら、

「それじゃ、サプライズにならないじゃん!」

って、返して来た。
円陣を組んで、新主将として挨拶した翔太はすごくカッコよくて、輝いてた。
今日の振り替えで、月曜日が休みになるので 火曜には学校で、総体の結果報告の集会がある。
入賞した人は壇上で、もう一度大会で貰ったメダルを貰える。
翔太も、私も同じ壇上に上がるんだなぁ~と、思うと少し嬉しく思えた。
帰り道、並んで歩いていると、

「優香、明日は予定入ってる?」

翔太が聞いて来たので、

「特に、用事入れてないよ。ここんところ、総体に向けて練習しまくってたから、理転に向けて勉強したりしてのんびり過ごそうかって、思ってはいるけど…。」

と返すと、

「お泊まりデート、行こっか?」

サラっと誘って来た。
えっ?早速ですか…?夏休みとか、もっと先だと思ってたのに…

「ど…、どこに行くのかな?翔太くん…」

柄にも無く、君付けで読んで見た。

「おっ、優香に君付け呼び、新鮮だな。でも、呼び捨ての方が俺的には嬉しいけどな…。そうそう、行き先だっけ?彼女さん、夢の国に行きませんか?」

翔太がおどけて言う。

「夢の国?」

思い当たるのは、陸と海に分かれている某有名テーマパークしかない。

「まさかと思うんだけど、陸と海のテーマパークじゃないよね?」

恐る恐る聞くと、

「そうだよ。うちの親は、昨日から学会だとかで2人とも不在だし、俺は超暇なわけ。優香が構ってくれなきゃ、俺死んじゃうかも~。優勝したら、お泊まりデート行くって約束したもんなぁ~。」

私が構わなきゃ死んじゃうかもって、あんたはうさぎかっ!って、ツッコミ入れそうになったけど、約束したのは間違いないから、こくんと頷いて了承した。


- side 翔太 –

優勝したらお泊まりデートって言ってたけど、前々から総体後が連休になるのは分かってたから、総体が終わって夏まではお互いに忙しくてデートも満足に出来ない可能性があると見込んで、泊りがけの旅行を計画していた俺。
優勝出来なかった時は、優香の準優勝のお祝いとでも言って誘ってたし、どちらも良い結果が残せなかった時はお疲れ会として誘おうと思ってた。
優香の応援のお陰もあって優勝出来て、有言実行できたのは何よりだった。
事前に、うちの親にも優香の両親にも優香に内緒で話は通し、承諾を貰っていた。
親達は、『婚約してるんだ、旅行でもなんでも行って来い!』『子供だけは作るなよ!』とか、好き勝手に言ってくれてたけど…。俺の事を信頼してくれているからこそ、承諾してくれたのだと思う。
知らぬは優香だけだ。
有無を言わさず、優香に承諾させるだけだ。

俺は、高校1年の長期休みの時にコツコツバイトして貯めていたお金と、今まで小遣いとかで貰っていたお金をプールしていた分に幾らか貯金から足して、夢の国のチケットとホテルを予約した。
ホテルは敢えて、パークに隣接しているホテルを何とか押さえる事が出来た。
優香のお兄さんの拓斗さんのツテを使ったからだけど…。拓斗さんには、優香のお母さんから連絡をしてもらって、コンタクトを取らせてもらって無理を承知でお願いしたのだが、快く引き受けてくれた。
『将来の義弟の頼みだからな!』
って、言われた。優香のお袋さんが、どうやら事前に優香と婚約したことを話してくれていたみたいで、『まさか、本当に翔太が義弟になるとは思わなかったけどな…』って、言われた。

総体からの帰り道で、夢の国への誘いをすれば、案の定驚いた優香…。
サプライズは、まだこれから続いて行くんだよ…。

去年一発(教習所に行かず直接免許センターで試験を受けて取る)で取った普通自動二輪の免許があるから、優香を後ろに乗っけてタンデムデートも出来る。
今回は、夢の国に行くのだからあえてバイクで行くのはやめたが、天気の良い日は兄貴が置いて行った400ccのバイクの後ろに優香を乗っけて何処かに行くのもアリだろう…。寒がりな優香だから、風が強い日は無理だろうな…。
卒業までの残り1年半、様々な2人一緒に参加の学校行事…沢山、優香の笑顔を写真と俺の眼に焼き付けておきたい。
デートでカップルシートに並んで映画を観たり、季節限定のクリスマスに初詣やバレンタイン、誕生日などのイベント…。今から、プレゼント選びも楽しみで仕方がない。
卒業までには運転免許を取って、2人で色んなところにドライブもしたい。優香を連れて行きたい所が沢山ありすぎて困るくらいだ。将来は、海外にも連れて行ってやりたいけど、任務に就いたらそんなこともなかなか出来ないだろうな…。
一緒に料理や家事をするのもいいな…(勿論、優香は俺が選んだちょっと大人っぽいエプロン着用で…)
将来は、たまに優香に仕事用の制服のネクタイを結んでもらいたいけど、とりあえずは制服のネクタイを結んでみて欲しい…、高校の制服がネクタイで良かったと思う。
行ってらっしゃいにお帰りのキス…、これは、これから先、ずっと続けるつもりだ。
イベント以外でも、2人でドレスアップして高級ディナーをしてからのホテル宿泊…。きっと、旅行にもそうそう連れていけない生活が将来は続くだろうから、その位のご褒美はあって然るべきだろう…。

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- side 優香 –

家の前まで帰ってみたら、ガレージが空いていてお父さんが車を磨いていた。
休日のルーチーンワークで、休日以外はめったに乗る事がない愛車を休みの日にはピカピカに磨き上げるのが父にとっては楽しみの一つだった。

「お父さん、相変わらずアルファ可愛がってるね。」

私が声をかければ、

「こいつは、久々に気に入って買った車だからな…」

と念入りにワックスをかけていたアルファと私が呼んだ、我が家の車アルファードくんをぐるりと見渡した。

「翔太くん、今日の結果はどうだったんだ?数馬達もだが、千賀さんからも結果の報告の催促が来てるんだけど、もちろんいい報告ができるんだろうな?」

お父さんの下には、翔太の試合結果が気になる人達から速報の催促が来ていた様だ。

「勿論です。団体も個人も優勝しました。」

翔太がそう答えると、お父さんは満足した笑顔で、

「そうか。じゃあ、今日はお祝いをしなきゃだな。さ、2人ともうちに入った入った!母さん、2人が帰ってきたぞ!予定通りの段取りで頼むぞ!」

と言って私たちを玄関へと押しやった。
玄関を入った私達は、靴を脱いでいるとパタパタと足音をさせてお母さんがひょっこりとドアから顔を覗かせて、

「はいはい、翔太くんはお風呂入って、汗流してからこれに着替えておいで。優香は、翔太くんが上がったらシャワー浴びておいで。」

と、翔太にプレゼント包装の紙袋を押し付けお風呂の方へ押しやりながら話を続けた。

「今日は、2人の健闘を讃えて焼肉を食べに行くわよ!数馬さん達も出張じゃなかったら一緒にお祝いできたんだけど、今日は4人で美味しいお肉を沢山食べましょうね~。」

と、ルンルン気分で言う。
翔太も、お風呂の方へ押しやられながら驚きの表情を隠せていない。脱衣場に押し込まれた翔太が少し心配だったけど、お母さんのニコニコした表情を見ながら、ふとお風呂場で翔太が困る事がないかって思って、ドア越しに

「翔太、ブルーのボトルのやつがボディーソープだからね!その横の、ピンクの縦縞模様のやつがシャンプーで横縞模様のがコンディショナーだから!」

と慌てて伝えれば、

「解った!サンキュ!」

って、声が返ってきた。
10分程で、翔太がリビングに戻ってきた。
いつも私の使っている、ボディーソープとシャンプーの香りを漂わせて…。
ちょっとドキッとしたのは内緒だ。

「優香のお母さん、この服とか一式、どうしたんですか?」

頭にタオルをかけた翔太がお母さんに尋ねた。翔太はお洒落な白のオックスシャツとこげ茶の薄手のカーデガンに黒のスキニーを合わせたスタイルで、リビングに入って来た。

「昨日、明里ちゃんが出張に行く前にうちに寄って、翔太くんの試合が終わったら結果はどうであれ渡してやって、って預かってたのよ。母親からの粋なプレゼントってとこかしら?」

お母さんが言うと、翔太は照れ臭そうにタオルでガシガシと頭を拭いていた。
翔太と代わってシャワーを浴びた私…。
焼肉屋さんに行くのだから、さっとシャンプーをした後、匂いがつきにくい様に髪をしっかり乾かした。
翔太がシャワーをしている間に、自室に制服からルームウエアに着替えた私は、チュニックにデニムのショートパンツスタイルのコーデを選んだ。リビングに入ると、ソファーに違和感なく翔太がウチの両親と座って雑談をしていた。

「お待たせ!何処のお店に連れてってくれるの?」

待ちきれなかった私は、お父さんに聞く。

「翔太くんの優勝祝賀の為なのに、優香の方がはしゃぐなんて…。」

お母さんに突っ込まれたけど、

「優香も、準優勝してますよ。だから、2人の祝賀って事にして下さい。」

って、翔太がフォローを入れてくれた。
両親は、そんな翔太のフォローに微笑んでいた。

「じゃあ、予約の時間も来るし、そろそろ出発しようか。」

アルファくんで、焼肉屋さんに向かった私達。
こじんまりとした、地元では結構有名な焼肉屋さんで、お店では掘り炬燵みたいなお座敷に通され、翔太と並んで座った。
ご飯中、何度か翔太がテーブルの下で私の手を握ってきて、どきっとする事があったけど、嬉しくてキュって握り返したら、指を絡められ、仕舞いには恋人つなぎになってた。
翔太は右手で私の手を握ってるから器用に、左手でお箸を使って食べてたのには、流石にびっくりした。
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