Words of love 〜αとΩ番の誓い〜

別れの時

退院の日②

ガラガラっとドアが開けば、一番会いたかった人の姿が目に入って来た。

「おはよう。退院おめでとう。」

理さんが、いつものかっちりした格好ではなく、休日仕様のラフな格好で迎えに来てくれた。

「急に無理言ってすみません。」

昨日から何度となく言った台詞ことばを僕が言えば、

「有休消化も程々にしないと貯まる一方で、いい加減使ってくれと事務方からいつも言われるんで、丁度良かったんだ。今日は、特にオペも入っていなかったし、医局長達も張り切って仕事してるだろう。」

と、理さんは返して来た。
支払いは、義兄にいさんが居ることで、親族に対する福利厚生があるらしく、後日精算で請求が来ることになって居る。
薬は、事前に数日分貰っている。
菱沼教授宛ての紹介状も、昨日のうちに義兄にいさんから貰っている。
理さんにバレないように、スーツケースの中に丁寧に封筒に入れて隠しているから、大丈夫なはずだ。

「もう、退院の準備は済んでる？」

と聞かれ、僕は、

「はい。薬ももらってますし、支払いは後日精算らしいのでこのまま帰って大丈夫です。」

と答えた。
理さんが、僕のスーツケースを持ちアテンドしてくれる。
事前に母が買って持って来てくれていたお礼の入っている紙袋を持ってナースステーションに寄った僕。

「お世話になりました。コレ、お見舞いにもらったんですけど、僕食べれないんで食べ助けして下さい！」

と、そっとナースステーションのテーブルの上に置く。
今は、患者さんからの心づけは受け取らない病院が殆どだ。
聖心医科大学病院でもそうだが、大きい病院の方がそう言ったことには厳しい。しかし抜け穴があり、お見舞いの品で食べれないとか理由をつけて、夜勤の時などに看護師さんに渡せば受け取ってもらえる可能性があるのを、何度か見かけていた。もし、コレで受け取ってもらえなければ、義兄にいさん経由と言う手も僕にはあるので、気負う必要もなかったので、サクッと渡せば、あっさりと受け取ってもらえた。

「七草さん、退院おめでとうございます。お医者さんに言うのも何ですけど、無理は禁物ですよ！根詰めたりはしないようにして下さいね。お大事に！」

と、担当してくれていた看護師さんに言われた。

「気を付けます。上司も、家族も見張ってますから無理のしようが無くなりましたから…。暫くは、自宅療養して現場に戻る予定です。ご心配お掛けしました。」

とお礼を言って、病院を後にした。