Words of love 〜αとΩ番の誓い〜

浅葱

文字の大きさ
上 下
97 / 102
別れの時

荷物整理

しおりを挟む
マンションの玄関で、義兄にいさんにスペアの内の1枚のカードキーを渡した。
エントランスを入れば、コンシェルジュが控えるフロントには、渡瀬さんの姿があった。

「渡瀬さん」

と声をかければ、

「七草様、お身体の具合はいかがですか?退院なされたのですか?」

と聞かれ、

「外出許可貰えたので、少し荷物を取りにきたんです。」

と伝えた。

「そうでしたか…。司波様が、とても心配されている御様子で、最近はお元気がありませんでしたので、気になっていたんですよ。まだ、暫くは御入院生活が続くんですね。お大事になさって下さいませ。」

と言われた。

「ウチの姉に、少し部屋の掃除とかを頼んだので、僕の部屋を尋ねてくる女性が居たらそのまま部屋に通して下さい。」

とお願いした。

「畏まりました。申し送っておきます。」

と渡瀬さんが言ってくれた。
足早に、エントランスを抜けエレベーターで最上階の自室を目指した。
玄関のドアのオートロックをカードキーで解除し、リビングのテーブルの上に支給されているスマホを置き、寝室へ向かった。
寝室は、僕が朦朧として居た時の状態を全く留めて居なくて、きちんとベッド周りも整えてあった。

理さんとがやってくれたんだろうな…

クローゼットの反対の収納から、出張の際によく使っていた小さめなスーツケースを引っ張り出し、お気に入りの服や下着などを収めていった。
いつも出勤時に使っていたカバンには、ノートパソコン一式を収め新品のお気に入りのルームフレグランスの小瓶を一つ忍ばせた。
寝室の向かいの部屋の鍵を開け、机の上に置きっ放しになっていた練習中だった道具を片付け、その中から持針器と小鑷子などを専用のツールロールに収めて持ち出し、カバンに詰め込んだ。
テーブルの上のメモ用紙を1枚取り、

『暫く使えないので、置いていきます。』

と走り書きをして、リビングのテーブルに置いたスマホの下に挟んだ。
側には、理さんの部屋のマスターキーのカードキーを置いた。

多分、僕が姿を消したら理さんは必ずこの部屋にきてコレを見て気付くだろう…。
僕が、自分の意思で姿を消した事を…。

姿を消す前に、もう一度だけ理さんに会って僕の身体に理さんを刻みつけておきたい…。
そう思った僕は、自分のスマホを取り出し義兄にいさんに連絡を取った。

こちらを出る前に、どうしてもやっておきたい事があるから1日だけ退院日を前倒しにさせて欲しいと頼む為にだ。

義兄にいさんは、連絡すれば直ぐに出てくれて、体調さえいいなら許可は出せる、と言ってくれた。

しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

モルモットの生活

麒麟
BL
ある施設でモルモットとして飼われている僕。 日々あらゆる実験が行われている僕の生活の話です。 痛い実験から気持ち良くなる実験、いろんな実験をしています。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

巣作り短編集

あきもち
BL
巣作りの話だけを書いていく短編集 独自設定あったりなかったり

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

処理中です...