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変化
お子様か!
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病院に着き、1人で歩けない真琴の為に車椅子を借り、診察の為に奏に指示されていた救命の受け付けに顔を出すと、
「聞いてますよ。初療室の先にある診察室の1番で、奏先生がお待ちですよ。あ、真琴先生、次の出勤時に保険証の提示お願いしますね。」
と、医療事務の女性に言われた真琴。
「分かりました。」
と返事はするものの、渋い表情の真琴だった。
咳き込みをする姿も、徐々に増えている気もする。
診察室へ向かい、車椅子を押す俺…
診察室のドアを、軽くノックすると
「はいはーい!どうぞぉー。」
いつもの調子で呑気な返事を奏が返して来た。
ドアを開けて、車椅子を押して診察室に入れば、
「調子はどうかな?真琴先生?」
真琴に早速、医者の顔つきになった奏が聞く。
「節々が少し痛いのと、けほっ…、咳が良く出るくらいですかね…。後、少し寒いです。」
症状を簡潔に真琴が伝える。
「じゃ、取り敢えず採血と胸部レントゲンね。」
オーダーを飛ばした奏。
フライトナースの資格を持つ山科さんに、レントゲン室へ車椅子で連れて行かれた真琴。
「肺炎が濃厚か?」
奏に聞くと、
「多分ね。でも、肺炎も色々あるから検査してみないとなんとも言えないよ。」
と返してきた。
「ほら、オリンピックの年に流行りやすい例の肺炎の患者さんが増えて来てるって、部長会議でも報告があっただろ?抗体検査も一応オーダーしといたから結果次第じゃ暫く真琴先生は出勤は無理になるかもね。」
と追加して言って来た。
例の肺炎…
昔、オリンピックの周期である4年周期で爆発的に発症する患者が増加する傾向にある、マイコプラズマ肺炎という厄介な肺炎だ。
「肺炎マイコプラズマ」という細菌に感染することによって起こる呼吸器感染症で、小児や若い人の肺炎の原因としては、比較的多いものの1つで14歳以下の発症が最も多いと報告されている肺炎だ。
感染してから発症するまでの潜伏期間は長く、2~3週間くらいと言われ、咳は熱が下がった後も長期にわたって(3~4週間)続くのが特徴の肺炎だ。乾いたしつこい咳が続き、腹筋に筋肉痛が出る人もいると聞いたことがある。
「マイコプラズマなら、当面は出勤させる事は出来ないな。術前後の患者もいるし、観戦リスクを考えてこの2週間前後に関わった患者の検査をする必要があるかも知れないな…。」
「まぁ~、その辺は各部長権限ではムリだから、感染対策リスク委員会にも聴かなきゃいけないだろうね。救命は独自判断で要請の場合は早急に検査をしちゃうけどさ…。」
「まぁ、その辺は音が目はないだろうな。うちの科も、妻子もちのスタッフの中に発症事例があるから検討の余地はあるかもな。」
「まぁ、今どうこう言っても仕方ないよ。検査結果待ちだね。」
話をしているうちに、レントゲンを終えて真琴が車椅子で診察室に連れ帰られた。
留置針の入っていない方のパーカーの袖が外されて、採血をした後が見えた。
「20分程結果が出るのにかかるから、少し休んどく?」
奏が真琴に聞けば、頷く真琴。
「少し、寒くって。出来たら休みたい…。」
弱々しく言う。
「山科さん、ウォーマーと布団を真琴先生に掛けてあげて。」
奏が、診察室のベッドに真琴を誘導し、指示を飛ばした。
横になり、暫くするとガタガタと震え出した真琴。
レントゲンの画像を、電子カルテの画面で見ていた奏が、
「結構、シバリング来てるね。レントゲンでも肺炎像が認められてるから、エリスロマイシンの投与始めちゃおっか?抗体検査の結果前だけど。」
と言う。
「で、どうする?真琴先生。このまま入院する?家に帰っても、1日2回の点滴のプラス食事とか管理出来ないでしょ?」
と続けた。
2、3日の看病であれば俺が休んで看病することも可能だが、マイコプラズマと診断されれば最低でも1週間程度はまともに動けない可能性がある。そこまで、休む事は今の状況では困難であるし、どうしたのが良いか思案するところだ。
「義兄の所に、暫くお世話になります。ゴホッ…ココだと落ち着きません…。」
震えながらも、弱々しく真琴が返事をした。
「義兄さんの所って、小さいお子さんが居るんじゃなかったっけ?大丈夫なの?」
奏が問いかけると、
「義兄の勤める病院へ、ねじ込んでもらいます。ゴホゴホっ…。」
乾いた咳をする回数が明らかに増えて来た。
検査の結果、案の定
『マコプラズマ抗体陽性』
の診断が下された。
以前に真琴から聞いていた、真琴の義兄は幸いな事に呼吸器内科医であり、奏が連絡を取ってくれた。
早速、入院受け入れの手はずをとってくれるとの事で、暫くの間は義兄の勤務する病院へ入院する事になった真琴だった。
--------------------------------------------------------------------------------
作者、過去にマイコプラズマ肺炎に罹患した経験があります。大人になってから…。
その際に、本当に「お子様か!」って言われたので、この回のタイトルをそうしました。
真琴のマイコプラズマのしんどさは、実体験にもとずく書方をしていきたいと思います!
作者の場合は、家族が居たので自宅療養で内服治療になりましたが、真琴の場合は一人暮らしの設定なのであえて入院という選択にしました。
通常ですと、重症でない限り入院治療は不要です。
「聞いてますよ。初療室の先にある診察室の1番で、奏先生がお待ちですよ。あ、真琴先生、次の出勤時に保険証の提示お願いしますね。」
と、医療事務の女性に言われた真琴。
「分かりました。」
と返事はするものの、渋い表情の真琴だった。
咳き込みをする姿も、徐々に増えている気もする。
診察室へ向かい、車椅子を押す俺…
診察室のドアを、軽くノックすると
「はいはーい!どうぞぉー。」
いつもの調子で呑気な返事を奏が返して来た。
ドアを開けて、車椅子を押して診察室に入れば、
「調子はどうかな?真琴先生?」
真琴に早速、医者の顔つきになった奏が聞く。
「節々が少し痛いのと、けほっ…、咳が良く出るくらいですかね…。後、少し寒いです。」
症状を簡潔に真琴が伝える。
「じゃ、取り敢えず採血と胸部レントゲンね。」
オーダーを飛ばした奏。
フライトナースの資格を持つ山科さんに、レントゲン室へ車椅子で連れて行かれた真琴。
「肺炎が濃厚か?」
奏に聞くと、
「多分ね。でも、肺炎も色々あるから検査してみないとなんとも言えないよ。」
と返してきた。
「ほら、オリンピックの年に流行りやすい例の肺炎の患者さんが増えて来てるって、部長会議でも報告があっただろ?抗体検査も一応オーダーしといたから結果次第じゃ暫く真琴先生は出勤は無理になるかもね。」
と追加して言って来た。
例の肺炎…
昔、オリンピックの周期である4年周期で爆発的に発症する患者が増加する傾向にある、マイコプラズマ肺炎という厄介な肺炎だ。
「肺炎マイコプラズマ」という細菌に感染することによって起こる呼吸器感染症で、小児や若い人の肺炎の原因としては、比較的多いものの1つで14歳以下の発症が最も多いと報告されている肺炎だ。
感染してから発症するまでの潜伏期間は長く、2~3週間くらいと言われ、咳は熱が下がった後も長期にわたって(3~4週間)続くのが特徴の肺炎だ。乾いたしつこい咳が続き、腹筋に筋肉痛が出る人もいると聞いたことがある。
「マイコプラズマなら、当面は出勤させる事は出来ないな。術前後の患者もいるし、観戦リスクを考えてこの2週間前後に関わった患者の検査をする必要があるかも知れないな…。」
「まぁ~、その辺は各部長権限ではムリだから、感染対策リスク委員会にも聴かなきゃいけないだろうね。救命は独自判断で要請の場合は早急に検査をしちゃうけどさ…。」
「まぁ、その辺は音が目はないだろうな。うちの科も、妻子もちのスタッフの中に発症事例があるから検討の余地はあるかもな。」
「まぁ、今どうこう言っても仕方ないよ。検査結果待ちだね。」
話をしているうちに、レントゲンを終えて真琴が車椅子で診察室に連れ帰られた。
留置針の入っていない方のパーカーの袖が外されて、採血をした後が見えた。
「20分程結果が出るのにかかるから、少し休んどく?」
奏が真琴に聞けば、頷く真琴。
「少し、寒くって。出来たら休みたい…。」
弱々しく言う。
「山科さん、ウォーマーと布団を真琴先生に掛けてあげて。」
奏が、診察室のベッドに真琴を誘導し、指示を飛ばした。
横になり、暫くするとガタガタと震え出した真琴。
レントゲンの画像を、電子カルテの画面で見ていた奏が、
「結構、シバリング来てるね。レントゲンでも肺炎像が認められてるから、エリスロマイシンの投与始めちゃおっか?抗体検査の結果前だけど。」
と言う。
「で、どうする?真琴先生。このまま入院する?家に帰っても、1日2回の点滴のプラス食事とか管理出来ないでしょ?」
と続けた。
2、3日の看病であれば俺が休んで看病することも可能だが、マイコプラズマと診断されれば最低でも1週間程度はまともに動けない可能性がある。そこまで、休む事は今の状況では困難であるし、どうしたのが良いか思案するところだ。
「義兄の所に、暫くお世話になります。ゴホッ…ココだと落ち着きません…。」
震えながらも、弱々しく真琴が返事をした。
「義兄さんの所って、小さいお子さんが居るんじゃなかったっけ?大丈夫なの?」
奏が問いかけると、
「義兄の勤める病院へ、ねじ込んでもらいます。ゴホゴホっ…。」
乾いた咳をする回数が明らかに増えて来た。
検査の結果、案の定
『マコプラズマ抗体陽性』
の診断が下された。
以前に真琴から聞いていた、真琴の義兄は幸いな事に呼吸器内科医であり、奏が連絡を取ってくれた。
早速、入院受け入れの手はずをとってくれるとの事で、暫くの間は義兄の勤務する病院へ入院する事になった真琴だった。
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作者、過去にマイコプラズマ肺炎に罹患した経験があります。大人になってから…。
その際に、本当に「お子様か!」って言われたので、この回のタイトルをそうしました。
真琴のマイコプラズマのしんどさは、実体験にもとずく書方をしていきたいと思います!
作者の場合は、家族が居たので自宅療養で内服治療になりましたが、真琴の場合は一人暮らしの設定なのであえて入院という選択にしました。
通常ですと、重症でない限り入院治療は不要です。
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