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変化
在宅看病①
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ーside 理ー
成海にも連絡がついて勤務調整もできた俺は、真琴の待つ寝室へ急いだ。
寝室のドアを開ければ、ベッドの上に真琴の姿が見当たらなかった。
「真琴?」
大きな声で叫べば、カサっと衣擦れの音が死角になっているベッドの向こう側から聞こえた。
慌ててベッドを乗り越えれば、ベッドの向こうの床に蹲っている真琴を見つけた。
経口補水液をその場に投げ飛ばし、真琴の側にしゃがみ込んで上半身を起こした。
「真琴、大丈夫か?」
声を掛ければ、掠れた小さな声で
「どこ行ってたの?」
で返事を返して来た。
「悪かったな。経口補水液を取りにウチまで帰ってた。序でに、勤務の調整の為に成海に連絡してて遅くなった。心細かったのか?」
俺の服を、力の入らない手でしっかり握り締めている真琴を見て言った。
「熱が上がりきって、少し落ち着いたのかも知れないけど、あったかくして少しでも水分取ろうな。」
真琴を抱きかかえて、ベッドに戻し、まくら2個を背中に挟み経口補水液のペットボトルを口に持って行ったが、上手く飲めずむせたり、溢れてしまった。
俺は、自分の口に経口補水液を含み、真琴の口に少しづつ口移しで飲ませればむせる事もなく数口飲む事が出来た。
数口飲んだ真琴は、首を頼りなく横に振ったので、無理意地せずに身体をベッドに横たえた。
真琴が俺の服を握ったまま離そうとしない。
一緒にベッドに横になってやれば、徐々に服をつかむ力は緩んだものの服から手が離れる事はなかった。
暫くして、インターホンが鳴り
「真琴、奏が来てくれたみたいだからオートロック解除してくる。少しだけ、待ってて。」
と言えば、服を握っていた手がやっと離れた。
階下に降りて、オートロックを解除すれば、奏が大荷物を持ってリビングへと入って来た。
俺の姿を見るなり、
「兄貴、スーツがすっげえしわくちゃになってるけどどうしたの?」
と、ジャケットの腰の部分を指して言った。
紛れもなく、さっきまで真琴が頼りない力で懸命に握っていた場所だ。
事情を説明すれば、
「真琴先生、無茶するね。不安で心細かったんだろうね。」
と、ニヤリとして俺に言って来た。
奏が手荷物を渡してきて、
「取り敢えず、必要そうなものと食料買ってきた。アイスノンとか凍らせて置いた方がいい物もあるから、それ先に仕舞って。また、真琴先生が無茶したらいけないから、先に部屋行って監視しとくから早めに戻ってきて。点滴も、早めに始めたいし…。」
と言って、2階へ行った奏。
俺は、急いで手荷物の中の仕分けをして、真琴の家の冷蔵庫と冷凍庫へ仕舞う物を仕舞って、体温計や冷えピタといったすぐに使う物を手に寝室に急いだ。
寝室に戻ると、奏がベッドサイドで点滴棒を組み立てていた。
「病院の備品、くすねてきたのか!」
と聞いたら、
「救命の予備のヤツ。一個借りてきた。それより、真琴先生、39℃もあったよ。早めに受診させた方が良いかもしれない。」
手持ちの非接触式の体温計の液晶を見せた。
「解った。できるだけ早めに受診させるようにする。すまんな。」
取り敢えず点滴をする為に、真琴の準備をする。
身持ちよさそうに寝ている真琴の肩をポンポンと叩くと、ぼんやりと目を開いた。
「奏が、点滴を持って来てくれたから、これから始めるぞ。針刺すけど、少し我慢しろよ。」
目をほちほちさせる真琴。
点滴の出来る準備をして、奏とポジションを入れ替わる。
「随分無理したみたいだね、真琴先生。一応、点滴するけど、早めに一度受診してね。」
と言って、躊躇なく留置針を真琴の細腕に留置した。ドレッシング材で固定をした後、解熱剤の筋肉注射を反対の腕に打った時には、流石に真琴も、
「痛っ!」
掠れた声が上がった。
奏は抗生剤のキットを点滴棒にぶら下げて、側管から滴下を開始した。
「後は、兄貴に任せるな。ゴミは、纏めて病院に持って来て。医療廃棄じゃないとダメだしね。じゃ、真琴先生お大事に!」
と言って、仕事に戻って行った。
成海にも連絡がついて勤務調整もできた俺は、真琴の待つ寝室へ急いだ。
寝室のドアを開ければ、ベッドの上に真琴の姿が見当たらなかった。
「真琴?」
大きな声で叫べば、カサっと衣擦れの音が死角になっているベッドの向こう側から聞こえた。
慌ててベッドを乗り越えれば、ベッドの向こうの床に蹲っている真琴を見つけた。
経口補水液をその場に投げ飛ばし、真琴の側にしゃがみ込んで上半身を起こした。
「真琴、大丈夫か?」
声を掛ければ、掠れた小さな声で
「どこ行ってたの?」
で返事を返して来た。
「悪かったな。経口補水液を取りにウチまで帰ってた。序でに、勤務の調整の為に成海に連絡してて遅くなった。心細かったのか?」
俺の服を、力の入らない手でしっかり握り締めている真琴を見て言った。
「熱が上がりきって、少し落ち着いたのかも知れないけど、あったかくして少しでも水分取ろうな。」
真琴を抱きかかえて、ベッドに戻し、まくら2個を背中に挟み経口補水液のペットボトルを口に持って行ったが、上手く飲めずむせたり、溢れてしまった。
俺は、自分の口に経口補水液を含み、真琴の口に少しづつ口移しで飲ませればむせる事もなく数口飲む事が出来た。
数口飲んだ真琴は、首を頼りなく横に振ったので、無理意地せずに身体をベッドに横たえた。
真琴が俺の服を握ったまま離そうとしない。
一緒にベッドに横になってやれば、徐々に服をつかむ力は緩んだものの服から手が離れる事はなかった。
暫くして、インターホンが鳴り
「真琴、奏が来てくれたみたいだからオートロック解除してくる。少しだけ、待ってて。」
と言えば、服を握っていた手がやっと離れた。
階下に降りて、オートロックを解除すれば、奏が大荷物を持ってリビングへと入って来た。
俺の姿を見るなり、
「兄貴、スーツがすっげえしわくちゃになってるけどどうしたの?」
と、ジャケットの腰の部分を指して言った。
紛れもなく、さっきまで真琴が頼りない力で懸命に握っていた場所だ。
事情を説明すれば、
「真琴先生、無茶するね。不安で心細かったんだろうね。」
と、ニヤリとして俺に言って来た。
奏が手荷物を渡してきて、
「取り敢えず、必要そうなものと食料買ってきた。アイスノンとか凍らせて置いた方がいい物もあるから、それ先に仕舞って。また、真琴先生が無茶したらいけないから、先に部屋行って監視しとくから早めに戻ってきて。点滴も、早めに始めたいし…。」
と言って、2階へ行った奏。
俺は、急いで手荷物の中の仕分けをして、真琴の家の冷蔵庫と冷凍庫へ仕舞う物を仕舞って、体温計や冷えピタといったすぐに使う物を手に寝室に急いだ。
寝室に戻ると、奏がベッドサイドで点滴棒を組み立てていた。
「病院の備品、くすねてきたのか!」
と聞いたら、
「救命の予備のヤツ。一個借りてきた。それより、真琴先生、39℃もあったよ。早めに受診させた方が良いかもしれない。」
手持ちの非接触式の体温計の液晶を見せた。
「解った。できるだけ早めに受診させるようにする。すまんな。」
取り敢えず点滴をする為に、真琴の準備をする。
身持ちよさそうに寝ている真琴の肩をポンポンと叩くと、ぼんやりと目を開いた。
「奏が、点滴を持って来てくれたから、これから始めるぞ。針刺すけど、少し我慢しろよ。」
目をほちほちさせる真琴。
点滴の出来る準備をして、奏とポジションを入れ替わる。
「随分無理したみたいだね、真琴先生。一応、点滴するけど、早めに一度受診してね。」
と言って、躊躇なく留置針を真琴の細腕に留置した。ドレッシング材で固定をした後、解熱剤の筋肉注射を反対の腕に打った時には、流石に真琴も、
「痛っ!」
掠れた声が上がった。
奏は抗生剤のキットを点滴棒にぶら下げて、側管から滴下を開始した。
「後は、兄貴に任せるな。ゴミは、纏めて病院に持って来て。医療廃棄じゃないとダメだしね。じゃ、真琴先生お大事に!」
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