Words of love 〜αとΩ番の誓い〜

浅葱

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トラブル発生

お互いの思いと深酒

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「なぁ、真琴。その左肘関節の青タン、どうした?」

僕のミスだ…。
水餃子を作るのに夢中で袖をも繰り上げていたから、気付かれてしまった…。
MRIの造影検査の後に、疲労から微熱を出した僕は菱沼教授の診察後点滴を受けていた。
その点滴の途中で、無意識に動いてしまい点滴漏れを起こしてしまい青タンが出来ていたのだ…。

「あ~、東部医科大学の講義期間中に疲れから少し熱を出しちゃって…。菱沼先生に診て頂いて点滴してもらった跡です。ごめんなさいっ。」

椅子から立ち上がって、90度に頭を下げた僕。
出発前に、無茶だけはしない様に釘を刺されていたのに…。

「出発前日に、あれ程無理はするなって言っておいたのに無茶したんだな…。」

落胆した声色で呟いた理さんは、水餃子をツマミに冷酒をグビっと一気にあおった。
理さんを怒らせてしまった…。
僕は、顔を上げる事が出来ず、そのままリビングを走って出て行った。


トボトボと、隣の自宅に戻りしっかり鍵をかけた。
リビングに入り、カーテンから漏れる月明かりだけのリビングのソファーで膝を抱えてボロボロと涙を溢した。
理さんの家ほど豪華なキッチンではないが、僕の部屋のキッチンはペニンシュラキッチンというタイプの物で、キッチンに行きコルク抜きを引出しから取り出し、小さいワインセラーから適当に1本ワインを選び栓を抜いた。
グラスに注ぐ事なく、ボトルから直接グビグビと呷る様に呑みあっと言う間に1本空にした。
自分の情けない行動に腹が立ち、それに対して治りがつかない…。
ボトルを床に転がし、ワインセラーまで這って行き扉を開けようとし手を止め、立ち上がって冷蔵庫へ歩みを進めた。
ロックグラスを食器棚から引っ張り出し、冷蔵庫からスライスして保存しておいたライムを取り出した。
冷凍庫から、アイスボールを作れる製氷器を取り出してアイスボールを一つだけロックグラスに入れて、スライスしたライムをグラスに1枚入れ、冷凍庫から凍らせた真新しいウォッカの瓶を取り出した。
冷蔵庫の前に座り込み、ロックグラスにウォッカを注ぎアイスボールを指でクルクルっと回してから一口呷った。
アルコール度数の高いウォッカが喉を越し、食道を伝っていく感覚が感じられるが、全く酔えない…。
グラスに残っているウォッカをグビっと飲み干し、ボトルから新たにグラスにウォッカを注いだ。
何度か繰り返しているうちに氷が溶けてきたので2個目のアイスボールを入れてウォッカを注いだ頃、ガチャっと玄関が空いた音がした。暫くすると、リビングのドアがカチャっと音を立て開きリビングに明かりがついた。
僕の居るペニンシュラキッチン側にある冷蔵庫前は丁度死角になっている。

「ワインのボトル…?」

床に転がしたままになっていたワインボトルを見つけた侵入者が呟いた声が聞こえた。
ロックグラスを傾けてしまい、2個のアイスボールがグラスに触れてカランと音を立てた。

「真琴…?」

バリトンボイスの侵入者の声がリビングから聞こえてきた。
ロックグラスを口に運び、ちびちびとウオッカを呷っていたら、キッチンの入り口から姿を現した侵入者…

今、一番会いたくないその人だった。

床に目を逸らし、相手と目を合わせない様にしロックグラスのウォッカを口に運び飲み込んだ。
しばらくその姿を見ていた相手が、つかつかと僕の前までやってきてしゃがみ込みロックグラスを取り上げた。

「返して!」

目を合わせず、グラスを取り返そうとしたが手が届かず取り返せなかった。
ウォッカのボトルに手にやり、背後に隠そうとすればギュッと手首を掴まれた。
ロックグラスは、器用に床を滑らせて僕の手の届かない場所まで離れていた。

「どんだけ呑んだ?」

ギュッと口を摘むんで答えない僕にしびれを切らした相手は、僕の顎を手でクイっと持ち上げたかと思うと、唇を重ねてきた。チュッと啄んだ後に、唇を甘噛みしてきて僕の口が開けばヌルッと舌を滑り込ませた。口内を味わうかの様に舌を絡ませ、僕の息があがったのを確認して名残惜しそうに離れて行った。

「随分呑んだみたいだな…。ワイン1本とウォッカか…。真琴、そんなに酒強くないだろ…」

俯いて一言も喋らない僕を抱きしめ、

「悪かった…。真琴なりに必死に東部医大むこう聖心大学付属うちが頑張ってる事や自分の学んできた事を後進の役に立てる様に伝える為に無茶してでも頑張ってた事を褒めてやらずに、怒る様な真似して。ごめんな…。」

頭をポンポンと撫でて囁いた。
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