Words of love 〜αとΩ番の誓い〜

浅葱

文字の大きさ
上 下
81 / 102
トラブル発生

1週間ぶりの帰還

しおりを挟む
ーside 理ー

東部医科大に真琴が行ってから早いもので1週間…
やっと、今日こっちに戻ってくると短いメッセージでの連絡があってから、そわそわして待ちきれない俺。

頭痛がすると言って、奏に薬を処方してもらっていた事も気になるが、キャロライン教授の知り合いが脳神経外科の世界的権威の菱沼教授でその教授に会う為に学会に参加した事も幾分か腑に落ちない…。
その上、降って湧いたような東部医科大からの早急な真琴に対する講師の招致誘致…。タイミング的にも、何か裏がありそうで気が気じゃない…。

真琴が帰って来たら、何かあったかそれとなく聞いてみよう…

そう心に誓った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーside 真琴ー

最後の講義を午前中に終え、学長と菱沼教授に御礼を伝えて僕は東部医科大から一路理先生達が待つ聖心大学付属病院へと帰路についた。
院長や循環器外科、心臓血管外科の教授達はお忙しくされていて直接お礼が伝えられなかったが、学長と菱沼教授が伝えておくよ、と快く言って下さったし、今後も何かと顔をあわせる機会も増える事になるので、その時にでもご挨拶すれば良いと考え、聖心大学付属病院で僕の帰りを待ってくれているであろう人達への逸る気持ちを抑えながら足早に、歩みを進めた。
帰りのフライトは定刻通りに空港を出発して、そのお陰か定刻よりも少し早めに到着した。
空港を出た僕は、久し振りに吸う関東の空気を胸いっぱいに吸い込み、少しでも早くホームへ帰りたい思いでタクシー乗り場へ向かった。
公共交通機関を使うよりも早く着ける分かなり割高になってしまうが、はやる気持ちは抑えきれない。
タクシーの運転手さんに、目的地を告げ車窓から見える1週間ぶりの景色を堪能した。

聖心大学付属病院しょくばに付き、コロコロとスーツケースを引き摺りながら片手にお土産の入った大きな紙袋を下げて歩く僕…。
外科の医局のフロアに着けば、同僚の先生達の視線が降り注ぎ、あちらこちらから「おかえり」のコールの嵐を受けた。医局に、紙袋からお土産の箱を取り出して、身近にいた先生に手渡せば「気にしなくていいのに…、仕事だったんだから」と言われた。それでも、「ご馳走様です。」との一言も添えられた。

「部長なら、部長室にいるはずだよ。」

誰かが、僕が会いたかった人の所在を教えてくれた。

「挨拶して来ます!」

医局に向かって一言残し、部長室に向かった。

少し先にある部長室の前で、スーツの身なりを整えなおし、ドアをコンコンとノックする。

「どうぞ。」

の声に

「失礼します。」

と返事をしてドアを開けた。
1週間振りに見る理先生は、出発前より髪が少し短くなっていてほんの少しだが窶れている感じに見えた。
ドアを閉め、

「只今帰りました。1週間の長い間不在にしご迷惑をお掛けしました。」

頭を下げれば、

「おかえり。」

心地よいバリトンボイスが室内に響いた。

「あっちはどうだった?菱沼教授から早々に追加で定期的に学生達に講義に来て欲しいって依頼があったって聞いてるけど?」

「学生向けに3回と同業者向けに2回の講義をさせて頂きましたが、向こうで学生向けの講義に関しては一部変更を加えたりしてホテルに帰ってからも結構バタバタしてました。楽しかったか辛かったかと言えば、楽しかったです。向こうアメリカとは違った学内の雰囲気とかも新鮮でした…。でも、時間が経てば経つほど聖心大学付属病院ここが恋しくなって来ましたよ。何度か連絡も頂いたからかも知れませんけど…」

と少し照れて答えれば、側まで来た理先生は僕の眼鏡をスッと外し、メガネと言うフィルター越しにではない顔を見せてくれ、チュッと僕の唇を奪った。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

モルモットの生活

麒麟
BL
ある施設でモルモットとして飼われている僕。 日々あらゆる実験が行われている僕の生活の話です。 痛い実験から気持ち良くなる実験、いろんな実験をしています。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

処理中です...