Words of love 〜αとΩ番の誓い〜

浅葱

文字の大きさ
上 下
69 / 102
蜜月の終わり

落ち着いた時間の過ごし方

しおりを挟む
食事前に約束した通り、シュミレートの為に1Fの奥にある部屋に真琴を連れて行った。
俺も、新人の頃は真琴の様にシュミレートしていた為にこの部屋には専門的な機械や道具までは揃っていないが、一般的な外科手術には対応できる医療器具が揃っている。

「人工弁や人工血管とかまでは揃ってないんだけど…」

と伝えた。

「あー、実は今度の手術、MICS(ミックス;小切開低侵襲手術)でやろうかと思ってるんです…。永瀬くんの年齢も考えて、出来るだけ傷跡を最小限にしてあげたくて…。完全3D内視鏡アプローチ(3D-MICS)ってのが開発されているので、ソレなら傷口は3㎝程ですみますし、術後の体に対する負担も少ないのでベストかと。Saegusaでも一昨年にシステムを開発しているので、発情ヒートが終わった時の永瀬くんの状態で、お話ししようかと思っていたんです。3D-MICSなら、外科の内視鏡手術とそう手技が大きく変わる事はないと思います。」

遠慮がちに真琴が話して来た。

「なので、シュミレートは現状では動画がベースになります。ただ、自分の感覚を戻すのに縫合と結紮は練習したいので、一度自分の部屋に帰って来てもいいですか?隣ですけど…。」

自分の部屋に一度戻りたいという真琴に理由を聞くと、

「自分の使い慣れた練習機器を取りに行きたくて…。」

と遠慮がちに言うので、発情ヒートが来る前に出勤するときにきていた服を入れて届けてもらった荷物から服を持って来てやるといそいそと着替え始めた。
荷物の中から、カードキーの入ったカードケースを手にしてリビングを出ようとする。

「俺も付いて行っていいか?」

部屋着のまま聞けば、

「いいですよ?」

と返事が返って来る。
俺の家のカードキーも真琴は持っているのでそのまま2人で部屋を出た。

真琴の部屋に入ると、空調が動いていないせいで少しムッとした暖かい空気が充満していた。
真琴が気に入って使っているimp.(インプ) 5 シトラスレモンの残り香が薄っすらと香る。
俺の部屋と対称に作られている構造の造りの部屋割りになっている。2階へ上がる階段を軽やかに上がっていく真琴。
寝室の向かいにある部屋に入るので、後を追ってドアを潜った。
室内には、片側の壁一面にラックが組まれていてそのラックの引き出し一つ一つにラベルが貼られていた。
正面にあるデスクに置いてあった銀色の金属製のバットに手際よくラックの中から器具をいくつか選択して入れていく。
ラック一つづつに丁寧に個別収納されていた器具がバットに並んでいく。
縫合に使う糸まで、種類別にラックを分けて収納してあった。
バットには、持針器じしんきが数種類と、鑷子せっしが様々なサイズの物が数本、縫合に使うナイロン糸に絹糸、更には吸収糸までが収まっていた。そして、縫合の練習にと小さな人工血管の切れ端に近い物まで準備していた。

「よくこんなに揃えたな…」

と感心すれば、

「Saegusa medicalの試作の中で、ほぼ完成形の物をレビューの代価に貰ってるんです。現場に出回っている物とほぼ同じですが、微細な物については一部は僕の仕様になっている物もあるのでオペの時は持ち込みになっちゃいますけどね…。今回のオペでは特殊機器を使うので、ソレは改めて練習しにLabへ出向く事になると思います。流石に、あれだけの機器は、自宅に完備できませんから…。」

苦笑いしながら真琴はラックの反対においてあるテレビの側にあるDVDラックに手をかける。

「えっと…、MICS、MICS…」

指でラックに納まっているDVDのタイトルを追いつつ呟く。

「あった!って、どれだっけ…?3D-MICSも入ってたやつ…。10本しかないから全部持って行っても大丈夫か」

ラックからDVDをごっそり取り出し、バットと一緒に持っている。

「お待たせしました。必要なものは揃ったので、部屋戻りましょうか?」

とあっさりと言う。

「落ち着いてる間に、帰って、練習とイメトレしましょ!」

発情ヒートが落ち着いている時間帯は、縫合と結紮の練習とDVDを見て過ごす事になった。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

こども病院の日常

moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。 18歳以下の子供が通う病院、 診療科はたくさんあります。 内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc… ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。 恋愛要素などは一切ありません。 密着病院24時!的な感じです。 人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。 ※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。 歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

モルモットの生活

麒麟
BL
ある施設でモルモットとして飼われている僕。 日々あらゆる実験が行われている僕の生活の話です。 痛い実験から気持ち良くなる実験、いろんな実験をしています。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

処理中です...