Words of love 〜αとΩ番の誓い〜

浅葱

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帰国

翌朝

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元々、そう眠りが深い方では無い俺は安心しきって眠ってしまい3時間程経った頃目が覚めた。

左腕には心地よい重みが眠る前と変わらず有ったが、変わった事といえば後ろから抱きしめていたハズの真琴の姿勢が反転して俺にぴったりと寄り添うように眠っていた事だ。しかも、御丁寧に俺の腹の上に左手を乗っけて互いに抱きしめ合った姿勢になっていた…。

そっと、左腕をずらせば、逃げないでとばかりに必死にスエットを掴もうとする真琴。
桜色の唇に、チュッとリップ音をさせ、

「安心して、何処にも行かないよ…。ちょっとだけ、用をすませて来るから…」

耳元で囁くと、何故かゆっくりと力が抜けていく真琴の腕…。
ちゃんと、俺の声が届いてるんじゃないか?と疑う程、従順な真琴。
ゆっくりとベッドに起き上がり、寝室のソファーに移動した。
ビジネスバックの中から、ノートパソコンを取り出し、幾つか関わっている論文の中で自信が筆頭となって書き上げている論文のファイルを開く。

【循環器領域における性個体の特異性】

この世界には、α、β、Ωの三つの性個体種族があるが、その全てに於いて身体的な特徴がある。
見た目、特に生殖器官が最も顕著な特徴なのだが、それ以外にも最近になって明らかになってきた物が沢山ある。その一つが、俺の専門領域である循環器に関する特徴だ。
症例数が少ないために、まだ未知の領域といっても過言では無いと思う。心臓、血管といった領域で各性個体に於いて特徴的な違いがあるのだ。βを基準として捉えたら、αは心臓の収縮力、循環血液量、血管壁の厚みなどに於いては高い数値が出ている。一方で、Ωはαとは真逆で低い数値を呈しているのだ。
まだ研究段階で、これを何らかの形で臨床で活用できる物にするまでは途方も無い月日を要するだろう。
そのための基礎研究を行っているのだ。
新しい研究の為、同様の症例を取り扱った論文はなく、根拠を裏付ける論文を探すのにも一苦労だ。
ここの所、その作業に手を取られ、ろくに睡眠をとる事もなかったから、3時間も立て続けに寝れた事は驚きだった。

背後で、ゴソゴソと衣擦れの音が聞こえた。

「んっ…、ココは?」

振り返ると、まだ寝ぼけ眼の真琴先生がベッドにムクリと起き上がっていた。

「あぁ、真琴先生おはよう。僕のマンションの寝室ですよ。まだ、早いから休んでても良いですよ。」

と返事すると、

「うわぁぁぁ~、理先生っっ!ど、ど、どうして僕が理先生の家で寝てるんですか‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

と素っ頓狂な声を発して、ベッドから降りてきた。

「やっぱりな。君は昨日酔っ払って『翡翠』で泥酔して眠りこけてしまった。奏と一緒に何度も起こしたんだが起きる気配が無いから仕方なくウチへ運んだんだ。あの状態じゃ、ホテルに送っていく事も出来る状態じゃなかったからね。」

と答え合わせをする。
真琴には悪いが、『ホテルの予約を手配する…』とは言ったが、実のところホテルに泊まらせる気は端からなく、予約も取っていない。そう…ウチにに泊まらせる気だった。
これは、昨日の行為と合わせて墓場まで持って行かないといけない嘘の内の一つだ。

「そ、そうだったんですか…。大変ご迷惑をおかけしたみたいで、申し訳ありません。」

シュンとして答える真琴。

「いやいや、ポーカーフェイスな真琴先生が酔っ払うと可愛らしくなる姿が見られましたからね。」

と爆弾発言を落としておく。

「えっ?僕、何かやらかしちゃいましたか?変なこと口走ったり…とか?」

動揺した様で、慌てながら側にやって来る真琴。

「う~ん、舌ったらずな感じで喋り出して、奏には食ってかかってたね。『聞いてましゅかぁ?』って感じで…。」

思い出し笑いをしながら話すと、

「大失態です。理先生、昨夜のことは脳内から消去して下さい。僕、穴があったら入りたいくらいです…。」

と、頭を垂れて肩を落とす。

「僕も奏も気にしてないから大丈夫だよ、真琴先生。」

そう言って、肩をポンっと叩くと俺のブカブカのスエットを履いていた真琴先生はスエットがズレて来たのか両手で引き上げながら少し笑顔になった。
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