Words of love 〜αとΩ番の誓い〜

浅葱

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帰国

御褒美に…①

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それから間もなく、グラスを持ったまま寝息を立て出した真琴先生。
チェックを済ませ、雅塚さんに御礼を言い、真琴先生に頂いたボトルはそのままボトルキープという形でお店に置かせて頂ける事になった。

酔っ払っている真琴先生を揺すり起こすも、疲れと酔いが合わさっているのか目を覚ます気配がない…。

「仕方ないか…」

そう呟き、椅子を少し後ろにずらし、脇と膝裏に腕を通す。いわゆるお姫様抱っこ…と言うヤツだ。
足早に店内を抜け出て、店外へ出る。枯山水の庭からの新緑の香りが心地よく馨る。

「兄貴、よかったな。憧れてた奴に嫉妬しなくて済んで…、おめでとうさん?ってトコかな。で、今夜はこいつ、どうすんの?」

「この状態じゃ、ホテルに送って行くのも無理だから俺のマンションに泊める。あぁ、それとさっきは話そびれたが、ネックガードの件だが、本人から希望があったよ。不本意ながらもだけどなぁ~。勤務中はスクラブ着てたいって言い出すしさ…。だから、目立ちたくないんだろうなネックガードが。スクラブの下にハイネックの服を着る事を提案したらなんとか受け入れた…って感じだ。」

「そっか…。じゃ、兄貴もおそろいしてやれば?1人だと目立つけど、複数だと目立たないじゃん?俺も協力してやるよ。」

「奏…。」

「じゃ、俺コレからもう一軒寄ってくわ。あ、くれぐれも、今日は襲うなよ…。せっかく打った抑制剤が無意味になるからな…。」

と言い、反対方向に向かって歩みを進めた。

「真琴…、一緒にうちへ帰ろう…」

その耳に届いていないのは分かっているが、呼び捨てて耳元で囁く。
何とか車まで真琴を運んだが、一度真琴を立たせないと載せられない程の間隔で隣に車が止まっていた。

「真琴先生、ちょっとだけ頑張って立っててくれるか?」

意識がなく、この声も届いていないだろう。ましてや立つ事は無理だろう。
そっと、足を下ろし脇を支えながら立たせると、無意識なのか真琴の両腕が俺の首に絡み付き辛うじて立てていた。
何とか車に乗せ、シートベルトをしようと真琴に覆いかぶさる格好になったら、耳元で、

「んっ…、好きだよ……理…」

と囁かれた。

「っつ……、煽った責任は後で取ってもらうぞ。」

そう呟き、運転席へと移動した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

マンションに着き、正面玄関に先ずは車を滑り込ませた。
顔見知りの年配コンシェルジュの渡瀬さんが、即座に玄関から顔を出した。

「司波様、お帰りなさいませ。」

頭を丁寧に下げ言う。

「渡瀬さん、すまないが、後ろの荷物を部屋まで運んでもらえるかな?私は、車を止めて連れを連れて降りるので…。」

と言うと、

「司波様、私共の方でお車を移動させて起きましょうか?お荷物は後程、キーと共にお届け致しますので、お連れ様とお部屋に向かわれては如何かと存じますが…。」

と、気を利かせる。

「すまないが、そうしてくれるか?」

シートベルトを外し、運転席から降り、真琴の寝ている助手席へと向かう。

「お連れ様は、気持ち良さそうにお休みですね。」

渡瀬さんは、我が子を見るような目で微笑みながら言う。

「あぁ、今度俺が指導医をする事になった、七草の三男の真琴だ。今後、ここに来る事もあるだろうから宜しく頼む。」

と助手席の真琴を『翡翠』を出る時の様に横抱きにしながら伝えると、

「畏まりました。周知徹底する様に申し伝えます。」

と恭しく頭を下げ、運転席に滑り込んだ。
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