Words of love 〜αとΩ番の誓い〜

浅葱

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帰国

食事会までの時間

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ネックガードを着ける話で一気に重苦しくなった空気感の中で、黙々と作業をし、レビューのレポートを完成させた。
カバンの中から、USBケースを取り出しS-Medと表示のあるUSBを取り出しパソコンに接続する。

S-Med…七草メディカル(Saegusa Medical)を自分なりに略して表示させたものだ。
出来上がったレポートと、デモ機の中のデータをコピーし保存する。

「Mission complete…」

USBを外し、USBケースに戻しふぅ…とため息をつくと、

「終わったのか?」

窓際のデスクの重厚な椅子に座って、パソコンから目を離す事なく声がかけられた。

「あ、はい。データの移行も終わったので、明日デモ機と一緒に渡せます。有難うございました。」

と、返せば、

「私の方はもう暫くかかりそうだ。1日以上、シャワーも浴びてなくて気持ち悪いだろう。まだ、食事の待ち合わせ時間まで暫くある。部屋を出て、向かいに、当直用のシャワー室があるから汗を流してくるといい。」

と、言われた。
確かに、飛行機に乗ってからかれこれ1日半…、発情ヒートも起こした事で少し汗をかいてベトベトしている感じもする。

「お言葉に甘えて、シャワーをお借りすることにします。」

スーツケースから、替えの下着の入ったポーチと白いオックスフォードシャツに濃紺のテーパードパンツを取り出した。念のために入れていたサンタニエッロのスーツも取り出した。

「理先生、今夜の食事の予定の場所って、ドレスコードとかあるお店じゃないですよね?」

確認すると、こちらを見て

「奏に任せているから、きっとそう言った店ではないと思うが…?あぁ、着替えのセレクトか。私も、ネクタイは外してカジュアルなブレザーで行く予定だから、そうキッチリしたものでなくて構わないよ。」

と言われる。
ならば、スーツは仕舞って、代わりにグレーのチェスターコートを取り出しソファーの背もたれに掛けさせてもらった。スーツケースを元に戻し、

「では、少し行ってきます。」

と頭を下げると、

「シャワー室の脱衣場にバスタオルもタオルも置いてあるし、選り好みがないなら中にあるシャンプーやボデソープなんかも使ってくれて構わないから。タオルは、ランドリーボックスの中に入れておけば、業者が回収してくれるのでさっぱりしてくると良い。」

と、優しいフォローを入れてくれた。

部長室のドアを閉め足早に向かいのシャワー室のドアを開けると、ホテルの浴室の様なシャワー室が目に入った。

「すげえっ~。日本の大学病院って至れり尽くせりだなぁ~。」

感心していたら、浴室内に入って更に驚いた。置いてあるシャンプーやボディソープは有名ホテルに置いてあるメーカーのものだし、何より広々とした室内で空いた口が塞がらなくなった。
サッとシャワーを浴び、頭を洗った。

「ふぅー、さっぱりしたぁ~。」

室内をある程度流して清掃し、体を拭いたあと、頭から新しいタオルを被り服に着替える。
脱衣場には、きちんとドライヤーも完備されている。

「ホント、ホテル並みの仕様じゃん…」

と呟き、ドライヤーで頭を乾かす。ポーチに入れておいたワックスを手に付け、サッと髪を整える。
使ったタオル類は畳んでランドリーボックスへ入れ、着替えた物は、ポーチの中に入れてあったランドリー袋に入れてシャワー室を後にする。
部長室のドアをノックし、返事を待つ。

「どうぞ」

という返事を待ってドアを開けた。

「さっぱりしたか?」

と聞かれ、

「はい。お心遣いありがとうございました。」

スーツケースを開き、着替えた物を丁寧にパッキングし元に戻す。
振り返り、ソファーの背もたれを見るが、出がけにかけていたグレーのチェスターコートが見当たらない。
オロオロしていると、

「コートなら、こっちに掛けて置いたよ。安心して。」

デスク横のコート掛けに、白衣と並べて掛けてあった。
理先生も、ベージュのラフなジャケットの着替えていた。

「少し早いけど、出ようか?」

僕のチェスターコートを手に取り、片手にはビジネスバックを持って歩みを進めてくる。

「あっ、はい!」

慌てて、ソファーに置いていたかばんをもとうとすれば、

「先に、コートを着た方がいいだろう。」

と手渡される。

「すみません。」

と受け取ると、サッと袖を通し羽織る。

「似合ってるね。下手すれば高校生でも通るんじゃないか?」

と言われる始末…。
真っ赤になって、

「そこまで童顔ですか?もう27ですけど…。10もサバ読むのは、流石にきついかと思いますよ…。」

と返せば、

「若く見られることはいいことじゃないか?私なんて、大抵、実年齢より大きくしか見られない…。」

残念そうに返してくる理先生。
僕は、そんな大人な先生が好きでたまりませんよ…と声を大にして言えたら、良いのだがそれは叶わない願い…。

「落ち着いてらっしゃる、って事でしょう?イイじゃないですか。おたがい無い物ねだり的ですね…」

と笑って返した。

「さぁ、行こうか。」

スマートに僕のスーツケースにビジネスバックを載せるように持ち、扉へと誘ってくれた。
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